リサイクルショップ千石〜シリーズ 8 狙われた命〜

長編9
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リサイクルショップ千石〜シリーズ 8 狙われた命〜

私は中古品の買取、販売を行う店を営んでいる。名がなんともダサい…

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『リサイクルショップ 千石』

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まぁ、父がネーミングした名だが…

変更するのも面倒なのでそのままにしている。

ウチは代々、質屋を営んできたそうだが…

親の代から質屋では聞こえが悪いと、今の買取販売の形に変更したそうだ…

この店にはあらゆる品物が持ち込まれる…

その中には、何やら怪しい…曰く憑きの物まで含まれている…

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だが今回は商品の話ではない。あしからず…

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扉の修理を依頼したのは、11月13日…

来たのは11月15日、ようやくやって来て、始めたのはいいが…

どうやら来たのは新人の作業者。

「すぐ終わりますから」と、作業を始めたのは、昼の1時ちょっと過ぎから…

時刻は4時を回ったところ…

まだ終わらないのか?一体いつまで、そのネジを回し続けるのだ?

一本目はドリルドライバーを使ってやっていたが、ミスをしてドリルドライバー壊してしまったようで、二本目から手で回し始めている…全くイライラする。

途中、陰険な顔をした刑事と青臭い新人刑事が訪ねて来たが、何時ものように無愛想に振舞ったら、愛想をつかし出て行った。

その前の日もヘンテコな髪型、気味の悪いスーツを身に纏った刑事が訪ねてきて、しつこく防犯カメラのデータを見せてくれだの何だのと、営業の邪魔に来たが…警察というものは、いい加減、げんなりする顔ばかりだ。

新聞を読むのも飽きて、テレビをつけた…

この街の管轄である県警が、謝罪会見を行っていた…

字幕スーパーを見て、背筋が凍った。

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『殺人及び強盗未遂などの罪で拘留中だった「青田 和明容疑者(24)」が未明、検察官との接見中逃亡…』

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この男…

そう…私の店にマサカリを持ってやって来たあの男だ…

なんて間抜けなんだ警察は…

今度、またあの男が私の目の前に現れた時は、間違いなく殺しにかかるだろう…

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『今も逃亡中の凶悪犯は何処(いずこ)』

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じゃねえよ!

この店に来る可能性は高いだろ!

店の前に警察を配備してくれ!

頼む!

私は慌てて、「ああ!もう今日はいいよ!また今度!」とノロマな扉修理の作業者に言って、店の前を片付けさせると、普段閉めることのないシャッターを下ろした。

店の奥は住居になっているのだが、裏口にも鍵をかけ、警察に急いで電話した。

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翌日から警察が配備されたものの…

物々しい雰囲気が、気味が悪いと近所から苦情が寄せられた…

そんなことを言っても仕方がなかろう…

リサイクルショップを休むわけにもいかない…ただでさえ売り上げが少ないところを休んだりしたら、釜の蓋があかなくなってしまう。

43歳となった今、嫁ももたずこれまで生きてきた…それでも其れなりに幸せに暮らして来た…これからもそのつもりだ…人生の幕引きを殺しによって終わらせるわけには行かない。

あんな凶者に殺されてたまるか…

と、平静を装い営業を続け、一週間が経った…

なんとなく、先週来た陰険な顔をした刑事に聞かれたことを思い出した…

確か、アコースティックギターを買った男の容姿を聞いていたな…

あぁ…そういえば、あの男は、あの時…電話をしていたな…なんて名前だったか、名乗っているのを聞いていた…

刑事の挙げた名前を思い出す…

ここに押し入ろうとした男は…

『青田 和明』今私が最も恐れている男…忘れたくても忘れられない名前だ。

その男に殺された男が二人…

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『中井 徹』…知らない名前だ。

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『佐々木 孔明』…ん?

