リサイクルショップシリーズ28〜高校生探偵『萩原 淳平』〜

長編32
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リサイクルショップシリーズ28〜高校生探偵『萩原 淳平』〜

俺はこの町の○○北高校に通う

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『萩原 淳平』

2年生だ…

俺には好きな人がいる。

この町にある、リサイクルショップの店員で『美緒さん』という人だ…

ある日、俺は決意した…

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『告白しよう!!』

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そう心に決め、学校帰りに決行することにした。

商店街を抜けると、そのリサイクルショップがある…

足取りは…重い…

いざ告白となると…緊張で足が前に進まない…

いつもなら仲間と何のこともなく、その店に行けるのに、その日ばかりはそうはいかなかった…

ふと見ると花屋がある、そこに冬だというのに黄色い薔薇が売られていた…

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(なんて美緒さんにピッタリな花なんだ…)

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それに引き寄せられるように花屋に入る…

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「あら…いらっしゃい…珍しいわね、高校生がお花屋さんに来るなんて…」

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花屋のBBAが目を丸くして出て来た…

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「こっこ…この黄色い薔薇…ください!」

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そう言うとハイハイ…と小走りでやって来る…

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「黄色いお花って…彼女にでも買っていくの?」

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か!の!じょ!?

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「ちちちっ!違わいっ!」

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完全に焦っている…すると…花屋のBBAは

ははは…と笑いながら

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「わかりやすい子だねぇ…で?何本?」

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と聞いてきた。

え?

あっ…そうか…どうしよう。

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「い…一本幾らですか」

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「80円だよ」

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何!?そんなに高いのか!

と財布を取り出し中身を見ると…

250円しか入っていない…

買えても三本が限界…

昼に弁当では物足りず、近くのラーメン屋で大盛りのチャーシュー麺を食べた自分を呪い殺してやりたくなった…

いやでも…

その日…

学校の日本史の授業で毛利元就の『三本の矢』の話を聞いていた。

一本の矢では、腕の力で簡単に折れてしまうが…三本あれば、簡単には折ることは出来ない…そんな話を。

いける!

三本あれば…いけるかもしれない!

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「三本ください!」

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その言葉に、BBAは…聞き取れなかったのか…

は?

という顔をする…

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「三本くださいってば!」

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「三本でいいの…?告白に持って行くんでしょ?それならもっと沢山あった方が相手も喜ぶんじゃ…」

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ゴタゴタ言うんじゃない!詮索されるのが一番嫌いだ!

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「三本っ!!!」

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「ハイハイ…分かりました。」

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そう言って、薔薇を三本手に取り、作業台の上に持って行き、透明の包装紙で三本の薔薇をくるみ、レジを打った…

その花を受け取り、250円をレジに置くと「釣りはいらない!」

と、花屋を飛び出した。

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「えっ?ちょっと!」

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その声は聞こえないふりをして、リサイクルショップへ…

心躍る中リサイクルショップの近くまで来ると…

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…居た。

美緒さんが塵取りと箒で店の前を掃除している…

今日も美しい…

そう思いながら、走るのをやめ、ゆっくり近づく。

美緒さんのファッションは

上は白の胸元があいたセーター

下はホットパンツに…薄黒いストッキングを履いている。

その長く細い脚が何とも色っぽい…

それに胸元に『千石』と書かれたピンク色のエプロンを着けている。

あの店の店主もお揃いのピンク色のエプロンを着けているが…

なんでお揃?と首を傾げたくなる。

近くに行くと、美緒さんが俺に気づき

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「ああ…いつもの…ふふっ!いらっしゃい…」

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と言い、笑いかけてくれた。

俺はというと…緊張で何も言えない。

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「今日は他のお友達は一緒じゃないの?一人?」

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とさらに、続けた…

俺もようやく口を開く…

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「あ…はい…しとりです…」

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『しとり』ってなんだ…糞っ!

言葉を噛むほどの緊張。

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「あ…あのですね…」

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と、言おうとした時に美緒さんが、俺の手に持っているものに気づく。

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「そのお花…どうしたの?」

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しまった…背中に隠すのを忘れていた…

大失態だ…

でも、咄嗟に前に差し出していた。

何やってるんだ?俺は…

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「え?私にくれるの?えへへ…ありがと…」

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顔が熱い…多分俺…真っ赤になってると思う。

その時、美緒さんがこんなことを言った。

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「えっと…これなんで三本なの?」

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本当のことなど言えるはずもなく、(金が無い)

頭をフル回転させた結果…

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「毛利元就の三本の薔薇の話、知ってますか?一本の薔薇では、腕の力で簡単に折れてしまうが…

三本揃えば、簡単には折ることは出来ない…ってやつ…」

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と、全く告白とは関係のない話が口から零れ落ちる

アホ…

俺ってなんてアホなんだ…

すると、美緒さんは

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「それって…『三本の矢』じゃないの?」

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と、冷めた顔で聞き返してきた。。。

それを聞いて俺は…

急に恥ずかしくなり、駅の方角へ駆け出していた…

畜生…畜生っ!!!!

告白どころか、会話もまともに出来なかったじゃないか!

馬鹿、アホ、死んじまえ!

所詮、美緒さんは俺にとって天よりも高い高嶺に咲く黄色い薔薇なんだ…

俺なんかに届くはずがないんだ…

駅に着くと、クラスメイトの

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『遠藤 春子』

が、泣きながらベンチに座っていた…慰めてやりたいのは山々…

だが、俺も泣きたかった…

こんな最低な気分は生まれて初めてだったからだ…

何も言葉をかけることなく、横をすり抜け電車に乗り込んだ…

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それから暫くリサイクルショップへは行けない日が続いた…空手部の斎藤が…

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「俺、美緒さんを暴漢野郎から助けたんだぜ!」

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などと自慢げに話していたが、とても張り合う気になれない…

そんな時、遠藤 春子が声をかけてきた。

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「萩原君…今日、一緒に帰らない?方向一緒だよね…?」

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なぬ?

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今でこそ、男子生徒達は皆…美緒さん美緒さんと騒ぎ立ててはいるが、遠藤といえば、クラス…いや学校でも一番か二番かと言ってもいいほどの美人…いや可愛い娘…ただ、大人しくてあまり目立たないのが難点…

そんな娘が、なぜ俺なんてブサイクと一緒に帰りたがるのか…

意味も分からず、呆然としていると…

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「萩原君?」

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と顔を傾げ見上げるようにして俺を見る…げっ…可愛い。

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ああ…いやダメだ!

