長編18
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肝試し

今回は佐藤が高二の冬休み明けの一月に体験した心霊事件だ。冬休みに勤の従兄弟達と遭遇した廃墟のホテルでの事件から一週間後。

佐藤達のクラスではある話題が流れていた。「もうあいつらが来なくなってから五日になるな。」

「ほんと、どうしたのかしらね?」

実は佐藤達のクラスメイトの男子三人が始業式の日から学校に来ていないのだ。今日でもう五日目になるためにクラスの連中もさすがに心配になっていた。

理子「一体どうしたのかしらね?」

勤「どうせずる休みだろ。おおかた冬休み気分がまだ抜けてないって所かな?」

理子「でも五日も来ないとなると何かあると思うわ。例えば誘拐とか。」

勤「まさかー。佐藤はどう思う?」

勤が不意に佐藤に尋ねてみる。

佐藤はただ一人本を読んでいる所だったが勤に声を掛けられて顔を上げる。

佐藤「どう思うって言われてもな。」

勤「いっそお前が霊視で様子を見たらどうだ?」

佐藤「それはやだよ、誰かに正式に頼まれた訳じゃないし。それに出来なくはないけどかなり体力使うしね。」

そんな事を話していると始業のチャイムがなったので勤達は席へ戻っていった。

その日の授業が終わった後、部活がある為に藤達は帰りの準備をしてから部室に向かった。佐藤達が部室に着いてしばらくすると突然ドアをノックされた。

コンコン

普段は滅多に来客は来ないのでびっくりしながらもノックに返事をする。

佐藤が「どうぞ。」と言うと

ガチャッ。

ドアが開いてノックした主が入ってきた。入ってきたのは佐藤達のクラスの北岡一(きたおかはじめ)だった。

勤「何か用か?」北岡「ちょ、ちょっと相談が…」どうやら人見知りの様である。心霊相談との事で勤と理子は真ん中に机を置いて椅子を向かい合わせにした。

佐藤「ーで、相談と言うのは?」

北岡「始業式から来ていない三人の事は知ってる?」

佐藤「ああ、冬休みが明けてから五日も来てないって聞いてるけど。」

北岡「その事で相談なんだ。」

そう言うと北岡はポツリポツリとしゃべり始めた。

ここで話は始業式前日に戻る。

始業式前日の夜、北岡は例の三人や二人の友人と共に肝試しに行ったらしい。ちなみにそのメンバーは以下の通りだ。

一人目、小林翔(こばやしかける)。

例の三人のリーダー格でもある柔道部員。性格は傲慢で乱暴。

二人目、中村聡(なかむらさとし)。

例の三人の一人であり、野球部員。

少々熱い性格。

三人目、片岡優(かたおかすぐる)。

例の三人の一人であり、バスケットボール部員。性格は冷静沈着。

四人目、深谷公平(ふかやこうへい)。 北岡の友人であり、サッカー部員でもある。性格は片岡同様、冷静沈着。

五人目、切原健人(きりはらけんと)。深谷同様北岡の友人であり、空手部員でもある。柔道部の小林とは気が合い、性格は小林同様傲慢で乱暴。

そして六人目が北岡一(きたおかはじめ)。深谷・切原とは共通の友人であり、読書部員でもある。性格は見た目通り人見知りで小心者。

以上の六人が肝試しのメンバーだ。

因みに北岡によると肝試しに行こうと言い出したのは小林であり、小林が切原を誘った為に北岡や深谷が肝試しに同行する事になったらしい。

北岡と深谷はオカルトは嫌いな方だが傲慢で乱暴な切原には敵わないために半ば強制的に同行させられたのだ。

最も、北岡と深谷はオカルトには少し興味はあったようだが。

とにかく六人は冬休みの思い出作りという名目で肝試しに向かった。

場所は小林が発見したある廃神社で地元の人間は出るという噂が絶えない為に気味悪がって近づかないらしい。

始業式前日に六人はそこを訪れ、肝試しを行った。内容は一人ずつ神社内部に入って行き、中にある柱に自分の名前を書いて戻ってくるといった物だ。

提案者は小林であり、トップバッターも小林だった。

小林が神社に入って行くのを見届けた五人はひと固まりになって小林が帰って来るのを待っていた。

だが、15分以上待っても小林は帰って来なかった。その為に次に行く予定の中村は心配しながらも様子見ついでに神社に向かった。

後の四人は中村が小林を連れて戻ってくるのを期待して待っていたが中村も15分以上待ち続けても戻って来なかった。その為に後の四人は嫌な予感がしたが様子を見に行くのを嫌がっていた。だが、意を決して中村の次に行く予定の片岡が行こうとした。