そうだ!この名前…あの時名乗った名前だ間違いない!隣の廃工場で殺された、あの常連だ…

外で寒い中警備を行っているお巡りさんに、中井 徹殺害事件の担当をしている刑事の名前を聞き、警察署を訪ねた…

前に無愛想に振舞った事が今更、申し訳なく思ったのが理由だ…

所轄と呼ばれる部署に通された私は、刈谷刑事と水澤刑事を探した…

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「あのぉ…刈谷さんは…?」

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と女性署員に尋ねると、あちらですと指を刺された…

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「こんにちは…刈谷刑事…この間は失礼な態度を取りまして…」

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と、忙しそうに書類に目を通している刈谷刑事に声をかけると、ムスっと相変わらずの陰険な顔で振り返った。

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「ああ…あなたでしたか…どうかなさいましたか?何か思い出したことでも?」

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と顔に似合わず、なんとも柔らかな対応に驚いていると、もう一人の刑事、水澤刑事が口を開いた。

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「何の用です?この間、知らないと言っていたじゃありませんか…」

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優しい物腰の柔らかそうな面をしている割に酷い言い草…

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「なっ…」

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少し頭に来て、やはり情報提供は辞めようと、思ったところ、刈谷刑事が間に入り、

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「馬鹿!なんだその言い方は!?…すみません。何しろ新人なもので…至らないところもございますが、お許しを…あっ!こんなところではなんですから…ささっ!どうぞ!こちらへ…」

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と、ソファがある場所に案内してくれた…

質問されていた、アコースティックギターの購入者の『佐々木』の名を出すと驚いたのか、言葉を失っている様子だった…

トランジスタラジオの件で、青田に殺されていることもあるからなのか…

その日は、それだけを話し帰った。

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ある日。

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「これまで異常も見られませんし、そろそろ退却しようと思うのですが…」

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と、巡査と思しき若造が言ってきた。

確かに、警察が警備を始めてからの、客の激減は否めない…

それにこれ以上税金の無駄遣いはさせられない…

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「そうですね…もう結構です。ご苦労様でした。」

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「何か有りましたら、またご連絡下さい…それでは本官はこれで!」

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ビシっ!っと敬礼をすると…軽自動車のパトカーで去って行った…

何もなさそうだし…

多分大丈夫だろ…

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と思ったのはつかの間…その次の日事件は起きた。

店を閉めようと、ようやく修理の済んだ扉の施錠をするために屈んだ時だった…

ガラスの向こう側に何者か立っている…

目に飛び込んできたのは下半身だけだったが、それが誰なのかは、直ぐに気がついた…

手にマサカリを持っている…

多分、叫んだと思う。

慌てて店の奥に駆け出したが、商品が邪魔をして、躓(つまず)いて転んでしまった。それと同時にけたたましい音が店内に響いた。

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『ガゴォンっ!!!』

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ガラスにマサカリを振り下ろしたようだ…店内に響くその音に以前聞いたそれよりも一層恐怖した…

あたふたと、這うように電話の元に行く…

入り口を見ると、青田がこれまで見たこともない形相でマサカリを振り落としている…

電話に辿り着く…

私は携帯電話を持っている…

しかし、焦るとそんな事は忘れ、何処かに吹っ飛ぶ…頭が真っ白とはこういう事なのだろう…

受話器を取り耳に当てると、線が切られているのか、なんの音もしなかった…

最悪だと、急いで奥の住居の方に走った…いや、転んだ時に足をやられていた為、這って行った…

住居側にも電話がある。

受話器を取る…耳に当てる…

当然、繋がっていない…

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shake

「ひゃあぁ…」

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と身体をひねった時、ポケットから携帯電話が落ちた…

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「あっ!」

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自分の間抜けっぷりに腹が立った…

最初からこいつで電話すりゃよかったんだ!と、折りたたみ式の携帯を開くと、110番を押した…

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…………

依然、扉を壊そうとする音が住居であるウチの方まで聞こえている…

店の扉のガラスは防犯ガラス、簡単に割れるものではない、穴が開けられ、そこから手を入れられたら最後…

そこから鍵を開けられてしまうからだ…

だがそれも簡単にはいかない。

鍵は三箇所ある…

全ての位置のガラスを割らなければ開けることは叶わない…

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『はい…110番。事件ですか?事故ですか?』

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ようやく出たか…

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「え?いや今大変なんですよ!強盗です!早く来て!」

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『落ち着いてください。住所をお願いします。』

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冷静なところが何故か癪に障る…こんな時に落ち着いてなどいられるものか!

