長編14
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オカ研合宿in2日目

「うーん…。」

俺は暗闇の中で目を覚ました。

普段は掛けない眼鏡を手探りで取り出し、かけてみた。すると目の前に鯱浦先生の顔が‼

「うわあぁぁぁぁ‼」

ひとしきり騒いでから気付く。そういや合宿中だった。で、布団が足りないからって男性陣は二人で一つの布団を使う事になってたっけ。それで俺は鯱浦先生と添い寝してたって訳か…。これは俺の中の黒歴史として一生残るだろうなー。

てかこれだけ騒いで起きないとか…。みんな寝つきすごい良いな。

とりあえず時間を確認。午前4時。

「まだ早いな…。」

とは言ったものの、二度寝するのも憚られて中庭に出てみた。まだ日も昇っていない。

ふと山の方を見る。

「…ん?」

俺は目を疑った。山道に沿ってポツポツと灯りが浮いている。しかも少しずつ動いている。

「何だあれは…。」

「狐火、だね。」

「え?」

隣を見ると、いつの間に来ていたのか鯱浦先生のお母さんがいた。

「あれは狐火。この辺りに狐ヶ崎稲荷大社ってあるでしょ?あそこに祀られてるお狐さんが作る火の玉みたいなものよ。」

「へえ。」

おそらく今日の目的地だろう。彼女はこちらを向いて言った。

「実はね、そこの息子さんの涼彦君は海斗の幼馴染なのよ。同い年なのに海斗よりずっとしっかりしててね。」

「そうだったんですか…。」

鯱浦先生のお母さんは、そう言って家に戻っていった。

そうか、それでアポ取ったのか。前述の通り鯱浦先生は心霊スポットにアポを取らない。めんどくさいから。幼馴染なら簡単にコンタクトが取れるもんな…。

思っている間に狐火は消え、その代わりに鯱浦先生が起きてきた。

「お前もう起きてたのか。早いなー、幾つだよ?」

「17です。」

「…真面目に答えるなよな。」

それを軽く流して、俺は彼に今見た狐火の事について聞いた。

「き、狐火ぃ⁉そんなん見たのか、お前。スゲーな。」

「先生は見た事ないんですか?実家の近くなのに。」

「ああ、ないね。」

「きっと心が汚いんですね。」

「うるさい。」

それから先生と少々雑談をし、気付くと6時頃になっていた。

「海斗、皆!ご飯よ!」

「はーい!」

居間に集合したオカ研部員達。意外と皆起きてるんだな。

「起きてたのか、一ノ宮。一番来なさそうだったのに。」

「うるせー。」

挨拶がわりのやりとりを済ませ、朝食を頂く。鯱浦先生、いいお母さん持ったなあ。料理が上手い。

俺が美味い茄子の浅漬けに舌鼓を打ちながら、ふと鯱浦先生の方を見た。

「…あれ」

よく見ると彼は、鳥飯に入っている人参を細かく取っている。

「先生、もしかして人参嫌い?」

先生はハッとした顔をして、

「そっ、そんな事はない。」

言いながらも人参を取る手は止めない。

「じゃあその人参は何ですか?食べないんですか?」

「たったっ食べるさ‼楽しみは最後に取っておくものなんだ!」

「ふーん…。じゃあ俺の人参もあげますよ?」

「い、いや!生徒から飯を取り上げるような事はしないぞ!要らねぇから!マジで!」

「そうですか。なら無理にとは言いませんけど。」

俺は食事を再開した。最初から先生の言う事を信じる気は無いが。

朝食を終えて、俺たちはそれぞれ身支度に入った。

「なあ、ミヤさん。今日の行き先って稲荷神社だよな?」

「ああ。それがどうかしたか?」

「何か…。また何か起こりそうな気がするんだよな。」

「…気のせいだろ」

俺はそうか、とだけ言って再び支度を始めた。

どうも気になるんだよな、あの狐火。まだ鯱浦先生以外には話してないけど、何かある気がしてならない。

「黒沼?」

「え?」

見ると、支度を終えたらしい一ノ宮が怪訝そうな顔をしている。

「どうした?何だか顔色悪いぞ?」

「あ、いや…。何でもない。」

ふうん、ならいいけど。彼はそう言ってエナメルバッグを背負い、部屋を出ていった。

仕方ない、俺も行くとしよう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「準備は出来てるな?忘れ物とか無いか?」

