リサイクルショップ〜シリーズ17 死神の浪江〜

中編5
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リサイクルショップ〜シリーズ17 死神の浪江〜

『翔太』はギターを手に取ると、何時ものように張り裂けんばかりにBluesを熱唱している…

BARのカウンターでモルトを飲みながら、その歌声を聴いていると、マスターが、

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「今日は、だいぶ暑い日でしたね…夜だってのに今だに蒸し暑い…」

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と声をかけてきた。

ふふ…と相づちをしてステージを見た…

終わったのか、翔太が降りてきた。

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「先輩…どうしたんですか?仕事ですか…」

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尋ねる言葉を間違えている…

俺の仕事というものを理解していればそんな事は聞かない…

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「あれ?なんか僕…間違ったこと聞きましたかね…」

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電話を貰っているはずだろうが…

と睨みつけると、怯えたような笑顔を見せた…

ノートとペンを出し、サラッと書いて翔太に渡す。

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『探偵の刈谷から連絡は来ていないのか?』

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それを読み…あっ!といった顔をすると

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「貰いました…」

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と答えた。

そして、不思議そうに尋ねる。

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「先輩…何で言葉が話せなくなっちゃったんですか?昔はあんなに喋ったのに…」

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話せば長くなる…

それに、今はそんな事はどうでもいい…

モルトを飲み干し、ジャケットを手に取るとBARを出た。

翔太も後に続く…

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探偵は『リサイクルショップ千石』が目印だと話していた。

コンビニを過ぎ、古ぼけたビルが目に留まる…

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「あそこですね!」

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と、翔太が駆けて行く…

階段を駆け上がり、手前の部屋のドアをノックした。

俺も後に続きドアの前に立つ。

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「誰だ?翔太か?」

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と、内側から声がした。

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「はい…俺です、翔太っす」

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翔太が答えると、ゆっくりドアが開く…

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探偵の『刈谷』

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刑事の『刈谷』に瓜二つだ…

それもそうだ…兄弟なのだからな。

(リサイクルショップ〜シリーズ8〜参照)

部屋に入ると、何故か動物が死んだ時に香る死臭がした…

更に、見ると手足を縛られた三十代半ばの男が怯えたような顔で此方を見ている…

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「誰っすかこいつ…?」

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翔太が尋ねると刈谷は

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「ああ…どうでもいい奴だよ…殺し屋さん?邪魔だってんなら殺しちまっても構いませんぜ!?」

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と答えた…

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馬鹿め…金にならない仕事をすると思うのか…

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兎に角、邪魔であることは明らかだ…

翔太にその事を目で知らせると

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「ああ…はいっ」

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と、その男の縄を解き、

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「邪魔だってよ!帰りな!」

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と事務所から追い出した。

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仕事の内容を聞く…

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『浪江 良太郎』

を殺し、コカインを取り戻す…

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言葉にするのは簡単だ…だが…

浪江…この男…並大抵の男ではない…

闇の世界ではこれほど名前の通った男は居ない…

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『死神の浪江』

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しかし、大分たんまりと金が入る…だから殺ることは最初から決めている…

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「僕は何をすれば…」

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翔太が怯えた笑顔で聞いた。

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「殺し屋さんは殺すのが仕事…お前は盗み取るのが仕事だろうが…」

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と、刈谷が答えると

なるほど…といった表情を浮かべていた。

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事務所を出る間際、探偵の刈谷は何やら紙にサラッと手紙のようなものを書いてテーブルに置いた…

証拠になるような事をされては困る。

それを取ると丸めて、刈谷を睨んだ…

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「安心しなよ…それは俺の女に当てた手紙だから…」

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と、答え…紙を奪い返すと、丁寧に広げまたテーブルに置いた…

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深夜のこの町は街灯が少ないため暗い…

浪江の潜伏しているとされる倉庫に着くと、刈谷が倉庫のそばまで車を寄せようとハンドルを切った…

翔太を睨む。

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「ダメです刈谷さん!あまり近づくと浪江に気づかれます…」

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「ああ、そうか…」

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と、離れた場所に車を止め、車を降りる…

先に先陣をきったのは翔太…

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怖いもの知らずの馬鹿め…

倉庫内には、暗黒界を震え上がらせた浪江がいるのだぞ…仲間が見張っている可能性もある…

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「大丈夫です…誰もいません。」

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小声で話すと倉庫の扉から中に入っていく…

続いて、刈谷、俺の順番で入っていく…

声が聞こえる…

奥からだ…

息を潜め、近づくと、浪江が居た…

何処かに電話をかけている…

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「はははは…じゃあ俺との取引に応じるって事で話は付いたわけだな…」

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闇取引の電話か…

そばにはコカインが入っていると思しき鞄が置いてある…

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「あれですね…」

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翔太が鞄に指を差し、小声で刈谷に尋ねると、コクリと刈谷が頷いた。

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「先生…お願いします。」

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と、刈谷が俺を見ると頭を下げる…

ナイフなどの接近戦は危険がある…

しかし、確実性はそれに勝るものはない…

足を踏み込むと、翔太が俺を止めた…

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「え?先輩…ナイフで殺すんですか?やめときましょうよ…こっちが殺られちまいますよ…?」

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と驚きを隠せない様子で言ったが、俺の顔を見て、青ざめたように手を離した…

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…………………

接近するにしたがって、緊張が走る。

ゲラゲラと電話の相手と話す浪江は油断をしている…

このチャンスを逃せば後がないだろう…

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走った…

浪江が俺の存在に気付く…

ナイフは首の動脈に一直線に刺さった…

なのに…奴は倒れない…

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「てめえ…何者んだ…この野郎…」

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と俺の首に手を掛ける…

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「ぐあ…」

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声が出る…久々に出した声は、かすれた酷い声だった…

死にゆく者とは思えない力で首を絞める…

大男の手は俺の首をすっぽりと掴んで離さない…

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「先輩!!!」

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翔太が駆け寄る…

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来るな…まだこいつは死んじゃいない!

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だが声が出せない!

翔太に気づいたのか、俺を掴んでいた手が緩む…

チャンスっ!とばかりにナイフを心臓に突き刺した…

倒れない!?

何故だ!

化け物め!

身長をゆうに2メートル半を越える大男は、翔太に向かって走る…

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翔太が危ない!

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と、後ろから背中にナイフを突き立てた…

ジロ…と首を後ろに回すと俺を睨む…目がこの世のものでは無い色をしている…死神と言われる所以を知った…

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次の瞬間…

奴の拳が飛んできた…

そこから記憶が無い…

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目が覚める…

身体中に痛みが走る…

恐る恐る顔面に手を添えると、先ほどまで膨らんでいた頬がブヨブヨとしている…

骨が砕けたか…

辺りを見渡すと、二人の死骸が転がっていた…

翔太と刈谷だ…

奴は?

奴はどこに行った!?

ぐるりと見渡したが姿が見当たらない…

信じられない男だ…

あれほどの深手を負って、この場から立ち去ったのか?

人間ではない…

あれは、既に人間とは言えない…本物の死神だ…

俺は恐怖のあまり、失禁をしていた…

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