長編7
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幽霊の存在 三

「幽霊の存在 二」の続きです。

「知ってるさ、でもさっきの方法ならもう誰も苦しまなくて済む。

自業自得で地獄に落ちるんだ。こいつも承知の上だ」

そんな方法、リナが苦しむだけじゃないか。

何が誰も苦しまなくて済むだ!

こんな、こんな救いのない・・・

それに他にも方法があるんじゃないのか?そう考えてしまうのは現実から目を背けたいからか。

これ一択しかないなんて、そんな、救いのない話・・・

「なぜお前がその子を庇うのか知らないが、変に感情移入するのはやめろ。

霊に感情移入したところでなにもいいことなんてない。少なくともお前にとってはな・・・」

本当にそうなのか・・・?

苦虫を噛み潰したように顔をしかめる。

その様子を察したのか死神は不敵な笑みを浮かべた。

今までほぼ無表情だった死神が・・・

こいつ・・・この状況、この俺の、様子を、みて楽しんでやがる!

「どうしても、こいつを救いたいのなら方法がないわけではないが相応のリスクを伴う。

その覚悟があるのなら考えてもいいが・・・どうする?」

「なんだよ、その方法って・・・」

いやな予感しかしない。

もう藁にもすがる思いなのかもしれない。

もしかしたらいいように死神に誘導させられている気さえする。

「お前の体を使い憑依させる」

なに?そんな、

「何か体に支障がでるだろうし、命さえ取られないという保証できん。

そして悪霊に取り付かれるということが、どういうことか身を持って味わうことになる。

そいつにしか分からない、恐怖、不安、苛立ち・・・。

過去何人か悪霊にとりつかれた輩を見てきたが、ろくな死に方をしてない・・・

その苦しみから抜け出すために自殺にさえ追い込まれたものも多い」

『自殺』それほどまでに追い込まれる、のか?

「他の方法もあるが最小限の被害で済むのならこれがいい。

なにせ、苦しみを味わうのはお前自身、一人だけなんだから」

もっと言い方ってのがあると思う。

死神のストレートに放って来る言葉の槍は、俺をためらわすのに十分だった。

ー救いたいー

とはいっても自分の命のことに関わるとこんなにも足が震えるんて・・・

あの時リナを助けたときの自分はどこに行ってしまったんだ。

気づけば体は震えていた。

自分が・・・!不甲斐ない・・・!

「だい、じょうぶ、だから・・・私は・・・」

そっと震える俺をリナは背中をさすってくれた。

感触はなかった。ただそう感じた。

涙はこぼれてないが震える声でリナは言葉を漏らしていた。

無理やりにでも作った笑顔が心に刺さる。

少女にして今まさに地獄に落ちようとしている。

そんななか少女は笑いかけてきた。

ー自分は大丈夫ーとでも言うように・・・

俺は・・・俺は・・・どうすれば・・・?

「時間切れだな」

死神は無表情に切り替わり鎌を取り出した。

もうためらいの時間はない。

リナの目の前に歩み寄り大きく鎌を振りかぶった。

動くことはできなかった。

振り下ろす直前にギュっと目をつむった。

「まって、まって、まっっっっって~!」

shake

どこからともなく聞こえる声。

病室内に響き渡る声に死神は動きを止めた。

生暖かい風が吹く。

小学校低学年くらいの少女が現れた。

いや、最初からいた・・・のか?

それくらい違和感のない登場だった。

その少女は全身を黒の羽織もので身を包み、辞書みたいな分厚い本を片手に持っていた。

この感じ、明らかに人間ではない。

死神と遭遇した時と同じ空気・・・

「これはこれは閻魔様、遠路はるばるご苦労様です」

死神は鎌をしまい、うやうやしく礼をする。

何?閻魔?あの地獄の閻魔か?姿から何から何まで全く想像外だ。

ただ・・・こいつも好きになれそうにない。

死神と同じだ。どこか、違う。

思っていることは、やはりバレバレなのか閻魔はニヤニヤしている。

死神は睨みをきかせたが、なにも言うことはなかった。

「見させてもらったよ、桐生峰治くん♪」

なんだこの鬱陶しい喋り方・・・やっぱり、うん好きになれない・・・

そう言うとでかい辞書をパラパラとめくった。

何ページあるのか、広辞苑四冊分くらいあるぞ。

やがてあるページで止めてあろうことかそのページを破り取り出した。

「これはあ・な・たの生死帳。

生まれてから死ぬまでの事が、事細かく記載されているのよ~

ふんふん、なるほど・・・聞いていたところによると、赤星リナを救いたいそうだね♪」

聞いていた・・・のか、でも

「救うには自身の体にとりつかせなければならないと・・・嫌?」

それはいい、でも

「自分の命の心配~?なんというか情けない生き物ね。毛虫みたい」

クスクス笑っている。頭にくる、腹が立つ、そういった感情はなかった。

ー恐怖ー

その感情は一倍と強かった。

言葉遣いはともかくして放っている雰囲気?オーラ?死神とは桁が違う。

やっぱり、閻魔こいつも・・・心の中が手に取るようにわかるみたいだ。

「手助けしてあげよっか?」

「な、て、手助け?」

死神も眉を動かし驚いている。言葉には出さないが口をへの字に曲げ訝しげだ

「あなたは自身の命、ソレが脅かされることに恐怖を感じている。

いつかとり憑かれたことで自身がおかしくなり自殺してしまわないかと。

それが、心配なんでしょ?」

閻魔はその先を読んでいた。

俺の悩んでいる核心、そのものさえ見抜いていた。

俺は、自身の命が侵されそうになることを恐れている。

そうまでしてこの少女を助ける義理など、ない・・・のか?

