短編2
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それはそれで怖い

夜中、小腹が空いたので近くのコンビニへ行った。

客は誰もおらず、男の店員さんが一人、レジの向こうで 眠そうに立っている。

財布の中の電子マネーのカードを探して、サンドウィッチをカウンターに置き、

「それから、コーヒーエルお願い。ホットで」

店員さんは、

「レギュラーですね」

というので、

「いや、アールでなくてエル」

そういうと、

「あ、失礼しました」

と言って、

大きいカップを手渡す。

「まあ、ここの機械はエルとアールが逆方向だけど」

すると、店員さんが笑いながら、

「そうですね。レギュラーボタンが左で、ラージが右ですね」

私がカップをサーバにセットしている時は、店員さんは雑誌コーナーを整理しにカウンターから、出ている。

ボタンを押そうとすると、サーバーの向こうから女の声で、

「お客様」

と呼ぶ声がする。見ると髪の長い女性がサーバーの向こうから、こちらを覗き込むようにして私を見ている。随分顔色が悪く、やつれている。幽霊と間違われそうな。

こっちも不意だったのでびっくりした。

「何ですか?」

私が聞き返す。

「いえ、こちらから見ますとね。左がエルでレフト、右がアールでライトなんですよ。お持ち帰りでしたら、ホルダーがありますから、ご自由にお使い下さい」

そう言ってスゥーと消えた。私は小さい声で、

「ウヮッ」

とつぶやいた。

すると、男の店員さんが、

「どうしました?」

「いや、スタッフ君一人?」

「二人ですよ」

少し安心した。

「彼、スタッフルームで在庫確認してます」

彼?彼?彼?…

その時、スタッフルームからもう一人の店員さんが出てきた。

少し狼狽気味で、もう一人に耳打ち、

耳打ちされた店員さんは頷いて声を出さずに口だけを動かせて、聞き返す。もう一人が頷く。

私はサッサと

店を出た。店員さんは二人揃って、

「ありがとうございまーす」

店を出て、シュガーとフレッシュ貰うの忘れたのに気付いたが、そのまま帰った。

あの口の動き、「また出た?」だったよな?

それにしても、あの女の人、幽霊にしては不可解な。

多分、

「何の怨念で、ここにいる?」

などと聞いたら、

「いや分からんけど、ただここにおんねん」

などとブロークンな関西弁で答えるかもしれない。

それはそれで怖い。

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