短編2
  • 表示切替
  • 使い方

死期察知娘

人から聞いた話で、77〜80年代の頃の、とある食堂で起きた事らしいのですが……‥。

田舎の小さな食堂にA子さんという十代の女の子が働いていました。

彼女は気だてもよく大変働き者だったので食堂の看板娘でした。

ところがある日、いつも魚の定食を注文する常連客に対してA子さんは、山盛りにしたご飯のてっぺんに揃えた箸をぶっ刺して出してしまったのです。

八十代半ばも過ぎていた常連客では洒落になりません。常連客は死人にそうする礼儀を食堂でされた事を大層怒り、帰ってしまいました。

これには店主もキツく叱りました。

「イタズラがすぎる!冗談も大概にしろ!」

しかし娘は反省というより、ひどく狼狽するばかり。

「旦那さん、どうか許してください。どうしてあんな真似をしてしまったのか、自分でも分からないのです。」

A子さんが言うには、常連客を見た瞬間、思考が停止したような感覚に陥ってしまい体が勝手に動いて、あんな失礼な事をしてしまったらしいのです。

その時、店主はA子さんの言い分を責任逃れの言い訳だと思いましたが、今までの彼女の生活態度からして、もう二度とこんな事はしないという約束でクビにはしませんでした。

しかし、本当に洒落にならなかったのはその翌日で、昨日の常連客が亡くなってしまったのです。

それを聞いた店主もA子さんも(偶然)を薄気味悪く思いました。

ところが、もう二度としないと誓った、あの失礼極まりない行為をA子さんは頻繁にするようになってしまいました。

その度にそうされてしまった客は命を落としてしまうのです。

いつしか(死を呼ぶ食堂)と恐れられ客が寄り付かなくなってしまったある日、店主はA子さんの解雇を決意しました。

これまで自分の娘同然に可愛がってきたA子さんに情もありましたが生活のためには仕方がありません。

店主の話にA子さんも納得して、お別れに最後の食事を泣く泣く二人でとろうとした時の事、なんと、店主のご飯に箸をぶっ刺して用意するA子さん。

そして一言、こう告げたそうです。

「さようなら」

死を予知していたのか、死を与えていたのか、真相はA子さんにしか分かりません。

以上、人から聞いて、個人的に不気味だと思った話でした。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