中編3
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ナマモノ

数年前、大和政権の武器庫と言われている、奈良県のとある神社に参拝しました。

以前天川弁財天で知り会った、多分映画やテレビの字幕翻訳をお仕事にされているOさんと私の友人に連れられて、大神大社に参拝して帰り道、

「その神社に行きませんか?」

と、私の友人は言うと、

Oさんは、

「あそこの気は、私にはちょっと大変なので、今日は遠慮しておきます」

というような事を言っておられました。

近鉄の最寄り駅にOさんを送ってから、友人は、

「行ってみよう」

と、かなり興味津々の様子、

Oさんを畏怖させる何かを知りたい!

そうなると、矢も盾もたまらずというわけで、

友人は山辺の道をひた走り、例の神社へ向かいました。

「大和神社見えてますけど、あっちの方にしません?」

私がそういうと、友人、

「いや、Oさんが言っていた気を感じるのだ」

私は、Oさんが、行ってはいけないという波動のようなものを出しているのに気付いていました。

行かない方が無難でしょう?

まさに好奇心猫を殺す。

というわけで…。^^;

後で、知らん方が良かった。と、ぼやいていました。

神社は壮大でした。

神域を進むと壮麗な楼門、神域からは張り詰めた、しかし、清らかな気を感じたと、友人は言ってました。

神前を下がり帰りかけた時までは…。

回廊に設けられた受付に研修中らしい若い神官が2人座っています。

「なあ、今度の休み、日本橋行けへん?」

「ここで居っても退屈や。行こか?」

そんな話をしています。

私は、トレカかな?フィギュアかな?

それにしても、前を通っている参拝者(私たち)いる前でちょっと…。

そう思った時、友人は険しい顔になって、

「早くここを出よう」

そう言って急に早足、競歩並み、

楼門の前で一礼して、

「あゝ、Oさんこれが言いたかったのか」

呼吸が乱れています。

「どうしたんです?」

そう聞くと、

「神官さんが何か話していたけど、あの時急に」

「あの時急に?」

「あの場の空気変わった。何か怒っているような、

君、何か神様を怒らすような邪念入らなかった?」

え?何?

聞いてなかった?

友人は気の方が気になっていたので、神官の話し声は聞こえたが、音として聞いていたようです。

私は、神社から出るまでそのことは話ませんでした。

車の中でそこでの事を話すと、

「あそこで頭か胸か痛くなったのと違うか?急に寒くなったとか」

いやいや、早春にしては随分暖かかったし、風は気持ちよかったし、

私には何も…。

私の家に帰り着き、車を降りようとした時、友人の携帯に着信がありました。

Oさんです。

「多分あそこに言ったでしょ?どう感じました?」

友人はそこでの顛末を話していました。

でも、見習い神官さんの事は言ってはいませんでした。

Oさんは、友人に、

「ちょっと、そこにいたら、J(私)さんに代わって」

私が出ると、

「Jさん?お疲れ、私が帰り際に言ってた事を覚えてます?あそこに行って何かありました?」

そこで、補足ということで、神官さんの会話を話していました。

多分ナマモノの問題かな?と付け加えると、

「そう、そう、それなのよ。分かった?分かった?うん、うん、私が言いたかったのは、神様でなくてナマモノの事なの!それでJさんも厳しい気って感じました?」

いや、何にも、と言うと、

「良かったね、じゃあ切るわね」

通話は終わりました。

今でも、Oさんの

「良かったね」

という言葉、少し気になります。

私は…。

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