中編3
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実体験シリーズ 其の伍

残念ながら、あまり怖い話ではありませんが、タイトル通り、実話です。おそらく今もまだ、続いていると思います。

・・ある会社の自社ビルで起きた出来事です。提出期限がせまった、報告書の作成に残業を余儀なくされていた。近所の牛丼屋で、晩飯を済ませ、道行く酔っ払いを、羨ましく思いながら、会社に帰り、再び机上のパソコンを叩き始めた。

誰もいない、ビルだが、嫌な感じは全くなかった。しかし、突然エレベーターの動く音が聞こえたので、行先を確認すると、6階で止まった。その階は役員室がある階で、役員が来たと思い込んだ。

しばらくして、再びエレベーターの音、

「チン」と音がして、自分がパソコンと格闘している4階に止まった。

扉が開く音がしたが、パソコンの画面から目を離さず、役員が来るのを待った。差し入れかな?ほくそ笑みながら仕事を続けていたが、一向に声がしない。普通、ご苦労様ってぐらい言うだろう。

席を立ってエレベーター迄、歩き始めた時、扉は既に閉まっていた。

「あれ?」思わず独り言が出た。

エレベーターの扉を開けても、誰もいない。何故だか、嫌な気配はしない。席に戻ってパソコンの前に座り、再び、仕事を続けた。

ある瞬間、人が歩く気配がしたが、気にせずにキーボードを操作していると、パソコンの画面に影が写った。

それは、背後からパソコンを覗き込まれると後方にある照明からの光が遮られ、パソコンの画面が少し暗くなる様子と言えば、お分かり頂けるだろうか?

悪意は全く感じられなかったので、あっ見ているんだなって位で、驚きもしなかった。

何度かの残業の時にはトイレ前で歩いている白い影が、吸い込まれように消えたり、エレベーターで移動してみたりはあったが、嫌な感じは全くしない。

ちなみに、僕は極端な怖がりで、心霊スポットなど、殺されても行かないし、体験した場所は避けるようにしている。

しかし、会社のビルに出る方は何故だか怖く感じなかった。それに、月に2〜3回セ○ムの人感センサーが感知して、夜間、無人のビルに出動して確認点検があった日は僕が定時に帰宅した日だった。

説明すると、そのビルは各階ごとに、セ○ムの人感センサーが付いており、ビル内で人を感知すると、警備が駆けつけ、原因を確認して報告書を提出する。だから、最後にビルの戸締りをした者の責任は大となるのだった。

まぁ、もっぱら報告書は、いつも、誤作動か不明のどちらかだったが、、、

ある日、人を虐めるのが生き甲斐と言うような、パワハラ上司と残業する羽目になった。また、報告書の作成なのでパソコンが相手な分、気が楽だったが、いつもの方が様子を見にきたようにやって来た。

ガクン、、ウィーン。突然エレベーターが動いて僕らがいる階の扉が開いた。誰も来ないので上司が席を立ちエレベーターを見に行った。

上司は青ざめた顔で席に戻ると

「お前、今までこんな事あったのか?」

と聞いてきた時、僕のヘソは曲がっていた。あの方だと、エレベーターの音がした時から分かっていたが、素知らぬ振りをした。

「エレベーターの調子が悪いんじゃないですか」

「調子が悪くて、動くか」

「はぁ」

と気のない返事を返してパソコン作業を続けたが、あの方は今までしなかったイタズラをした。

ウィーン、いきなりコピー機が唸り出した。それは節約電源から印刷の予備電源に“誰か”が押した事を意味していた。

そしてコピーが始った。

「おぃ、帰るぞ」

顔色のない上司は慌てて帰り支度もせずに外套を掴みエレベーターに乗った。僕はこのまま居てもいいやと思ったが、「急げ」と怒鳴る上司がエレベーターの中で待っていたので、しょうがなく帰ることにした。

一度も会話した事も無かったけど、パワハラ野郎のことは分かっていたんだろうか。ありがとうと心で呟くと僕は帰路に着いた。

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miichanmanさん、コメントありがとうございます。もう会えないけど、今もあのビルにいるのかな?って思います。嫌では無い心霊体験の一つです。

確かに怖いというより微笑ましいですね、神判さんはいい幽霊に出会えて羨ましいです!

towさん早速のコメントを頂き、ありがとうございます。この話を思い出しながら書いている時も嫌な感じどころか懐かしく感じます。僕に霊感があって話ができればなぁと思う数少ない出来事でした。ちなみに場所は札幌市で雪祭り会場へ徒歩5分というビルです。

優しい方でしたね。
生きてる人間の方が怖いかもしれませんね。