妖変幻 番外編『アラタ怪奇譚』

中編5
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妖変幻 番外編『アラタ怪奇譚』

もう何曲歌ったかな?かなり疲れた、喉も枯れ気味。

今日はみんなでお疲れカラオケ。アッコ宅での事件後の事。

「アキ、これ憶えてる?」

タカヒロは手の平サイズのクマのぬいぐるみを取り出した。もうかなりすすけて毛玉だらけになっている。

「これ、私が子供の頃…」

「あの日、土手で俺にくれたんだ。」

「あの時の男の子がタカヒロ?」

「やっぱ気付いてなかったか。親が離婚して土手で泣いてた俺にお父さんの代わりにってくれたんだ。」

「ん、私のお父さんが死んでずっとこのクマがお父さんの代わりだったから。そっか、大事に持っててくれたんだね。」

「なんかアキとタカヒロって最近いい雰囲気になってない?」今頃気付いたミズホがヒソヒソ話しかけてきた。

私も気付いたのは最近だけどね。

「い〜な〜、ユウにはアラタがいるしアキにはタカヒロかぁ。」

「ミズホは相手変え過ぎ。」

ホントにそうだ、彼氏が出来てもいつの間にか別れてるし。

「だって、アラタやタカヒロみたいないい男中々いないし。あんなに頼りになる男って何処にいるのか教えてよ〜。」

確かにアラタもタカヒロもこれ以上ないって位頼りになる。そうだ!頼りになるといえば、あの時の…

「ねぇアラタ、あの三面鏡の前で呪文みたいなの唱えてたよね。何あれ?」

「ああ、十種神宝だよ。」

「???とぐさかん…???」

「とぐさかんだから。祝詞だよ。」

首を傾げる私をクッと笑いながらタカヒロが説明に入る。

「十種神宝大祓(とぐさかんだからのおおはらえ)祝詞のひとつで一言で言えば言霊の一種だよ。こんな物まで使うとはな。アラタお前、もしや眷族も持ってるのか?」

「うん、少し。」

「サラッと言うなよ。やっぱり恐るべしアラタ。」

「だから、失礼だっつうの!」

「何それ、眷族って?」

2人の話しにサッパリついていけない私たち女子3人。すみません、勉強不足で。

「眷族っていうのは、この場合、使役する者とか従者って感じかな。霊の召使いだよ。」

「だから失礼だろ!そんな言い方すんなよ。」

アラタはタカヒロのセリフにため息をつく。

「あのね、その辺を彷徨ってる霊なんかを自分の側において少し修行させるんだよ。前に何も憶えてないおじいさんいたろ?ああいった霊を側において、例えばユウみたいな体質の人の見張りをさせるんだ。簡単なモノなら祓う位できる。必要なら知らせにも来てくれるしね。」

おどろいた、アラタってそんな事も出来るんだ。もしや私ってスゴイ人に護ってもらってるのかも…

アラタの言葉に一同シーンとなった。

「ハラ減ったし何か食いにいかね?」

緊張感のないタカヒロの言葉に少しホッとした顔のアラタがそうするかと言って立ち上がる。みんなでカラオケ店を後にしてファミレスに行った。

ファミレスに着くとアラタがリュウジンさんの話をしてくれた。

アラタは以前、都心からほど近い何処までも続く田園地帯のある町で修行をしていたと言う。

そこはお寺や宗教団体等の施設ではなく普通の民家で、そこの当主はいわゆる霊媒師とは名乗ってなく知人の紹介や口コミの依頼のみ請負っている。しかも無償で。以前話した便利屋もここに出入りしている関係者だった。

その便利屋に紹介されて修行する事にしたとの事。

リュウジンさんもアラタと同じ経由で修行をしていたらしい。アラタの兄弟子であった。アラタが絶大なる信頼をおく一派だった。

あの日、当主にチカラを借りるため訪れたが当主は別件で出かけていて解決したものの車のエンジンがかからないとか、やっと車が動いても道に迷って山路を彷徨ってたりと当主曰く邪魔をされていて帰れない。知らず知らずの内に巻き込まれてとばっちりだった。

当主からの連絡で近くにいたリュウジンさんが辛うじて合流出来たと言う。アラタもずいぶん走り回ったらしい。

「しかし、一時はマジでヤバかったよな。アッコのお隣さんは良く無事だったもんだ。」

「そう、その事なんだけどアッコが話しを聞けたって。」

ミズホが身を乗り出しアッコから聞いた事を話し出した。

隣の奥さんの父が亡くなり遺品整理をしていたら三面鏡が出てきた。年代物だったので引き取ったが三面鏡から女の泣き声が聞こえて来たり、鏡を開いて使おうとすると必ずブレーカーが落ちる。電気屋に見てもらっても原因不明。家族の体調に異変はないものの気味が悪くなり庭の物置小屋にしまいこんだ。

