長編14
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人形

これは佐藤が高二の二月に体験した話だ。ある日佐藤は勤から一つの人形を渡された。

佐藤がその人形について聞くと、以前登場した勤の従兄弟の西川結城(にしかわゆうき)が送ってきた物らしい。そして結城と言えば大学のオカルト研究会の部長であるからきっと何かあるんだろうなと佐藤は考えていた。

佐藤「それでこの人形どこで買ったの?」

人形を受け取った佐藤が勤に尋ねる。その人形はソフビ人形でかなり古い物だった。

勤「ああ、結城兄によればな…」

そう言って勤は結城から聞いた事を佐藤に話始めた。

何でも結城は数日前に大学のオカルト研究会の部員達と共に某心霊スポットの廃屋を訪れたらしい。そこは三年前に一家惨殺事件があった家で、今でもそこには住人の亡霊が出ると言う噂が流れている曰く付きの空き家だった。

夜8時に車でそこを訪れた一行は懐中電灯を持って中へ入り、探索を開始した。しかし、二階建てのその廃屋を隅々まで調べても何も出なかった。その為に結城達は帰ろうとしたが、メンバーの一人・南澤淳平がある物を持って来た。

それは一つのソフビ人形だった。聞いてみると向こうの子供部屋にあったらしい。淳平以外全員はソフビ人形を戻して来いと言うも淳平は古いけど価値有りそうだから持って帰ると言って聞かなかった。その為に一行はやむ無くそのまま廃屋を後にする。だが、ソフビ人形を家に持ち帰った淳平はその後災難に見舞われる。

まず初めに淳平はその人形を持ち帰った翌日に大学へ向かう途中で交通事故に遭ってしまう。淳平はバス通学なのだが、乗っていたバスが自動車と正面衝突を起こしてしまったのだ。そしてほとんどの乗客にも車の運転手にも怪我は出なかったのだが、何故か淳平だけが足を骨折したのである。

淳平は救急車で病院に搬送されて治療を受けるも全治五ヶ月と診断された。更に家へ帰る為に呼んだタクシーで帰路に着いている最中に淳平は財布を無くした事に気がつく。

タクシー代は自宅に帰ってから払えたが、淳平の災難は更に続いた。

自宅のアパートに帰ってから淳平は三日三晩、何度もラップ音を聞いたり金縛りにあったりしていた。その為にろくに眠る事もできずにだんだん参ってしまった。

淳平「ああ、何でこんな目に…。」

そう思っていた淳平の視界にふと例のソフビ人形が目に入り、そこである事に気づいた。それはこれまでの災難は全てこの人形を廃屋から持ち帰ってから起きていると言う事だ。そう気づいた淳平はソフビ人形をとても気味悪く感じ、持って帰った事を後悔した。

しかし、淳平は足を骨折している為に捨てに行くことすら出来ないのでやむ無く結城を呼んだ。

結城「だから言ったろ!?危険だから止めた方がいいって!」連絡を受けてやって来た結城が淳平に怒る。そして結城は淳平を怒った後、その人形は捨てずにお寺に引きとってもらった方がいいと思い、車でお寺まで持っていった。

だが、寺の住職はソフビ人形を見ると顔色を変えて「済まないがこれは私にはどうする事も出来ない。」と言って結城を追い返した。他の寺や神社にも持っていったがどこも結果は同じで断られてしまった。そこで途方に暮れた結城は佐藤に相談する事にしたのだ。

以上が勤が結城から聞いたソフビ人形についての話である。話を聞き終えると佐藤は嫌な予感がしたので受け取るのが嫌だったが、勤があまりに真剣に頼み込んでくるのでやむ無く受け取ってしまった。そして佐藤は受け取った人形を放課後部室で詳しく霊査する事にした。

ー放課後ー

部室に来た佐藤はソフビ人形を机の上に置き、数珠を出して霊査を始めた。するとその人形から霊気の様な感じが漂って来た。それもかなりの物である為、佐藤はそれ以上の霊査は危険と判断して霊査を中断した。

「やっぱり何か有りそうだな。」

そう思った佐藤は勤に電話を掛け、廃屋の場所を聞いてみた。しかし、そこは東京都から大分離れた地域にあるので結城に車を出して貰えないか聞いてほしいと勤に頼んだ。勤は一つ返事で了解すると電話を切った。

