長編19
  • 表示切替
  • 使い方

ライバル

高校三年の四月の時ー

三年生に進級した佐藤は新しいクラスで勤や理子や鈴木と一緒に三年になった感想を述べ合っていた。

勤「俺達もついに三年か。」

理子「何だかあっという間よね。」

鈴木「僕なんて先月転校してきたばかりだから本当にあっという間だよ。」

鈴木は苦笑いをしながら言った。

佐藤「はは、そうだね。」

四人とも三年生になった事で時間の早さを感じていたのだ。そしてもう一つ、受験が控えている事も。

佐藤「所で皆の進路は何?」

唐突に佐藤が進路について聞いてきた。

勤「そうだな、俺は就職かな?」

どうやら勤は高卒で就職する様だ。

佐藤「希望の職場とかあるのか?」

勤「いや、特にないんだよね。だから就職できればどこでもいいやって感じだな。」

勤は自分の成績上、進学は無理だと考えている様だ。

勤「まっ、確かに大卒の方が収入はいいようだけどな。ちなみに理子はどうするんだ?」

勤が不意に理子に問いかけると理子は考え込んでからこう答えた。

理子「そうね、私は専門学校かな?将来は菓子職人になろうと思ってるから。」

佐藤「へえー、菓子職人か。じゃあ、もし将来菓子職人になったら理子が作ったお菓子を買いに行くよ。」

理子「ありがとう!」

理子は嬉しそうに満面の笑みで言った。

佐藤「鈴木の進路は?」

佐藤が今度は鈴木に聞いてきた。

鈴木「そうだね…取り合えず僕は海外留学かな?英語が得意だから。」

佐藤「へえー、すごいね。頑張ってね!」

鈴木「うん、ありがとう!」

勤「で、残るお前の進路は?」

最後に佐藤が答える時がやって来た。

佐藤「俺は勿論大学進学だよ。将来の夢とかはまだ決まってないから大学で色々学びたいんだ。」

勤「将来は霊能者じゃないのか?」

勤が冷やかすように言ったが、佐藤は苦笑いで「さすがにそれはないよ。」と否定した。

佐藤「みんな進路はバラバラだけどお互い頑張ろうね。」

勤「おう!」

理子・鈴木「うん!」

四人でしばらく話しているとチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。

そして号令後に先生はホームルームを始める前に大事な事を知らせると前置きし、教室の入り口に向かって「君、入りなさい。」と声を掛けた。

するとドアがガラッと開いて一人の少年が入ってきた。その少年は短い黒髪でこの学校のとは違う制服を着ていた。

その少年が教壇の前に立つと先生はチョークで黒板に何かを書き始めた。

そして先生は書き終えるとチョークを置き、前に向き直った。

先生「えー、今日からこのクラスの一員になる金田君だ。君、自己紹介を。」

少年「はい。僕は南高校から転校してきた金田浩(かねだひろし)です。宜しくお願いします。」

金田は自己紹介を終えると頭を下げ、先生に言われて空いている席へと座った。

それから数分でホームルームは終わり、先生が教室から出ていくと生徒達は早速金田の所に集まった。

「ねえねえ、金田君ってどこに住んでるの?」

金田「住まいは東京都千代田区霞ヶ関だよ。」

金田は住所を聞かれるとさらりと答えた。

佐藤「霞ヶ関って事はもしかして警視庁の近くに住んでるとか?」

金田の住所を近くの席で聞いた佐藤が質問してきた。

金田「うん。僕の家は十五階建てのマンションの五階にあるんだけど、窓から警視庁がよく見えるんだよ。別の窓からなら国会議事堂も見えるしね。」

全員「へえー。」

その場にいた全員は珍しそうに金田の話を聞いていた。

その後一日の授業が終わって放課後になり、佐藤達は毎度おなじみの部室に向かった。

