リサイクルショップ〜シリーズ:7 男子学生殺人事件

長編12
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リサイクルショップ〜シリーズ:7 男子学生殺人事件

捜査が難航していた事件に動きがあった。

被害者、中井 徹を殺害したと思われる容疑者が逮捕されたのだ…

逮捕されたのは…

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『青田 和明(24)』

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商店街のリサイクルショップに

鍵を壊して押し入ろうとした強盗及び不法侵入未遂並びに器物破損の現行犯で取り押さえられた。

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事件はアパート、那須野ハイツ二階203号室で起こった…

殺害された中井はこのアパートの住人だったが、殺された現場は害者の部屋では無く、

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『佐々木 孔明(ひろあき)(26)』

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の部屋であった…

この佐々木という男は、リサイクルショップ隣の廃工場で遺体となって発見…青田に事情を聴くと素直に殺害を認めた…

この事から、捜査関係者は…

中井の事件も、青田によるものではないかと睨んだ。

推測だが青田は以前より佐々木を恨んでおり、佐々木を殺そうと佐々木の部屋に侵入…だが、佐々木は外出して居たために、帰ってくるまで部屋で待機した…

そこに入ってきた中井を…夜暗かった為に佐々木と勘違いし殺害…焦った青田は逃亡…

そんな事とはつゆ知らず、佐々木が帰宅、事件が明るみになった…

しかし、取り調べで青田は中井の殺害を否定した。

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「刑事さん…本当なんです。彼に恨みを持ったのは、ついこの間、いや…一昨日からなんですよ!彼の部屋だって僕は知らないんだ!行ったこともない場所で、しかも、その中井って会ったこともない人をどうやって殺すんですか?!」

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と、佐々木の部屋を知らない、中井の殺害はしていない…と繰り返す。

「佐々木の部屋を知らない?嘘つくなよ?知らないわけねえだろ…

お前のウチは確か、那須野ハイツ…103号室だったはずだな?」

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「ええ…そうですけど」

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「佐々木のウチはあそこの203号室だ…真上に住んでる者を知らないはずがないだろ!」

捜査を進めて行くと佐々木と青田は同じアパートであることがわかったのだ…

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「え?!!!…でも、でも知らなかったんだ!!中井って人を殺したのは僕じゃ無い!僕じゃ無いんだ!」

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と、一貫して中井殺害の容疑を否定し続けた…

これも推測だが、佐々木の部屋にはギターや、スピーカー、アンプなどの近所に音が漏れるものが多く、アパートの住人の聞き込みでも、よく大きな音を出して近隣は迷惑を被っていたとのことだった…

当然、下の階に住む青田だって迷惑し、腹を立てたのは間違いない…

奴の気性からして、殺意が芽生えたに違いないだろう。

侵入方法は、恐らく…

アパートの大家である、タバコ屋の『三村 妙(たえ) (95)』に青田は佐々木を装って「鍵をなくした…」などと嘘つき、認知症の進んだ大家を騙して合鍵を貰い部屋に侵入したものと推測される。

ここに来てだいぶ事件の全容が見えてきたが…しかし、捜査は、まだこれからだ…

我ら警察全署員は全力を持って事件の深層を明らかにしなければならない。

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私は、新米の刑事で、殺人事件の捜査はこれが初めてだった…

県警では捜査本部が設置された。

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『男子学生殺人事件捜査本部』

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ある小さな街で起こったその事件は当初、捜査が難航していて、警部や、その他の先輩刑事達にも苛立ちや焦りが見え隠れしていた…

だがここに来て、容疑者が浮上、事件に進展が見られたが…

容疑者の『青田 和明』は、佐々木の殺害は認めたものの、中井の殺害は一貫して否定し続けていた。

もしも、中井の殺害が別の者の犯行という事になれば、事件は振り出しに逆戻りとなる。

そうはさせまいと、先輩刑事達はやきもきしながら捜査をしていた。

しかし、また捜査が行き詰まりを見せ始めている頃、まさかの自体が起こる…

なんと、青田が逃亡したという…

どのように逃亡したのか…

取調室での出来事を捜査員の木嶋刑事が話した。

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「検察と一通りの接見が済んだ後、春日部刑事の携帯がなり春日部刑事と検察官が取調室から出て行きました。その時、青田と私の二人きりなると青田が…私の腕時計を見せてくれと言ってきました。