俺には心に決めた人がいる!

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その時、教室で『美緒さん』のことで騒いでいた男子生徒が騒ぎのはずみで俺の背中にぶつかってくる…

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「痛えなぁ…」

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「わりぃわりぃ…」

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と謝ったのはいいが、あまり反省の色が見られないのか、また少し離れたところで騒いでいた

すると、遠藤がその男子生徒達を見ながらポツリと言った

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「みんな馬鹿だよね…美緒さんって人…あそこの店主と結婚してるのに…」

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……………?

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一瞬、遠藤の言葉が理解できず

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「はっ?おま…今なんて?」

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と聞く。

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「だから、リサイクルショップの叔父さんと美緒さんは結婚してるの!」

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はぁ⁇

ちょっ…え?

ま…マジか…嘘だろ?

だって、あの二人何歳差だよ?

ふざけんなって位、年の差婚だろ…?

三十歳くらい離れてやしないか?

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「おい!!なんでお前がそんな事知ってんだよっ??」

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あまりに信じられなくて、肩に掴みかかって聞くと

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「うわぁ!痛いよ…離してっ!」

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と、振り払い

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「親戚なんだから知らないわけないじゃんか…あそこの店長は私の叔父さんだよ…」

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と、肩を抑えながら呟いた…

そして少し睨みつけるように俺を見ると、怒ったように語尾を強くしてもう一度聞いた。

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「それより、一緒に帰るか帰らないか…どっちなのっ!?」

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「お、おう…一緒に帰るよ…」

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その迫力に押されるように返事をすると、素っ気なく

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「じゃ…帰りに校門でね…」

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と、教室を出て行った。

肩に触れた時に首元に貼られた絆創膏が少し気になった…どうしたのかな?

下校時間…

校門の側に行くと遠藤が壁に背中をつけ待っていた…

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「ゴメン遅くなって…待った?」

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と聞いたが、プイとなんの返事もなく歩き出した。

しかし、なんで俺となんだ…?

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「待ってよ…なんで俺と帰るの?」

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俺は何か…少し期待をしていた…

こんな可愛い女の子に帰り一緒に帰らないか…なんて、言われたのなんか生まれて初めての経験だったからだ。

意を決して聞いてみると、くるっと振り返り、

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「話があるの…」

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と、またスタスタと先に行ってしまう…

話?やっぱり…

と後をついて行くと突然立ち止まり

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「あそこの喫茶店入ろう。」

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と、近くの喫茶店『ミルージュ』に入って行った。

慌てて後について行く。

適当な席に座り、遠藤は店員に紅茶を注文した。

その後ソワソワと落ち着きのない俺に「萩原君は?」と尋ねる…

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「あっ…俺…金無いから…水で…」

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と答えると

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「じゃあそれで…」

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と、笑顔の素敵な店員に言った。

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「話ってなんだよ?」

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その問いに何故か黙りこくって、下を向く…

そして、一つ大きく息を吐き出し、決心したような顔で俺の目を見ると、少し早口で話だした。

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「萩原君、武藤先輩のこと知ってるでしょ?」

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『武藤 亮介先輩』…

去年まで、サッカー部の主将を務めていた男だ…

引退後は、女遊びが酷い…とよく噂になっている…

俺はあまり彼のことが好きではなかった…

サッカー部も一年の頃辞めているし、それほど彼に世話になったわけでは無いので、よくは知らないが…

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「武藤先輩がどうかしたの?」

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おしぼりを手に取り指の間を拭きながら聞くと…

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「あの人、私達が一年の頃はどんな人だった?」

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こんなところに呼んで、話ってあんなゲス野郎の事かよ…でも取り敢えず答える…

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「あの人の噂はあまり良い噂聞かないぜ…引退後は。」

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目を見られると緊張してしまって何も言えなくなってしまうので、下を向いて答えると…

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「そうじゃなくてっ!あの人がサッカー部の主将だった頃の話をしてるのっ!どんなだった?」

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こんな娘だったっけ?

結構、気が強い感じが恐い…でもなんか俺…嫌いじゃないな…この感じ…

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「え…そんなこと言われてもなぁ…俺、結構早い段階で部活辞めちゃったし…分からないよ…他のサッカー部の奴に聞けよ…」

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「もう…使えないのぉっ…サッカー部ってなんかチャラくて私…苦手なんだよね…

その点、萩原君はそんなことないでしょう?

だから話を聞こうと思って誘ったのに…

あのねっ、知っ…」

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話の途中、喫茶店の店員によって紅茶が運ばれる

「お待たせしました〜ミルクティーですね…」

とテーブルの上にお皿、ティーカップ、ミルク、砂糖の順番で置かれていく…

最後に俺の水が置かれた…

「ご注文の物、全てお揃いでしょうか?」

その言葉に遠藤がコクリと頷くと

「ごゆっくり…」

と立ち去って行く…

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「でもさ…武藤先輩もチャラいだろ…」

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俺が店員が去ったと同時に遠藤に聞くと、さっきまでの顔が嘘のようにガラリと変わり

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「あの人は他と違うのっ!!!」

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とキレた…

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「どう違うの?」

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「あの人は本当は…あんなんじゃないもん…優しい人だもん…う…うえぇ…」

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今度は泣き出した。

感情コントロールが効かなくなっている…

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「落ち着いて…話、聞くからさ…」

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「うん…

ねえ…知ってる?先輩…退学になったの…」

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「いや、初耳…」

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「警察に補導されたんだって…恐喝の容疑で…」

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どう反応していいやら…

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「お…おう…そうなんだ…」

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「私ね…あの人がそんな事をしたんじゃないと思ってるの…きっと先輩の身体に何か取り憑いてるんだよ…でなきゃ、先輩…可哀想…」

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いや、奴ならやりかねない…

その言葉を飲み込み

ウン…とだけ返事をした。

その時、遠藤は首に巻いていたマフラーを取った。

さっき見た時、絆創膏を貼ってあった場所を俺に見せる…

絆創膏は剥がされていて、そこに治りかけの二つ小さな穴が空いていた…

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「何それ?」

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「先輩に噛みつかれた…血も吸われた…」

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は?何だって?

