長編9
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赤い村-矛盾-(10)

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music:4

丸山は、ふと時間が気になり「相談室」にかけられている時計を見た。

時刻は午後14時を過ぎている。

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(随分と長い間ここにいてしまったな......。)

時間が惜しい丸山は、今更ながらに焦っていた。

実際、明後日がリミットだとしても、明後日のいつ死ぬのかは分からない。

つまり今日と明日、残りおよそ34時間以内には、全てを終わらせる必要があった。

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「では、神山さん。

早速行きましょう....!」

丸山がそう言った途端、前田がニョキっと横から顔を出し、呆れたような表情を見せた。

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「本当に目先のことしか考えてないんでしゅね〜丸ちゃんは....。

まずは準備が必要だろーが。」

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「そ、そんなこと分かってるよ!

......行く途中で買おうと思ってたんだよ、馬鹿っ!!」

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実際、まさしく図星を突かれた丸山だったが、すぐにフォローを入れた。

当然、苦し紛れの言い訳は前田にバレている。

前田は、目を細めニヤニヤしながら「ププ。」と笑う仕草を見せた。

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久々に前田の嫌味が炸裂したことを余所に、丸山は神山と二人、そそくさと市役所を後にしたのだったーー。

*************

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music:2

三人は前田の車へ乗車した。

後ろへ神山を乗せ、丸山は助手席だ。

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「必要なものは.....。

水と食料と懐中電灯、一応スコップと護身用にバット、って所かな?

...神山さん、古文書はどちらにあるんですか?」

ボーっと流れる景色を見ていた神山は、ハッとしたように丸山を顔を向けた。

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「あっ、は、はい。

古文書は、恐らく病院の金庫に入れてあるはずです。」

「分かりました。

では、病院へ案内してください。」

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神山は前田をナビゲーションし、神山の病院へと案内した。

......20分ほど走ると、徐々に住宅が無くなり、やがて林道へ入った。

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「あ、ここを右折してもらえれば、30m程で病院です。」

言われた通り、細く曲がりづらいT字路を右折すると、右手に木々に囲まれた古びた病院があった。

すっかり廃墟化していたが、20年前まで営業していただけあり当時の面影を残していた。

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「そういえば、神山さんは今どちらにお住まいなんですか?」

ふと丸山が尋ねた。

聞いた話では、病院が自宅だったはずだが、見たところ住んでいる様子がなかったからだ。

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「......えぇ、今は市役所から5分程の小さなアパートに住んでるんです。

この病院を売りに出すのも、また新しい家を購入するのも、何だか気が引けちゃって....。

独り身ですしね。」

神山は軽く微笑み、ポリポリと頭を掻いた。

*************

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music:3

病院は、二階建ての比較的小さな病院であった。

こんな街から離れた場所にあるにも関わらず、当時は繁盛していたと言うのだから、神山は確かに腕のいい医者だったのだろう。

そんなことを丸山は考えながら、神山の案内する病院の裏口へ向かった。

sound:18

「.........ん?」

気のせいだろうか。

ふと、病院の周りにそびえる木々の合間に、誰かがいたような気がした。

ほんの一瞬、視界の隅に映り込むように.....。

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shake

「!!!!!!!」

.....いや、気のせいじゃない。

先程の気配があった辺りから、確かに感じる身体にまとわりつくようなネットリとした視線。

間違いなく、「そこ」に何かがいる。

丸山は、ゆっくりと視線の感じる方へ顔を向けた。

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「......あ....れ....?」

そこには、サラサラと風になびく木の葉と、スラッと伸びた幹があるだけだった。

.....いつの間にか、気配も消えている。

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(今......確かに何かが......。)

ギィー.....

