中編3
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優しい占い師

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大学からの帰り道、道端に占い屋を見つけた。

前からあったのだろうか、気がつかなかった。

まだ歳は若く30もいかない程ではないだろうか。

風貌からは商売占い師独特の嫌らしさは感じられない。

占いは信じないタイプなのだが少し興味が湧いた。

明日寄ってみようか。

次の日、そこに占い師の姿はなかった。

今日は休みなのかな?

その次の日もそのまた次の日もその占い師は姿を見せることはなかった。

一週間経った。違う占い師がそこにいた。やつれた男性だ。50代だろうか。

「貴方に伝えることがあります」

その占い師が声を出した。

……僕か?周りを確認する。

……どうやら僕に言っているようだ。

「彼から伝言です。あなた危ないですよ。」

突然そう言われて僕は少しムッとした。

「何が危ないんですか?」

苛立ちを抑えそう言うと、

「彼死にましたよ」

とその男はつぶやいた。

加えるように

「貴方のせいで」

と言った。

そして、「とにかく今日の夜襲いに来るそうです。彼に感謝することです。」

僕は男を無視してその場を去った。

わけがわからない。

帰宅してベッドに寝転びながらノートパソコンを使い課題をしている時、後ろに何かを感じた。

振り返るとトイレの扉が半開きになっていた。

たてつけが悪いな。窓を開けているし風で開いたのだろう。

再び課題に戻ると次は台所から水の流れる音が響いてきた。

先ほどの占い師の言ったことを思い出した。一体何が襲いかかるって?

しかし確実に不安はつのり、あの占い師の話に向き合う自分がいた。

彼が死んだ。何に殺されたというんだ?

バチッと電気が切れた。

僕はビクつき小さな悲鳴を上げた。

何かに後ろから首をギュッとつかまれた。とがった爪が首に食い込む。

僕はそれを払いのけると同時に振り向いた。

見たことのある女の顔があった。

でもやけに歪んで見える。

話はした事が無いが、大学の講義でいつも斜め後ろに座っている娘だ。

女は何も言わず肩からかけてあるカバンから包丁を出す。

僕は自分にできる最速の動きで女の脇を抜けた。

玄関を出て階段を降りる。

すぐさま女の足音と奇声が聞こえた。

階段を死に物狂いで駆け降りる。

女は足を滑らせ階段を転げ落ちた

一番下の段まで転げ落ちた瞬間、衝撃で女の首に手に持った包丁が突き刺さった。

女は首からどくどくと血を流しあっけなく死んだ。

次の日警察での取り調べが終わり、その足で伝言を任されたあの占い師に話を聞きに行った。

どうやらその女は大分前から僕をストーキングしていたらしい。

死んだ占い師はその様子を毎日見ていた。

ある日いつものように僕をストーキングする女がカバンから包丁をちらつかせた。

占い師は女の後をつけて見張る事にした。

そして数日後、他人事とはいえ痺れを切らし、直接彼女に話かけそんなことはよすようにと忠告した。

女は無表情で占い師の腹に包丁を突き立てた。

女はその場から足早には立ち去りながら「明日の晩、私あの人と一緒にいいとこに行くの。ずっと一緒。」と独り言のようにつぶやいた。

占い師はそれを聞き逃さず、携帯で50代の占い師へと伝言をした。

それから15分後、救急車が彼の元に到着した。

彼は息を引き取っていた。

僕は命を助けてくれた占い師が居た場所に行ってみた。

なんだか不思議だ。なんの関係もないと思っていた人物に命を救われた。

花を手向け黙祷し、深々と頭を下げその場をあとにした。

見知らぬ占い師に何故か興味が湧いたあの日。

もしかするとあれは虫の知らせだったのかもしれない。

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