意味がわからない…

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「なんで噛み付くの?そう言うプレイ?うははっ!」

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「真面目に聞いて!!」

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この話…聞かなきゃよかった…

これが素直な感想だ。

武藤先輩は一体何をしたんだ?

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「その傷がある奴って他に居るの?」

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「美由紀が今日、首に包帯巻いてたでしょ?…多分あの子も…」

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少し思い出すように、その美由紀ちゃんという娘のその日の格好を頭に浮かべ…確かに巻いていたことを思い出した。

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「うん…そういや巻いてたな…

ん?…お前ら…その…まさか、武藤先輩と…その…えっと…や…やったの?あの…あ…あれっ…その…せ…せっく…いや…その…エッチ…」

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その問いには一切答えてくれなかった…でも、やったんだろうな…

下を向いたまま黙り込んでしまう。

畜生…あの野郎…こんな可愛い娘と…しかも、『美由紀ちゃん』とまで…

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『堀内 美由紀』

この娘はまさに俺の前までの憧れの女の子…

可愛いというよりか、美人…高校生とは思えないスタイル抜群の綺麗な娘だ…

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「なんか…その…よく分からないけどさ…武藤先輩は吸血鬼みたいになっちゃったって、そう言いたいの?」

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「うん、吸血鬼に取り憑かれてるって…」

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「吸血鬼って取り憑くの?なんつうか…イメージ的に、漫画の『彼岸島』みたいに感染するってのが俺のイメージだけど…」

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「怖いこと言わないでよ…私まで吸血鬼って事になっちゃう…」

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「いや、あの漫画では血液感染だから…」

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「漫画とは違うんだよ!?

分からないじゃん!」

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「う…うん…で…でも、血が吸いたいみたいなのはないんでしょ?」

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「当たり前じゃない…そんな事…」

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俺にはどうしてやる事も出来ない…

正直、帰りたい…

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「す…好きなの?武藤先輩の事…」

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それを聞くと、コクン…と首を縦に落とした。

あんな男のどこらへんが好きになるのか理解できない…

どスケベで、女とどうやってやるかしか頭に無いボンクラ…

でも、一年の時…

少しだけ、彼に指導を受けたが、あんな人では無かった気もする…

サッカーに情熱を燃やし、ビシバシ後輩をしごく…

あの頃は鬼か悪魔のような人だと思ったが…今考えると、それはサッカー部を強くするためであって、主将として当然のことをしてただけだ…

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「一つだけ、武藤先輩の過去を話すなら…」

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それを口にすると、さっきまで不安そうにしていた顔が変わる。

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「サッカーに情熱を燃やす、おっかない先輩だったって事と…

あんまり、女の子に興味を示さない人だったって事…だって当時から相当モテたのに、見向きもしてない感じだったんだぜ?」

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それを話すと、何やら嬉しそうに微笑んだ…

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「それだけ?」

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「うん…俺、さっきも言ったけど、サッカー部直ぐ辞めちゃったから…ごめん…」

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「ねえ…少し協力してくれない?」

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「え?」

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めんどくさい…

まさか、先輩を元の昔の先輩に戻したいとか言い出すんじゃないだろうな…

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「あの人を救ってやりたいの…」

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ぎゃああ!!

…やっぱり?

なんで俺がそんなこと…

嫌そうな顔をしたのがばれたのか、怖い顔で睨む…

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「俺に何のメリットもないんだけど…」

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そう答えると、可愛く口を尖らせ…

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「酷〜い…人間としてあんたどうかしてるよ…人助けをするのは、人として当然の事でしょう?」

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と、睨んだ…

俺…マゾかも…その顔がメッチャ可愛く見える…咄嗟に

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「分かりました…」

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と答えていた。

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その翌日の土曜日から…何故か俺は武藤先輩の尾行をすることとなった…

彼のウチは金持ちで、どうやら補導を受けたものの、少年院に入ることはなかったようだ…流石は武藤財閥…

昼少し過ぎ…彼の家の近くで身を隠して覗いていると、借家から出てくる…

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(うわぁ…)

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女と出てきた…

しかも、めっちゃ可愛い人と…恐らく他の高校の女子高生…普段着だったが、何と無く若い子だということは分かった…

しかし、17歳だが18歳のガキに借家を貸し与えるってどんな親だよと見ていると

玄関の前で女性と別れ、そのまま停めてある自転車にまたがり、何処かに出かけて行くようだった…

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ヤバイ…

慌てて、俺も自転車に乗りあとを追った…

……バイトにでも行くのか?

って…金持ちがバイトなんぞするわけ無ぇか…

スーパーに自転車を停め、中に入って行く…

俺も後に続く…

買い物をするようだ。

食材を手に取りカゴに入れている…

ジャガイモ、人参、玉ねぎ…

カレーか?

シラタキ…豚肉…

肉じゃが?

あの人が作るのか?

すると、そこに一人の女がやって来る…さっきとは別の女…

大人の女性といった、色っぽい人

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「ごめ〜ん…待ったぁ?…あれ?もう、食材選んでくれてたんだぁ…ありがと…」

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そう言って女は武藤の頬にキスをする…

すると、武藤はその女性の肩を抱き寄せ口と口を合わせた…

暫くそうしている…

まさか…人目をはばからず、ディープなやつを…

欧米かっ!

羨ましい…

あんな事を春子と…

馬鹿な…ふふっ

そのまま、肩を抱いたままレジに向かう…

俺もスーパーの人に怪しまれないように(万引き犯と思われたら最悪)、適当にその辺にあるものを手に取りレジへ…

後に続いて外に出ると

買い物袋を自転車のカゴに入れ、二人寄り添い歩いて帰るのが見えた…

俺もそれについて行く…

怪しまれないよう、自転車は、その場に置いていくことにした。

自転車を押して歩く二人の後ろを同じように自転車を押していたら、怪しまれて、つけられている事がバレる恐れがあるからだ…

俺って結構、こういう仕事に向いてるのかもしれない…探偵になろうかな…そんな事を考えながらついて行く。

借家に着くと、そのまま中に入って行った。

俺は影に隠れ、動きがないか見張る…

窓に二人の姿が少しだけ見える…

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っ!!!!

