長編7
  • 表示切替
  • 使い方

廃病院-2F-③

music:4

エレベーターが降りてきました。

1Fからは上へ行くボタンしか付いていなかったので、当然私は上へ行くボタンを押しました。

が、最初2Fで止まっていたエレベーターは、降りてくるなり私達のいる1Fを通り越しB1Fへ行ったのです。

nextpage

「地下....?

なんで地下行ってんだ?

そもそも、下に行くボタンがないのに地下って...?」

ヒロキさんが驚いてる時、私はぞくっとしました。

私は以前、病院へシーツや布団などを運ぶ運送関連の仕事をしていて、病院のエレベーターの仕組みを多少理解していたからです。

music:2

通常、病院の地下というのは大体の場合、いわゆる「霊安室」がある場所。

なので、一般のお客や患者がむやみに地下へ行けないよう、地下へ行くためにはパスワードや鍵(ボタンあたり付いている)、特殊なボタンの押し方でしか行けないのです。

そこへ、上から来たエレベーターが私達を通り越し地下へ行ったということは、必ず誰かが地下でボタンを押すか、エレベーターの内部から何かしらの方法で地下行きのボタンを押す他にあり得ないんです。

nextpage

(ノブ..なのか?)

正直、それは考えにくい。

なぜなら、ノブがこの病院の地下への行き方を知っているわけがないからです。

もし行けるとしたら、どこかでその方法を入手したのか...?

.....それとも、ノブではない違う何かが乗っていたのか。

それともう一つ可能性がありました。

そして、一番あってほしくないことでもありましたが。。

それは、ノブがすでに「何か」に憑依され、操られているか、です。

(最悪の場合、どうやって対処したらいい?

霊感が強い影響で、霊への対応の仕方も一番詳しいのはノブだ。

そのノブが憑依されているとしたら....)

....私は、これ以上考えるのをやめました。

考えれば考える分、私の精神がもちそうにない。。

そうして心の準備もままならないまま、エレベーターの動き出す音が、この静まりかえった1Fの空間に響いてきます。

エレベーターが他に何の音もしない空間で動くと、あんなにも音がすることを、私はその時初めて知りました。

nextpage

ガッコン...

地下から上がってくるエレベーターは、私達のいる1Fで止まりました。

「......?」

なかなか開きません。

そもそも仮に地下で誰かが押し、そいつが乗っている可能性もあるこの扉の先。

震えながら身構えました。

shake

ガンッ!!!!!!

shake

ガンッ!!!!!!

「!!!!!?」

心臓が飛び出るかと思いました。

エレベーターの中から、確かに今誰かが扉を叩いてきたのです。

music:3

(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ)

私達は、猛ダッシュで近くの病室へ隠れ、扉の隙間からエレベーターの様子を伺いました。

どっくん、どっくん....

鼓動があり得ないほど早い。

更に加えて息苦しく、まるで短距離走を連続で走った直後のようでした。

nextpage

するとしばらくして、

ガーッ...

開くエレベーターの扉。

「.......?」

おかしい、誰も乗っていないのです。

「どういうことだ?」

不可解すぎる現象の数々に、私はおかしくなりそうでした。

唯一ギリギリ精神を保っている要因があるとすれば、ヒロキさんが一緒にいてくれたことです。

いつも度胸がすわっているヒロキさんは、頼りになる先輩でした。

この時ばかりは、ヒロキさんもかなり参った様子でしたが....

nextpage

ガーッ.....

扉は再び閉まり、エレベーターはそのまま1Fで止まりました。

「深夜1時か...

まじで急がねぇとな。

嫌な予感がすんだよ、早くノブを連れ出さないと、取り返しのつかないことになりそうな、、、そんな予感が、さ。」

.....図星でした。

私もヒロキさん同様、早く連れ出さないとヤバイということを、直感で感じていたのです。

私は勇気を振り絞り、もう一度エレベーターのボタンを押しました。

ガーッ....

今度はすぐに開く扉。

中をライトで照らし様子を伺いましたが、やはり誰も乗っている様子はありません。

当然、エレベーターについている蛍光灯のライトはついておらず、相変わらずボタンのみが光るだけ。

そのボタンのライトも、今にも切れそうな弱々しい橙色をしています。

時々切れかかって、細かく付いたり消えたりを繰り返す、そんなイメージでしょうか。

とにかく、何とも頼りない光でした。

nextpage

music:2

私達は、エレベーターへ乗り込みました。

ボタンは、B1、1F、2F、3Fとありましたが、やはりB1は押しても反応なし。

恐らく何かしらの行く方法があるのでしょう。

私は、どれを押すかで少し迷いました。

しかし、最初に止まっていた2Fが、普通に考えると一番確率が高いこともあり、2Fへいくことにしました。

...ポチ。

がががががが....

不気味に揺れるエレベーター。

そして、たかだか1F〜2Fへ行くのに、尋常じゃない程の時間を感じました。

途中で止まるのでは?

ロープが切れてしまうのではないか?

このまま電気が落ちたらどうなる?

2Fへ着いた瞬間に、「何か」が襲ってくるのではないか?

そんなことが、この数秒の間に頭を巡り、私を更に深い恐怖へつき落としていきます...

たった数秒という時間が、私には何分にも感じたのでした。

nextpage

music:4

到着。

ガーッ...