「廃屋に行ってみれば何とかなるはずだ…。」

そう考えながら佐藤は部室を出て帰宅した。幸いにも佐藤は帰り道で災難に遭う事はなかったが人形からはものすごい霊気が感じ取られていた。

佐藤「さっき霊査した時より遥かに強力な霊気が放出されているけど、一体これには何があるんだ…。」

佐藤は嫌な予感がしたのでソフビ人形を倉庫(と呼んでいる部屋で曰く付きの品を保管する場所)にしまった。それでも心配な佐藤は御札をその人形と部屋の入口にそれぞれ貼った。本当は祖父と母に相談したかったのだが二人とも出張中で不在だった。

佐藤「取りあえずこれで一安心だ。」

安心した佐藤は自室に戻って勉強に取り組んだ。しかし、疲れていた佐藤は勉強中に眠ってしまう。

どれぐらい時間が経ったのか、佐藤は目を覚ました。周りを見渡すと佐藤はどこかの廃屋にいた。 更に佐藤は体を動かす事が出来なかった。

佐藤「くっ…。動けない、何故だ!?それにここはどこなんだ?」

状況が理解できないまま体をよく見ると縄で縛られていた。それを解こうとしたがびくともしなかった。

佐藤「一体何でこんな事に?」

そう思っていると目の前にいつの間にか一人の男が立っていた。その男は手に刃物を持っていて、佐藤目掛けて大きく振りかざした。

佐藤「うわあっ!」

ハッ。そこで佐藤は起きた。周りを見ると自分の部屋で、今のは夢だったのだ。

佐藤「夢か…ふぅ。それにしても…リアルだったな。体を縛られていた感覚が…まだ残ってる…。」

先程の事を思い出しながら身震いしていると不意に電話が鳴った。突然の事に驚いた佐藤は一瞬飛び上がりながらも携帯を開いた。そこには西川勤という名前が表示されていた。

佐藤「なんだ、勤か。全く驚かすなっての。」

そう言いながらも電話に出る。ピッ。

佐藤「もしもし?」

勤「結城兄が車出すのOKしてくれたから報告するぜ!」

佐藤「ああ、ありがとう。」

そう言って佐藤は電話を切る。

佐藤「さっきのリアルな体験は人形があった廃屋の過去の記憶なのか?」

そう考えていた佐藤だが、直接廃屋に行ってみなければ詳しい事は分からなかった。その後佐藤は人形が気になって倉庫に向かった。すると入口と人形に貼ってあった御札が二枚とも剥がれていた。これを見た佐藤は御札が剥がれている事と、先程のリアルな夢が関係していると悟った。

そこで佐藤は新しい御札をまた二枚貼ると今度は人形の方に数珠を巻いておいた。これで安心した佐藤は再び二階に上がっていった。

翌日、廃屋に行く日時を決めるために佐藤は勤と話した。そこで結城はいつでもいいと言うことで、勤と話し合って明後日の日曜日に決まった。

佐藤「悪かったな、頼んだりして。」

勤「いや、佐藤に人形の事を頼んだのは俺だからな。結城兄に頼むぐらいどうって事ないさ!結城兄も俺から佐藤にって頼んで来たんだしさ!」

佐藤「そうだね、ありがとう。」

その直後に始業のチャイムが鳴ったので、二人は大慌てで教室に向かった。

佐藤は人形の事を考えながら授業を受けていた。昨日のリアルな夢を思い出していた佐藤は授業に集中出来なかったのだ。そしてふと机の下を見るとそこにはいつの間にか人形がいた。

佐藤「うわっ!」

佐藤は驚いて勢いよく立ち上がってしまった。当然周りは佐藤の突然の行動に注目していた。授業をやっていた教師も気になって佐藤にどうしたのかと尋ねてきた。佐藤はハッとして机の下を再びおそるおそる見てみたが、そこには先程見た人形の姿は影も形もなくなっていた。

不思議に思った佐藤だが、先生に「すみません、何でもないです。」と言って座った。そこで再び授業が始まったが、佐藤は先程の出来事が気になって授業どころではなかった。

佐藤「何だったんだ、今のは…錯覚なのか?それとも人形が俺に見せた幻影だったのか?」

授業が再開されている中、佐藤はずっとそんな事を考えていた。やがて授業が終わって昼休みになると佐藤は弁当を持って勤と共に部室に向かった。

勤「お前さっきの授業でいきなり叫んで立ち上がってたけど一体どうしたんだよ?」

勤が聞いてきたので佐藤は先程自分が見た事をそのまま伝えた。当然勤は話を聞くと驚いてしまっていた。半信半疑ではあったが、何となく納得できた様だ。

勤「じゃあ、人形がお前に幻影を見せたって事か!?」

話を聞き終わるなり勤が勢いよく質問してきた。

佐藤「いや、それはどうかわからないよ。ひょっとしたらただの錯覚かも知れないし。それに人形が俺に幻影を見せたかも知れないって言うのもあくまでも可能性の一つだしな。」