海であの時助けようとしていたのはたまたまの偶然・・・?

「思うのは勝手じゃな~い?思うのはじゆうなんだしぃ~

でもぉ~私はあなたのその不安をなくすいい方法を持っているんだけど?

どう?このあたしに委ねてみない?」

なに?他の方法だと?

「その方法は?」

「教えな~い、教えたらおとなしく従うの?

ちがうでしょ?

でも悪霊に取り付かれ自我を失い命の危機にさらされるとことはないし、あなた以外を巻き込まない。

このことは保証してあ・げ・る。どう?悪い話じゃないと思うんだけどな~?」

急に現れた閻魔、コイツの言うことを信じていいのか?

信じるも何も・・・ないのか?

今このどうするかも分からない条件付きの方法をのみリナの魂を救うか、

拒みこのままリナが地獄に落ちていくのを指を咥えて見ているのか。

死神も閻魔も長くは待ってくれないだろう。

さっきから足をトントンしているし・・・

早くしろってか・・・

「わ、わかった、閻魔だったかその条件での方法で、頼む・・・」

死神は舌打ちをし、閻魔はニッコリと笑った。

その笑い顔は満面の笑みでより恐怖を感じた。

そんな顔するくらいならまだ無表情でいてくれたほうがマシだ。

「良かった~じゃあ~えい!」

答えが出たとたん、筆を取り出し俺の生死帳に何やら書いている。

解読不能、意味不明な文字を書き終えたあと、その紙を生死帳の適当なところに挟んだ。

「それでぇ~やあっ!」

閻魔の、手が伸びた、俺の目に、向かって、

刹那

shake

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グチュッ、

グチャ

ズリュッ

な?、あ?、え?

ブチッ、

ビチャ

shake

「ぐあぁぁぁっ!ぎ、あっ・・・あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

叫んだ。

もう声が枯れるんじゃないかってくらいに。

激痛が・・・・

右目から、血が、止まらない。

こ、こいつ!お、れの右、目を!

閻魔は

何の躊躇もなく

俺の目をえぐりとったのだ。

ほんとそんな残酷なことをする前フリさえせず・・・

痛みは想像を超えていた。

血はドクドク、ドバドバと溢れてくるし、何よりも痛みで目を閉じようにも血は止まらない。

「もらっとくよ~♪これはその代償。安心してその位では死なないから♪」

終始笑顔の閻魔はご満悦のようで、そんな俺を気にもしない。

むしろ喜びが最高潮に達しているのかキャッ、キャッとはしゃいでいる。

くりぬいた目を舌でペロリと舐め血をすすりゆっくりと血の味を味わっている。

血の味をゆっくりと堪能し目についた血を全て舐め尽くした。

死神はため息を付き鎌を構えた。

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「じゃああとはよろしくね~し・に・が・み・さ・ん♪」

閻魔はそう言うと消えてしまった。

「全く、自分勝手なお人だ・・・」

鎌をひとふりリナに振り下ろす。

惨事を見てショックで気を失っていたリナは抵抗も邪魔もなくあっさり斬られた。

斬られたリナの姿は人魂に形を変えた。

どこ行かずとフラフラさまよっている。

「面倒だな・・・一気に片をつけるか」

死神は無理やり俺を抱え起こした。

まあ丁重に扱うとかそういう気遣い、概念はないのだろう。

片手でグイっと起こされた。

痛みとショックで未だうめき声を上げている。

俺を実に鬱陶しく見ている。

宙にさまよっている人魂を強引に掴み取りあろうことかそのまま抜き取った目の代わりとでも言うよう強引にねじ込んだ。

瞬間

全身に激痛が走った。

目を抜き取られたときとは違う痛み。

外部からのものを全身が拒んでいる。

もう用は済んだのか死神は乱暴に俺を放った。

まともな受身も取ることができず、そのまま床に転げ回った。

shake

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ピッ

ピッ

ピシャァァ

何の音だ?と・・・。

思うよりも左目に映るものがなにより物語っていた。

皮膚が裂け、血が噴水のように湧き出てくる。

「あ、ぎっ、があっ、じ、じにた、ぐ・・・な、い」

あっという間に血の水溜りができた。

なにもできない痛みと苦しみの中、俺はその真っ赤な水溜りで意識を失った。

線路はまだまだ続く

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