開く扉。

sound:18

たったったったったっ....

shake

「!!!!!!!」

また先程と同じ足音。

が、今度は先程と違います。

私達から照らされた淡いライトによって、一瞬ですがその「足」が照らされたのです。

ただし、「足」だけが。

青白く、骨と皮だけと思われるほど細い不気味な足だけが、私達の目の前を通過したんです。

nextpage

「み、見たかよ...今の。」

「...見ました。。」

言わずとも分かる、この世のものではない者のその足は、私達から見て右から左へ走って行きました。

が、その消えて行った先に見えるのは壁。

(....生きて帰れるのかよ、俺達。)

ゆっくりと足元を照らしながら、私達は2Fへ降りたのでした。。

エレベーターを出ると、左側は先程の足が消えていった壁。

その壁に、横幅1mほどの大きめな絵が飾ってあります。

時間の経過によって朽ちきった絵には、絵の具とも血とも取れるような黒い染みが満遍なく広がっていました。

nextpage

すると、ヒロキさんが急にその絵に向かって歩きだし、額縁の裏を確認しだしたのです。

「ヒロキさん、やめて下さいよ!

.....アレがあったらシャレになりませんよ!!」

ピタっと止まるヒロキさんの手。

「.....見てみろ。」

勘弁してよと思いながらも、私はその額縁の裏をライトで照らし、愕然としました。

「なんだよ、、これ。」

額縁の裏面には、びっっしりと魔除けであろうお札。

更に、そのお札をあからさまに切り裂いたような刃物の後。

いたずらなのか、意図的なのかは分かりません。

しかし現実に今、私達の目の前にあるお札は、無残にも引き裂かれているのです。

nextpage

「とりあえず...そういうこった。」

ヒロキさんが淡々と一言。

(ふざけるな、「そういうこと」で済まされる問題じゃない。

つまり、何の防御もされていない魔の巣窟ってことじゃねぇか!)

絶望を迎えた気持ちになりました。

身体の力も、気力も一気に失せました。

しかし、俯く私はあるものを発見したのです。

nextpage

music:2

「これ...」

私の落とした目線の先に、破れていない一枚のお札。

日が経ち、湿気と埃でボロボロでしたが、確かに一枚のお札がそこに落ちていたのです。

(何かの役に立つかもしれない。)

私は、そのボロボロのお札をポケットに入れました。

2Fのフロアは、エレベーターの目の前にナースステーションらしき場所があり、その他の部屋の壁は殆ど抜けていました。

「一先ず、一つずつ見て回ろう。」

先程と同様、私達はお互いの袖を掴み、ゆっくりとフロアを見て回りました。

しかし、ノブの姿は依然として消えていて、崩れたベット、汚れたシーツ、崩れた壁の破片が広がるばかりでした。

一通り見て回り、奥の部屋からエレベーターの方へ戻ろうとした瞬間でした。

nextpage

sound:18

ピー!

ピー!

ピー!

ピー!

「!!!????」

「.....なんの音だ?」

携帯ではない明らかな機械音。

エレベーターの方からでした。

正直、確認どころかエレベーターの方へ戻ることすら気が引けましたが、私達は恐る恐る戻っていくと、ナースステーション内部の一箇所が赤く光っているのです。

shake

「!!!」

絶句しました。

光っていたのは、患者が看護婦を呼ぶ際に使われるあの「ナースコール」を押すと光るライトでした。

ズラッと並ぶ、室号が書かれた欄の横に、そのライトがありました。

「308...」

光っていた部屋は、恐らく3Fの部屋でした。

これからそこへ行かなくてはいけないのか。

容易に想像できるそこの異常さ。

私は、正直全て投げ出し逃げ出したい気持ちでいっぱいになりました。

しかし、それは同時にノブを置いていくことになるのです。

そして置いていけばノブの精神、あるいは命すら、無事であるわけがない。

nextpage

自らに課せられた、友人の命の重さは、私の足と精神をどうにか繋いでくれました。

そして私達は、再びエレベーターのスイッチを押したのでした。。

続く

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
2,0477
24
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

翔さん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

続きが気になる...そう思っていただけただけでも嬉しいです。

これからもぜひ、宜しくお願いします。

怖いけど続きが気になる(>_<)

はなさん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

いえ、本当に褒めていただき恐縮です^^;

少しでもはなさんのスリルある時間を作ることが出来たのなら、本当に嬉しいです^_^

ぜひ、続編も読んでいただけたらと思いますので、これからもよろしくお願いします。

ギャー~(≧◇≦)めちゃこわいー!! そしてセンス光る話の展開、めちゃテクニシャーン(≧∇≦)b

「怖い」を付けていただいた皆様、どうもありがとうございます。
これからも、皆様のスリルある時間を作れたら、と思っております。

近いうち、また続編を更新する予定ですので、ぜひ読んでいただければと思います。

どうぞ、宜しくお願いします。

ロビンMさん、前作に続きコメント&怖い、ありがとうございます。
そう言っていただけると、続きを書く力になるので有難いです。
ロビンMさんの話も私は大好きで、読ませていただいております。
逆に、私にはロビンMさんの文章は真似できませんし、個人的にすごいと思ってます。
もう少し先がございますので、また宜しければ読んでいただけると嬉しいです。
ロビンMさんの次回作も、期待しておまちしております。

やあロビンミッシェルだ。

スリルを求めて軽い気持ちで訪れた病院、一転仲間を奪われ、帰りたくても帰れずに次々と襲って来る恐怖…

病院の特性を生かした怪現象、今にも現れそうで未だ姿を見せない異界の何者か… ひひ…

よく出来ている、完璧すぎる、俺にはこんな話は逆さに振っても思いつかない、マジリスペクトッス!!