鯱浦先生が家の玄関に集まったオカ研部員達に向かって呼びかける。

「先生こそ忘れ物無いんですか?」

そこに美鷹の余計な一言。

「あるわけねーだろ!俺を誰だと思ってる?」

「頼りなくて冴えない現代文教師!」

「悪かったな、頼りなくて冴えない現代文教師で!」

「はいはい、二人とも黙る!先生、出発しましょう。」

俺は二人を引き離し、先生に囁いた。

「頼りにしてますから。イケメン現代文教師の鯱浦先生。」

みるみるうちに先生の口元がほころぶ。

「よお〜し‼行くぜ、狐ケ崎稲荷大社‼」

ああ、なんて扱いやすい男なんだろう。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

先生の実家から歩いて20分。

「さ、着いたぞ。ここが狐ケ崎稲荷大社だ!」

先生の示す先には、立派な神社が…!

…無く、代わりに小さな社と阿吽のお稲荷さんが。

「…これ、狐ケ崎稲荷大社?」

「ちっちゃ」

「狐ケ崎稲荷小社じゃね?」

口々に不平を漏らす俺達に、先生が言い訳のように言う。

「いや、こないだ来た時はもっとちゃんとしてたよ?」

「へぇ。」

俺はふと思い出し、言った。

「先生、この神社の神主さんって先生の幼馴染なんですよね?」

「ん?ああ。」

「その人は来ないんですか?」

「ん、連絡はしてあるからそろそろ来るんじゃ…」

その時、

「お、鯱浦。もう来てたのか。」

後ろから男性の声がかかった。

振り返ると、神主衣装を着た男がこちらに歩いて来る。

「あ、豹崎。遅せーよ。」

「すまない。衣装着るのにちょっとばかし手間取っちまって。」

彼は頭を掻いて俺達に詫びる。よく見ると切れ長の目をした中々の二枚目だ。

「別に衣装着て来てくれなくても良かったんだが。…皆、こいつが俺の幼馴染の豹崎だ。」

「よろしく。」

「よろしくお願いします。」

挨拶を済ませると、先生はちょっと辺りを見渡して、言った。

「…で、これは何だ?」

豹崎さんはきまり悪そうに答える。

「実は質の悪い地上げ屋に殆ど持っていかれちまってさ。この少しだけ残った土地ももうじき持ってかれる。」

「はは〜ん、それでアポとった時にちょっと口籠ってたんだな?」

そうだったのか…。

「よし、これで全員揃ったな。じゃあ…。豹崎、お前んち上がっていいか?」

「ああ。勿論。さ、君らもおいで。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

…豹崎さんの家って。

「バーですか、これ?」

豹崎さんは頷いて、

「そうだよ。僕はここでバーテンやってるんだ。」

「…え、バイトですか?」

「いや、僕の店だよ。」

えーー⁉稲荷神社の神主兼バーテンダー⁉

…ミスマッチすぎる。

「お、お前バーテンダーになってたのかっ‼」

一番驚いているのは先生。

「おう。お賽銭だけじゃやっていけないからな。まあ入れよ。」

言われるがままバーに足を踏み入れる。

「わぁ…。」

生まれて初めて見たバーの内部。すげー、何ていうか…。大人って感じ。

「お好きな席にどうぞ。」

おお、豹崎さんがマスターモードになった。

俺達はめいめいカウンター席に座った。

「さて…。改めて紹介しよう。僕は豹崎涼彦、またの名を狐ケ崎涼彦。狐ケ崎稲荷大社の神主兼このBar・Sunsetのマスターだ。」

「よろしくお願いしまーす。さっきも言いましたが。」

神主衣装の男がバーのカウンターに立っているという珍しい光景を目の前にしながら、改めて挨拶する。

「で…、さっきの話だが。」

鯱浦先生が訝しげに言う。

「…ああ。神社の話か。」

