中編4
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タイムカプセルの呪い

私の大学時代の友人Kさんから聞いた話です。

Kさんは半年前、久しぶりに奈良の実家に帰りました。

なぜ帰省したのかというと、その日は小学校時代のクラスメイトと、タイムカプセルを掘り起こす予定だったのです。

久しぶりの再会ですが、集まったのは10人程度でした。クラスでも特に仲が良かったメンバーです。

タイムカプセルは、校庭の隅にある大きな桜の木の裏に埋めてありました。みんなで掘り起こすと、すぐに出てきたそうです。

タイムカプセルを真ん中に置き、みんなで円になるように座りました。

それぞれ自分の埋めた宝物や手紙を見せ合い、とても盛り上がったそうです。

しかし最後に、タイムカプセルの底に「ヒトミ」と書かれた茶色い封筒が残っていました。

クラスには「ヒトミ」という名前の子はいません。

その封筒は、他のモノに比べてかなり古びていたので、不気味な空気を纏っていました。

タイムカプセルの発起人のHさんが、「中身が気になるから開けよう」といって封筒を開けました。

そこには長方形の赤い紙と白い紙が二つはいっていました。

赤い紙は片面がうっすら黒く、ツヤツヤ光っていて、白い紙は見たところ普通の紙でした。

白い紙には、赤い文字でこう書かれていました。

「ダレモワタシヲ シンジテクレナイ ダレモワタシヲ タスケテクレナイ カナシイ クルシイ ワタシハ死ンデ アナタカラ呪ウ」

封筒を開けたHさんは一気に青ざめ、言葉を失っていました。

周りの女性も悲鳴を上げ、騒然となりました。

さらに封筒の奥から、なにか小さくて赤黒い「固まり」のようなものが出てきたそうです。

Kさんはまずい!と感じ、すぐにそれらをHさんから取り上げて、タイムカプセルにいれ、蓋をしました。そしてそのまま土に埋めてしまいました。

その日は皆、恐怖に包まれて解散しました。

後日、東京に戻ったKさんに、地元の友人から電話がありました。

Hさんが、電車に身を投げて自殺してしまったという連絡でした。

連絡をくれた友人の話では、タイムカプセルを掘り起こした夜から、Hさんは幻覚を見るようになったそうです。

その幻覚というのは、小さい女の子でした。

「街を歩いていると、通りの反対側に立っていたり、お店の棚の隙間から見ていたりする。夢の中にまで出てきて、怖くて眠れないんだ。あの子の怨念に満ちた目は、人間じゃない。」と、Hさんは何度も話していました。

しかし周りの友人は、タイムカプセルで変なものを見たから、意識しすぎているだけだろう、と思っていました。

そしてついにHさんは自殺しました。

電車に身を投げる1時間前に、Hさんは友人に電話をしてきたそうです。

「誰もオレを信じてくれない。誰もオレを助けてくれない。悲しい・・・苦しい・・・。オレは死ぬことにする。」

そういって一方的に電話を切ったそうです。

Kさんは再び地元に戻り、葬儀に出席しました。

その後すぐにタイムカプセルを一緒に開けた友人達で集まりました。

あのタイムカプセルはお祓いをするべきだという結論にいたり、近くの神社にお祓いをお願いしました。

Kさんもこれで一安心しました。

しかしその約1週間後、その電話をくれた友人が、マンションの4階から飛び降り自殺を図ったのです。奇跡的に命に別状はありませんでした。

Kさんはお見舞いにいき、詳しい話を聞きました。

お祓いをした夜あたりから、友人にも幻覚が見えはじめてしまいました。

Hさんの言っていた、小さな女の子です。

毎日、どこにいても小さな女の子が表れ、すごい形相で見てくるので、友人は恐怖に怯えきっていました。

自殺する前の夜も、夢の中に女の子が現れました。

その女の子は、茶色く色褪せたワンピースを着ていて、ボサボサのショートカットでした。

顔は青白く、紫色にも見えました。

左胸に名札がついていて、「ひとみ」と書かれていたそうです。

その日の夢は、女の子がすぐそばまで近づいてきました。

なぜかいつもの怖い表情とは違い、その時の女の子はニタニタ笑っていたそうです。

そして目が覚めたら、病院のベットの上だったと言います。

今はもう女の子は出てこないそうです。

Kさんは友人にお大事にと伝え、病院を後にしました。

Kさんは友人にいろいろ話を聞きましたが、一つだけ秘密にしていることがありました。

実は、その友人が自殺を図る1時間前に、Kさんの携帯に友人からの不在着信が30件以上はいっていたのです。

そして1件の留守電が入っていました。Kさんは会議中だったので、たまたま携帯の電源を切っていました。

「もし電話に出ていたら、オレも呪われていたかもしれない。留守電も怖くて消したよ。」

Kさんは半年経った今でも、呪いにおびえているそうです。

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