ー心霊研究クラブの部室ー

勤「警視庁と国会議事堂の側に住んでるなんてなんかすごいよな、あいつの家。」

理子「確かにそうね。警視庁と国会議事堂の側に住んでるって聞いた時は私も驚いちゃった。」

コンコン

勤達が金田の住所について色々話していると部室のドアがノックされた。

佐藤「どうぞ。」

佐藤が返事をするとドアが開き、二人の男女が入ってきた。

勤「何か用か?」

勤が興味津々に聞くと男子の方が話してきた。

「すいません、ちょっと相談したい事があるんですが…」

勤達はいつもの様にまた心霊相談だと思い、二人を中へ迎え入れた。

そして二人は席に座らされると最初に自己紹介を始めた。

男子の方は二年D組の田中真(たなかまこと)で、女子の方は二年E組の小池道子(こいけみちこ)。

この二人は中学時代からの友人であるとの事だ。

自己紹介を終えると小池が俯きながら

「お願いします。どうか、私の母を助けてください!」と叫んだ。

佐藤「どういうことか詳しく話してください。」

佐藤に言われると小池は顔を上げて話し始めた。

何でも二週間前から小池の母親が夜中に突然起き出しては庭を掘り起こしているとの事だ。

掘り起こす音で家族が気づいて止めようとしたら本人はその場で眠ってしまう上に翌朝になってから本人に聞いてみても覚えていないと言われたので家族も最初は母親が寝ぼけていたんだと思っていたらしい。

だが、その行動は三日も続いたという。

小池「それで母が夢遊病かもしれないと思って病院で検査をしてもらったんですが全く異常はないと言われてしまったんです。」

佐藤「そこで困ったからここに?」

佐藤が尋ねると小池は力なく頷いた。

話を聞いた佐藤は腕を組み、黙って考え込んでいた。

が、しばらくして佐藤は質問をした。

佐藤「昼間とかは何ともないの?」

小池「は、はい。でも、夜中になると先程言った行動をとってしまうんです。」

そう聞いて佐藤は今度は別の質問をした。

佐藤「じゃあ、もう一つ聞くけどお母さんがその行動をとるようになったのは本当に二週間前からで間違いないかな?」

小池「は、はい。間違いありません。」

母親が例の行動をとるようになったのが二週間前からだという事に間違いないと小池がいうのは根拠があったからだ。

小池「実は…母が夜中に例の行動をとるようになる日の前日まで、家族で三日間家を空けていたんです。」

そう、小池の家族は母親が例の行動をとるようになる日の三日前から旅行に出掛けていて家を空けていたのだ。そして母親は旅行中には確かに何ともなかったと言う。これが先程の根拠である。

勤「なるほどな。確かにそれが本当なら、お袋さんがその行動をとるようになったのは二週間前からで間違いなさそうだな。」

側で話を聞いていた勤が口を挟んだ。

佐藤「うん、そうだね。」

佐藤も勤と同意見の様だ。

佐藤(うーん…そうだとしたら二週間前に彼女の母親が夜中に行動する原因があるはずだけど…。一体何が原因なんだ?これが本当に霊障なら母親は二週間前に何かの霊に取り憑かれたって事になるけど。でも何で夜中だけに行動を…)

佐藤は心の中であれこれ考えていたが、結局何も分からなかった。

田中「どうでしょうか?彼女の母親がおかしな行動をとるようになったのはやはり何かの霊のせいなんでしょうか?」

しばらく黙っていた田中が口を開いた。

佐藤「うーん…まだはっきりした事は言えないな。これが霊障だとしても何で夜中に庭を掘り起こすのか分からないし…とにかく何か分かればまた教えるよ。他にも質問する事があるかもしれないからその時は頼むよ。」

