短編1
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不明

滝本さんのおじいさんには、宝物があった。

「人の骨。頭蓋の欠片だと本人は言っていました」

祖父によれば、骨は第二次世界大戦で赴いた戦地において、命を落とした同輩のものだったという。

「死体を全部持って帰るなんてできなかったからな。身体の一部だけ身に付けて帰国した。

ところが奴の家族もすべて空襲で亡くなっててな。戦没者供養塔に収めても良かったんだが、なんだか他の骨と一緒にするのも忍びなくて、それからずっと持っているんだよ」

夏休みに訪れるたび祖父はこっそりと滝本さんにだけ見せてはこれは2人の秘密だからなと念を押した。

「僕も人骨を見るなんて初めてでドキドキしながら頷いたのを覚えています」

やがて祖父は90過ぎの大往生で天寿を全うした。

「ところが、祖母に聞いたら祖父は徴兵されていないと言うんです」

体が弱くサナトリウムに何年も入っていた祖父は、病院のベッドで終戦の報せを聞いたはずだという。

親戚の何名かに確かめたが、祖母の話に間違いはなかった。

「あの骨って一体誰のものだったんでしょうかね」

骨の行方は祖父しか知らない。

「だから今も実家の何処かに骨は眠っているはずですが…」

真実を知るのが妙に怖くて探す気にはなれないそうである。

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こういう不思議で怖い話、好きです。