しばらく弁当を食べながら二人で意見を出しあっていたがやがてそれも終わり、二人は教室に戻っていった。そして教室で次の授業の用意をして待つと同時にチャイムが鳴って授業が開始された。

その後一日の授業が終わり、帰路に着いていた佐藤は偶然石田刑事に出会った。そこで佐藤はあることを思い付いたので石田刑事に相談した。

石田「え?その一家惨殺事件の捜査記録を知りたい?」

佐藤「ええ、今友人からそれに関する相談を頼まれていましてその事件の事を詳しく知りたいんです。何とかなりませんか?」

考え込んでいた石田刑事だったが、すぐに了承してくれた。佐藤はお礼を言うと再び帰路に着き、石田刑事も早速事件を調べる為に警視庁へ向かった。

家に着いた佐藤はすぐに倉庫に向かって人形がどうなっているかを確認して見た。すると人形に巻いておいた数珠の紐が切れていた上に貼ってあった御札が破れていた。勿論倉庫の入口に貼ってあった御札も同じく。

これを見た佐藤は人形にかなりの恐怖を覚えた。そしてある不安が頭を過った。

ーこれは自分の手に負えないんではないかー

という不安が。

しかし佐藤は乗り掛かった船なので引き続き人形を調べる事にした。

その後石田刑事から電話が来て、人形があった例の廃屋で過去に起こった一家惨殺事件についての情報を知ることが出来た。その内容は以下の通りだ。

事件があったのは今から十年前の五月の第二月曜日。豪雨だったその日に吉岡家の一家が惨殺された。被害者はその家の住人で主の吉岡重信(よしおかしげのぶ)39才、その妻・吉岡真理(よしおかまり)37才、そして長男・吉岡紀之(よしおかのりゆき)7才の三人である。

三人共死因は鋭利な刃物で刺された事による失血死。さらに現場は血の海であり、息子は体を縄で縛られた状態で心臓を刃物で一突きにされていたと言う悲惨な状況だったらしい。ちなみに息子と妻の二人は心臓を刺されて亡くなったが、夫の方は背中を刺されて亡くなっていた様だ。

当時夫は自暴自棄になっていたと言う噂が流れていたので無理心中の可能性も視野に入れられたが、夫の体で刃物が刺さっていた場所が背中だったために自殺は不可能だろうと言う事と、家の中が荒らされていた事を踏まえてこの事件は強盗による一家惨殺事件と断定された。

だが、結局手掛かりを何も掴めなかった為にこの事件は犯人が捕まらないまま迷宮入りとなってしまった。

以上が石田刑事が調べた一家惨殺事件の捜査情報である。佐藤はここまで聞くと石田刑事にある質問をした。

佐藤「そう言えば、凶器は家の中のどこにありました?」

そう、凶器の在りかだ。それについて聞いた所、石田刑事はこう答えた。

石田「ああ、捜査記録によれば被害者の吉岡重信の背中に刺さったままだったらしいよ。警察は何で犯人が持ち去らなかったのか不思議だったそうだけど。それと凶器には被害者達の指紋しかなかったそうだよ。これで夫による無理心中だという疑いが強くなったけど被害者の持ち物だから

