短編2
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傘女。

カナさんの住んでいる町にはある噂がある。雨の降る日に駅へ行くと、「傘女」に会うと言うのだ。

傘女とは白いレインコートに白いマスクをした女で、真っ黒い長い髪の女だ。女に会うと、決まって「傘貸して」と言われるので、傘女と呼ばれるようになったらしい。

ある日のこと。カナさんが改札口を出ると、湿っぽい匂いとザアザアと耳をつく雨音が聞こえてきた。そういえば、天気予報では午後から雨が降ると言っていたのを思い出す。

「折り畳み傘を持ってきて良かった」

こんな時のために出掛けに用意しておいたのだ。カナさんは鞄から傘を出すと、パッと開いた。

「傘、貸して」

背後から声を掛けられた。ドキッとして振り返ると、白いレインコートにマスクをした髪の長い女が立っていた。

「傘、貸してよぅ」

女は手を出した。コートの袖に隠れているのか手そのものは見えない。だが、ニュアンスで手を出しているのだということは理解出来た。

「傘貸してよぅ。傘貸してよぅ。傘貸してよぅ。傘貸してよぅ。傘貸してよぅ。傘貸してよぅ。傘貸してよぅ。傘貸してよぅ。傘貸してよぅ。傘貸してよぅ。傘貸してよぅ……」

女は駄々をこねる子どものように繰り返す。ヘタに断ると、何をされるか分からない。カナさんは震えながら傘を差し出し、女が受け取るか受け取らないうちに踵を返して走った。家に着いた時は濡れ鼠だったという。

「……お気に入りの傘だったのに」

それから数日後。カナさんが家に帰ると、折り畳み傘が郵便受けに届いていた。綺麗に畳まれたその傘は、確かに女に貸した物だった。

お気に入りの傘が返ってきて良かったねと話すと、カナさんは強張った顔で首を振った。

「……何であの女、私の家を知ってるのよ」

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オチでぞわっとする話すごく好きです。
更新楽しみにしています(^^)

hikaさん☞まめのすけ。

きゃあああ。ご無沙汰しております。その後、お怪我のほうは大丈夫でしょうか?

こうして久しぶりにお名前を見つけ、嬉しさのあまり飛び上がってしまいました。本当にありがとうございます!

私は傘をよくなくします。買ったと思って安心していると、なくなるのですよ。ビニール傘なんて何本買ったか分からないくらい。いつの間にか消えてるんです。

手や足でも生えて、お散歩にでも行ってるんですかね。実に不思議です。

まめのすけ。様 御無沙汰しております。
ここへ来るのが久しぶりでしたので、まめのすけ。様のお話が沢山で今からウキウキしております(●⁰ꈊ⁰●)♡

傘女が現れたらどうしよう…と怖くなったものの、自分があまり傘を持ち歩かないので取り越し苦労でした 笑

赤煉瓦さん☞まめのすけ。

確かに。ストーカーばりに着いてこられるのならば、傘なんて差し上げますからどこかへ行ってほしい。

私の従姉妹は本屋からずっと男性にあとをつけられたそうなのですが、途中でUターンして逆に男性を追いかけ回してやったと笑っておりました。

見た目は草食なのに、中身はガッツリ肉食な従姉妹です。

Licoさん☞まめのすけ。

貸さないとどうなるのでしょうかね?貸さないで済むなら貸したくありませんが……貸さないことで自分に不利が働くのならば、私なら渋々かすと思われます。

私は一度、犬の散歩中に雨に降られてしまって。濡れ鼠状態で歩いていたら、車に乗った紳士が傘を恵んで下さいました。お名前をお聞きしたんですが、「もういらない傘だから」と爽やかに去っていかれました。

彼こそ紳士です。

ゆうたさん☞まめのすけ。

ありがとうございます。怖いと仰て頂け、ますます励みになります。

皮膚科の待合室にてふっと思いついた話でした。クーラーが効き過ぎて、冷え性の私はぶるぶる震えながらスマホを操作しておりました。まだクーラーは早いですよ……。

背後に誰かがいるって、それだけで恐怖ですね。つい後ろを振り返ってしまうその心理……。

雨が降る日は何となく陰鬱です。

uniまにゃ~さん☞まめのすけ。

さとうさんですか(笑)。気持ちは分かるような気がしますよ(笑)。

独特の声をしていらっしゃいますよね。まめのすけ。も声が高いほうなので、ハスキーというか大人びた低い声音の方が羨ましい。ヤマイさんが理想です。

まめのすけ。様 なまら恐いっしょ!
返さなくていいから、着いてこないで‼︎

こわっ!
これは、一体貸すべきなのか…貸さない方が良いのか、正解は何なんでしょう。笑

怖いですね
傘女はいつから背後にいたのでしょう....

さとう玉○みたいな喋り方だったら、(-"-)ぐーぱんだ