豹崎さんはカウンターに背を向けてグラスを手に取り、言った。

「あまり話したくないんだ…。いろいろあったからな。」

「そうか。それなら無理にとは言わない。」

鯱浦先生は立ち上がって、

「じゃあ何かカクテルでも奢ってもらおうかな…、生徒たちにはジュースを。」

と、カウンターに寄り掛かる。

「かしこまりました、お客様。」

豹崎さんは戯けた様子で肩を竦めた。

数分後、ロックグラスに注がれたオレンジジュースが俺達の前に並んだ。

「スコーピオン作る時のオレンジジュースの残りだけど。味はいいからね。」

「ありがとうございます。」

「どういたしまして。…で、鯱浦。お前どうすんだ?」

「えーと、俺は…。取り敢えずアルコールの弱いやつくれ。」

へー、先生お酒弱いんだ。

「分かった。」

「それで見栄えのするやつ。」

「わがままだな。」

「客のわがままに応えるのがバーテンダーだろ?」

「はいはい、かしこまりました。」

二人のやり取りを聞いていると、いかにも幼馴染って感じがする。

「ふー…。ルジェカルテット・ソーダ辺りでいくか。」

豹崎さんは用意されたタンブラーに氷を入れ、取り出した赤っぽいお酒と炭酸水を注いだ。

「カシス系は女性のお客様に人気なんですがね。」

そう言ってタンブラーを先生の前に置いた。

「客の好みにいちいち口出しすんなよ。」

先生はグラスを傾け、鮮やかな赤色のカクテルを喉に流し込んだ。

「この店はどうだ、繁盛してるのか?」

「まあまあだな。商売繁盛の神様祀ってるからかある程度は流行ってるぜ?」

「そうか。そいつは良かったな。」

わぁ珍しい。鯱浦先生が大人なイケメンに見える。照明のせいかな?

そんな事を考えていた、その時。

「邪魔するぜ〜。」

店内に突如響いた下品な声。

「…来やがったか」

豹崎さんが低く呟く。

振り返ると、見るからに柄の悪そうな男が立っていた。あれが…地上げ屋?

「出来るだけ話し合いで解決したいんだよ。なあ、バーテン兄ちゃん?」

「僕はあの神社の神主です。譲る訳にはいきません。」

「ほー、意地張っちゃって。」

男はつかつかとこちらに歩いてくると、豹崎さんに詰め寄り、バン‼とカウンターを叩いた。

「こっちもあんまり手荒な事はしたくないんだよねぇ…。」

豹崎さんは黙って男を睨んでいる。

その時、隣に座っていた一ノ宮が突然立ち上がった。

「さっきから黙って聞いてりゃあ…。」

「一ノ宮‼」

俺と美鷹は慌てて彼をたしなめるが、時既に遅し。

「あぁ?何だお前?」

その場はヤクザの抗争現場のような空気に。

「なんだ、ガキじゃねーか。お前はこいつの何なんだ?関係ねーだろ!」

男が凄む。

「俺か?俺はな…。」

……。

「豹崎さんの幼馴染の生徒だっ‼」

そのまんまじゃねーかっ‼

「はあ?」

地上げ屋さん。心中お察しします。

「…生意気なガキだな!」

地上げ屋が一ノ宮に殴りかかる。

「一ノ宮、危ない!」

血の雨が降ると思われた。

「ふんっ‼」

男の身体が宙を舞う。

「………?」

何が起こった?

「ったく、突然飛びかかって来やがって…。」

「…一ノ宮、お前今何を…。」

彼は何でもない顔で答えた。

「ん、巴投げ。」

「巴投げって、お前…。」

一ノ宮は頭を強かに打って気絶しているらしい地上げ屋を背負い、外に捨てに行った。

「か、彼は…、何者なんだい?」

豹崎さんが複雑な表情をして言う。

「ああ、はい。女好きの熱血漢です。」

俺は苦笑して答えた。

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その日の昼、俺達は豹崎さんの奢りで昼食をご馳走になっていた。

