長編11
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怖話

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この話はテキストモードでなければ少し読み難いかもしれません

なるべくテキストの方でご覧下さい

 

 

【自殺】

僕は小さい頃からずっとイジメられて育ちました。

小学校から始まり中学校、高校、そして今いる仕事場でも上司の先輩にいつも意地悪をされています。

自分ではなんでイジメられているのか全く解りません。

特に彼らに何かした訳でもないのに・・・

きっと僕の存在自体が彼らにとっては不快で仕方ないのでしょう。

悔しくて涙が出てきますが、残念ながらやり返せるような度胸もないです。

だから僕は今日ここで生きるのをやめたいと思います。

生まれかわったらもっと強い人間になれたらいいな・・・

 

「・・・・なんだこれ」

スマホの画面に表示されている文章を睨みながら恭平は小さく呟いた。

彼が今住宅街を歩きながら見ているのは投稿系の怖い話サイトだ。

誰でも気軽に作品を投稿する事が出来て、実体験の話から創作系のものまで幅広く揃っている。

大学までの通学時間を潰すのにちょうどいいので、恭平は最近このサイトをよく回覧していた。

今日も大学からの帰宅中に新着の話を適当に読んでいたが、自宅に着く直前に読んだ話がなんとも言えない滑稽なものだったのだ。

「何が言いたいんだよこいつ。意味わかんね」

アパートの階段を昇り自分の部屋の前まで辿り着くと、ポケットからガイコツのキーホルダーが付いた鍵を取り出しドアノブに押し込んだ。

玄関を開け電気をつけると真っ暗な部屋がぱっと明るくなる。

持っていたバッグをベッドの横に乱暴に放り投げ、壁に掛けられた時計に目をやった。

午後6時。

夕飯にするにはまだ早い時間だ。

(疲れたからちょっとだけ寝るか)

テーブルの上に置いたスマホを手に取るとベッドの上に寝転がった。

電源ボタンを押すと先程まで表示していた怖い話のサイトの画面が出てきた。

人差し指でフリックしてページの下にスクロールさせる。

 

■「junさん」の投稿1話

【怖い】0 【コメント】0  [回覧回数] 256回 (短編)

 

案の定誰からの反応もないようだ。

そりゃそうだ。

こんな嘘臭い投稿で怖いなんて思える奴がいる訳ない。

仮に本当に自殺を考えた人間の投稿だったとしても「そんな話は他でやれよ」ってもんだ。

このサイトは怖い話を投稿する場所であって、自殺宣言をする場ではないのだから。

「まぁ十中八九どっかの馬鹿がネタで作った嘘だろうけど」

仰向けで寝ながら携帯に向けてぽつりと呟く。

するとだんだんこの投稿者に対してイライラがつのってきた。

体を起こしてあぐらの姿勢で携帯を操作する。

慣れた手つきで数十秒程携帯をいじると、[匿名でコメント]のチェックに印を付けコメント投稿ボタンを押した。

 

匿名『こんなアホみたいな話投稿すんな!嘘臭すぎて何も面白くないわ』

 

自分が入力したコメントがしっかりと表示されたのを確認して恭介はニヤニヤと笑った。

(こういう奴ははっきり言ってやらないと調子にのるからな。これでもう糞みたいな話で投稿してくる事もないだろ)

スマホを枕元に置くとぐっと背伸びをしてから再度ベッドに寝転がった。

言いたい事を言ってスッキリしたせいか、気分がよくなった恭介はそのまますぐに眠りについた。

 

真っ暗な部屋の中で恭介は目を覚ました。

手探りで頭の付近にあるライトのスイッチを入れ、時計の時刻を確認する。

午後12時。

(・・・・しまった、ちょっと寝すぎた)

目をこすりながらゆっくりとベッドから起き上がる。

幸い明日は特に予定もないので夜更かししても問題はない。

少しふらつきながらトイレに行き用を済ませて帰ってくると、枕元に置いたスマホに手を伸ばした。

(さて、少しはまともな投稿が新しくきてるかな?)

