中編2
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歯軋り

俺は登山好きなんだけど、百間平周辺を通る度に、毎回すげぇ濃い霧と雨にやられる。

90年の秋かなぁ、3人で縦走してたんだけど、そん時もすげぇ濃い霧だった。

だだっ広いし、積み重なった石の原っぱみたいなとこだから、マーカー探すのも苦労した。

何も見えなくてすげぇきつかったし、寒くて、サイの河原の中を延々歩く感じ。

途中で、メンバーの一人が急にバテ出して吐き気を訴えたから、小さなケルンのあるとこで小休憩をとることにした。

馬鹿話しながら、ルートを少し外れて、ザックを下ろして石に腰掛けた時、ギィッとでかい音がした。

最初は鳥の声だと思って、クッキーと水飲んで地図とか見ながらぼんやりしてたんだけど、そしたら、また尻の下からギリギリッて音がした。俺は

「あれ?なんだろう?」

と思って、腰掛けてた石の下を覗いたんだ。

結構でかい石がどかどか積み重なってる辺りで、隙間もでかかった。目を凝らすと、奥になんか黒い塊が転がってるのが見える。

なんか気になったけど、手は届かないし、霧がすごくて暗いし、しばらく目が慣れるまで見てた。

そしたら、黒い塊の表面に急に茶色い犬歯がにぃって見えて、その歯がギギッてさっきの音たてた。

その瞬間、背筋が凍った。人の首だった。ミイラみたいな感じで、目がくぼんでたんだけど、そこが細い白い糸でぎっちりと等間隔に縫ってあって、まぶたが震えて動いているのがわかる。歯がぎっぎって音たてた。

俺はマジでびびって、大声あげて仲間を呼んだ。で、代わりに覗かせたわけ。

そしたら、仲間も同じ物が見えて気分悪かった奴は吐きまくって、ちょっとしたパニックになった。

すぐに離れた。そっから、ばててた奴もすげぇ気合い入れて歩いて、霧はひどかったけど、予定よりだいぶ早く小屋に着いたと思う。

で、まぁそのまま小屋に連絡して、遺体は警察が回収。俺は聴取受けてそんだけ。

まぶたが固く縫われてたと思ったのは、うじだったのかなぁと思う。メンバーも俺もその時は絶対に縫われてると思ったけど。

回収した警察からは身元不明の頭骨ってだけ言われた。絶対にそんな事はなかった。あれは肉がしっかりついた頭部だった。

今でもあそこを通るときは雨か霧にやられる。

もう、あまり恐怖心はないけど、覗き込んでしまった、あの顔だけは忘れない。

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