中編4
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私の赤ちゃん《3》

部屋の中にいたのは、一人の女性だった。

僕が始めから見えている・・・ってことは

「生きて・・・・・・る?」

いや。薄塩の目が死んだ。

「おおぉぅ・・・ぐふぅ。」

・・・グロいらしい。

女性は、ブツブツと何かを唱えていた。

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「ヮダシノァ"ガチャ・・・ヮダシノ・・・チャァァ"」

女性が顔をこちらに向けた。

グロくはない。グロくても僕にはそう見えない。

でも・・・。

その顔は、僕が今まで見たどんなものより、怖かった。

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本当に狂ってしまった人の顔。

焦点の合わない虚ろな目。

背筋を這う様に上ってくる悪寒。

足が床に張り付く。

おもむろにのり姉が口を開いた。

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「首吊りでしょ?」

女性は、またブツブツと言う。

「ァ"ガチ"ャッッ・・・ワタッ"ヮダシノッッ・・・」

女性が吼えた。

「ぃイィなァあ"ァ"イィィッッ!!!」

のり姉が顔をしかめた。

「当たり前だし。」

・・・?どう言う事だろう?

薄塩が、教えてくれた。

「目とか舌とかヤバい。《私の赤ちゃんがいない》って、騒いでる。」

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「ダッデダッテダッ"デッッショウグンッッジョウ"グンガッッ」

※薄塩同時通訳

「だってだってだって、ショウ君がショウ君が。」

のり姉が冷たく言う。

「ショウ君がじゃないでしょ。」

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「殺したのは、貴女だから。」

女性が更に吼える。

「ヂガゥヂガゥヂガゥ"ゥゥゥ"!!」

「違くない!!」

※薄塩同時通訳

「違う違う違う、な。」

「ああ。・・・状況がよく分からないんだけど。」

その間、のり姉は女性と怒鳴りあっている。

「ヮダシハヮダシハァァ"!ワルグナイィイ""!」

「ざっけんな!!この腐れ×××!!」

「ァ"ァ"ウ"ルザィィィ"!!ダッデダッテェェ!!」

「あ"あ"?!だってじゃねえ!この××!!!」

薄塩が、溜め息を吐いた。

「あの女の人、カレシに子供降ろさせられたっぽい。で、今、姉貴と全面戦争。・・・女子が使う言葉じゃねぇな。」

「確かに。」

「まったく・・・しゃあないな。」

薄塩が、また溜め息を吐いた。

そして、

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ガクッと、倒れた。

「薄塩?!」

だが、直ぐに薄塩は起き上がった。

薄く微笑みを浮かべて。

「おまっっどうした?!」

僕の問いに答えず、薄塩が女性に言った。

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「お母さん・・・。」

お母さん?!

「お母さん、行こう?」

薄塩がニッコリ笑って言う。

女性の目から、涙が溢れた。

「ァァ"ッァァ"ッ!◯◯ッッ◯◯ゥ"ゥ"ッッ!!」

誰だ◯◯って。

薄塩がまたニッコリ笑う。

「行こう?」

女性が、ズッ・・・ズッ・・・と、こちらに向かって来る。薄塩が、フラフラと歩きだした。

ちょうど小さい子どもみたいに、上半身をゆらゆらと揺らしながら。

「行くよ。」

のり姉が、薄塩の後に続く。

僕ものり姉についていった。

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薄塩が止まったのは、さっき開かなかった霊安室。

そこで、またドサッと倒れる。

のり姉が言う。

「先に行ったっぽい。・・・あんたも行けば?」

女性は、

「◯◯・・・◯◯ゥ"。」

と言いながら扉に手を掛けた。

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ガチャリ

いとも簡単にドアが開いた。

広がっていたのは、闇

女性の姿が、闇の向こうに消える。

女性が完全に見えなくなると、ドアは勝手に閉まった。

必死に僕が抱えていた薄塩が、いきなりムクッと起き上がった。

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「もう行った?てか逝った?あの人。」

は?

「薄塩・・・乗っ取られてたんじゃ?」

薄塩が、ニヤッと笑う。

「ハッタリ。」

「はぁ?!」

「前にも言ったじゃん。人間を乗っ取るのは、そうそう出来る技じゃないって。」

「えぇー・・・。」

「うん。取り敢えず放そうか。」

僕は慌てて薄塩を放した。

のり姉が薄塩に向かって顔をしかめた

「甘過ぎじゃない?」

薄塩が肩を竦めた。

「姉貴がキツすぎるんだって。」

むう。と、のり姉が膨れっ面をした。

そこで敢えて質問するのが僕だ。

「あの、このドアって・・・霊安室じゃ??」

のり姉が言う。

「この病院、扉は全部引き戸なのに、ここだけわざわざ普通のドアでしょ。・・・このドア、この病院の奴じゃないよ。」

「じゃあ!このドアは・・・?」

事も無げにのり姉が言った。

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「あっちとこっちを繋ぐドア。」

思わずのり姉に聞く。

「じゃ、最初なんで開けようとしたんですか・・・?」

「開いたら面白いから。」

「えぇー・・・。」

ポン、と薄塩が僕の肩を叩いた。

「そういうのが姉貴だ。」

・・・・・・何か納得。

「行こーぜ?」

薄塩が颯爽と出口に向かう。

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パチパチパチパチ・・・

何処からか拍手が聞こえた。

薄塩がスッと片手を挙げた。

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・・・で、最後に少しだけ。

あのドアは、まだあそこにあるのだろうか。

ショウ君とは、何処の誰なんだろうか。

本当に最後に

貴方がもし、病院で見慣れないドアを見つけたら、それは・・・・・・。

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そうなんですか(゜ロ゜)
納得です。

ご年配の方たちは更年期障害や、婦人科系の病気で通院するのでは(*^_^*)?

僕もですwww
産婦人科なのに何でご年配の方が集まっていたんでしょう?
謎ですね。
怖く無いんでしょうかね?

病院は生きてる時だけ世話になりたいです。
死んでまで行きたくない…

ローザさんへ
元は人間ですからね。ハッタリを使う事は多いんです。
なので、僕も薄塩も、演技力は結構自信あります。

・・・それは・・・難しいかもしれません。だからこそ、のり姉は堕胎をした人に対して厳しいんです。
理由は、次の話に書きました。
只、あまり明るい話とは、言い難いですが。

のり姉さんと薄塩くん、姉弟で上手く飴と鞭の効果が出ていますね。

子どもを奪われ、相手からも捨てられてしまったのでしょうか。
女性の無念は、計り知れませんね...。

せめて向こうで、赤ちゃんと再会出来ている事を祈ります。

やってしまった!
のり塩はのり姉だった−Σ(゚Д゚)
薄塩くんだった!!

恥ずかしい(´Д⊂ヽ失礼しました_(._.)_

年内にもう一本!宣言ですねw
のり塩くん、霊にはったりかますとは大物ですね( ・`ω・´)

まあ、怖い目にあっているのは基本のり姉と薄塩(特に薄塩)ですけどね。見えている世界はかなり違うと思います。早く最近の話を書きたいです。
この時点では、僕はひたすらヘタレですから。

怖かったです(;''A`)

病院に行って知らない扉があったら気を付けなきゃ!

0感のワタシには体験し得ないことです。
なので余計に見える人からの気持ちがお話からわかりますね。

3人の恐怖とほのぼのしたお話を楽しみにお待ちしてます。