「いやあ、さっきは本当に助かったよ。一ノ宮君、だっけ?ありがとう。」

「いーえ!当然の事をしたまでですよ〜♪」

一ノ宮は上機嫌だ。料理が嬉しいのか、ストレス発散が良かったのか…。恐らくその両方だろう。

殆どの皿が空になったところで、鯱浦先生が

「さて、お腹も膨れた事だし。神社の方見に行くか?」

と、笑った。

「賛成です!」

狗神さんが目を輝かす。そういやまだオカ研らしい事何もしてなかったな。

「やっぱり行くのか」

ミヤさんは逆に憂鬱そうだ。彼はオカルトに関わるのを快く思わないからなあ。

「行かないとオカ研じゃねぇだろ?」

「これじゃあ一ノ宮が目立っただけで終わっちゃうよ!」

一ノ宮と美鷹もオカ研の血が騒ぎ始めたようだ。

「よーし!オカルト研究部、出動‼」

「おー‼」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

数分後、俺達は狐ケ崎稲荷大社の前に立っていた。

「よし、豹崎。生徒達を案内してやってくれ。」

「おう。小さいとはいえ、僕にとっては自慢の場所だからな。」

俺達は豹崎さんの後について歩き出した。

「ここが境内だ。」

「見りゃ分かります。」

「そりゃそうか。じゃあ…、あれが鳥居だ。」

「見りゃ分かります。」

「ははは…。」

「あはは…。」

「…終わり。」

「え?」

「こんだけ。」

「はい?」

豹崎さんは、

「いやあ、自慢の場所といっても見る所は限られてるからなあ。後は入り口の阿吽のお稲荷さん像くらいかな。」

と苦笑した。

と、その時。

「よう、バーテン兄ちゃん。」

聞き覚えのある声。

振り返ると、先ほど一ノ宮に投げられた男がいた。

「あ、お前さっきの軟弱男!」

一ノ宮が男を指差して叫ぶ。

「あ、ちょんまげ小僧!お前さっきはよくも…。」

「何だとこのなりそこないヤクザが!」

同レベル…。

「一ノ宮!あまり刺激するな。」

ミヤさんは一ノ宮を軽くたしなめ、男の方へ一歩歩み出た。

「ここには手を出さない方がいいぜ…。」

「あぁ?」

彼は周囲を見渡し、続ける。

「ここの主は、お前の事を快く思ってないようだしな。」

「深山先輩、主って…?」

狗神さんが怪訝そうに首を傾げる。

「大体想像がつくだろう?」

彼は狗神さんに向かって微笑した。

「何の事だか知らないが、余所者が出しゃばんじゃねーよ‼」

男は声を荒げ、こちらを威嚇する。その剣幕に、狗神さんや美鷹は首を竦めた。

「分からなくて結構。お前はもう死んだも同然だ。」

世紀末救世主伝説…?

「豹崎さん、あなたなら分かりますね?」

「?」

オカ研部員の頭上に沢山の?が浮かぶ中、豹崎さんの顔には妖しい微笑が浮かんでいた。

「ああ。」

彼は目を細め、男に歩み寄った。

「な、何だよ。」

男は二、三歩後退りした。

「そんなにこの土地が欲しければ、僕と一緒に来てください。」

豹崎さんは表情を変えずに、境内裏から続く裏山へと入っていった。

「…へっ、やっと土地売る気になったか。」

男もそのあとに続いた。

「あっ、豹崎さん…。」

俺はその後を追おうとしたが、ミヤさんに止められた。

「っ、何だよ?」

「行かない方がいいぞ。お前まで巻き添え食らう事になる」

「…?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…おい、まだかよ?」

地上げ屋の男は痺れを切らした様子で豹崎に問う。それも無理はない。もうかれこれ30分も山道を登っている。

「もう少しですよ。ほら、見えてきました。」

彼の指差す先には、少し開けた丘のような場所があった。

「ふう…。やっと着いたか。で、この土地は売ってくれるんだろうな?」

男の問いに、豹崎は

「はは…。僕、そんな事言いましたっけ?」

「…何?」

怒りを露わにする男だったが、すぐに周囲の異変に気づく。

「僕は僅かに残ったこの土地を売る気になった事なんて、ただの一度もありません。」

「…!」

いつの間にか周りに沢山の鳥居が立っている。稲荷神社には付き物のあれだ。

「そんなにこの土地が欲しかったら…。」

豹崎は信じられない力で男の襟首を掴み、自分の方に引き寄せた。

「このどこへ続くとも分からない鳥居の中を、ずっと彷徨っているといいですよ?」

「ま、待ってくれ、俺はただ雇われただけで…」

男の命乞いも虚しく、彼は空中に空いた大きな穴に飲み込まれていった。

その様子を、豹崎はあの妖しくも美しい微笑で見つめていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あ、豹崎さん!遅かったじゃないですか〜!」

「すまなかったね、話が長引いちゃってさ。」

彼は山に消えた時と同じ微笑を浮かべながらこちらに歩いてきた。

「あれ、あの男は…?」

「ああ、彼なら諦めて帰ったよ。」

へぇ、あのしつこい男が…。

「また一ノ宮君を呼ぶぞ、って脅したら飛んで帰っていったよ。」

「さすが俺様♪」

一ノ宮は誇らしげに拳を振り回して見せた。

でも…。

「本当にそんな簡単に、あの男が諦めるだろうか…?」

「え…?」

隣にいた狗神さんが小さな呟きを漏らす。

「だって、そうだろ?それだけで諦めるんなら、とっくに諦めてる筈だろ?」

「まあ、確かにそうですね…。」

「あまり深く詮索するな」

背後からミヤさんが声をかけてきた。

「交渉は成立、全ては丸く収まった。それでいいだろ?」

そう言って、彼は微笑んだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その夜、豹崎さんの家に泊めてもらう事になった俺達は、夕食を頂いていた。

「美味しい!これ、豹崎さんが?」

「そうだよ。店をやる以上これくらいできないとね。」

「へぇ。」

鯱浦先生の周りって料理の上手い人多いなあ…。羨ましい。

夕食を済ませ、寝るまでの時間を部員達との雑談で潰す。

「今回は何も起きなかったな。」

「そうだな。ヤーさんが来ただけで。俺の巴投げキマってたな〜♪」

「何か起きて欲しかったです…。」

「何も起きなくて良かった…。」

鯱浦先生はカウンターでうつ伏せになって寝ている。アルコールでもとったのだろうか?