他の三人は片岡を止めようとしたが、

片岡に「俺が行って戻って来なかったらお前らだけで逃げろ。後、この事は誰にも言うなよ?じゃないと小林に怒られるからよ。それに学校に知れたらそれこそまずいからな。」と言われて片岡を止める事は出来なかった。

そしてそれから15分以上待ったが片岡も戻って来なかったので残った三人は片岡に言われた通りにそこから逃げた。神社を離れてしばらくしてから深谷と北岡が警察に行こうと言い出すと切原は怒ってそれを拒否した。

切原は明日の始業式に三人が来なかった時にそれを決めると言って強引にその場を終わらせた。深谷と北岡も三人が明日無事に来るだろうと期待してそれぞれ帰路に着いた。

だが、翌日の始業式に三人は来なかった。家にも寄ってみたが帰っていないとの事で北岡と深谷は不安になってしまう。二人は小林達の親や先生に事情を話そうと思ったが切原に口止めされていたらしい。どうやら切原も小林同様誰にも知られたくなかったようだ。

その為に北岡も深谷も誰にも言えずにいたが北岡は勇気を出して佐藤に相談する事にしたのだ。もちろん深谷とも相談した上で。

以上が北岡の話だ。

勤「なるほどな。それであいつらが来てないわけか。」

北岡「だから片岡達の事を知りたいんだ、今どうしているか。」

佐藤「分かった、視てみるよ。」

そう言うと佐藤は数珠を出してを遠隔霊視を試みた。

しかし、佐藤は一分も経たないうちに霊視を止めた。

勤「どうしたんだ?」

佐藤「悪いけど霊視は出来ない。」

北岡「何で!?」

佐藤「視ようとしたら凄い嫌な予感がしたんだ。これはヤバイから視れないね。」

北岡「じゃあどうする事も出来ないの!?」

佐藤「いや、何も出来ないわけじゃないよ。直接そこへ行けば何とかなると思うけど。」

北岡「じゃあ、すぐに…。」

佐藤「あっ、ちょっと待って。行くなら事前にその神社について調べて欲しいんだ。その神社がどうして廃神社になってしまったのか等についてね。」

北岡「分かった、深谷と相談して一緒に調べてみるよ。 」

佐藤「それと行くなら早いうちがいいと思うから出来るだけ早くね。」

北岡「分かった。」

そう言うと北岡は部室を出ていった。

勤「本当に霊視出来ないのか?」

佐藤「ああ、例の廃神社は遠隔霊視では危険な感じがするからね。直接行かない事にはまだ何とも…」

その後佐藤達は下校時刻になったので帰宅する事にした。

理子「でもまさか霊視できないなんて驚いたよ。今までそんな事なかったから。その神社ってそんなに危険な所なの?」

帰りの最中に理子が佐藤に質問する。

佐藤「うん、その廃神社を視るなら直接そこへ行ってみないとね。幽体だけ飛ばすのは危険だと思って。」

勤「その廃神社気になるな。一体どんな過去があるんだろな?」

佐藤「まぁ、それは彼が調べてくれるし直接行けば分かることだよ。」

理子「佐藤君が霊視できないぐらい危険なら私たちが行くとさらに危険?」

佐藤「そうなるかもね。まぁ、その神社の危険度にもよるけど。」

勤「でも俺は行ってみてぇよ!話を聞いたら凄い気になるし。」

理子「私も!少し怖いけど。」

佐藤「まぁ、もしもの時には二人に御守りを渡しておくよ。それでもダメなら他にも何か考えておくし。とにかく話は彼が調べ終えてからだ。」

そう言って佐藤はその場を終わらせた。

翌日、北岡と深谷は廃神社について調べた記録を佐藤達の所に持ってやって来た。もちろん人目に触れないために放課後の部室で。

佐藤「早かったね、助かるよ。」

北岡「片岡達の為だからね。頑張って何とか二人で調べたよ。」

二人が調べてきた神社の内容は以下の通りだ。

ーまず、その神社は東京の…それも佐藤達の高校から電車・バスを乗り継いで一時間の所にある。

神社が建てられたのは今から四十四年前の1970年頃。

その当時は賑わっていたらしいが1970

年から三十年後の2000年頃に廃神社になったらしい。

廃神社になったのは2000年頃にその神社の神主がある曰く付きの品を知人から預かった事がきっかけのようだ。

何でもその品は神主の知人がある骨董品店から買ってきた物らしいが、その品を買ってから知人の家族が原因不明の病気になったてしまった様だ。

そこで気味悪がった知人は神主に引き取ってもらう事にしたらしい。

それから神主はしばらくの間御払いをしたがやがて神主も病気にかかって亡くなってしまう。

その後大勢の有名な神主が雇われてから問題の品は御払いされ続けた。