女性が早速服を脱ぎ裸になった!

見ちゃいられない…

でも…見たいなぁ…俺も男…興味が…

いかんいかん…見てはならないものを…とその日は帰ることに…

…いや!ダメだ!

何が行われるのか見るのも仕事だ。

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「少しだけだしね…」

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暫く様子を伺っていると、ズボンだけ脱いだ武藤の上に女が跨り揺れていた…

ヤバイ…勃ってきちまった…

揺れるバスト…喘ぐように顔が歪み、武藤の胸に倒れこむ…

その後…

ん?

なんかおかしいぞ?

女が手をバタつかせている…

まさか…噛みつきやがったのか?

バッグから双眼鏡を取り出す…

春子に持たされたものだ。

覗きをしている変態みたいで本当はやりたくなかったが…

よく見るためだ…仕方が無い。

と、レンズを覗き込む。

「えへ…」

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オッパイ…デカイなあの人…

メッチャ綺麗な乳首…

って…違うっ!

重要なのは何が行われているかだ。

武藤の頭が女の首元に…

…やべえ。

…マジかよ。。。

本当に噛みつきやがった…

俺は、急に怖ろしくなり、駆け出していた。

遠藤 春子の待つ、ファミレスへ。

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「はぁ…はぁ…行ってきたよ…」

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「どうだった?」

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「兎に角、ヤベェよあの人…マジで噛み付いて…」

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「そうじゃないよ、あの人があんなんになっちゃった手掛かりとか掴めなかったの?」

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経った一日、いや半日張り込んだだけで分かれば苦労もしない…

それに、何故俺一人であんなことをしなくてはならないのか…

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「んな事言っても…何もなかったし…それよりか、春子ちゃんも手伝ってくれよ…」

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「ダメだよ…私は顔が割れてるんだから…ついこの間会ったばっかだもん。いくらあの人が私の顔をしっかり覚えていないからって、流石に気づかれちゃう…」

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(お…『春子ちゃん』って言ったのに気づいていない…

「キショいっ!」とか言われるかと思ったのに…

これからはこう呼ぼうっと…)

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「でもさ、もし俺がつけてること知ったらあの人…何するか分かったもんじゃないよね…流石に怖ぇよ…」

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「情けないこと言わないでよ!…その…約束はちゃんと守るから、しっかりお願い…」

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実は、俺達の間に、ある約束をした。

今回、先輩を救うことが出来たあかつきには、俺と春子ちゃんでデートをする…

春子ちゃんが武藤先輩の事が好きなのは十分、分かってはいるが…何のメリットも無いまま、こんな仕事を引き受けるわけがない。

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「ところで、その手に持ってる袋は何?」

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「ん?ああ…これは先輩がスーパーに行ったもんだから、後を追って行ったんだけど…何も買わずに店ウロウロしてたら怪しいでしょ?だから取り敢えず買ってきた…」

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「ちょっと見せて……

何これ…?『かんぴょう』って…もっと気の利いたもの買ってこれなかったの?」

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「仕方ないだろ…

先輩、帰りそうだったし慌てて、手に取ったのがそれしかなかったんだから…」

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でも確かに、何も『かんぴょう』じゃなくてよかったかな…

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「明日、また朝からお願いね…」

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そう言い残し、あーだこーだ文句を付けつつ『かんぴょう』を手に春子は立ち上がりレジに向かっていく…

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「え?ちょっと…それ持ってっちゃうの?」

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と聞くと、振り返り何も言わずに、はにかんで、小さく手を振り店を出て行った…

なんだろ…あの娘の時折見せるあのツンデレは…めちゃくそ可愛い…

しかし、とんだ仕事を引き受けちまったものだ…

探偵気分は結構楽しいが、リスクがあまりにもデカイ…

俺はこの気持ちを紛らわすため、久しぶりにリサイクルショップへ足を運んだ。

美緒さんが、まんべんの笑みで迎えてくれたが…そういえば、この人は人妻。

何と無く、微妙な笑みしか返せなかった…

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「元気ないじゃん?どうしたの?」

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「え?そんなことないっすよ…ただ今、探偵みたいな事してて…疲れてます…」

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そう言うと、美緒さんは嬉しそうに

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「ええ!?そうなの!?…分かった…ちょっと待っててね…」

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と、二階へ駆け上がって行った。

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おっ…ストッキングが透けてパンツが…水玉か…可愛ええな…

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そんな事を思いつつ、チラッと店長の顔を見た。

もんっっっの凄く、不機嫌な顔で俺の顔を睨みつけている…

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「水玉…じゃなくて、見てないですよ…パンツなんて…」

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「見てんじゃねえか…」

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「すんません…」

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美緒さんが俺に手渡したのは、この町の地図と犯罪者のリスト…それから何枚かの名刺…

名刺には、『情報屋』と書き添えられていた。

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「な…何でこんなものがここに?」

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「実はね…ちょっと前までこの上の階に探偵さんの事務所があったの…その荷物の中にそれがあったんだよ…もし使えるのであれば、持って行ってくれて構わないから。」

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マジかよ…スゲえ…

本物の探偵になった気分だ。

それを受け取り、なんだかやる気が出てきた気がした。

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翌日…

朝も早よから、借家前の見張り…

眠い…

早く動き出さないかな…

その気持ちが通じたのか、武藤が出てくる。

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今日は一人だ。

昨日の女性は帰ったのか?

玄関前で靴に踵を入れて…トントン…と自転車の元へ行く…

手には大きなボストンバッグ…

あんなモノ持って何処に行く気だ?

あの荷物を持って自転車に乗るのか?と思ったが、どうやら家の鍵を自転車脇の植木鉢の下に入れたようだった…その後歩いて道路に出て行くのを追って俺も後に続いた…

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どこに向かうのか…?

