中編4
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百鬼夜行

三年ほど前の話。

うちの父方の実家は田舎の旧家なんだけども、特に怪しいものはなかったわけ。

いや、都会には無いような神棚とかはあるけど、別に珍しくもなんとも無い物だしね。

俺も幼少の頃からよく行っていて、普段は触れられない自然に大はしゃぎしてた。

都会にはクマゼミ?が多いんだけど(ていうかこれしかいない)田舎ではレアで、

現地の子供とかに「めずらしくもねーよ」なんて講釈たれてた記憶がある。

最後はそんなやつらに混ざって真っ黒になって帰ってきてた。

そんな気心知れた場所だから、夜中とかは信じられないぐらい暗くて静かになっても怖く無い。

広い家の中に俺と祖父と祖母しかいないんだけど、

普通に一人で、八畳の和室で寝てたわけ(祖母たち二人は二階)。

そしたら夜中に、外で話し声(歌?)と楽器(鈴みたいなもの?)の音。

それと大勢の人が歩く足音が聞こえんの。足音は揃っていて、軍隊の行進みたいだった。

時間は良く覚えていないけど、夜一時から三時の間ぐらいかな。

うちの庭から門を抜けると田んぼしかない。ちなみにコンビニなんて気の利いたものもないから、

そんな大勢の人間が歩いてるはずは無い。

俺は布団でごろつきながら、最初はあまり気にしてなかった。ていうか夢現って感じ。

ぼんやりと実家にいるような心持で「事件かな。火事でもあったか」とか考えてた。

そしたらその足音が庭にまで入ってくんの。そこではっきりと目が覚めたね。で、ありえねーって起き出した。

廊下に出て雨樋っていうのかな?よく分からないけど板の戸を開けようとしたんだわ。

その時は好奇心だけで、恐怖は感じなかった。事件現場を覗く野次馬みたいな心境。

幽霊とか妖怪とか、そんなものに結びつけもしなかった。

そしたら、ドタドタって別の方向から足音がしてさ祖母が走ってきたの(どっちかというと、そっちにビビった)。

七十超えた年寄りとは思えない速さで。そりゃあもう、なにがあったってぐらいの形相をしてた。

「○○君(俺ね)。開けたらいけん。こっち来なさい」

「どうしたん?」

「いいから!」

入れ歯してなかったから何言ってるのか聞き取りにくかったけど、

概ねこんな会話をして神棚のある部屋に連れて行かれた。

俺はそのときも、凄い事件でもおきたのかとワクワクしてた。

そんでもってそこから、祖母は朝までお祈りのしっぱなし。

祖父は飾ってあった日本刀を持ってドアの前に仁王立ち。

いやね、正直笑ってしまった。なにがあったのかと。

しばらくは俺も大人しくしてたんだけど、いい歳した男が守られてるみたいなのはどうかと思って、

「どっか強盗でも入ったん? 俺もバッドでも持ってこようか?」

とか言って立ち上がった瞬間、

「ここにいなさい!」

二人揃って絶叫。マジで長年連れ添った息の合いかただった。

俺は訳も分からないまま、夜が白み始めて蝉が鳴き始めるまで、唯一置いてあったアルバム見てた。

昔はあんなに可愛かったのに、今はいい歳してコギャルスタイルな従姉に、何があったのかと黄昏ながら。

んで、次の日は祖父も祖母も大慌て。近くの神社に行って話を聞いて、俺も夕方になって簡単なお祓いをされた。

なんか知らない人も何人か来てた。

そこでようやく俺は事情を教えてもらったわけ。

なんでも、俺が聞いたのは百鬼夜行の足音らしい。

といっても、それは意訳的な意味で、なんとかウンギョウ?リョウ?行列とか言ってた(すまん聞いたこと無い単語で忘れた)

以下、聞いて覚えてたことを箇条書き。

・そいつらは人間霊ではなくて、もっと違うものらしい。

・妖怪に近いものだが悪戯はしない。ただ、姿を見ると連れて行かれる。

・良いものと悪いものに分けるとしたら、悪いもの。関わらない方が良い。

・神社の井戸と、祠の間を同じ道で行ったり来たりしてる。

・俺のうちはその通り道だった。それで神社にお願いして道を変えてもらってたらしい。

 (確かにここらには、昔から通らない方がよいと言われている道がある)

・その日、祠が壊されたので昔の道を通った。

・家に入らなかったのは、神棚とご先祖様が守ってくれたから。

いやね、俺は最初「カルトじゃないんだから」とか「あーあー、我が家もかよ」とか白けてたんだけど、

よくよく考えると普通じゃありえないよね。なんで家に入って騒ぐ必要があるのかと。

寒くなって帰る時にその祠に寄って、神社の人に渡された棒切れを置かされた。

なんかミミズみたいな文字が縦に書かれてるやつ。

その祠自体は始めて見た。川の向こうだったから行くことが無い場所だったんで。

石造りなんだけど、粉々になっていた。コンクリートじゃない固い自然石で出来ていたのに本当に粉々。

マジであんな潰れ方は普通はしないね。断言できる。大人が数人がかりで鈍器を持ってもまず不可能。

車が突っ込んだわけでもないらしい。

その時はなんにも考えなかったけど、後から色々考えて怖くなった。

話を聞いた後だからかもしれないが、嫌な雰囲気をしてたよ。

刺すような敵意じゃなくて、薄く延ばした狂気みたいなものが充満してる感じ。お祭りみたいに浮ついてた。

手を合わせようとして祖父に怒られたw

帰り道に祖母に「よう気がついたな。俺が外に出ようとしたの」って聞いたら、

「神棚においてある鏡が転げ落ちてきた。それで気付いた」みたいな事を言われた。

俺は生まれて始めてその神棚に手を合わせた

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