その後、田中と小池の二人は礼を述べてから部室を出ていった。

理子「それにしてもあの子かわいそうよね…お母さんが夜におかしな行動をとる様になったから。」

二人が出ていってしばらくしてから理子が小池に同情する様に言った。

鈴木「そうだね。僕もそう思ったよ。」

鈴木も理子と同じことを考えていたようだ。

勤「なあ佐藤、なんとかならないのか?」

佐藤「うーん、そう言われてもな…」

勤に聞かれて佐藤は困った顔をしていた。

鈴木「やっぱり何かの霊のせいじゃないの?」

佐藤「それは僕も考えたけど、まだ何とも言えないよ。せめて彼女のお母さんに会ってみないと。」

鈴木「やっぱり霊視するの?」

佐藤「うん、そうすればきっと分かる筈なんだ。」

それからしばらく四人で話し合い、後日小池の母親を直接霊視する事になった。

するとそこへ下校時刻を知らせる放送が入ったので四人は帰宅する事にした。

佐藤「それにしてもやっぱり引っ掛かるな。もしも本当に小池さんのお母さんが何かの霊に取り憑かれてるんだとしても、どうして毎晩庭を掘り起こしたりなんて…」

佐藤は庭を毎晩掘り起こすという行動目的を帰り道でずっと考えていた。

佐藤「やっぱり駄目だ…何も浮かばない。」

結局考えが浮かばなかった為に佐藤は困り果てたまま帰宅した。

だが、家に帰って祖父と母親に相談する事によって遂にその行動目的が分かった。

礼二(祖父)「それは恐らく庭に埋まっている何かを探しているのだろうな。」

由美(母)「私もそうだと思うわ。」

佐藤から話を聞いた二人は即座にこう答えた。

佐藤「何かを?」

礼二「そうだ。もし本当に霊が憑依して庭を掘り起こしているんだとしたら、考えられる行動目的は何かを探す為だろうからな。」

祖父にそう言われて佐藤も何となく納得した様だ。

佐藤「でも、そうだとしたら一体何を探して…」

礼二「そればかりは見当もつかん。本人を霊視してみない事にはな。」

佐藤は残る疑問を解消するために早急に霊視を行うことにした。

ー翌日ー

放課後、佐藤はあらかじめ部室に呼んでおいた小池に霊視の事を伝えた。

最初は考え込んでいた小池だが、母親を助けるためならと了承してくれた。

佐藤「じゃあ早速だけどいつなら都合がいい?」

小池「こちらは今日でも構いませんが。」

佐藤「じゃあそうしよう。」

こうして話は纏まり、佐藤は小池の家に向かう事になった。

小池の家は学校からだと電車で二十分の郊外にある一軒家であり、周りには住宅街があった。

佐藤「ここか。」

佐藤は小池の家を一目見て何かを感じた。

佐藤(何だ?この感じ…)