「どうぞ、こちらからお入り下さい。」

......丸山は、「気のせいだ」と思うことにしたのだった。

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神山は病院の裏口を開け中へ入り、丸山と前田も後に続いた。

二人は案内されるまま、受付フロアの椅子へ座った。

.....随分と埃が溜まっている。

恐らく、清掃などはしていないのだろう。

他の細かな小物にいたるまで、病院は当時のままを残しているようだ。

それこそ、綺麗に掃除をすればまた営業が出来るのでは?と思う程に....。

しばらくすると、神山が奥から戻ってきた。

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「....お待たせしました。

これが、あの古文書になります。」

神山は、くしゃついた紙の古びた薄い本を丸山へ手渡した。

表には何も書かれていない。

更に、本は所々に茶色いシミや汚れが目立つ。

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「聞いてなかったですが....。

神山さんはこれを一体どこで?」

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「はい.....。

あの日、私は宮坂勇樹の遺体からメモを取り出した後、儀式の行われた屋敷へ戻りました。

この古文書を回収し、私が保管することで、確実に封印を解かれないようにするためです。

案の定、これはあの「儀式部屋」から見つかりました。」

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「そう....でしたか。」

丸山は、もう一度古文書を見た。

あの部屋で見つかったということは、この本に付着している茶色いシミは.....。

丸山はそれ以上考えないようにしたのだった。

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「それじゃあ、行くぞ。

モタモタしてる暇はねぇからな。」

前田が丸山の背中を軽く押し、早く行くよう急かした。

先程開け、開いたままになっている裏口の扉へ歩いた....。

.......その時だった。

バタンッ!!

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shake

「!!!!!!?」

開いていたドアが一人でに閉まったのだ。

明らかに風ではなく、人が力いっぱい閉めるような勢いで。

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ....

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「お、おいおい、嘘だろ.....!?

.....ドアが開かねぇぞっ!!」

丸山が何度もドアを開けようと試みるが、扉はビクとも動かない。

力尽くでも試すが、それはすでに普通の扉ではなかった。

.....とにかく、開かないのだ。

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「窓、突き破るしかねぇだろ!」

前田が近くにあった消火器を持ち上げ、思いっきり窓へ投げつけた。

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shake

ガーンッ!!

「まじ.....かよ。」

ガラスで出来ているはずの窓ですら、まるで割れる様子がない。

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shake

「ああっ....!!!」

三人は唖然とした。

先程まで、昼間だったはずの空が、まるで夜のように赤黒く変色していくのだ。

徐々にそれは空全体を覆い、病院のいたるところにまで及んだ。

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「なん...ですか、これ....。」

神山にもそれは同様に見えているようだ。

ガタガタと足を震わせ、神山はペタっと床へ座り込んだ。

辺りはまるで夜の様に光が奪われ、とうとうお互いの顔すらろくに認識出来なくなっていった。

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「くそっ....懐中電灯はあるか、オッサン!!?」

「あぁ....ぁぁ....。」

神山はガタガタと震え、まるで前田の言葉が耳に入らないようだった。

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「ちっ...おい、丸山。

恐らく小さめな施設だから、裏口の扉付近に懐中電灯が防災用にあるかもしれねぇ。

手探りでいいから探してみてくれ!」

「あ、あぁ....わかった!!」

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扉の周りを手探りで探してみるものの、なかなかそれらしいものが見つからない。

......その時だった。

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sound:18

「ひっ....!!?」

丸山の手の先に、何かが当たった。

ゴワゴワとした感触。

丸山はすぐにそれが何か分かった。

(髪.....の毛.....?)

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「おいっ、あったか丸山!?」

「い、いや.....み、見つからないっ.....!」

すでに丸山の頭からは懐中電灯など無くなっていた。

今自分の手に触れたものは何なのか。

それのみが思考を埋めつくした。

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「丸山ぁ!!

お前の煙草のライターを付けろっ!」

そうだ。

丸山はヘビースモーカーであり、常に胸ポケットには煙草と一緒にライターも忍ばせてある。

震え始める手で胸ポケットを探った。

(あった....。)

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カチッ....

カチッ......

ライターに火が灯った。

淡いオレンジ色の光がぼんやりと周りを映す。

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shake

「う、うぁぁああぁぁあ!!!」

その明かりの先に、ぼんやりと浮かぶ青白い顔。

目は絡みつく髪でよく見えないが、大きな口がニタァと微笑んで此方を見ている。

実際、丸山との距離は1mもない。

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shake

ガターンッ!!

丸山は、勢いよく後ろへ尻もちを付いた。

その際に、何かが倒れ静まる病院内に落下音が響く。

倒れた反動で、ライターの火が消えてしまった。

.....それでも、今だに感じる「顔」の気配。

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「か、か、顔っ.....顔がっ!!」

「おいっ!どーした丸山!?」

前田が物音を頼りに、丸山へ近づいた。

手探りで丸山の居場所を特定し、倒れた丸山を起こした。

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「なんか見たのか!?