指紋があってもおかしくはないし、遺体の状況から見てすぐにその疑いはなくなったらしいけどね。」

そこまで聞いた佐藤は石田刑事に礼を述べて電話を切った。

佐藤「取り合えず事件について詳しく分かったから後は廃屋に直接行ってみるとするか。……あのリアルな夢は長男が体験した事だったのか。」

佐藤はそう考えながら倉庫に向かって人形を取り出すと自室に持っていった。そして一か八かで数珠を取り出して霊査を始めた。

佐藤「君、君の名前は吉岡紀之君?」

佐藤が一か八かで話しかけると人形に宿っていた魂が佐藤の質問に答えた。

人形(以下、紀之)「うん、そうだよ。僕の名前は吉岡紀之だよ。」

佐藤「君は何故その人形に宿っているんだい?」

紀之「僕、この人形が宝物だったんだよ。だから死んだ時もこの人形の事を考えてた。」

佐藤「そうか…死ぬ間際までこの人形の事を考えていたから君の魂は死後にこの人形に宿ってしまった訳か。」

紀之「うん、そうだよ。」

佐藤「でもその人形にいつまでも宿っていてはいけないよ。君には本来行くべき所があるんだから。」

紀之「やだ、僕ここにいたい!」

佐藤「いや、そういうわけには…。」

佐藤はそれからしばらくずっと説得し続けていたが、結局紀之はそれに応じなかった。佐藤は強硬な手段を使おうと考えたが、それを行うと危険な事が起こる気がした為にやむ無く説得を打ち切った。そしてこの続きを行っての最終処理は廃屋を直接訪れてからする事にした。

佐藤「多分、俺が夢で体験したあの事によるトラウマがあの子の魂をあの人形に縛り付けてしまっているんだろうな。やっぱりここは廃屋を訪れるしかない。」

それから二日後、佐藤は勤や結城と共に結城の車で例の廃屋を訪れた。

勤「うひゃー、すげぇ。前に行った心霊スポットの廃ホテルより酷いな。」

勤は廃屋を見るなり、以前訪れた廃ホテルの事を思い出した。

佐藤「よし、入ろう。」

佐藤がそう言って中へ入って行ったので、勤と結城もそれに続いた。中は外以上に荒れていて、当然の如く埃まみれな上にクモの巣だらけだった。

佐藤「それでこのソフビ人形があった子供部屋は何処に?」

結城「あそこだよ。」

結城が指差したドアを開けるとそこにはベッドやカーペット、机や椅子と言った家具があった。見た所ベッドの上にヒーロー物の玩具が置いてあったので、どうやらここが結城の言う通り例のソフビ人形があった子供部屋らしい。

結城「ここに間違いない。」

部屋を見た結城が迷わずそう言った。

佐藤「ちなみにこの人形があった場所は何処ですか?」

結城「いや、それが淳平が勝手に持ってきたから分からないんだよ。」

結城が困った顔で言うと佐藤は「そうですか、でも大丈夫です。何とかなるでしょう。」と言って部屋の中央まで来ると人形をそこの床に置いた。

佐藤「よし、この辺でいいだろう。」

人形を置くと、佐藤は持ってきた数珠を出してから手を合わせて早速霊査を開始した。

佐藤「……フム、あそこか。」

しばらくしてから佐藤はそう言ったと同時に人形を持って立ち上がり、ベッドの所まで行き、その上に並んでいる玩具の所に人形を置いた。

佐藤「ここがこの人形があった場所なんだよ。」

結城「どうして分かったんだい?」

結城が不思議に思って聞くと、佐藤は霊査した時にこの部屋の昔の様子が見えたからだと答えた。更に続けて

佐藤「では、今度はあの人形に宿っているこの部屋の主だった少年の魂を解放します。」

と言って、また数珠を持ったまま手を合わせた。そしてそれから数十分後にようやく口を開いた。

佐藤「ふぅ、終わった。」

佐藤は安堵した顔で言った。それから二人に今やったことの説明を始めた。

まず、佐藤は少年の魂を人形から解放するために再びあの少年の魂と会話を始めたのだ。以下はその内容だ。

ー佐藤「吉岡紀之君、聞こえる?」

紀之「うん、聞こえるよ。」

佐藤「では質問しよう。君は何故そこに留まりたいの?成仏は望んでないのかな?」

紀之「だって、成仏したら宝物と一緒にいられないんでしょ?だったら嫌だよ、せっかく一緒になれたのに!」

佐藤「確かに大事な物と一緒にいたい気持ちは分かるけど、そこに留まり続けたらどうなると思う?」

紀之「分からない。」

紀之がそう答えると佐藤は「じゃあ教えよう。そこに留まり続けたら君は怨霊化してしまうんだ。そしたらその人形の事も忘れてしまう、それでもいいのかい?」と言った。

紀之「そんなの嫌だよ、嫌だ!!」

紀之が泣き叫ぶと、佐藤は「じゃあ浄化を受け入れるね?これが最後のチャンスだ!」と言い放った。

紀之は「うん、分かった。」と言って浄化を望んだ。

佐藤「よし、それじゃあ君をそこから解放しよう。」

佐藤が強く念じると紀之の魂は光に包まれて昇天していった。ー

以上が浄霊の内容である。話を聞き終わった後、勤が人形を処分しなくてもいいのかと言ったが、佐藤は「必要ないよ。もうそれには何も宿ってないからね。今はただの人形さ。」と言って部屋から出ていった。