駅方面に向かう…

あまり人けのない所には行きたくなかったので助かった…と安堵した。

駅が見えてくる…

荷物が重いのか何度も手を持ち替えている。。

俺はそのまま自転車に乗ったまま後をつける…

追い越したり、途中の自販機でジュースを買ったりしながら、怪しまれない行動を心がけた。

駅に入っていく…

慌てて俺も駅へ

ちょうど来た電車に乗り込むのを見て俺も定期券を駅員に見せ、同じ列車に乗り込んだ。

暫く、列車に揺られ武藤が降りたのは、港近くの駅…

彼が降りて、少し時間を置いて俺も降りる…

見失わないよう距離を縮める…

駅の外に出ると、どうやら埠頭に向かうようだ。

後を追う。。。

鞄からニット帽を取り出し被る…

少し暖かくなってきたので上着を脱ぎ、黒っぽいファッションから白系のファッションにチェンジした。

ずっと同じ格好では、怪しまれる…

埠頭に着くと、周りを警戒するような動きが多くなった。

そのため、尾行にも細心の注意が必要となる…

しかし、白系の格好になったのは正解だった…

埠頭で行き違う人達は皆、白系の格好をしている、それが功をそうしたのか、全く怪しまれる事無く尾行する事が出来た…

だが、警戒は目的地と思われる場所が近づくにつれ強くなる。

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「クソ…キョロキョロしやがって…」

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しかし、こんなところに何があるのか?

埠頭に入って暫く歩いた所にある大きな倉庫…

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『MUTO.cop 第三倉庫』

と描かれている…

親の会社の倉庫か…?

流石は武藤財閥…こんな大きな倉庫を所有してるとはね…

その扉の前に来ると、周りをもう一度警戒をするように見渡して、ゆっくり扉を開け中に消えていった…

朝っぱらから、こんな所で何があるのかな?

双眼鏡をバッグに入れて俺も倉庫に向かう…

表から入るなんて荒業が出来るわけがない…と言いたいところだが…

俺はあえて表から堂々と中に侵入した。

ドラム缶やパレットが積まれたごく普通の倉庫…

人の気配があまり感じられない…

その時…奥の方から音がした。

ビクっとして身を隠す場所を探す。

いや、そんな事では『探偵、萩原 淳平』の名が泣く…

奥の音のした場所に足音を消すように進んだ…

パレットの影から武藤の姿を発見…

その先を見つからないよう覗く…

手足を縛られ、目隠しまでされた十数人の女性が一箇所に固められて座らされていた…

中には裸の者もおり、ガタガタと震えている…

既に生き絶えているのではないかと思うほどグッタリと身動き一つしていない者まで居た…

武藤がボストンバッグを開く、中から昨日スーパーで見たあの女性が出てくる…

何か言っている。

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「ナミエさんのオヤツ持ってきたよ…」

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ナミエ?

もう少し前に出て覗くと、

向こうを向いたソファに腰を下ろした者が居る…その言葉を聞くと立ち上がりこちらを向いた…

背筋が凍った…

顔面に生々しい、なぜ血が流れないのかと思うような切り傷が幾つもあり、ゆうに2mはあるのではないかという大男だった…

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「味は?…見たのか?」

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腹に響くドス太い声…それに全く恐れることなく武藤が答える

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「うん…イケるよ…でも、もっと美味い女が居たんだよ…リサイクルショップの店員でさ『美緒ちゃん』って娘が居るんだけど…最高だった…邪魔が入って持って来れなかったけど…あともう一人…なんてったっけな…春子とかなんとか…

俺が噛み付いたら驚いてたけど、身体預けて来て可愛かったよ…でもその時はお腹一杯だったから帰した…

あっ…そういや、その後、また会ったな…その時は生理中でダメだったけど…」

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「てめえ…独り占めしようとそんな事、言ってんだろ?」

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「違うよう…それにあんまり贅沢言えないだろう?あんた…

僕のパパに助けられなかったら、今頃…海の底に沈められてるところだよ美羽建設の大将に…」

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美緒さんにまで手をつけてるのか?このクソ野郎!許せねぇ!殺してやる…

出来ないけど…

そんなことを考えながら睨んでいると、ナミエという男が連れてきた女性に近づく…

女性は

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「い…いやぁ…辞めてぇ…」

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と化け物を見るような顔で怯え、首を横に振り続けている…

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「食べやしないよ…」

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武藤が彼女の頭を撫でながらニヤニヤと笑う…

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「げへへ…美味かったら喰べる…」

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ナミエが遠くからでも分かるほど目を見開き、女性を睨んで微笑んでいた…

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「いやぁ!!」

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首にナミエが顔をうずめる…

生々しい音がこだました…

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『バキャ…』

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鎖骨が割れる音…

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「もが…うみゃい…こいつは骨までしゃぶりつくせそうだ…」

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その言葉に俺は見ていられず…目を背けた…

音が倉庫内に響く…

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『バキャリ…グッチャ…グッチャ…モガァ…グッチャリ…バキャバキャ…』

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「うぎゃぁああああ!!おぎゃああ!!やべでぇええ!あぎゃああ!!」

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「きゃあああああ!」

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「いやぁああ!もう…いやぁああ!」

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喰べられる女の声…

その声に反応する他の女の声も倉庫内に響いていた…

その時だ…突然音が止む…

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「おい…亮介…お前…ネズミを一匹連れてきてないか?」

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ナミエが喰べるのを一旦中断して、武藤に問いかけている…

ネズミ?

その言葉に覚えがある…

前にドラマで同じようなシーンが…

まさか…

耳を傾けていると…

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「あそこのパレットの後ろに若いネズミが俺たちを観察してるぜ…」

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その言葉で確信した。

バレた!

逃げなきゃ!

しかし足が動かない…

力が入らない…

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「はは…そんな事あるわけないから…ナミエさんは食事に集中したら?