ゲスい笑顔を浮かべながら「フフッ」と声を漏らすと、トップページへと移動するリンクボタンを押した。

数秒後、サイトのトップページが表示され新着の投稿やコメントが出てきた。

しかし新着の投稿はどうやら増えていないようだ。

期待が外れため息を漏らしたが、すぐに画面に表示されている情報がおかしな事に気づいた。

思わず目を疑った。

 

『新着の怖い話』

【自殺】 (短編)

 回覧回数602 怖い18 コメント22 jun 平成26年03月27日16時04分04秒

 

先程の下らない話の「怖い」やコメントがこの数時間で急激に伸びているのだ。

「おいおい、嘘だろ・・・・」

慌ててページを開き、話を軽く見直してみる。

もしかしたらさっきの批判コメを受けて大幅に書き直したのではないかと思ったからだ。

だが特にこれといって内容が変わっているようには見えない。

画面を下にスクロールさせ【怖い】の数を確認したが、きっちりと18人分のアイコンが表示されていた。

「ふざけんなよ!この話の何処が【怖い】ってんだ!馬鹿じゃねーの?」

怒りを通り越して呆れてしまう。

この程度の作り話に簡単に騙されるような奴らがこんなにもいるなんて。

さらに下にスクロールさせると、出てきた彼らのコメントがまたなんとも滑稽だった。

 

高天原『これは怖い((((゚Д゚;))))』

mmm『これ・・・ちょっとヤバイんじゃ・・・』

ツカチ『鳥肌がたった』

 

なんともまぁ阿呆らしいコメントばかりだ。

見ているうちに嫌気が差してきたのでもうやめようと思った、その時だった。

 

ヒキコ『うわぁ・・・この高槻って人今どうなってんだろうか?』

 

恭平の目が画面に釘付けになった。

何故かというと彼のフルネームが「高槻恭平」だったからだ。

「どういう事だよこれ・・・なんで俺の・・・・」

徐々にスマホを持つ手に力が入っていく。

(なんで?どうして?誰かに解析かなんかでもされたのか?まさか管理人に?いやそんな事出来る訳ないだろ。じゃあ唯の偶然なのか?)

頭の中ごちゃごちゃになってどうにかなりそうだった。

 

お稲荷『高槻さんご愁傷様です (-∧-;) ナムナム』

ミツム『これ「匿名」の人が高槻って事なの?』

Aoi『高槻って人逃げてぇーw』

 

「なんだよこれ・・・ふざけんな・・・・」

いつの間にか手が震えていた。

いつも見ているサイトに自分の本名が出ているだけなのに鳥肌が止まらなかった。

しかし、あるコメントを見つけると恭平の手の震えは一瞬で止まった。

 

jun『今から行くね』

 

junは確か投稿者の名前だったはずだ。

(こいつか?こいつが何かしたんじゃないか?そうだ、きっとそうだ!俺のコメントに腹を立てて何か仕組んだんだ!)

そこから下はずっと「jun」という名の投稿者のコメントが続いていた。

「糞!何書きやがったんだこいつ!」

苛立ちながら何度も画面をフリックしてページの最下部まで画面を移動させる。

そして下からゆっくりと一文ずつ読んでいくにつれ、恭平の顔は次第に青ざめていった。

 

jun『だから』

jun『どうせなら一番殺してやりたい相手にしようと思ったんだ』

jun『でも一人で行くのは嫌だから誰か道連れが欲しいなと思って』

jun『もう知ってると思うけど僕自殺したんだ』

jun『君と同じクラスだった時が僕の人生で一番辛い時だったから』

jun『でも僕は君の事を忘れられなかったよ』

jun『忘れちゃったかな?』

jun『覚えてるかな?小学校の時ずっと君にいじめられてた飯島純だよ』

jun『色んな場所探したけどここにいたんだね』

jun『高槻君怖い話好きだったから』

jun『君の事ずっと探してたんだ』

jun『久しぶり』

jun『高槻君・・・だよね?』

匿名『こんなアホみたいな話投稿すんな!嘘臭すぎて何も面白くないわ』

 