『電波時計ですね。』などと暫く眺めると、青田は奇妙なことを話し始めました。

『僕は超能力が使えるんです』と…

馬鹿な…と、まともに取り合わずに居ると、『見せましょうか?』と怪しく笑いました。

面白い…何ができるんだ?と聞くと、『時間を止められます』とまたバカバカしいことを言いました。

ほう…やってみな…と馬鹿にしたように言うと…

『貴方が次に瞬き(まばたき)をして、目を開けた時にそれは起こっています。』と…

その時、そんな事があるわけないと、瞬きを一つしました。

その一瞬で…青田が私の腕時計と共に消えました。」

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とても、信じがたい話で、署長やその他のお偉方は…

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「そんな事がマスコミに発表出来るか!?馬鹿もん!!!」

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と木嶋刑事を怒鳴りつけ、こまったこまったと頭を抱えていた。

だが、誰一人、署内から逃げる青田を目撃しているものが無い為に、中には木嶋刑事の話を信じる者まで出る始末であった。

今回の事で『男子学生殺人事件』を気味悪がる捜査員も続出したが、一番気味が悪いのは、こんな小さな街で殺人や自殺なのでの死者が相次いでいることだ…

『男子学生殺人事件』前に起こった、『走行列車飛び込み自殺』の件も謎が多く、死亡した、『美波 隆文』の周りを洗って見ても、彼の人となりは明るくて誠実…友人なども多く、大学生活も充実していて、とても自殺するような人間にも思えなかった。

驚いたのは、その後に殺害された『中井』と『美波』は友人関係だったという事だ…もしかしたら、今捜査中の事件と、この自殺の件は何か関係性を帯びているのではないか…

そんな可能性も視野に捜査を進めるなかで、中井、美波と信仰のあった友人、『皐月 未来(さつき みらい)』から話を聞くことが出来た…

彼の話によれば、ある一本のアコースティックギターに触れた後、美波はまるで別人のように変貌し、発狂のもとに自殺した…とあまり信憑性の無いことを話した。

しかし、アコースティックギターというキーワードが、少し気になった…

なんと、中井が殺された現場にも、アコースティックギターが壊れてはいたが存在していたのだ…

一体、どういうことなのか…

皐月はリサイクルショップにそのギターはあったと話していた。

直ぐに先輩刑事とリサイクルショップに向かった…

扉の修理が行われているのを横目に店内に入ると、商品が所狭しと積み上げられ狭苦く感じた…

店主は我々の存在に気付いていないのか、特に言葉を発することなく、新聞に目を通している…

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「どぅも…警察のものです…」

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と、先輩刑事が手帳を開き、店主の前に突き出し見せると…

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「ああ…どうも…」

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と、無愛想に答え、新聞を折りたたむと…

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「何か?」

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と、顔を歪ませた。

この店にあったアコースティックギターを誰に売ったのかを尋ねた…

すると、首を小さく捻り…考え込むと

「あっ…」

と、一人の常連客の存在を話した。

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「名前までは知らんね…」

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と、冷たく言うと…

また新聞を開き読み始めた…

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「どんな人だったかだけでも教えてもらえんかね?」

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と、先輩刑事が聞くと…

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「う〜ん…そうね…あんまり、お客さんに興味ないから…どんなって言われてもね…そのうちまた来るんじゃないかな…常連だし」

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と、新聞から目を離すことなく答えていた。

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(なんて無愛想な男だ…こんなんで客商売が成り立つのか?)