そして三年掛けてようやく問題の品は封印されたが誰もその神社の後を継ぐ者が居なくなってしまい、廃神社になってしまったと言う。ー

以上がその廃神社の歴史だ。

記録を読み終わって勤も理子もすっかり驚いてしまっていた。

勤「すげー、こんな歴史があったなんてな!」

理子「ほんと。驚いちゃった!」

二人が興奮して言ってる中、佐藤だけは記録をじっと読んでいた。

佐藤「この問題の品って封印された後どうなったか分からない?」

佐藤がようやく口を開いた。

深谷「ああ、調べてみたけど分からなかったよ。」

佐藤「…………。」

佐藤は何か考え込んだ後にこう言った。

佐藤「恐らくその神社には今もその品があるんだと思うよ。そして小林達三人が行方をくらましたのはその品が関わっているはず。」

北岡「じゃあ、片岡達は今もあの神社にいるの?」

佐藤「恐らくね。」

勤「じゃあ、早く行かないとまずいんじゃねぇか!?」

佐藤「うん、急がないとね。二人とも今週の日曜は空いてる?」

佐藤達の学校は私立の為、土曜は午前中授業なのだ。

北岡「俺は当日部活休みだから空いてるけど。」

深谷「俺も部活休みだから空いてるけど。」

勤「俺も大丈夫!」

理子「私も!」

佐藤「よし、決まりだ。それじゃあ今週の日曜の昼頃にその神社の最寄り駅で。」

こうして佐藤達は日曜の昼頃に神社の最寄り駅に集まる事になった。

決定すると北岡と深谷は礼を述べて部室を出ていった。

佐藤「取り合えず当日君らには御守りを渡しておくから肌身離さず持っててよ。」

勤「分かった。」

理子「分かったわ。」

その後佐藤は勤達と別れてからすぐに電車に乗って廃神社に下見に向かった。

ー廃神社ー

佐藤「ここか。なるほど、確かに嫌な予感がする神社だ。やはりここに問題の品が…。」

そう思いながら佐藤は廃神社の雰囲気を体で覚え、この雰囲気に対抗できる御守りを作る為に家へ帰宅した。

帰宅後に佐藤は早速御守り作りに取り掛かり、念の為にと御守りを余分に十個以上作ろうと考えた。

その後一時間掛けて合計27個作る事に成功した。

しかし佐藤はまだ不安だったので祖父と母に相談する事にした。

話を聞いた祖父・礼二と母・由美の二人は佐藤にこう言った。

礼二「その廃神社にある品と言うのは恐らく石で出来た一つの青い勾玉だろう。」

由実「私もそう思うわ。」

佐藤「勾玉?」

礼二「ああ、それの歴史や何がそれに宿っているのかはその勾玉を詳しく視ないと分からんがな。」

佐藤「この御守りで対抗できる?」

由実「ええ、それなら大丈夫だと思うわ。」

礼二「私も同感だ。それなら例の勾玉の力に対抗できるだろう。」

佐藤「それが聞けたら安心だよ、ありがとう。」

佐藤は礼二と由実に大丈夫だと言われて肩の荷が下りた感じがした。

そして数日後の日曜日、佐藤達五人は廃神社の最寄り駅に集まった。

佐藤「今から廃神社に向かうけど皆この御守りを肌身離さず持っててよ!」

そう言って佐藤は勤達全員に御守りを渡した。もちろん佐藤も持っている。

御守りを持ってから佐藤達は廃神社に向かった。

ー廃神社ー

勤「ここが廃神社か。さすがにスゲー雰囲気あるな!」

理子「ほんと。見てるだけでゾワゾワする感じ!」

佐藤「よし、入ろう。」

そう言って佐藤が神社の内部に向かったので後の四人もそれに続く。

神社の中は入ってみると古くなっている上にくもの巣が張ってあり、ほこりだらけだった。

佐藤「恐らくこの奥に彼ら三人がいるはず。」

そう思いながら奥に向かうがそこには何も無い空間が広がっているだけだった。

勤「おい佐藤、何も無いし誰もいねぇぞ!」

佐藤「おかしいな。確かにこの辺から三人の気配が感じられたんだけど。」

佐藤は困りながらも数珠を出して彼ら三人に照準を合わせての霊視を行ってみた。

勤「あれ?霊視出来るのか?」

佐藤「ああ、ここなら何とか出来そうだ。」

そう言って佐藤は意識を集中した。

佐藤「……いた。彼らだ。四人いる。

……四人!?」

「そんなばかな!」

全員「わっ!」

佐藤が突然叫んだのでその場にいた全員がおどろいてしまう。

勤「何だよ、驚かすなよ!」

佐藤「悪い。でも、驚くべき事が分かったよ。」

北岡「ま、まさか片岡達が死んでるの

!?」

深谷「そうなのか!?」

佐藤「いや、そうじゃない。生きてはいるけどね。」

北岡「良かった。」

三人が生きてると分かって北岡も深谷もホッとした様だ。

理子「でもそれじゃあ何があったの?