息が詰まりそうだった・・・

普段なら「下らないコメントだ」と一笑に付してしまうような内容だが、実名で名指しされているのだ。

それでも信じられなかった。

いや信じたくなかった。

「こっ、こんなの嘘に決まってる・・・そうだ、きっとそうだ!」

自分を安心させる為か恭平はぎこちない手つきでスマホを操作しコメントを投稿した。

 

匿名『どうせネタ投稿だろ?騙されんなよお前ら』

 

コメントしたからといって何がどうなる訳でもないのだが、恭平はそれを見て少しだけ笑みを浮かべた。

しかし不意に画面が暗転し、表示されていたページが何故か急に更新したのを見ると顔が曇りだした。

「なんだ。俺今何処も触ってないぞ・・・」

次の瞬間、恭平は声にならない叫びを上げた。

 

jun『やっと見つけた』

匿名『どうせネタ投稿だろ?騙されんなよお前ら』

 

ふっと、部屋の明かりが消えた。

慌てて電源スイッチを押しに行ったが反応がない。

一変して部屋の中はスマホの明かりだけが薄暗く光る状況になってしまった。

「じょ、冗談だろ・・・まさか本当に」

ヴヴヴヴヴ

「うおっ!?」

持っていたスマホが激しく振動して思わず驚きの声を上げた。

恐る恐る画面を見ると知らない番号から電話が掛かってきていた。

ザザッ

「うわぁっ!?」

恭平はビックリしてスマホを窓の近くに放り投げてしまった。

一瞬だが、今確かに何処か見覚えのあるような男の顔が画面に映ったのが見えた。

すると窓際に投げられたスマホから通話の声が聞こえてきた。

「恭平君だよね?」

声を聞いた瞬間疑いが確信に変わった。

あいつだ。

小学校の時、俺達のグループで散々からかったチビの声だ。

「近くまで来たんだけど君の家が見つからなくさ。困ってたんだ」

声を聞きながらも手探りで出口のドアを探す。

このままここにいてはいけないと直感が言っていた。

「良かったよ。コメントしてくれて。お陰で場所が解った」

「・・・えっ?」

カン・・・カン・・・カン・・・・

耳を疑いたかった。

玄関の方から聞こえてくる音は間違いなくアパートの階段を誰かが上がってくる音だ。

「もうすぐ着くよ。もう・・・すぐそこだ」

恭平はドアの前からゆっくりと後ずさりした。

(駄目だ、こっち(玄関)からは行けない・・・)

スマホの明かりを頼りに窓の近くまで来ると、急いで窓を開けた。

だが外の景色の前にはまだ固い雨戸がガッシリとのさばっていた。

この部屋の雨戸は建付けが悪いのかとても開き難い。

両手で力いっぱい横にスライドさせようとするが、少しずつしか開いていかない。

ガッ、ガッガッ、ガツン!

必死の思いで雨戸を開けると息を切らしながら外の様子を伺った。

恭平の目の前には青白い顔の男が立っていた。

何処か見覚えのある青白い顔の男が。

恐怖のあまり足に力が入らなくなりその場に尻餅をついた。

男は恭平の顔を見ると薄気味悪い笑顔を見せ、ゆっくりと口を開いた。

「やっと会えたね」

二つの声が、目の前の男の口と足元に落ちていたスマホから同時に恭平の耳に届いた。

 

 

喫茶店の窓際席で一人の女性が紅茶を飲みながらスマホをいじっていた。

時折外の様子を気にしては少しイライラしている様子から、どうやら誰かを待っているようだ。

「悪い!ちょっと遅れた!」

駆け足で店内に入ってきた男性は一目散に窓際席の女性の前まで来ると、深々と頭を下げた。

「・・・・別にいいけど。あんたの中では30分の遅刻は「ちょっと」になるのね」

「いやだからゴメンって」

男性は只管に誤ったが女性の機嫌は一向に直る気配がない。

仕方なく男性は作戦を変える事にした。

「それ何見てんの?もしかしてこの前俺が教えたやつ?」

「・・・・・・・うん、まぁ暇だったから」

女性の顔が一瞬緩んだ。

その表情を確認すると男性はほっと胸を撫で下ろし、すっと席に着いた。

「いいよな、そのサイト。怖い話の数も半端ないし、雰囲気も出てるし」

「まぁ・・・暇潰しには結構いいかもね」

そう言うと女性はスマホをテーブルの上に置き、紅茶のカップに手を伸ばした。

こんな言い方だから解り難いが、この反応は案外気に入っている時のものだ。

(以前にホラー好きだって聞いたから勧めてみて良かった)

