短編2
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老婆の声

music:1

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私がまだ小学校四年生だった頃。

その日は早くに目が覚めてしまい

時計を見ると朝の4時過ぎでした。

カーテンを少し開けて外を見てもまだ真っ暗。

…まだ誰も起きてないだろうな。

そう思ってしばらくベットに横になって

そのままゲームをしていたんです。

ゲームのステージをクリアして

少し疲れたのでセーブをした後

一度ゲームを開いたまま枕元に置きました。

そして何気無くドアを見た瞬間。

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music:2

ドアの向こうから声が聞こえたんです。

老婆の様なしわがれた声です。

でも、うちにも近所にも

決してそのような老人はいないのです。

私は何が起きているのか理解できず

ただドアを見つめていました。

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……カ…ラン………ラン……エ……

最初声はなにを言っているのか声が小さく聞き取れませんでした。

しかし時間が経つにつれ声は大きく

鮮明に聞こえるようになってきました。

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カエラン…カエラン…カエラン…カエラン…カエラン…カエラン…カエラン…カエラン…カエラン…カエラン…カエラン…カエラン…

それだけを抑揚の無いしわがれた声は

延々と聞こえます。

やがてその声はドアの前まで来ました。

sound:14

コンコン…

声は止みノックの音が聞こえます。

私は半泣きでした。

そしてノックの音も止むと

sound:26

今度はドアが少し開きました。

少しづつ、少しづつ、もったいぶる様に

ドアは開いてドアの向こうが

見えるか見えないかくらいに開いた時

私の意識は途切れました。

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music:5

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sound:1

目を覚ますとカーテンの隙間からは

朝日の光が漏れ

リビングから母親の料理する音が聞こえ

時計の針は7時を指していました。

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これが私の体験した話です。

なんだ。結局夢だったんじゃないか。

そう思いますよね。

music:3

でも私の枕元にはステージをクリアした直後のセーブデータを映し出す開いたままのゲームが置いてあったんです。

…あなたはこれでも、夢だと言えますか?

Concrete
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