佐藤「彼ら三人意外にもう一人いたんだ。」

全員「ええっ!?」

佐藤「もう一人は僕らの高校の制服を着ていて、顔に絆創膏が貼ってあった

。」

佐藤が特徴を言うと北岡と深谷は異口同音に「切原だ!」と叫んだ。

佐藤「切原って…君らの友達の?彼ら三人や君らと一緒にここへ肝試しに来たっていう…。」

北岡「うん!間違いないよ!」

深谷「でも何でアイツが…。」

佐藤「とにかく四人を助け出さないと

!」

そう言うと佐藤は再び霊視をして四人の居場所を特定した。

佐藤「そこだ!そこの床下だ!」

佐藤が指差す所を勤達は早速外しに掛かる。古くなっていたので床は簡単に外れた。

そして深谷達が持ってきた懐中電灯で照らすとそこには空洞が広がっていた

。その後北岡達が下に降りて周りを照らすと近くの柱に四人が縛り付けられていた。

北岡「片岡達だ!」

深谷「片岡!切原!!」

それからすぐに四人を拘束していた糸を切って四人を上に運び出した。

幸い切原達は意識があり、十分程で目を覚ました。

それから数十分、まず北岡達は切原達に佐藤に相談した事を話した。

切原「そうか。お前らが助けてくれたのか。」

片岡「ありがとう。」

佐藤「早速で悪いけど話してくれる?何があったのかを。」

佐藤が言うと小林から話始めた。

あの日の夜、小林は中に入った後この奥まで来たようだ。

そして偶然にもあの床下を見つけたのだ。

小林「どの柱に名前を書こうか迷ってたらそこの床が何故か知らないけど気になったんだ。それで床板を外してみたら下が空洞になってて、降りてみたんだ。そしたら…。」

佐藤「何かあったんだね?」

小林は頷いてから「箱があったんだ。

」と言った。

小林が言うにはその箱は小さく、鎖が巻かれている上に御札が貼ってあったらしい。

小林は箱が気になり、貼ってある御札を剥がした上に巻かれていた鎖を外してしまったのだ。

佐藤「何でそんな事を!」

佐藤が怒って言うと小林は「だ、だって気になるから。」と言って小さくなりながらも話を続けた。

「開けてみたら中には一つの青い勾玉が入ってたんだ。それに触ったら…」

佐藤「突然意識が無くなった?」

小林は無言で頷く。

佐藤「やっぱりじいちゃんが言った通りだ。恐らく君はその時、その勾玉に宿っていた何かの力で意識を失ったんだよ。」

勤「何かって?」

佐藤「それはその勾玉がないと分からないけど。」

北岡「その勾玉が問題の品?」

佐藤「ああ、俺のじいちゃんと母さんがそう言っていたから間違いないよ」

そう言うと今度は小林の次にここへ入った中村に話をするように佐藤は催促した。

中村「俺は小林を探すためにこの奥まで来たんだ。そしたらそこの床板が外れてて…。」

佐藤「君も中へ入っんだね?」

中村「ああ、そしたら…。」

勤「そしたら…?」

中村は震えながらも話した。

「床下に小林が倒れていて、俺が駆け寄ったらいきなり起き上がって俺に糸を口から浴びせてきたんだ!」

全員「ええっ!?」

小林「ほ、ほんとかよ!?」

中村「あ、ああ…間違いないよ。」

中村は思い出している様で震え上がっている。

勤「まるで蜘蛛じゃないか!」