男性の顔から笑みがこぼれた。

「そうだ、あれ見た?昨日なんか変な投稿があったでしょ。コメント数が凄い多かったの」

「・・・・見てないわ」

紅茶を一口含ませ、カップをゆっくりテーブルに戻してから女性が答えた。

「そう?見といた方がいいって。ちょっと普通の怖い話とは違うんだけどさ」

スマホを操作し昨日見た話を探す。

しかしお目当ての投稿は新着の一覧の中には見当たらなかった。

「あれ・・・・・おかしいな。確かに昨日あったはずなのに」

「・・・・それどういう話だったの?」

当初の予定とは違ったが女性はその話に食いついてきた。

(まぁ結果オーライって事でいいか)

それから男性は昨日自分が見た作品の内容とコメントでのやり取りを女性に教えた。

女性は男性の事をじっと見つめながら静かにその話を聞いていた。

特に意味はないと解ってはいるが、女性の熱い視線に男性は少しドギマギしてしまった。

「それってもしかしてヤバイものだったんじゃない?」

「あぁ、確かにヤバイよな。あのままいってたらアワード間違いなしだったのに」

「・・・・そういう意味じゃないわよ」

いつの間にか女性は呆れたような顔で男性を見つめていた。

その視線すらも男性にとってはまんざらでもなかった。

「たぶんその投稿者が目的を果たしたからその話を削除したんじゃないかしら」

「目的って?」

「鈍いわね・・・・自分をイジメてた奴をあの世に道連れにしたかったんでしょ」

「あぁ・・・・でもそんな事出来るの?インターネットのサイトから何処にいるかも解らない相手の事襲うなんて」

「さぁ?どうかしらね」

そこまで話すと女性はもう一度紅茶を一口含んでから話を続けた。

「でも、以前に聞いた話なんだけど。幽霊っていうのは時代と共に進化するものらしいの」

「幽霊が!?猿が人になったみたいに?」

「そこまでじゃないけど・・・・・例えば昔はロウソクの明かりを消すだけだったのが、今じゃ幽霊が電化製品に影響を与えるのも普通みたいになってるでしょう?」

「まぁ・・・・確かに」

「パソコンや携帯が普及すると当たり前のように彼らはそれに侵食してきた。時代に合わせて進化してると言ってもいいんじゃないかしら」

「つまり幽霊が進化するならインターネットみたいな電子世界にも侵食してるかも、って事?」

「さぁ・・・・そっち関係は私さっぱりだからなんとも言えないわね」

そういうと女性は二つの掌を上に向けてお手上げのポーズを取った。

「なるほどね~『幽霊も進化する』か~」

興味深い意見だった。

ネットに入り込んでくる幽霊なんて信じがたいが、思わず納得してしまいそうだ。

手に持っていたスマホの画面に表示されているサイトのトップページを改めて見てみる。

総数16,543話

これほどの話数があれば確かに1話や2話は本物の幽霊が関わっている話もあるのかもしれない。

オカルトって想像以上に深いなぁと男性は関心した。

ザザッ

「ん?」

「どうかしたの?」

「いや、なんか今勝手にページが・・・」

触ってもいないのにページが更新されたような気がした。

だが特に先程と何かが変わっているようにも見えない。

総数16,542話

やはり別に何かが変わった様子はない。

たぶん見間違いだろう。

「ごめん。なんでもないや」

「そう、ならいいけど。そろそろ時間だから行きましょうか」

「あれ?もうそんな時間か。早くしないと」

そう言うと二人は会計を済ませ、足早にその店を出て行った。

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午前0時の間違いですよね…( ゚ェ゚)

たしかに、このサイトにはリアルにやばい話がありますね...

この前なんてスパムの話が