勤「でも、子供は成仏しても子供の両親は?」

廃屋を出た後に勤が佐藤に尋ねた。

佐藤「どうにもならないよ。」

佐藤の返答に勤は驚きを隠せなかった。

勤「どうにもならないって何で?」

佐藤「両親とも錯乱状態になっていて話ができる状態じゃないんだよ。」

勤「強盗に殺されたショックでか?」

佐藤「違う、生前から錯乱状態だっんだよ。て言うか、強盗なんて最初からいなかったんだ。」

勤は佐藤の言っている事が理解出来なかった。それを察した佐藤は詳しく説明した。

佐藤「要するに一家惨殺事件というのは間違いで、この家の主だった吉岡重信による無理心中と言うのが真相だったんだよ。」

勤・結城「ええっ!?」

勤と結城が驚きのあまり、二人揃って大きな声を出してしまった。

勤「で、でも…お前の知り合いの刑事によれば無理心中の可能性はないんじゃなかったのか!?」

佐藤「ここに来る前の車中で話した事件の記録によれば、被害者の吉岡重信の背中に凶器が刺さったままだったから無理心中の可能性は無くなったって言ったよな?俺はその時点で引っ掛かったんだよ。」

結城「何が引っ掛かったんだい?」

佐藤「被害者三人中、二人は心臓に刺さっていたのに対して一人だけが背中に刺さっていたという点だよ。俺にはこれじゃあ、まるで誰かに刺されたんだって事をアピールしたみたいだって思えたよ。」

佐藤の意見を聞くと、二人ともすっかり納得した様であった。

勤「で、でも背中に凶器が刺さっていたのはどう説明するんだ?本当に吉岡重信の無理心中なら自分で自分を刺したんだろうけど、どうやって背中に刺したんだ?」

勤が一番疑問に思っていた事を質問すると佐藤はこう返した。

佐藤「それならさっき霊査した時に分かったよ。ほら、あの子供部屋で人形の位置を調べるためにやったあの時だよ。言ったよな?部屋の昔の様子が見えたって。実はあの時、廃屋全体の事件当時の映像も見えたんだよ。まぁ結構悲惨だったけどな。」

佐藤は顔をしかめて言うと、続けて吉岡重信の背中に凶器が刺さっていた事について説明し始めた。

佐藤「あの日、吉岡重信は最初に凶器で奥さんの真理さんを刺したんだ。次に予め縄で縛っておいた息子の紀之君を刺した。ここまでは分かるよね?」

勤「あ、ああ。それで肝心の背中に刺さっていた件は?」

勤が例の件についての説明を催促すると、佐藤は話始めた。

佐藤「二人を殺害した後、吉岡重信は凶器の刃物を殺害現場にあった有るものにセットしておいたんだよ。」

結城「ある物って?」

佐藤「机の上にあったボーガンだ。それも時間が来ると自動的に矢が発射される奴だ。そいつに矢の替わりに刃物をセットしておいて、ボーガンの正面に立っていて時間が来ると…。」

勤「セットされた刃物が発射されて、正面に立っていた吉岡重信に自動的に刺さる…。」

佐藤「そういう事だ。」

結城「背中に凶器が刺さるトリックは分かったけど、奥さんと旦那さんは成仏させる事は出来ないの?」

佐藤「ええ…奥さんは自分を殺害した夫への復讐心に包まれていて、旦那さんの方は噂通りに自暴自棄になっていて、二人共とても話ができる状態じゃありませんから。」

そう聞くと結城も勤も黙りこんでしまったが、帰ることにした。

勤「その二人はほっといても大丈夫なのか?」

佐藤「少なくとも誰かに憑依したりはしないよ。ただあそこにずっといるだけ。だから俺は何もしないよ。」

こうして今回の人形の件は解決したが、結城達は後味を悪く感じていた。

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龍悟さん、コメント&怖いをつけてくださりありがとうございます!
毎回龍悟さんが読んでコメントをつけてくださると話を書く気になります。これからも佐藤渉の話は続いていくので楽しみにしていてください。
龍悟さんの新作も楽しみにしておりますので、頑張ってください!

おもしろいです!佐藤さんの能力があれば、色んな迷宮入りの事件も解決しそうですね!
次のお話も楽しみにしております!