が、何とか焦りながらも住所を話し、直ぐに向かいますという言葉を聞くことができた…

しかし、安心する事が出来ない…

それは、この衝撃音のせいだ…

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「辞めてくれ!私があんたに、なにをした!?恨まれる覚えはないだろぉ!!」

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その声に反応したのか音が止む…

恐る恐る、店の方を覗くと、ガラス扉の向こう側で青田と何処かで見たことのある顔の男が争っているのが見えた…

あれは誰だったかな?

昔、会ったことがあるような…

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「あ…」

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と、記憶が蘇る。

彼がまだ、中学生くらいの頃だ…

よく、この店に訪れ、ギターのパーツなどの注文に来ていたことがあった…

このリサイクルショップでは、なくしてしまった部品や壊れてしまって使えなくなったパーツを新しく発注するなどの事も請け合っている。

あの頃、目を輝かせて店に来ていた彼は、客の中でもお気に入りの存在だった…

たしか…タバコ屋の角を曲がった所の三ノ宮神社の息子さんだったと思ったが…

噂では、あそこの神主を勤めている親父さんと喧嘩をして出て行ったと聞いていたが…

まぁ、あれからだいぶ経つし、仲直りして帰ってきたのだろう。

二人の声が聞こえる…

あの青年が不思議なことを口にしている…

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「青田!話を!話を聞かせてくれ!どうして、お前にギターの呪いが移ったんだ?!」

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「ぎゃあうう…ぶぶぶぶぶぶ…」

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青田は何を言っているのか分からない既に言葉では無いよものを発していた。

しかし、このタイミングで彼が助けてくれるとは…

警察もそのうち来るだろうし…

と、安堵した。

と同時に、さっき転んだ時に捻った足が痛みだした…

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「あぅ…いてて…」

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その時だ…

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shake

「ぎゃああ!!!」

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すごい声が入り口の方からした。

なんだ?と、その声がした方を見て、固まった…

店内をガラス越しに睨む、悪鬼の顔…

その傍らには、あの青年…青田の足元に頭だけが見える…

やられたのか!?

と、よく目を凝らすと、頭頂部が割れ…茶色い中身が真っ赤な血と共にあぶくをたてながら吹き出している…

そんな…

恐怖で体がすくみ動けない…

青田は以前、初めてこの店に来た時とは、まるで別人だった…

目が充血し、顔中の血管が浮き、もはや人間とは思えない形相だ…

何かに取り憑かれたかのように、奇声を上げ続けている…

え?

口元を見て目を疑った…

犬歯が生えている…

口からはその牙で傷つけたのか、血を吹き出している…

これは、もはや人間ではない…

警察よ、来た時にはこの間のように、肩を撃ち抜き動きを止めて確保ではなく、撃ち殺してください。

彼はもはや人間ではありません…

しかし、私の願いは叶う事は無かった…

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『バリバリバリバリッ』

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と、どんな力を加えたら、あの防犯ガラスが割れるのか…

ガラスを突き破り青田が店内に入って来た…

パニックに陥った私は、普段なら考えられない行動をとった。

目の前にあった、ビデオデッキ…

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『■National NV-1000HD(松下電器産業)』

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を手に持つと、それを力いっぱい、青田に投げつけた…

さらに、

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『■富士通 パーソナルコンピュータFMV-D5255』

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も投げつけ…

他にもプリンターやプレイステーションなどのゲーム機をこれでもか!と投げまくった…

そのうちのどれかが頭にクリーンヒットしたらしく、青田はその場に突っ伏した…

間も無く警察が到着、あの時の刈谷刑事と水澤刑事も一緒だ。

そこに、あの時の気味の惡い、「なんたらなんじゅうろう」とかいう変な刑事も同伴していた…

連行して行くのを眺めている時、また、奴は警察署を脱走しここに来るのではないか…?

と思ったが、流石に二度目は無いだろうと少し痛む足を気にしながら、彼らを見送った…

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