俺がそんなヘマするかよ…ったく…」

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助かった…

しかしこの場にいたらいつか見つかる…

なんとか、足を動かし出口に向かう…

こんな恐怖は初めてだった…

人が人を喰らう…そんな光景を目の当たりにする…

ほぼ人間とは思えない男…

身体の毛が逆立つほど嫌なモノを見てしまった…

出口にようやく辿り着き、外に出て…ホッとしたのも束の間、

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「そこで何してる!!?」

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急に言われたその言葉に驚き俺は情けなく腰を落とした…

足音がどんどん近づく…

目の前に現れた男の顔を見上げた…

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………………

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胸のポケットに『榊(さかき)不動産』というネームの入った中年が俺の顔を覗き込んでいる…

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「ダメじゃないか…こんな所に子供が入ってきちゃ…ここは武藤財閥の倉庫…勝手に入ったら何を言われる事か…」

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ああ…武藤じゃなかった…

俺はそれが分かると、ホッと気が緩み気を失った…

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目を覚ますと、何処か来たこともない事務所…

キョロキョロとしていると、さっきのおじさんが扉を開けて入ってきた…

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「おっ…気がついたか…困ったやつだな…急に気絶しやがって…

そんなに俺の顔が怖かったか?」

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いやむしろ、優しげで和みすら感じる顔つき。。

首を横に振り、体を起こした…

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「こ…ここは?」

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「榊不動産の事務所だよ…自己紹介ってのも照れ臭いが俺は『榊 総一郎』ってんだ…ここの社長ってわけだが…小さい会社だ、社員は俺ともう一人しか居ない…」

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そう言って、急須にお湯を入れ、二つの茶碗にお茶を注いだ…

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『榊 総一郎』

その名前に聞き覚えというか…見覚えがあった…

慌てて自分のバッグを探す。

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「お前のカバンならそこだぜ?」

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彼が指差す場所に駆け寄ろうと立ち上がる…が、足に力が入らない…

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「おいおい…大丈夫かよ…」

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体を支えられ座らされた…

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「ほれ…カバンが欲しいんだろ?」

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とバッグをとってくれた…

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「ども…」

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と頭を下げ、チャックを開ける…

名刺名刺…

これだ…

数人の情報屋の名刺…

その中に…

あった…

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『榊 総一郎』

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「あの…これって貴方の名刺じゃ…」

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そう言って彼に名刺を差し出す。

「は?」と言いながら名刺を受け取り見る。

顔つきがガラリと変わった…

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「これ…この文字…『刈谷』の字だな…つまり、お前…奴の後継者か?」

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は?

後継者?

刈谷って誰?

もしかしてリサイクルショップの上で探偵事務所を開いていた探偵?

ここはどうしたものか…?

情報は欲しい…

下手なことは言えないだろう。

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「そうっす…刈谷は俺の上司です。」

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そう言うと、顔が柔らかくなり…

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「あいつには、以前から世話んなってんのよ…その後継者ってんなら、俺の知ってる限り情報提供するぜ…

でも、後継者がこんな若いガキとは思わなかったな…

で?何が知りたい?」

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うわぁ…上手くいっちゃった…

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「そ…そうですね、まず俺の知りたいのは…『ナミエ』っつう男の事…」

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その瞬間、顔色が変わる…

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「やめときな…お前…上司の仇でも撃とうってんだろ?

浪江にだけは近づくな…

命がいくつあっても足りねえ…」

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目をそらし、そう言った後、自分で入れたお茶を一気に飲み干した。

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「わ…分かりました。じゃあ武藤財閥の情報を教えてください…」

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「何だって?お前…そこまで掴んでるのか?

じゃあ、見たんだろ?

あそこの倅が何してるかとか…」

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「はい…ナミエって男に女の身体を食べさせて居ました…」

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「あの倉庫の中まで入ったのか…?よくバレずに侵入出来たな…

中々やるじゃねえか…

流石は刈谷の後継者だ…

その通り、奴等は既に人間なんかじゃねえ…バケモンだ。

その奴らの狙い…それは何だか分かるか?」

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「それが一番知りたいです。」

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「うん…調べておいて良かった…

あのな…耳かせ…

あの倅…自分の親父から会社もろとも財閥を奪おうとしてやがる…浪江を使ってな…」

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寒気が足の先から頭のてっぺんまで走った…

あの化け物二人で、武藤財閥のトップになる…

そんな事が現実のものとなったら世界が変わる可能性もある…

武藤財閥と言ったら世界でも名の通った大金持ち…

あの武藤先輩がトップになれば、日本の全てが奴の好きなように動かせてしまう…

つまり、美緒さんや春子…美由紀ちゃんも思いのまま金の力でねじ伏せかねない…

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「俺…ちょっと電話したいので…」

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と携帯を取り出す…

電池が切れている。

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「あ…あの…電話お借り出来ますか?」

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榊はニヤニヤとしながら、電話を指差し

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「あそこだ…勝手に使いな…」

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と隣の部屋へと出て行った。

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「ありがとうございます!

良かった…春子の番号メモしておいて…」

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『トゥルルルルッ…トゥルルルルッ…トゥルルルルッ…トゥルルルルッ…トゥルルルルッ…トゥルルルルッ…トゥルルルルッ…(出ねえな)トゥルルルルッ…トゥッ…もしもし?』

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「あっ!春子?俺…萩原だけど…」

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『あっ…淳平…?

何?これ何処から掛けてんの?』

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ようやく出た春子の声は、何と無くホッとさせる優しげで癒される声だった。

なんか違和感があったが、何なのかは気づかなかった…

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「うん…ごめん…電池切れでさ…ある事務所から掛けてる…」

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『なんか掴んだの?』

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「いや…掴んだってほどのことじゃないけど…あのさ…落ち着いてよく聞けよ?」

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『な…なに?』

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「先輩…助けるのは辞めよう…あの人は助けるなんて次元には居ないし…」

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『うん…そうだよね…』

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あれ?

あまりに素っ気なく答えたので、こちらの方が驚く…

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「その代わり、あの人には消えてもらう…あんなゲス野郎は生きてる価値無いよ…いや…殺すのは良くないわ…何とかして罠にはめて…泣を見せてやろう!二度と悪さしないような…」

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流石にこの言葉には反応があるだろ?

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『うん…その方があの人のためにイイかも…でも、淳平が手を掛けるなんて無茶は嫌だよ…』

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あれ?

まさかの展開…

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「そんなバカなことが出来るかよ…俺が手をかけるんじゃない、あの二人で仲間割れしてもらう…」

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『あの二人?誰か他に居るの?』

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「ナミ…いや、お前は知らなくていいや…兎に角、俺…お前のために出来ることだけのことはするから…」

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『えへへ…うん…ところで、淳平…明日は学校来る?』

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「それどころじゃないよ…休むってセンコウに言っといて…」

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「分かった…」

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そう言って電話を切った。

なんか違和感があったが…

なんだろ?

いや…そんな事よりっ!