.....ちょっとライター貸せっ!」

半ば強引に丸山の持つライターを奪い、前田が火を付けた。

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カチッ....

「......何もいねーぞ....?」

前田がライターを付けたと同時に、「ソレ」の気配は消えていた。

ぼんやり浮かぶ明かりには、先程の扉があるだけだった。

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前田は、ライターの明かりを頼りに辺りを探し、扉の右下辺りに設置されていた防災用の懐中電灯を発見した。

ガチャ....

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前田が懐中電灯を外すと、明るい光が辺りを照らした。

その光の先には、座り込んで震える二人の男。

正直、前田は二人の情けなさに嫌気が差しかけた。

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「おいっ、いつまでそこでお座りしてるつもりだ、ん!?

さっさとここ出ねぇとヤバイんじゃないのかなぁ、お二人さん??」

前田の言葉に、フラフラと立ち上がる二人。

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「で、扉は開かねぇ、窓は割れねぇで、どうすんだ?

神山のオッサン、この病院の他の扉は何処にある?」

前田の質問に、震えてなかなか答えない神山。

前田はドカドカと神山へ歩み寄り、お尻をバシッと引っ叩いた。

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shake

「さっさと答えろっ!!」

その言葉にビクっとしたように正気を戻した神山は、慌てながら答えた。

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「は、はい、正面の入り口と、防災用の出口が奥の事務所にあります。」

「よし、とりあえず一箇所ずつ当たってみるぞ。

お前ら、この状況分かってんだよな?

次にアタフタしたら顔面引っ叩くからな。」

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前田の一喝に、二人はようやく目を覚ました。

だが、丸山の心は今だにあの「顔」と「時間」が離れない。

こんなところで時間を潰しているわけにはいかない。

そう思う中で、丸山はある一つの疑問が頭に浮かんだ。

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(俺たちは、あの少女を成仏させるために動いているはずだ.....。

なのに、なぜこんな時間制限をかけたり、俺たちの邪魔をするような行動を取るのだろうか.....?)

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「矛盾」。

その言葉がピッタリと当てはまった。

もし、少女が本当に成仏を望むのなら、丸山達を殺そうとする理由が見当たらないのだ。

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(まさか.....。

目的は成仏じゃ....ない.....?)

丸山達に、また新たな疑問が生まれたのだったーー。

*************

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music:2

三人は懐中電灯の明かりを頼りに、正面入口へと回った。

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shake

ガンッ!

shake

ガンッ!

「くそっ....ダメだ、やっぱり開かねぇ。」

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正面入口も先程の窓同様、ガラス製にも関わらずビクともしない。

窓から見える外は、相変わらず赤暗い闇が覆っている。

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「仕方ねぇ、防災用の方を当たってみるか。」

三人は1F奥の事務所へと足を運んだ。

汚く大量の埃を被った机の傍に、防災用の小さな扉が隠れるようにして現れた。

前田が、その扉へ手をかけようとしたその瞬間ーー

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shake

バンッ!

「!!?」

shake

バンッ!!

「なっ、なんの音だ!?」

shake

バンッ!!!

先程いたフロアの方から、壁を叩くような音がするのだ。

しかも、その「音」は徐々に此方へ近づいてくるように大きく、早くなっていく。

shake

バンッバンッバンッバンッ!!!

事務所のすぐ目の前まで来ると、その音は静まった。

シーン....と静まりかえる空間。

しばらく三人は音のあった方を見つめたまま動けずにいた。

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「と、とにかく開けるぞ。」

ガンッ!!!

扉は勢いよく開いた。

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「ひ、開いたっ!!!」

三人は急いで外へ出た。

そして、すぐさま地べたへ倒れ込んだ。

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「ハァ.....ハァ......。

な、なんだったんだ今のは...?」

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愚痴るように前田が言うが、当然誰も分かるはずはない。

三人は急いで車へ乗り込み、村へと急いだ。

車の中では神山のナビ以外誰も口を開くことはなく、特に丸山は、下を向いたまま一人考え事をしていた。

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(あの「顔」....。

一瞬だったがあの少女で間違いないだろうな....。

でもなぜ?