理子「なんだか怖い…。」

佐藤「皆、この御守りを!」

佐藤は御守りを出して片岡達四人に渡した。

佐藤「怖がっていると奴が出るかも知れないからね。」

そう言うと中村に話の続きを催促して来た。

中村「それから俺は白い糸に縛られて意識を失ったよ。」

佐藤「そうか。」

佐藤は何か考え込んだがすぐに片岡に話を聞かせる様に促した。

すると片岡も話始めた。

「俺が二人を探して中に入ったら奥から声がしたんだ、まるで怪物の雄叫びの様な不気味な声が…。」

佐藤「それから?」

片岡「中村達かと思って奥に行ってみたよ。そしたらそこの床板が外れてて…。」

佐藤「中から声が響いてたんだね?」

片岡「あ、ああ。見たら小林が叫んでて…。小林が俺に気付くと俺にも中村同様に糸を浴びせて来て…。その後の事は覚えてない。」

佐藤「なるほど。じゃあ最後に切原話してくれる?」

切原「あ、ああ。」

切原は昨日部活が終わってから帰りに

この神社に寄ったらしい。

「ほんとは立ち寄りたくなかったけど

、小林達が心配だったから。」

佐藤「探しに中へ入ったの?」

切原「ああ、懐中電灯も持ってたから。それで中を探していたらこの奥まで来ていて……。」

佐藤「そこから覚えてない?」

切原「ああ、何も思い出せない。」

佐藤「………。」

勤「なぁ、早くここから出ようぜ!」

理子「私も出たい!」

佐藤「よし、出よう。」

そう言って佐藤は立ち上がるが…

「でもその前に…」と言って床下へ降りた。そして数分もしない内に出てきた。

小林「あっ!それは!!」

見ると佐藤は手に小さな箱と鎖を抱えていた。

佐藤「そう、勾玉が封印されていた箱とその箱に巻かれていた鎖だ。」

勤「どこにあったんだ!?」

佐藤「四人が縛り付けられていた柱の丁度裏側だよ。」

そう言って佐藤は箱と鎖を下に置く。

理子「でも勾玉は?」

佐藤「それは無かったよ。だってこの中の一人がまだ隠し持ってるんだからな。」

全員「ええっ!?」

深谷「本当かよ!?」

中村「誰が持ってるんだ!?」

佐藤「それは君だよ。」

そう言うと佐藤は指を指す。

その指先にいるのは……。

「切原!!」

切原だった。

全員「ええー!?」

切原「お、俺持ってねぇよ!」

佐藤「そう思ってるだけだよ。だって君は既にあの勾玉に宿っていた者に体を乗っ取られてるんだから。」

切原「…………。」

佐藤「さあ、答えろ。切原の体に巣くう者よ。 」

切原「ハハハハハハ!!よくぞ見破ったな!」

そう言うと切原は口から糸を出してきた。「ビューッ。」

理子「キャッ!」

勤「理子!!」

切原の口から放たれた白い糸は理子を捕まえて近くの柱に張り付けた。

勤「理子に何しやがる!理子を離さないとただじゃおかねぇぞ!!」

切原「ハッハッハ!今度は貴様らをこの糸の餌食にしてくれるわ!」

佐藤はすぐに持ってきた塩を出して切原に浴びせた。

佐藤「くらえ!」

バサッ!

切原「ぐわっ!」

すると切原は倒れ、切原の体からどす黒いオーラが放出された。

それはその場にいた全員にも見えているらしくて全員震えている。

佐藤「お前は何だ!」