佐藤は小池の家から何かを感じていたが、それが何なのかはわからなかった。

二人が家に上がると小池の母親は居間で椅子に座っていた。

小池の母「お待ちしておりました。」

佐藤「えっ?」

佐藤は一瞬驚いたが、それを察した小池が先程母親に電話で伝えておいたと説明してくれた。

小池「ではお願いします。」

小池が頭を下げたので佐藤は慌ててそれを制し、どうかそんなにあらたまらないで欲しいと論して小池の母親に挨拶をした。

佐藤「僕が本日霊視をさせていただきます、佐藤渉です。宜しくお願いします。突然の来訪による無礼をお許しください。」

小池の母「いえいえ、どうぞお気楽になさってください。本日はこちらこそ宜しくお願いします。」

こうして挨拶を終えた佐藤は早速意識を集中し、霊視を行った。

佐藤「………」

しばらくすると佐藤の目に何かが映った。

佐藤「!これは…」

佐藤の目に映ったそれは白い服を着た一体の女の霊であった。しかもその女の霊は腹部から血を流していて、その血が着ている白い服を赤く染めていた。

佐藤「間違いない…これが小池さんのお母さんに作用していたんだ。」

佐藤は女の霊を見るなりそう確信した。

小池の母「あの…どうでしょうか?」

小池の母親が不意に問い掛けてきた。

佐藤「………。」

佐藤は霊視結果を伝えるのを渋っていたが、小池とその母親が知りたがっていたのでやむ無く見た事をそのまま伝えた。

…………………説明中…………………

佐藤「以上が霊視結果です。」

佐藤が霊視結果を伝え終わると二人共放心状態であったが、直ぐに我に帰った。

小池「じ、じゃあ…これは病気ではないんですね!?」

小池が我に帰るなり、凄い勢いで質問してきた。

佐藤「は、はい。そうです…。」

佐藤は小池の勢いに圧倒されて若干声が低くなってしまった。

小池母娘は病気でないとわかってお互いにホッとした様だ。

佐藤「でも、まだ安心は出来ません。」

佐藤のその一言でホッとしていた二人はハッとして佐藤の方を向いた。

佐藤「確かにお母さんが毎晩夜中に取っている行動は病気ではなく、お母さんに憑依している女の霊による霊障です。しかし、それを無くすにはしばらく時間が掛かるんです。」

佐藤の話を二人は真剣に聞いていた。

佐藤「先ずは霊をお母さんから切り離してみますが、それには時間が掛かりそうなので少し時間を下さい。」

小池「どれぐらいの時間が必要なんですか?」

佐藤「それはお答えできません。」

霊を切り離すにはどれだけ時間が掛かるかは佐藤にも分からないので返答はできないのだ。

小池「でも霊を母から切り離せば、もう母が夜中に庭を掘り起こす事はないんですよね?」

小池が確認する様に聞いてきたが、佐藤はそれを否定した。

佐藤「残念ながら直ぐには無理です。」

小池「何故ですか!?」

小池は佐藤の返事に驚きを隠せなかった。それを察した佐藤はそれについて詳しく説明した。

佐藤「先程も言ったように、確かにお母さんが夜中に庭を掘り起こす様になったのは憑依している女の霊のせいです。しかし、それを取り除いても潜在意識に残る可能性があるんです。実際、お母さんは二週間という長い間行動していた訳ですからね。」

佐藤の説明を聞いて小池は顔が真っ青になっていた。

小池「じゃあ、母はこれからずっと夜中に同じことを!?」

佐藤「いえ…霊を取り除いてしばらくすれば元通りになる筈ですからずっとと言うわけではありません。」

それを聞き、小池はまたホッとした。

佐藤「では今日はこれで終わりですが、除霊には時間が掛かるのでしばらく時間を下さいね。」

小池母娘「はい、分かりました。ありがとうございました。」

小池母娘は揃ってお辞儀をして礼を述べた。

ー帰宅途中の電車内ー

帰宅途中の電車内で佐藤は小池の母親に憑依している霊について考えていた。

佐藤「あの霊…多分殺されたんだな。霊視した時、確かにそんな感じがしたから間違いない。でも、そうなると厄介だ。あの霊は殺された女…つまり被害者だ。被害者の霊を除霊するなんて事は出来ない…!」

佐藤は女の霊を除霊ではなく、浄霊する事で小池の母親から切り離そうと考えているのだ。しかし、浄霊するためには霊を説得する必要があるために時間が掛かる。それが一番の問題であるのだ。

佐藤「でもやるしかないな。」

佐藤は固くそう決心した。

だが佐藤はこの時気づいていなかった。この電車内に小池の家を出た時からずっと自分を見張っていた人物がいた事に…

それから一時間程で佐藤は帰宅した。

家には誰もいないので佐藤は変に思ったが、すぐに思い出した。今日からしばらくの間、祖父と母は出張で出かけると言うことを。

佐藤「そうか…出張だったな。」

佐藤がそう思いながら着替えてテレビをつけるとニュースがやっていた。

ニュースキャスター「では、次のニュースです。三週間前から行方不明になっていたk県在住の堀井尚美(ほりいなおみ)さんの行方は未だつかめておりません。」

ニュースキャスターが話していると画面に行方不明者の顔写真が写し出された。佐藤はそれを一目見てどこかで見た事があると思ったが、どこで見たか直ぐには思い出せなかった。