もし成仏が目的じゃないとしたら、一体何をしてほしいんだ....?)

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車の外は、先程と何ら変わらない風景が広がっている。

それでも、空は相変わらず赤黒い闇が覆っていたのだったーー。

続く

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すいれん*さん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

私のこんな駄文でも、ドキドキしていただけたのなら本当に良かったです^_^

すいれん*さんのご期待に添えられるよう、頑張りますので、また更新した際には宜しくお願いします。

初めまして‼︎

今回の話もドキドキしながら読ませていただいてます。

次回も楽しみにしてます!

クラウドさん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

そう言っていただき、本当に感謝致します^_^

また、応援していただいていることを噛み締めて、これからもクラウドさんの怖くて楽しい時間を作っていけたらと思っています。

これからも宜しくお願い致します^_^

初めまして。

怖いお話ですが、いつも楽しく読ませていただいております。

早く続きが読みたいし結末が気になる、だけど物語が終わってほしくない…

まさに私も矛盾に悩まされています(>_<)

楽しみにしています、これからも頑張って下さい(*^^*)

暇人さん、コメント&怖い&ご指摘をいただき、ありがとうございます。

ご指摘された点につきましては、修正させていただきました。
毎度のことながら、申し訳ありません>_<

暇人さんの予想は....
今のところ、私の方からは何も言わないでおこうと思います^_^
また更新した際には、どうぞよろしくお願い致します。

音のあった方を見つけたままではなくて見つめたままではないでしょうか?
早い更新ありがとうございます!!
自分の予想なのですが、少女に赤神がとりついていて封印をとかれないために邪魔して来てるのではないかと思います。
あくまでも予想ですが(笑)
今回も面白かったです!!
次回も楽しみにしています。

はるさん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

お待たせしてすみません>_<
私の駄文な物語を楽しんでもらえて、本当に感謝致します^_^

いつまでもドキドキしてもらい、ラストを迎えられるような、そんなお話できるよう頑張って参りますので、これからも宜しくお願い致しますね^_^

次の更新までもう少々お待ち下さいませ。。

ユウさん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

この矛盾を解いていくことで、ラストに全てが分かるよう、物語を進めていけたらと思っています。

これからも楽しんでもらえたら嬉しいですね^_^
頑張ります。

また更新したら宜しくお願い致します。

ガラさん、コメントをいただきありがとうございます。

仕事お疲れ様です>_<
ガラさんには申し訳ないのですが、このお話を読んでいて遅刻しそうに....
なんて私自身はすっごく嬉しいです>_<w

それほど集中して読んでいただけることに感謝を込めて、これからも飽きのこない楽しい作品を作っていきたいと思います^_^

これからも宜しくお願い致します。

絶望さん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

毎回コメントいただいて本当に感謝致します>_<
数々のお褒めのお言葉、いつも嬉しく思っております^_^

三人の運命はどうなっていくのか、最後まで見ていただきたいと思いますね。
おおよそのラストは何となく浮かんでいるのですが、また書きながら変更していきそうな気もするので、完全に決まっているわけではありません。

次の更新も、どうぞよろしくお願い致します。

VEILEDGOTさん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

奥行きのある物語なんて....
ありがとうございます(T ^ T)
嬉しいです>_<

様々な問題がある中で、きちんと説明しながらラストを迎えるように仕上げていきたいと思っています。

また更新の際は宜しくお願い致します^_^

早い更新ありがとうございます(^^)
そしてお疲れ様です。

今作品も読み応えのある内容で読ませていただいてるこちらも凄いドキドキします…笑

更新が遅くてもいつまでも待ちます。←
楽しみにしています(^^)

早い更新ありがとうございます!
丸山と一緒になって矛盾になって考えましたが何故なのかとても気になります!

次の更新、首を長くして待ってます(^-^)

NAOKIさん凄いですね♪ 物語に集中しすぎて仕事に遅刻しそうになりましたよww

約1名 死亡フラグが((o(^∇^)o)) これはヘタな推理系よりも面白いです! 最高

色んな推測が広がって非常に奥行きのある感じな物語に感じますね(*’ー’)
地獄の始まりか…(´⊙ω⊙`;)