その後は前に語った通り捨てるタイミングを逸して忘れてしまっていた。

「充分なチカラがつく前だったのかな?」ミズホが一通り話し終えミルクティーをすすっているとアキがポツリと言った。

アラタとタカヒロは少し困った顔を見合わせると、実は、と気の進まぬ口調で口を開いた。

「お隣さんは身投げした女の一族だよ。」

女子3人は揃ってえっ?と驚愕した。

「あの三面鏡は女が嫁入り道具として持ってきた物だったんだよ。女が死んだ後、姑が処分に困って実家に返したんだ。女の両親は娘の形見として大事に保管していた。そして代々受け継がれお隣さんにやって来たんだ。」

「じゃあ、偶然じゃなかったんだね…」アキは下を向いたまま肩をすぼめて言った。

「偶然というのは奇跡よりも低い確率で起こる。何事にも流れが存在し、その流れに動かされている。縁は人だけじゃなく物にもあるんだ。強すぎる思いは流れにのって長い年月をかけてでも必ずやって来る。と、俺は考える。」

アラタは独特な世界観があるんだ。簡単な様で難しい。

「偶然は必然ってことか。」

あと、タカヒロもだ。この2人は似てない様で似てる。

「さっ、そろそろ帰るか。」

天文部としては観とかなきゃならないほどこの辺では珍しい位の見事な星空を見上げながらゆっくり歩いた。隣でアラタがさっきカラオケで歌っていた歌を鼻歌まじりに奏でている。

「ねぇ、それ何て歌だっけ?」

「プライマルだよ、オリジナルラブの。」

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あーやん様、コメそして怖いありがとうございます。
身を守る方法、私も知りたいです(笑)
守ってもらうばかりでしたから少し自分も修行したほうが...と、考えました。
実は憑かれてもあまり自覚がなかったもので(汗)

ミズホは私たちの間でもかなりトラブルメーカーで厄介ごとは彼女が持ち込む事が多かったです。
でもみんなを癒してくれる大切な存在でした。後に良いパートナーに恵まれますが、ずっと先の事になります。
くれぐれもお身体に気をつけて、またのお越しお待ちしております。

怖いし、すごくためになります!
時々憑かれるようで、友達といるときに意味のわからない行動をとり、少し霊について分かる子にのけてもらうことがあります。身を守る方法がわかればいいのですが(´;ω;`)
ミズホさんに、少し親しみが湧きました(笑)

aoi様、コメありがとうございます。またのお越し大変嬉しいです。
類は友を呼ぶなんですかねぇ。鈍感だった友人が行動を共にするうちに見える人になっちゃったりもあったので申し訳なく思う時もあります。

みっくん様、首がないのはヤバ過ぎます。首の怪我や病気に気をつけて下さい(T_T)
黄金のオーラを纏うのは不可能に近いですがイメージすると言うのはいいアイデアですね。
お互い気をつけましょうね。

霊能力の才がある人には霊能力の才のある人が集まるのでしょうか。
人の縁は不思議なものですね。それが必然なのかも知れませんが・・・

本当に危なくなったら土地神様から力借りると良いですよ(´・ω・`)
さっき霊感ある知り合いから首がないって言われましたΣ(゜Д゜)
また足を突っ込み過ぎたみたいです(´・ω・`)
確かに騒がせてしまうのは気が進まないのは分かりますが、イノチは大切ですからね(´・ω・`
黄金のオーラを纏うイメージを持って霊を寄せ付けないようにした方が良いかもですね(´・ω・`)

ガラ様、こんばんは。またのお越しとても嬉しいです。
縁の糸ですか、素敵です。
赤い糸と違ってたくさんありそうですよね。

みっくん様、こんばんは。
博識でいらっしゃる様で何の説明もいらないですね。
アラタは陰陽道は学んでいないそうです。一般的には般若心経などの経典を使う事が多いみたいですがアラタは実際には無宗教で仏道より神道を多用します。
感覚的にですが動物なんかにも有効な気がすると言ってました。
土地神様にも力をお借りする事もあるみたいですが、あまりお騒がせするのは好きじゃないそうです(笑)

縁の糸と言うのを聞いたことありますが、モノにもそういうモノがあるんですかね。

三面鏡って色々良くなさそうなイメージです(´・ω・`)
確かに偶然じゃなく必然だって言う人居ますね(*´∀`)
眷族は確かに霊能力のある人が使役してます(´・ω・`)
陰陽師は式神、魔術を使う人は召喚って感じで使役してます(´・ω・`)
霊能力ある人はその土地に居る土地神の力を借りたり出来るはず(*´∀`)
力がある程度あると祝詞は確かに効果的ですね(*´ω`*)
どちらかと言うとアラタくんが陰陽師に見えてきました(*´∀`)