佐藤「あの顔…確か、今日どこかで見た筈だ。」

記憶を頼りに思い出そうとしている佐藤の脳裏にようやくその答えが浮かび上がった。

佐藤「そうだ…思い出したぞ!間違いない、あの霊だ!!」

そう、テレビに映っていた行方不明者の堀井尚美は小池の母親に憑依していた霊だったのだ。

佐藤「となると、やっぱり堀井尚美さんは殺されたんだ!だから三週間も行方不明に…。でも何故だ?何故、小池さんのお母さんに…」

佐藤は憑依していた霊が行方不明者の堀井尚美だという事が分かったが、何故小池の母親に憑いているのかは分らなかった。

ー翌日ー

《心霊研究クラブの部室》

全員「えーっ!?」

勤「本当かよ、それ!?」

佐藤が昨日分かったことを報告すると勤達は驚いていた。

理子「でも信じられないわ。あの子のお母さんに憑依していたのが行方不明者の堀井尚美さんの霊だったなんて…」

理子は信じられないという表情をしていた。

佐藤「それは俺も同じだよ。まさか憑依していたのが三週間も行方不明になっていた人だったとはな。しかも殺されていたんだから。」

佐藤も理子を見て改めて信じられない気持ちになっていた。

鈴木「それで一体どうするの?」

鈴木が不意に問い掛けてきた。

佐藤「そうだね…取り合えずあの霊を浄霊する為にも説得するしかないね。時間はかかるけど。」

勤「でも、早いとこその霊を何とかしないとあの子のお袋さんがヤバイんじゃないのか?」

勤が不安そうに聞いてきた。

佐藤「ああ、確かにそうだよ。これ以上夜中に同じ事を続けさせたら治るのに時間が掛かってしまう。だからできるだけ早く終わらせるんだ…!」

佐藤は強く言った。

鈴木「でもどうすれば説得できるの?」

佐藤「うーん…そうだなあ。取り合えずあの霊と話をするしかないな。そしてあの霊の希望を聞くしか方法は…」

コンコン

佐藤が説得の仕方について話していると部室のドアがノックされた。

勤「はい!どうぞ。」

ガチャッ。

田中「失礼します。」

ノックしたのは田中だった。

佐藤「君は小池さんの友達の…」

田中「はい。先日ここを小池と一緒に訪れた田中真です。」

その後田中は佐藤たちに言われて席に座った。

田中「今日ここを訪れたのは、僕自身の事で相談があるからなんです。」

佐藤「と言うと?」

佐藤が尋ねると田中は口ごもりながらこう答えた。

田中「実は僕、殺人の容疑を掛けられてしまったんです!」

田中は叫ぶ様に言った。

全員「……え?ええーっ!?」

その場にいた全員が田中の言った事に驚いてしまった。

勤「ど、どういう事だよそれ!?」

田中「昨日の事なんですが…」

と前置きし、田中は詳しく話し出した。

田中は昨日の夜、塾の帰りにあるマンションの前を通った。その時は夜の十時を過ぎてしまっていたので急いで帰っている最中だったらしいが、そのマンションの前で突然誰かに後ろから薬を嗅がされて気を失ってしまったとの事だ。

しばらくして気がつくとそこはマンションの前だったが、周りには警察官がいた。田中が何かあったのかと思いながら立ち上がると道路に人が倒れていた。

その人物は頭から血を流していて、側には血のついた鉄パイプが落ちていた。

更に田中が状況が分からずに呆然としていると一人の刑事がやってきた。

その刑事は南警察署の大村と名乗り、田中が事件の重要参考人だと言うことで田中を連行していった。

警察によると死体発見時、田中は死体の近くに倒れていたらしい。その為に田中は疑われていたが、警察は田中の父親が弁護士だという事が分かったので解放して今に至るとの事だ。

以上が田中が話した昨日の夜の事である。

話を聞いた佐藤達はすっかり驚いてしまっていた。

特に勤と理子の二人は口をあんぐりと開けて呆然としていた。

勤「マジかよ、その話!?」

鈴木「本当!?」

理子「ウッソー!信じらんないわ!」

勤も理子も鈴木も驚きながら田中の話を信じられないと否定していたが、田中が本当だと言い張っていたので信じざるを得なかった。

一方の佐藤は田中が嘘を言っている様には思えなかったが、半信半疑であった。

佐藤「話は分かったけど、それで僕らにどうして欲しいと?」

佐藤が依頼内容について問いただすと田中は依頼内容を話した。

田中「それで頼みと言うのは僕の濡れ衣を晴らして欲しいという事です!」

佐藤「はあ?」

田中ははっきりと言い放ったが、佐藤は困ってしまった。

佐藤「ちょっと、ちょっと。君、分かってるの?確かにここは心霊相談を受け持っているけど、殺人事件の調査は管轄が違うよ!そういうのは警察か探偵に頼むべきなんじゃ… 」