どうやってあの二人に罠を仕掛けるか…

榊さんが部屋に戻ってくる…

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「美羽さんってオッさん紹介してやるよ…」

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戻ってくるなり、メモを俺に手渡した。

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『美羽建設』

と書かれた下に住所が記されているる…

その日は時間も遅かったので、明日向かう事にして、榊さんの事務所を後にした。

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翌日、いざ美羽建設へ。

どう見てもヤクザの事務所…

恐る恐る、チャイムを押す…

音を立て扉が少しだけ開き、これまた厳つい顔をした、どう見てもヤクザなお兄さんが顔を出した。

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「何だテメェ…」

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「あっ…あの…さか…榊さんの…しょしょっ…紹介で」

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『榊(さかき)』の言葉に、若い男の顔がほころぶ…

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「榊さんのお友達でしたか…どうぞ…」

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扉を開けて、中に通される…

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「こちらでお待ちください…」

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とソファに座らされ、暫くすると珈琲が出された。

奥の扉がゆっくり開く…

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「榊の知り合い?刈谷だったら死んだって言ってたろ?」

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そう若い衆と話しながら扉の向こうから出てきたのは、まさにヤクザの親分…と言った風貌の男…

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「お待たせして申し訳ない…貴方は?」

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俺の緊張はピークをとっくに過ぎている。

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「刈谷の助手をしていたものです…」

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と嘘がすんなりと出てきた…

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「刈谷さんの…?それじゃあ…後継者ってわけですな?ははは…よくいらして下さいました。私は『美羽』という者です。宜しくお願い致します。」

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まさかの挨拶にたじたじしていると…

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「貴方のしたい事、だいたい想像はついております…『浪江 良太郎』…の事じゃありませんか?」

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「え?(あの人…良太郎なんて名前なのか…)あ…ええ…そうなんです、はいっ!その男と…もう一人『武藤 亮介』って男も…邪魔な存在でしてね」

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そう言うと…

目つきがガランと変わる…

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「邪魔?それじゃあ、あたしらにそいつを消せと仰ってるんですか?」

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恐い…

言葉を間違えたのかな…?

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「いえいえ!…いち社会人のあなた方にそんな事はさせられません!

ただ、奴らを…なんか、その…罠的なものにはめる方法が無いか…と思いまして…その武藤という男の住所はこちらです…」

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と、メモを差し出し美羽の顔を見た…

この言葉には美羽の顔が緩む…

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「君…ふはは…気に入ったよ…あたしらが、いち社会人か…人を見た目で判断しないのだな君は…分かった。

我々に任せてください…」

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そう言ってメモを手に取り立ち上がると、それを見ながら…また奥の部屋へと消えて行った…

怖かった…いや、恐かった…

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「お気をつけてお帰り下さい。」

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黒いスーツに身を包んだ、四十代程の男が低い声でそう言って深々と頭を下げる…

サングラスの向こう側にほんの少し見える眼光が俺の目をしっかりと捉えていた…

恐い…

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「で…では、失礼します。」

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そう言って、この男に電話番号を書いたメモを渡して、その場を後にした。

どうするつもりだろ…?

美羽に渡したメモには、武藤の悪行も少しだけ書いておいた。

もしかしたら、女を使って誘い出し、何らか、恐ろしいことをするのかもしれない…

おぼつかない足取りでコンビニまで歩き、春子の携帯に電話した…

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「もしもし…俺…萩原だけど…」

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『公衆電話からってことは、まだ家には帰ってないんだね…今どこ?』

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「うん…駅前のコンビニ…」

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『学校終わったから、そっち行くね…そこで待ってて…』

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そう言って直ぐに電話が切れた。

正直、心細かった…

コンビニで雑誌を手に春子を待つ…

ガラスの向こうに春子の姿が見えた時…何故かホッと身体の力が抜けた気がした。

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「お待たせ…」

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コンビニに入ってきた春子を事もあろう、抱き寄せていた…

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「ちょっ!何?どうしたの?離して…」

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そう言って嫌がっているくせに無理に振り解こうとはしなかった。

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「怖いことが、あったんだね…」

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我に帰り、手を離す…

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「ごめん…俺…情けねえなぁ…」

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周りにいる客達も何事が起こったのかとこちらを見ていた…

急に恥ずかしくなり、春子の手を取り外に出た。

無言のまま、歩き続けた。

リサイクルショップの前を通ると、美緒さんが声をかけてきてくれた。

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「あれぇ?彼女出来たの!?」

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その声を無視した…

兎に角、歩きたかった…

春子も何も言わず手を引かれついて来ていた…

初めて二人で入った喫茶店『ミルージュ』に入る…

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「あっ…ごめん…手…」

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「あはっ…結構、力…強いんだね。」

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前に二人で座った時と同じ席に着く…

店員が

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「いらっしゃいませ…」

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と、水とおしぼりを置いて行く…

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「あっ…珈琲を…あと…」

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春子の顔を見ると、「同じもので」

と、店員を見た…

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「珈琲、お二つですね…お待ちください…」

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と、笑顔の素敵な店員がカウンターへ立ち去って行った…

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「武藤先輩な…」

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俺がその話を繰り出すと、春子はビクっ…と下を向いた…

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「あの人は…助けられない…もう、俺たちと住む世界が違いすぎるんだ…下手したら…」

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「美緒さんに危険が及ぶ…でしょ?」

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「うん…それもそうだけど…あれ?何でわかったの?」

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「斎藤君に聞いた…美緒さんを襲った男がどんな人だったか…やっぱり武藤先輩だった…斎藤君達は以前と別人みたいになった先輩に気づかなかったみたいだけど…」

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「そうか…あのな…美緒さんも危ないけど、お前にも…

春子ちゃんにまで危険が及ぶのは…許せない…

だから俺…」

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「私は…もう彼の元には行かないよ…それより何があったの?」

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話せるようなことがなに一つない…

目の前で人が人を喰らっていたなんて…口が裂けても話せない…

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「兎に角、ヤバイ処を見ちゃったんだよ…話せないけど…」

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そう言うと、コクン…と首を縦に降り、携帯を開いた…

メールを打っている…

何処に連絡を取るのか?

