短編2
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悲しき愛

ある年の夏、Aさんが友達二人と旅行に行ったそうです。

一日目の夜、三人で花火をしようという事になってペンションの近くの岩辺で花火が出来そうな場所を探していました。

するとAさん達が歩いている前の方に、一組のカップルがいました。

「ごめんね…」

『何言ってんだよ、気にするなって。』

「…でも、私せいで…」

『俺が選んだ事なんだから自分を責めるなよ!』

何やらケンカをした後の会話のようで、Aさんは一度は視線を反らしたものの、気になってもう一度カップルを見ました。

しかし、もうそこにはカップルがいませんでした。

「ねー、前にいたカップルどこに行ったんだろ?」

Aさんが友達に尋ねると、

『前にカップルなんていた?』

『え、いなかったと思うよー。』

友達二人の返答を聞いたAさんはゾッとしました。

それから花火をする間も考えたくないのにあのカップルの事が頭から離れません。

Aさんは花火を楽しめないままペンションへ戻っると、オーナーや他のお客さん達と夕飯を食べる事になりました。すると食事の途中でオーナーが

『そう言えばこの近くの岩辺に幽霊が出るんですよ。』

Aさんはハッとして、オーナーに「詳しく話して下さい!」と頼みました。

オーナーの話によると、数年前にあの岩辺付近で一つのグループがダイビングに来ていたそうです。

一人の女の子が海に潜っていたら、岩にボンベが挟まってしまいました。救助を呼んでも間に合わず、取ることも不可、脱ぐことも不可能で、酸素が無くなって死ぬのを待っている状態になりました。

そのグループの中には女の子の彼氏もいて、彼氏は海に潜って女の子を助けようとしましたが、何も出来ません。

すると彼氏は意を決したように女の子を見つめて、自分も死ぬ覚悟をしました。

それから何十分か経って救助が着ましたが、引き上げた時には二人は亡くなっていたそうです。

お互いの手を固く握りしめ合いながら…。

その話を聞いたAさん達はその場に泣き崩れました。

死んでからも女の子は彼氏に謝り、彼氏は女の子を慰め続けてるのです。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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