するとどす黒いオーラは「私の名は黒蜘蛛(こくぐも)。遥か昔からあの勾玉に宿りし者だ!」と言った。

佐藤「なるほどな。お前は遥か昔からあの勾玉に宿っていて、お前の正体はその黒いオーラで実体がない。だから活動するための体が欲しくてしばらくの間例の勾玉に宿っていたのか。そしてその勾玉はお前の憑代だったわけだな。」

黒蜘蛛「その通りだ!だが、いつまで待っても私の体は手に入らなかったのだ。私が求める理想的な体は鍛えた肉体を持つ者。それがなかなかいなかった。挙句の果てに私はあの勾玉に封印されてしまったしな!」

佐藤「しかし先日、偶然にもここを訪れた小林の体がお前の理想的な体だった。だから小林に取り憑いたんだな!?」

黒蜘蛛「そうさ。だから私はその男の体を手に入れ、後からやって来た二人を捕らえて私の仲間にしようとしたのさ!」

佐藤「最も、昨日ここを訪れた切原の体に目移りしたようだが。」

黒蜘蛛「そうだ。この男の体の方があの男の体よりもさらに私の理想的な体だったからな。だから体を取り替えた訳だ。」

そこまで聞くと佐藤は切原の制服のポケットから勾玉を取り出した。

「これか。見た所何も感じられないな。お前が抜けたから。」

黒蜘蛛「さあ、今度は貴様らを全員私の仲間に加えてやるぞ!」

黒蜘蛛がそう叫ぶと同時に全員頭痛を感じて倒れこんでしまう。

全員「うわーっ!あ、頭がーっ。」

黒蜘蛛「ハハハハ!どうだ!!さあ、私の仲間になれ!」

佐藤「だ、誰がなるか!皆、気をしっかり持て!渡した御守りを握りしめておけよ!」

そう叫ぶと佐藤は数珠を黒いオーラに向かって投げつけた。

すると黒いオーラは「ギャアーッ!!」と叫んだ。

それと同時に数珠はバラバラになってしまうが全員の頭痛は消えた。

それからすぐに勤は理子に張り付いていた白い糸を切って下に下ろした。

佐藤は持ってきた予備の御守りを急いで全員に渡した。

全員が先程佐藤に渡された御守りを見ると、全ての御守りがバラバラになっていた。恐らく先程の頭痛に呼応してバラバラになったのだろう。

佐藤「これで御守りは残り九個。ここにいるのは全部で九人、つまりあと一回分か。」

勤「佐藤!早くここから…。」

佐藤「逃げる前にこの黒蜘蛛を除霊する必要がある!じゃないとこいつはまたこの勾玉に入って…。」

そこまで言い掛けて佐藤はハッとした。

佐藤(そうだ!もう一度奴をこの中に封じ込めてしまえば…。)

そう思った佐藤は予備の数珠を出した。

黒蜘蛛「己、貴様…。まだ厄介な物を持っておったか!」

佐藤「これでお前を再びこの勾玉に封じ込めてやる!」

黒蜘蛛「そうはさせん!」

そう叫んだ黒蜘蛛は近くに倒れていた切原の体に凄い勢いで入ってしまった。

佐藤「切原!!」

すると倒れていた切原は起き上がって佐藤に向かってきた。

切原「貴様ーっ!封じ込められるものならやってみろ!」

そう叫びながら切原は佐藤に飛び掛かって押し倒し、馬乗りになった。

切原「さあ、私を封じてみよ!」

佐藤「くっ…。」

勤「佐藤!」

佐藤は数珠を遠くに放り投げられて正に絶体絶命のピンチに陥る。

小林「うおーっ!!」

その時、小林が切原に突進した。

ドンッ!