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「美由紀…あの娘にも話を聞いたの…彼の事…抱かれた時に、噛みつかれ血を吸われたって…その時に先輩はこんな事を口にしたんだって…『不味い…これじゃナミエは喜ばねえ…』それを聞いた時はよく分からなかったみたいだけど…何と無く怖かったって…協力してもらうことにしたの…」

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「美由紀ちゃんまで危険に晒せないよ!」

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思わず声を上げていた…

他の客が驚きこちらをうかがっている…「スンマセン…」と頭を下げ、春子を見た…

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「あの娘も、彼を憎んでるの…遊ばれたって…」

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その時、喫茶店の入り口が開き、美由紀が息を切らせて入ってきた…

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「あっ…いたいた…ねえ萩原…彼奴何処に居るの?

許せないよね?あの男…他に女がいるくせに私の処女奪ってさ…しかも噛みつきやがって…」

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と、春子の隣に座り身を乗り出し聞く。

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「ダメだよ…言えない…危ないから」

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「はっ?危ないって…彼奴にギャフンと言わせるんじゃなかったの?」

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「俺たちは待つしかない…あとは美羽さんって人に任せちゃったから…」

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「誰それ?あんたの知り合い?えー…あたしらでやるのかと思ったのに…つまんないのぉ…」

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美由紀は残念そうに口を尖らせ、目の前にあった春子の水を飲んだ。

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珈琲を飲みその日は解散した…

家に帰り、携帯を充電器に刺すと画面に『着信アリ…』と表示された。

開くと、見たことのない電話番号…

かけてみた…

美羽さんの事務所だ。

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「もしもし…失礼しました。電池が切れてしまいまして…

どうかなさいましたか?」

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『あなたのおっしゃった…いや、メモに書いてあった住所の家に参りまして、その武藤という男の帰りを待ちました…』

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この声…最後に頭を下げていた黒いスーツの男だ…

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「で…どうでしたか?」

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『女を一人連れて帰ってきました…女の衣服が汚れておりましてね…力なく支えられるようにしておりました…服の特徴は、ピンク色のセーターに薄緑のズボン…見覚えがありませんか?』

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倉庫で見たことを思い出す…

女性達のあの中に確かにその格好の女性が居たような…

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「倉庫で見ました…髪の茶色くて長い人じゃありませんでしたか?」

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『倉庫?武藤財閥の所有している倉庫ですか?』

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「はい…」

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『厄介な人間だということは分かりました…でもご安心を…我々にお任せ下さい。』

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と電話が切れた。

気になった…

いても立ってもいられず奴の借家に向かうことにした…

母親がゴチャゴチャと文句を言っていたが無視して家を出る…

自転車にまたがり、借家へ…

家の前に来ると、黒のセダンが横ずけされていた…

いつも張り込んでいた影に隠れ覗く…

玄関に数人の美和建設職員と思しき男達が立っている…

え?

正面から抑えるのか?

見ると武藤の姿もその中心に見えた…

怯えた表情で男達と話をしている…

すると、男達の一人が武藤の胸元を掴み引きずるようにセダンに乗せた…

どこに連れて行くのか…?

美和さんのところかな…

俺は先回りして美羽さんの事務所に自転車を走らせた。

事務所に着き、チャイムを鳴らす…

音を立て扉がゆっくり開く…

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「あっ…あなたでしたか…どうぞ…」

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若い男に中に通される…

美羽さんがパレットゴルフを楽しんでいた…

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「おやおや…どうかなさったのですか?」

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「あの…武藤先輩をどうするおつもりですか?」

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「どうにもしませんよ…あたしらいち社会人ですからなっはっはっは!」

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その時、事務所の扉が開き、武藤と男達が入ってきた。

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「辞めてくれ!俺が何をした?」

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武藤が泣き叫びながら暴れている…

その時、俺の存在に気付く…

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「あれ?お前…確かサッカー部の」

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覚えていたのか…ほんの少しの間しか所属していなかったのに…

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「助けてくれ!俺は何もしてないんだ!俺の家に電話してくれ!親父に話してくれよ!息子が変な奴らに捕まったって!」

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「ごめんなさい先輩…僕、今携帯が無いんですよ…人んちの電話を勝手に使うわけにもいきませんし…」

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「は?使えない奴だなお前!!

一年の時も使えなかったけど、ちっとも成長してねえな!!」

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「黙っていただけ…」

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そう言ってパターを振る、美羽さんの言葉に俺まで背筋を凍らせた…

武藤の後ろに立っていた、チンピラ風の男が持っていた木刀で頭を力一杯殴る…

聴いた事もない音がこだまして、倒れた武藤の頭辺りに真っ赤な液体が広がる…

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「殺しはしませんよ…ご安心を」

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また外へ引き摺られて行く武藤を眺めながら、俺は口を開く

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「ナミエって人は?」

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「貴方が見つけてくれたおかげで、ようやく奴を見つけることができましたよ…ありがとう…

奴らは既に死ぬことができないそうです…なので生きたまま海にでも沈めてしまいましょう…誰にも見つけられない深い場所へ…魚の餌になるわけですね…ははは…我々の手によって死ぬわけでは無いのですから安心して、明日を迎えられるわけだ…はっはっはっはっはっ!」

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怖い…いや、恐い…

絶対この人を敵にはしたくない…

倉庫内に監禁されていた女性たちは開放したそうだ。

中にはやはり亡くなっている方も居たそうだが…

俺はガチコチになりながら事務所を後にした…

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「またいらっしゃい…君ならいつでも歓迎するよ…ははは…」

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二度とごめんだ…

帰り道…

リサイクルショップに立ち寄った…

美緒さんに貰った探偵グッズを返却するためだ。

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「探偵さん?もう捜査は終わりですか?うふふ…」

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この人の笑顔がこの後もずっと続くことを願う寒い夜の出来事…

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帰り道…

町唯一のBAR前で怪しげな女が手のひらに乗せた見たことのない蟲を隣の男の首元に乗せているのが見えた…その瞬間、蟲が皮膚を突き破り入っていくように見えた…目の錯覚だと思うが…

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今までも凄いですが、今回も凄くいい‼︎読んでいてワクワク、ドキドキする内容で本当に面白いです。

作品に引き込まれました!

ぱつくんさん、コメありがとぅ〜
何か上手くまとめられなかったのが悔やまれる話です。。。

怖い、というかものすごく不安になる話ですね(^^;;

本当に怖いのは何で誰なのか…