中編3
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割れたガラス

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 さっきから、お父さんとお母さんがケンカしてる。

 でも、なんでケンカしているのかは分からない。

 とにかく二人は、鬼さんのように怖い顔をして叫んでいる。

 パリーン!

 うわ!

 僕は驚いてしりもちをついてしまった。

 やっと落ち着いて足元を見ると、部屋の戸のガラスが飛び散っていた。

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 僕はまた驚き、恐る恐る部屋の奥を見ると、お父さんが普段使っている灰皿が転がっていた。

 どうやらお父さんが投げたらしい。

 お母さんは力が弱いので、こんな重たいものを投げられるはずがない。

 もういやだ。

 こわい。

 昨日までのお父さんは、すごく優しかったのに、なんで?

 昨日までのお父さんは、どこに行っちゃったの?

 昨日までのお父さんは、もうここにいない。

 僕は思わず、耳を塞いで泣いてしまった。

 暗い部屋の中で、ただ一人、泣いた。

 小さくうずくまって、泣いた。

 ウッ。ウッ。

 声も出してしまった。

 ぼくはいつも学校の先生から

 「泣く子は強くなれないわよ。」

 と言われていたけど、我慢ができなかった。

 目が熱い。

 頭も、耳も、口の中も熱かった。

 「もうやめてよ!!!」と部屋を出て二人に叫びたかった。

 でも、できなかった。

 涙で言葉がうまく出ないのもあったけど、

 何より、お父さんに怒鳴られるのが怖かった。

 そして、お母さんのように殴られたり蹴られたりされるのが怖かった。

 ただ、泣くことしかできなかった。

 二人のケンカはまだ続いている。

 叫び声も、どんどん大きくなっている。

 また耳を塞いで泣こうか、と思ったとき、お父さんがこう叫んだ。

 「誰のせいでこうなってると思ってんだ!!!全部てめぇのせいだ!てめぇが消えちまえばすむ話なんだよ!」

 ……………

 ……………そうか…。

 元々このケンカは、お母さんにあったんだ。

 だから二人はケンカしていたんだ。

 そうかそうかそうかそうか。

 そうだったんだ…。

 お父さんは言っていた。

 お母さんが消えれば、

 もう二人は

 ケンカを……………

 僕は、自分の足元を見た。

 そこには、さっき灰皿を投げた時に割れたガラスが飛び散っていた。

 次に、部屋の外を見る。

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 戸のガラスの欠けた部分から、二人がケンカしているのが見える。

 お母さんは丁度、僕に背中を向けて座り込んでいた。

 …涙が、止まった。

 ウッという声も、出なくなった。

 僕は再び、足元を見て、

 一番大きなガラスをそーっと手に取った。

 …学校の先生は、もう一つ言っていた。

 「割れたガラスはとっても危険なのよ。それに刺さって死んじゃった人だっているんだから…。」

 さらに、理科の先生は言っていた。

 「心臓は胸のところにある。そして、心臓は人間にとって一番大切なところだ。これが無くなると、人間は生きていけない。」

 つまり

 これを

 使えば

 ……………

 ……………僕は、少し笑った。

 そしてゆっくりと立って、

 部屋の戸を一気に開けた…。

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>あゆさん
コメントありがとうございます!
そうですか…そう思ってくれて幸いです!

現実味があり怖かったです。。

夫婦ケンカも子供の目線からだとこう映るのかもしれませんね(;_; )おろおろ ( ;_;)おろおろ

ワタシもたまに夫婦ケンカしますが..
子供にゎどう見えてるのでしょうかΣ(*゚д゚*)ハッ!!

さすがに物が壊れたり暴言まではないですが..
親として気を付けなければと思います。。