切原「ぐわっ!」

突然の事で切原の体は吹き飛ばされてしまった。

小林は起き上がろうとする切原に上から飛び乗って押さえつけて動きを封じた。

それに中村、片岡、北岡、深谷の四人も便乗して小林同様切原に飛び乗って押さえつけた。

切原「グオオーッ!!は、離せー!!」

小林「皆!しっかり押さえつけて絶対に切原を離すなよ!」

北岡達四人一同「おう!」

北岡「今だ!佐藤ー!!」

佐藤「よしっ、任せろ!」

勤はすぐに数珠を拾って佐藤に投げて渡した。

パシッ。

佐藤「よし、行くぞ!」

佐藤は数珠を受け取るなり、立ち上がった。

そして切原に向かって行き、数珠で切原を叩いた。

その途端に切原の体から黒蜘蛛が黒いオーラの姿で放出された。

黒蜘蛛「己…貴様らー!!」

黒蜘蛛が叫ぶと同時にまたも全員頭痛に苦しまされてしまう。

全員「うわーっ!」

佐藤は今度は残りの塩を出して黒いオーラに向かって投げつけた。

バサッ。

黒蜘蛛「ギャアーッ!!」

そうするとまたも全員の頭痛が収まって黒蜘蛛は苦しんでいた。

佐藤はすかさず残り九個の御守りを全員に渡した。

さらに佐藤は勾玉を地面に置き、数珠を持ったまま祝詞を唱える。

黒蜘蛛「グワーッ!!や、止めろ!」

その言葉を最後に黒蜘蛛は勾玉の中に徐々に吸い込まれていった。

佐藤「よし、封印成功!」

勤「終わったのか?」

佐藤「ああ!封印は終了だ!」

その後佐藤は黒蜘蛛を封印した勾玉を数珠で巻いて元通り箱に閉まって鎖で巻いた。

佐藤「これで奴はもう出てこられないだろう。 」

その言葉を聞いて全員ほっとした。

北岡「佐藤、本当にありがとう!」

佐藤「どういたしまして。」

佐藤は笑顔で答える。

理子「その箱はどうするの?」

佐藤「取り合えず家に持って帰って処分しとくよ。」

その後佐藤達はそれぞれ帰路に着こうとするが、最後に佐藤は小林達にこう言った。

佐藤「最後に言っておくけどもう二度と廃神社の様な心霊スポットに肝試しで行ったりしちゃダメだよ!今回は何とか除霊出来て君達も全員助けられたけど、危なかったんだからね!」

そう言われて小林達六人は小さくなって反省していた。

どうやら小林と切原の二人は特に懲りたらしい。無理もない、二人共黒蜘蛛に体を乗っ取られたのだから。

こうして今回の心霊事件は解決し、佐藤達は帰路に着いた。

ちなみに例の勾玉が入った箱は佐藤の家に運ばれ、箱と鎖はそのままだが、勾玉は数珠で巻かれたまま燃やして処分された。

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龍悟さん、コメントありがとうございます!
そうですね、廃神社はやはり何かありますね。佐藤がカッコよくてハラハラされた様なので良かったです。
龍悟さんがコメントと怖いをつけてくださるお蔭で僕も色んな話を書いていく気になります。
次の投稿を楽しみに待っていて下さいね、龍悟さんの話も心よりお待ちしております。

廃神社はやはり何かありますね…
佐藤さんかっこいいですね!ハラハラしながら読ませていただきました。
次の投稿を心よりお待ちしております!