中編5
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山の仙人

この話は実際に僕が見聞きした話です。

落ちもなければ怖くないかもしれませんが事実です。

大学3年の頃、僕は配達系のバイトをしていました。

そんなある日、店長からビラを作ったのでポスティングしてきてほしいと

言われ、後輩をつれてポスティングに向かいました。

バイクで団地を回るのでさほど時間もかからず、思いのほか早く終わりました。

ちょうど数日前、その団地の近くに見晴らしの良い休憩するには絶好の場所を

僕は見つけていました。

夕方前くらいの時間だったので、お店に戻っても暇だろうと思い、僕は後輩に、

「この前いい場所見つけたから行ってみる?」

と提案しました。

後輩も行きたいと言っていたのでその場所に向かいました。

そこは山を少し入った開けた場所で、民家もなく、本当に見晴らしの良い

所でした。

ただ、そんなに広くはなく、椅子やベンチなどもありませんでした。

僕たちはバイクを止め、地面に直接腰を下ろし、タバコを吸っていました。

目の前の景色を眺めながらバイト仲間の事や共通の知り合いの話をしていました。

話していると、

ガサ...ガサガサ...

後ろの方で音がしました。

振り返ってみると、後ろの方は木々に覆われ、道などもなく、

看板があるだけでした。

「私有地につきここから先は立ち入り禁止」

その看板があるだけで何もありませんでした。

「風か...」

僕はそう思い、また後輩と話していました。

数分後、

「お兄ちゃん」

背後から呼びかけられました。

「!!!」

僕と後輩は何の気配も感じてなかったので飛び跳ねるくらい驚きました。

振り返ると、おじいさんが立っていました。

作業服っぽい格好をしていて

なぜか分かりませんが手には10本くらいの竹竿を持っていました。

僕は地主さんか山の中でなにか作業している人なのかと思い

ここは入っては行けなかったのか聞こうとしました。

するとおじいさんはこんなことを言いました。

おじいさん「この山の頂上にはどうやって行けばいいんじゃ?」

僕「えっ?この上?」

おじいさん「そうじゃ。」

僕「いや、そこ立ち入り禁止って書いてあるし僕にもちょっと分からないですね。」

おじいさん「どうしても行きたいんじゃ。どこか道はないか?」

僕「なんかあるんですか?」

おじいさん「みんな頂上に行って楽しそ~にお弁当食べたりしとる。

儂も一緒に行って食べたいんじゃ。」

何を言っているんだろう...

僕はそう思いました。

すると後輩がこんなことを言いました。

後輩「その人たちってどっから上に行ってるんですか?

付いて行けばたどり着くんじゃないんですか?」

確かに...

そう思っていると、おじいさんは、

おじいさん「そこらじゅうから頂上に行っている。ほら。そこからも、そっちからも。

大きい人とか小さい人がたくさん登ってるじゃないか。」

おじいさんの指す方を見ましたが、そこには僕たちが眺めていた景色と、

ちょっとした崖だけでした。

僕「何もないですよ?」

おじいさん「大きい人が登ってるじゃないか!」

ちょっと怖くなり、よくわからないので近くの人に聞いてくださいと言い、

その場を離れました。

店に帰り、店長やバイト仲間に「仙人を見た」と面白おかしくその出来事を

話しました。

変わった人もいるよと、そんなに話題になることもなくその日は終わりました。

家に帰り、妹と母がいたのでそのことを話しました。

母「気持ち悪いね...」

妹「なんだか怖いね...」

2人とも少し怖がっていました。

その1週間後、またその後輩とポスティングに行くことになりました。

そしてまたあの場所で休憩することにしました。

僕「またあそこ行く?」

後輩「行きましょう」

僕「またあのおじいさん来たらどうする?」

後輩「それはないでしょ」

僕たちは笑いながらあの場所に向かいました。

前と同じように地面に座り、話していると、

ガサガサ...

音が聞こえてきました。

振り返ると

またおじいさんが立っていました。

先週と全くおなじ格好で。

しばらく知らないふりで話していましたが、

おじいさん「お兄ちゃん」

声を掛けられました。

僕はしぶしぶ返事をしました。

僕「なんですか?」

おじいさん「この山の頂上にはどうやっていけばいいんじゃ?」

僕はちょっとめんどくさいなぁ、またかよと思いながら、

僕「ここからはたぶん行けないですよ向こうから回り込んで登るしか

ないんじゃないですか?」

僕たちがいる場所からずっと右手に道のようなものが見えたのでそこを

行けば頂上までたどり着けるのではないかと思い、おじいさんに伝えました。

おじいさん「あそこからいけるのか?分かった行ってみる。」

そう言うとすぐにその方へ行ってしまいました。

僕と後輩は、あのおじいさんは何者なのか何か見えてたんじゃないかと話ましたが、

結局なんだったのか分かりませんでした。

バイトの仲間内では「仙人」と勝手にあだ名をつけ、今日は来るかなとか話していましたが、

その日以来見かけることはありませんでした。

それから1カ月近く過ぎた時です。

学校が終わり、自宅に帰ると母が居ました。

僕を見つけるなり

母「この前、人が山に登ってお弁当食べたりしてるから行きたいって言ってた

おじいさんの話してたよね?」

僕「ああ。仙人?」

母「ほんとかどうかわからないんだけど、この前テレビで言ってたんだけど

亡くなった方たちは一度山に登ってから成仏するらしいよ。

もしかしたらそのおじいさん亡くなった方が見えてたんじゃないの?」

そんなことを母から聞き、僕は怖くなりました。

もしかしたらあのおじいさんは、僕たちの周りの

いたるところから何かが山頂に登っているのが見えていて、

その何かについて行こうとしていたのではないか、

もし母の言っている、亡くなった方たちだとしたら、

あのおじいさんは山頂に行ってはだめなのではないか。

そう思いました。

しかし、2回目に会ってからはあのおじいさんを見かけることもなかったので

その後あのおじいさんがどうなったのか誰も知る由もありません。

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aoiさん、コメントありがとうございます。
ほんとなんだったのか分かりませんが、僕自身不思議におもいました。

普通死んだら三途の川へ行ってそこで六文銭を払って
川を渡るって言うのは聞きますが
回天さんがバイトをされていた地域では三途の川へ行く前に
食事休憩でもあるんですかね・・・なんか不思議な話ですね。