田中「そこを何とか…どうか僕を助けてください、お願いします!!」

佐藤は依頼を断ろうとしたが、田中は頑として聞き入れずに強く頼み込んできた。

これには佐藤もすっかり参ってしまう。

理子「ねぇ佐藤君、相談に乗ってあげられない?田中君がかわいそうよ。」

理子が懇願する様に言ってきた。

勤「そうだぜ、佐藤。乗ってやれよ!殺人事件の調査は管轄外って言ってもお前…前に殺人事件を解決した事があったじゃないか!」

佐藤「そ、それは…」

佐藤は勤と理子にも頼まれてしまい、もはや断る事は不可能であった。

佐藤「そりゃ、確かにできる限りの事はしてあげたいよ。でも今は小池さんの相談事を抱えてるし…」

鈴木「じゃあ、佐藤君のおじいさんかお母さんに頼んで代わりに依頼を引き受けてもらうっていうのはどう?」

先程まで黙って話を聞いていた鈴木が提案したが、その案を直ぐに佐藤は却下した。

佐藤「残念ながらそれは無理だよ。母さんもじいちゃんも今はいないから。」

そう、先程述べたように佐藤の祖父と母親は出張に出掛けていて今はいないのだ。その為に佐藤が抱えている相談事を代わりに引き受けてもらうと言うのは不可能である。

勤「じゃあ、どうすんだよ!?」

佐藤「どうするって言われても…。」

佐藤達が困っていると不意に部室のドアをノックされた。

勤「こんな時に誰だよ?…どうぞ!」

勤が不機嫌に返事をするとドアが開き、転校生の金田が入って来た。

勤「か、金田?」

訪問者が金田だった事に驚いていると金田が口を開いた。

金田「さっきまでの話は全て聞いたよ。田中君…だったね?君の無実は僕が証明してあげるよ。」

田中「ほ、本当ですか!?」

金田「ああ、約束するよ。」

田中は金田が相談に乗ってくれると知り、大喜びで礼を述べた。

一方、そんな二人のやり取りを見ていた佐藤達四人は呆気にとられていた。

やがて二人が揃って部室を出ようとすると我に帰った勤が二人を止めるために口を開いた。

勤「ちょ、ちょっと待てよ!」

金田「ん?何?」

勤に呼び止められて部室を出ていこうとしていた金田が立ち止まった。

勤「お前分かってるのか?そいつが言ってる相談ってのは自分に掛かった殺人の濡れ衣を晴らしてくれっていう厄介な事なんだぞ!?なのにそんな簡単に引き受けて大丈夫かよ?」

勤が興奮しながら言ったが、金田は落ち着いて自信ありげにこう答えた。

金田「大丈夫。きっと僕が解決してみせるよ。」

そう言われてしまうとさすがの勤も黙るしかなかった。

金田「いいよね?佐藤君。」

佐藤「引き受けるのは構わないけど、一体どうして君がここに?」

佐藤が質問すると金田はハッとして質問に答えた。

金田「 ゴメン、ゴメン。実は佐藤君に用があったんだ。それでここに来てみたんだけど、何やら深刻な話をしていて入るタイミングが中々なかったんだよ。」

佐藤「僕に用?」

金田「うん。でもその用件はまた後日にでも。じゃあ」

そう告げると金田は田中と共に部室を出ていった。

勤「何だよアイツ、急に出てきたと思ったら相談者を取っていきやがってよ!」

勤は相談者の田中を取られた事に憤慨していたが、理子と鈴木に宥められてようやく落ち着いた。

理子「でも金田君大丈夫かしら?相談を引き受けてったけど…」

理子は金田が田中の厄介な相談事を引き受けていったので不安そうな顔をしていた。

鈴木「でも自信ありげに大丈夫って言ってたから心配しなくていいんじゃないかな?」

理子「でも万が一、田中君の無実を証明出来なかったらどうするの?そしたら田中君がかわいそうだし、金田君も落ち込むんじゃないかしら…」

理子は益々不安そうにしていたが、佐藤が「大丈夫だよ。何かあれば僕が相談に乗るし。」と言ったのでようやく安心した。

佐藤(それにしても…彼は僕に一体何の用で?)