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埒が明かないため、その日はその店を後にした…

もしも、この店にあったアコースティックギターが佐々木のウチにあったものと同じものなら、それはそれで気味が悪い…

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「まったく…あのギターをどうして佐々木に返しちまったんだ!で、佐々木の野郎はあのギターを何処にやりやがった!」

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と、先輩刑事は悔しそうに呟いていた…

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捜査の行き詰まりは、対して改善されることなく、時は過ぎ、秋の落ち葉が枯葉に変わる頃、突然、進展の兆しを見せ始めた…

あのリサイクルショップの店主が警察署に来て、驚くべき供述をしたのである。

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「思い出したことがあってね…あの日、アコースティックギターを買った客は確か、店内で電話をしたんだ…徐に(おもむろに)携帯電話をポケットから出し、ピッポッパって携帯を操作して耳に当てると『あっ…佐々木だけど…いや、佐々木 孔明!」ってね…つまり、彼の名は『佐々木 孔明』ってんだと思うがね。」

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恐れて居たことが、起こった…

そんな気分だった。

捜査は行き詰まってはいたものの少しずつではあるものの進展の兆しを見せつつあった…

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最近、一人の男が署に来た…

名前を『三ノ宮 隆一』と名乗った…事件のあった町にある『三ノ宮神社」の一人息子だ…

彼の話は正直、信憑性が皆無と言ってもいいほど、信じがたいものだった…彼の話によれば…

空き地に捨てられた、壊れたアコースティックギターを勿体無く思い、修理を施すため、彼の実家である神社に持ち帰る…すると、彼の父親である『三ノ宮 鵬仁(ほうじん)』にそのギターには呪いがかけられて居り、そのまま放置すれば、この街に災いが降りかかると話した…

このままではマズイと呪いを封じるための儀式を行なったが、失敗に終わる…

しかし鵬仁は、正義感からか、このままでは街の全ての人間の命に関わる大惨事となる事は明らか…結果、陰陽道を司る彼が命に代えて、お祓いを行った…

その結果、術により火に巻かれ骨すら残ることなく死んだ…

という、とても信用できそうもない話をした…

その時に、三ノ宮 隆一はあることを話した…

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「私の友人に『佐々木 孔明』という者がいた…あのギターの元所有者だ。

彼の死が、あのアコースティックギターによるものなのか、どうなのか、それが分からない…TVで逃亡を企てた容疑者のことを知った…彼ならばその事を知っているのだろうか?

彼に会いたい…会って話を…」

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そう話すと、うなだれるように肩を下ろした…

この時に、リサイクルショップであのギターを購入したのは佐々木であろうと、確信とまでは行かなくとも少し思っていた…

その決定的事実をリサイクルショップの店主が話したのである。

この事で、人間による事件と異なるまったく妙な事件へと変貌を遂げた…

青田の行方も以前、姿をくらましたままで、捜索も虚しく、時を長引かせている。

このままでは、捜査本部も解散することは目に見えている…と先輩刑事と話している間に本部は解散してしまった…

特別警察が出てくる…

その事に私は背中に水を浴びせられたように寒気を感じた…それもそのはずだ、既に私の後ろには奇妙の言葉を通り越した不気味な男が立っていたのだから…

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「ここからは、わたくしにお任せ願いますよ。」

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ビクっと後ろを振り返ると、今時には珍しい、ど真ん中でキッチリ分けられた髪に、臭いが数メートルの位置からでも分かるほどに、塗ったくったポマード…どういう風に育ったらそうなるのかと思うほどに真っ直ぐに伸びた背筋…

言葉遣いも刑事とは思えない…

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「神谷 爾雄郎(なんじゅうろう)と申します。よろしくお願い致しますよ…」

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気味が悪いとしか言いようがない、風貌…一昔前のスーツを身に纏い、綿手袋を常にしている…

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「この事件は怨霊が絡んでいると見て、まず間違い無いでしょうね。」

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言う事もとても刑事とは思えない。

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「なんでそう思うんですか。」

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「謎〜!何で?と思っている君が謎〜!」

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私の顔に人差し指では無く薬指を差しながら妙な声を上げる…

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「アコースティックギターの怨念…いや、そのアコースティックギターに何者かが込めた怨念…それが今回の事件を引き起こしたことは、私には手に取るように分かるのでございますよ。この爾雄郎には…」

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(キモい…)

(具合が悪いので帰りたい…)

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その言葉を飲み込み、更に質問をした。

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「アコースティックギターの怨念とおっしゃってますけど、中井の死は僕としては…別物と考えているのですが?」

