中編3
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夢の少年

怖いと言うより、不思議な話。

ふと、思い出したので投稿します。

皆さんは、忘れられない夢などありますでしょうか?

私には小学生の頃に見た忘れられない夢があります。夢とは、昔の記憶の断片や感情や情報を脳が整理する為に見せるモノだと言われてますが、私が見た夢は何がきっかけで見たものか今でも不思議に思うものでした。

夢の中で、私は少年でした。

白いタンクトップに短パンで裸足。

空は入道雲が広がっていて、今と違って眩しい陽射しを遮る建物も無く、壮大な空の下に立っていました。

遠くには青い海が見えます。

場面が切り替わり少年はお爺さんと楽しそうに話をしています。

お爺さんも優しく微笑み相づちをうちながらウンウンと話を聞いているようです。

とても穏やかな日常

少年には親がいないようです。

父親は戦争に駆り出されて、母親は生活の為に出稼ぎに行っているようでした。

それでも明るく楽しそうな少年。

少年の様々な背景や風貌から見て第二次世界大戦の昭和のようです。

そして、また場面が切り替わり。

裸足で走る足。

必死な顔の少年。

後ろからは長い銃槍?を持った三人ほどの日本兵がニヤニヤ笑いながら追ってきます。

石段の階段を駆け上がったところで少年の話を優しく聞いてくれていたお爺さんがいました。

お爺さんは、いつもと違う真剣な顔で逃げなさいと言うような素振りをして日本兵と少年の間に立ちはだかります。

少年は躊躇して立ち止まりますが、お爺さんは行きなさいと怒ったような表情で少年を追いやるので少年は、躊躇いながらもまた走りだしました。

すると今まで全て無音だったにも関わらず、銃弾の音が少年の背後から聞こえたのでした。

ズドーン。

少年はお爺さんが撃たれた事を悟り、振り向く事もなく泣きながら必死で走ります。

防空壕のような洞穴に逃げ込み、駆け抜ぬける少年。

防空壕の中には乳飲み子を抱える女、年寄りばかり。

そして、必死に助けを求める少年を皆が見て見ない振りをするのです。

誰か!誰か!

泣きながら訴える少年を忌み嫌うような目で皆が見ます。

少年の絶望感、悲壮感。

お爺ちゃん!お爺ちゃん!

少年は、泣きながら自分を庇ったお爺さんを思い出しながら走ります。

そして、とうとう

ズドーン…。ズドーン…。

少年は、走ってる勢いで地面に叩きつけられるように倒れ込みます。

少年のお腹が赤く染まっていきます。

少年は優しく微笑むお爺さんを思い出し…

そして母親を思い出し…

…かあちゃん。

そして、私は目を覚ましました。

ボロボロ涙が溢れて頬はぐっしょり濡れてました。

時間は、まだ真夜中。

再度、寝ようと思っても暫くなんとも言え難い感情でいっぱいで涙が止まらず寝付く事ができませんでした。

無音の映画のような世界だったけど、あまりにも鮮明で、少年が何故追われていたのか、何故殺されないといけなかったのか、悲しくて悲しくて…。

それから、十数年後。

私は市役所にいました。

何かの手続きをする為だったと思います。

ふと市役所の入り口で写真の個展が開催されてました。

タイトルは忘れましたが、沖縄の戦争の写真で忘れてはいけないとか、繰り返すな戦争!みたいな感じでした。

あまり、こうゆうものを見たりしないのですが、その時は何故か足を止めて見てました。

そこには死んだ母親の側で泣く2歳ほど小さな子供の写真など戦争での悲惨な写真が沢山展示していました。

ある、一つの写真を見て固まりました。

「敵兵の流れ弾に撃ち抜かれた少年」

と記載されてる写真がありました。

それは、私が夢で見た少年でした。

あれから一度も同じ夢は見なかったのですが、どうしても忘れられなかったので覚えていたのです。

少年は、目を開けたまま死んでいました。

…気がつくと涙が溢れていました。

周りの視線にハッと気がつき慌てて個展会場からそそくさと帰りましたが、間違いなく、あの少年でした。

私は幼少期にあの写真を何処かで見たのでしょうか。

それとも…。

ただ、今となっても不思議で忘れられない夢で、本当のところは誰も分からないという事。

そして、今の幸せを大事にしないといけないと思い出すたびに…とても切ない気持ちにさせるのでした。

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