佐藤は金田が言っていた用件と言うのが気になっていたが、今は小池の相談を解決する方が先だという事でそれについて考えるのは後回しにした。

勤「ーで、どうすんだ佐藤?」

勤が小池の相談事についてどうするか尋ねてきた。

佐藤「そうだね…取り合えず遠隔霊視であの霊と対話してみるよ。」

そう言って佐藤は制服のポケットから数珠を取り出した。

鈴木も佐藤を見て、自分もやってみようと以前佐藤に勧められて買った数珠を取り出した。

そして鈴木と佐藤が二人で遠隔霊視を試みると二人の幽体は小池の母親に憑いている霊の元へ向かった。

鈴木「この霊…どこかの森の中で殺されたのかな?森のイメージが見えるけど。」

鈴木の霊感が早速働いた。

佐藤「うん、当たり。多分それから後にさ迷っていた所を小池さんのお母さんに憑依したんだろうね。」

そう言って佐藤は堀井尚美の霊に話し掛けた。

佐藤「堀井尚美さん…」

佐藤が話し掛けると堀井はハッとして佐藤の方を振り返った。

堀井「何でしょう…。」

佐藤「あなたにお願いがあるんです。」

堀井「………」

堀井は無言になったが、直ぐに口を開いた。

堀井「この人の体からは離れませんよ。」

その言葉に佐藤も鈴木も一瞬沈黙してしまう。

佐藤「何故ですか?その体はあなたの体じゃないでしょ!?」

佐藤が訴えかける様に言ったが、堀井は何も言わなかった。

その為にこれ以上の遠隔による説得は無理があると思い、佐藤は一旦退こうとしたが、鈴木は思いきって話し掛けてみた。

鈴木「あなたの希望は何ですか?それを叶えればあなたはその体から離れてくれますか?」

すると鈴木の質問に堀井はこう答えた。

堀井「ええ、約束します。私の望みをあなた方が叶えてくだされば私はこの体から離れます。」

そう聞いて鈴木も佐藤もホッとした。

堀井「私の望みは…。」

佐藤も鈴木も緊張しながら耳を傾ける。

堀井「私の体を見つけて下さる事です。」

佐藤「か、体を?」

堀井「そうです。そしてそれをお墓に入れてほしいんです。どうかお願いします。」

佐藤達は堀井の望みを叶える事を約束した。

佐藤「それであなたの体は一体どこに?」

堀井「それは…」

佐藤・鈴木「……え?ええっ!?」

佐藤と鈴木の二人は堀井の体がある場所を聞いて驚く。

何故ならその場所は…

鈴木「こ、小池さんの家の庭!?」

佐藤「そ、そんなバカな…」

二人は堀井尚美の死体が埋まっている場所が小池の家の庭だという事実を信じがたかったが、受け入れるしかなかった。何故ならそれで小池の庭を掘り起こしていた理由も説明がつくからだ。

佐藤「そうか…だから毎晩小池さんのお母さんの体を借りて、庭を掘り起こしていたんですね?自分の体を見つける為に…」

堀井「はい、そうです。」

そして二人は必ず堀井尚美の体を見つけてお墓に入れる事を約束してから自分の体へ戻った。

勤「ほ、本当かよ!?」

理子「ウソでしょ!?」

佐藤と鈴木が自分の体へ戻るなり、勤達に堀井尚美の霊に言われた事を教えると二人はすっかり驚いていた。

理子「でも、それが本当だとしても一体どうやって死体を見つけるの?」

勤「そうだぜ、佐藤。いくら何でも他人の家の庭を掘り起こすなんて事は…」

二人の言うことは最もだった。だが約束を守る為には仕方がないので、佐藤は小池の家族に協力を依頼する事にした。

佐藤「…となると、あの人にも協力を依頼する必要があるな。」

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
7220
2
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