「あれ、そう言えばミヤさんと豹崎さん居なくね?」

「あ、本当だ。どうしたんだろ?」

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深山 龍と豹崎 涼彦は、狐ケ崎稲荷大社の境内に座っていた。

「いつ僕の事に気付いたんだい、深山君?」

豹崎は全くの無表情で言った。先程の笑顔が嘘のようだ。

「最初から分かってましたよ。」

深山が答えると、豹崎はふっと笑って、

「参ったな…。これまで誰一人気づかなかった僕の秘密に、初対面で気付くなんて。只者じゃないね。」

「いいえ。只の男子高校生です。」

「…そうか。まあ君は口も固そうだし、心配ないか。」

そう言って、豹崎は柏手を打った。すると周囲の茂みから犬のような動物が何匹も出てきた。

「低級な狐達だけど…。それなりの力は持ってる。」

「例えば幻覚を見せたり、とか?」

深山が狐の一匹を抱き上げ、撫でながら言う。

「フフ、君は何でもお見通しだね。」

いかにも楽しげに笑う豹崎。

「大丈夫、あの男を殺す気はさらさら無い。

そもそも僕は無駄な殺生はしないよ。一応聖職者だからね。きっと明日の朝あたりに道端にでも倒れてて、誰かに助けられるだろう。」

「そうでしょうね。あなたはそこまで悪い人でもなさそうだ。」

深山は膝の上で寝てしまった狐を見ながら、豹崎に言った。

「豹崎さん。この事は誰にも言うつもりはありません。あなたの裏の仕事にも影響するでしょうから。」

「そうか。そいつは助かるね。」

豹崎が再び柏手を打つと、狐達は一瞬にして煙のように消えた。

「さて、帰ろうか。明日も早いんだろ?」

「はい。」

豹崎と深山は連れ立ってその場を離れた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あ、お帰り、ミヤさんに豹崎さん。どこ行ってたんですか?」

「まさかデート…⁉」

「一ノ宮、お前バカだろ」

豹崎さんは笑ってそれを否定し、

「さ、そろそろ寝た方がいいんじゃないか?寝坊したら鯱浦に叱られるだろ?」

と、俺達を諭した。

「そうですね。先生怒っても恐くないけど。」

「言えてる!」

こうしてオカ研に訪れた、珍しく平和な一日は幕を閉じた。明日は遂に最終日、どんな経験が俺達を待っているのか。今からとても楽しみである。

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ラノベみたいで面白かった。
眼福眼福。

彩貴様、コメントありがとうございます。面白いと思って頂けて嬉しいです!こんな活動、実際にあったら確かに面白いかも知れませんね(笑)
あゆ様、コメントありがとうございます。シリーズ始まって以来のファンの方でしたか、ありがとうございます!投稿に間が空いてしまい、ご心配をおかけしたようで申し訳ございませんでした。
ダレソカレ様、コメントありがとうございます。最初からすべて読んで頂けましたか、嬉しいです!これからも不定期ではありますが、投稿を続けていこうと思うのでよろしくお願いします。
コメントに気付くのが遅れてしまった関係でこのような形での返信となってしまいましたが、皆様の温かいコメントが作者の励みになっています!お読み頂き、誠にありがとうございました。

オカ研シリーズの存在を知り、最初から一気に読ませて頂きました。
どの話も魅力的で、気が付いたら読み終わっている感じでした。何故今まで知らなかったのか不思議に思うほど面白かったです。
これからの続編も期待しております。

オカ研シリーズ始まってからのファンです。暫く投稿がなく心配してたら久しぶりに投稿があり
すぐ読みました。続き楽しみにしてます。登場人物がボケありツッコミあり霊感ありでとても面白くよく出来ていて読んでいてワクワクヒヤヒヤします。

オカ研シリーズ面白いです!
こんな活動してみたいと憧れます(^-^)
合宿最終日も楽しみにしてます!