中編4
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こびと

私は数年前まで非常勤講師をしていて県内のK高校に勤めていました。

その高校には沖田先生という人がいました。

K高校は進学校だったので高学歴の沖田先生は生徒からの信頼も厚く職員室でも頼りにされていました。

また、沖田先生は容姿も端麗で生徒からも人気がありました。

私もそんな沖田先生に恋愛感情を抱いており毎日沖田先生の家に行ってその日のお弁当を机の上に置くのが日課になっていました。

沖田先生とは話も合い、また私と沖田先生は共通の趣味を持っていました。

沖田先生を毎日見ていられる、それだけで幸せでした。

先生の容姿や明るい性格からか、学校の誰も沖田先生が行なっている犯罪に気づきませんでした。

それは盗撮でした。沖田先生は女子トイレをカメラで撮影していました。

教師という立場を利用して朝一に登校して放課後遅くに回収していたので生徒や先生にもばれず、仕事熱心な先生というイメージを植え付けるばかりでした。

そして沖田先生は毎日のように撮影した動画を自宅で再生して自分を満たしていました。

先生はある日撮影したビデオを自宅のパソコンで再生していると、そこには奇妙なものが写りこんでいました。

それは小さな人間のようなものが換気扇の隙間からトイレに入りまた隙間から出ていく姿でした。

沖田先生は始めはぎょっとしましたが、恐怖心より好奇心のほうが勝ったのだと思います。

これを捕まえればビデオよりもさらに高値で売れるだろう。

いや、それよりも先生は小人をただ自分のコレクションにしたいと思っていたのかもしれません。

次の日の日曜日の朝、沖田先生は虫取り網と金網のケージを持って家を早くに出て行きました。

夕方に何か入ったケージを持って沖田先生は戻ってきました。

おそらくそれには小人が入っていました。自宅ではケージはトイレの前に置くことにしました。

小さな人間といっても童話に出てくる小人とは似ても似つかないものでした。

体型は中年男性のようにずんぐりしていて顔は人間のそれに中央に大きな単眼が一つあり無精ひげをはやした口で男の人の声で鳴いていました。

沖田先生はケージから小人を出すとピンセットで小人の脚を挟み持ちあげました。その姿はまるでカエルに似ていました。

先生は安全ピンで小人の腹をつきさしました。

刺したところからは肌色の液があふれだし小人は狂ったように暴れているようでした。

ギャーオギャーオ。

小人の鳴き声が明らかに変わりました。まるで何かを呼んでいるように。

そのとき沖田先生は気づきトイレの方を見ました。

ガサガサ、ガサガサ。

トイレの中からです。そこにはたくさんの小さなものがいるのが見えました。

沖田先生はゴルフクラブを持ちトイレのドアをおそるおそる開けました。

中にいたのはおびただしい数の小人たちでした。壁一面に小人、小人、小人。

「うわぁ、うわあぁぁぁぁぁ」

沖田先生は叫びました。

小人たちが自分の方へ集まってきました。

グチャ。

足で小人を踏みつけてしまい床には肌色の液体があふれ小人は簡単に潰れました。

しかし次の小人がもう足を登ってきていました。

壁に膝蹴りをするように二匹目の小人も潰しました。

また次も。その次も。

けれど何匹潰そうが小人は便器のなかから換気扇の隙間から次々飛び出し増えるばかりです。

沖田先生にはうっすらと小人たちの目標が自分こ口であることがわかり始めました。

小人は沖田先生の口をこじ開けて入ってきました。

それを歯で食い潰したのか沖田先生の口のはしから肌色の液が線をひきました。

口いっぱいに広がる苦い味に耐えきれず嘔吐しようとしたのか下を向い開けた口に2匹目の小人が入ってきました。

もう私はこの先を考えたくありません。

やがて肌色の小人に体を覆いつくされた沖田先生は横倒しになり動かなくなりました。

小人たちはみな沖田先生の体の中に無理やり入っていき部屋には一応いなくなりました。

そこに残った先生はお腹が異常に膨れあがりもう人間の形をしていませんでした。

私はしばらく何も言えず、思考停止のような状態でした。

意識をとり戻した私は急いで沖田先生のマンションにいき作った合鍵でドアを開けました。

そこにはやはり変わり果てた先生の姿がありました。

私はなるべく死体を見ないようにして仕事部屋とトイレにある隠しカメラを回収しました。

ゴミ箱には私が毎朝届けているお弁当が捨てられていました。

机の上にはストーカー対策の本と日記が置いてありました。

どうやら彼はストーカーにあっていたようなのです。

私は気づけなかったことに少し傷つきました。

私はその日記と本、隠しカメラを持って鍵をかけてマンションを出ました。

それらはビニール袋に詰めてすぐに捨てました。小人のビデオも私のPCから削除しました。

次の日私は普通に学校に通勤しましたが何があったのか知る人もいるはずもなくいつもどおりに学校は終わりました、沖田先生がいないことをのぞいて。

2日後に連絡がとれないのを不審に思った学校が警察に通報し沖田先生の自宅で死体を発見しました。

警察が私のところにもきましたが沖田先生は「病死」とのことでした。

その後風の噂で沖田先生の盗撮のことを聞きましたが、私が先生を盗撮していたことは表沙汰にはなっていないようでした。

現在、私は他の学校に勤務しています。

近々同じ職場の男性と結婚する予定です。

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「・・・毎日沖田先生の家に行ってその日のお弁当を机の上に置くのが日課になっていました。」の部分で「ん?」と思いましたが、やはり「私」も盗撮してた側でしたね(;´Д`)

あと細かいですが、小人が先生の口に入ろうとする部分の描写で一箇所誤字がありましたよー!
僭越ながら指摘させていただきます。

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