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すると、パチンっと指を鳴らし、私を指差すと…

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「ご名答!その通り!あれは違うのです…私が独自に捜索した結果、次のことが分かりました。

先ず、リサイクルショップの防犯カメラぁ…貴方方…観ましたか?」

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「あ…まだ…」

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「基本がなっておりませんな!先ずはそこからですよ…

そこに映し出されていたのは、

『青田』『佐々木』『店主』…

何やら口論をしている映像でした…音声は入らないタイプでございましたが…何と無くではございますが、そう感じましたので、店主に確認したところ…

Transistor Radio・Model:7C-307Aの取り合いになったとお話になりました。」

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早口で英語を喋りやがった…先輩刑事が眉間にシワを寄せ

「は?なんだ今の英語…」

と少し切れ気味で聞く。

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「ですからぁ…ふぅ…仕方が無い方ですね。日本風に申しますと、トランジスタラジオ・モデル:7C-307Aです。」

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つまり、青田が話したことは本当のことだったのか?

青田は、恨みを抱いたのは、リサイクルショップで佐々木に会ってからだと、話していた。

しかしそれだけでは、中井殺害の容疑は晴れない…

先ず、アコースティックギターに殺されたというのが、腑に落ちないどころか、考えられない…

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「あなた方は、アコースティックギターに殺されたとお考えか?

だとしたら、お笑いですね…」

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なっ?どういう事だ…?

お前がそう話したんじゃないか!?

と、恐らく、私の顔が分かりやすく変わったと思う…先輩刑事がそうだった。

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「お前がそう…」

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先輩刑事が口に出そうとしたが

それを遮るように、神谷が話す。

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「これは、アコースティックギターに呪いを掛け、それをある者に渡した人間…即ち!犯人は既に分かっていま…」

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「分かってねえよ馬鹿!!!」

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よほど頭に来たと見え、そう先輩刑事は怒鳴りつけると、「行くぞ!」と、私に言うと出て行ってしまった…

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「彼の方はなぜ怒っているのですか?」

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意味の分からない話をした上に、そのイラつく口調が原因である事は火を見るよりも明らか…私も神谷刑事の雰囲気にイラついていた…

だが、私は最後の言葉が引っかかった。犯人が分かっているような事を口にしていたからだ…

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「犯人が分かったんですか?」

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「貴方もどうやら話の全容が分かっておられない様子。

一からご説明いたしましょう。

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呪いをかけ、その力によって人を殺そうとした人物が居るので御座いますが…貴方はどなたが呪いをかけたとお思いになられますか?」

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「え?さ…さあ…たぶんだけど、アコースティックギターは、リサイクルショップにあったんだし…売りつけた店主じゃないのかな…?」

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「私も初めは、そう睨んだのですが…監視カメラを見る限り、あのギターは客から買い取ったものであることがわかりました。

つまり…」

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「店にギターを売った客が?その人は監視カメラに写っていたんですか?」

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「ええ…お歳を召されたご老人でした…」

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「つまり、その老人がリサイクルショップの店主を恨んで…って事ですか?」

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「間違いないでしょう。」

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「その老人の行方は掴んでいるんですか?」

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「はい、勿論です。」

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「え?!じゃあ!事情を!」

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と、コートを羽織り老人の元に向かおうとすると…

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「無駄です。」

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と、神谷刑事に止められた…

え?と立ち止まると、衝撃的な事を神谷刑事は口にした。

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「亡くなられておりました。死因は事故…アコースティックギターをリサイクルショップに売ったその日にトラックに跳ねられたそうです…即死だったと、報告書にありました。所持品にリサイクルショップの領収書と買い取った時のお金が見つかっています。私はそのご老人の御宅にお邪魔いたしました…

何かの邪教などを行っていたような形跡がありました…例えば祭壇などです…そこにはリサイクルショップの店主の写真が有りました。

全てナイフでズタズタに引き裂かれておりましたが…」

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「しかし、そんな事…報告出来ませんよ…」

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と、肩を落としながら言うと…

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「では、報告はしなければ良いのです…」

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と、神谷刑事は怪しく笑っていた。

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