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高校2年の夏休み、タケシは肝試しに出掛けた。
仲間は同級生のユウタとジロウ。
3人とも同じ町に住んでいる幼馴染だ。
休みの日も何となく3人でぶらぶらすることが多かったが、さすがに長い夏休みである。
いい加減3人とも退屈していた。
そこにユウタが持ちかけてきたのが肝試しだった。
「なあ、T病院って知ってるか?来月取り壊されるんだってさ。その前にちょっと行ってみないか?」
T病院は街外れにある廃病院で、心霊スポットとして地元でも有名だった。
少なくとも5年は放置されており、カルテや注射器がそのままになっているという噂だった。
毎日がつまらなかった3人である。すぐに週末行くことになった。
同じ町内に住んでいることもあり、大体の時間に自転車で集まり、昼食を食べてから出発という、肝試しにしては随分と緊張感のないものになった。
さすがに夜は怖かったのと、単なる暇つぶしくらいに考えていたのだ。
T病院は噂通りの荒れっぷりだった。
窓ガラスはほとんどが割られ、傷んだカーテンがはみ出している。
ところどころに落書きが見られ、不良の溜まり場になっている雰囲気も感じられた。
「幽霊より不良のほうが怖いな...」
「危ない奴がいたら走って逃げるだけだろ」
などと他愛もない会話をしながら病院に入る。
夏の日差しは強かったが、さすがに病院内は薄暗かった。
受付を通り過ぎ、ナースセンターに踏み込む。
「おおっ、これが白衣の天使がいたところか!」
「肝試し中もそれかよ笑」
などとふざけあっていた時、
ピピピ...
と音が鳴った。
音は鳴り続けている。
ピピピ...ピピピ...
空気が凍りつく。
「おい、これナースコールなんじゃねえか」
「えっ...」
「ちょっと待て、音が妙に近いぞ」
とタケシがつぶやいた時、ユウタがニヤニヤしながら言った。
「ごめん、携帯の音切っとくの忘れてたわ」
「馬鹿が!ビビるだろうが!」
「ワザとだなこいつ」
その後も白衣を人と見間違えたり、自分達で出した音に驚きながらも肝試しは順調に進んだ。
ユウタはさっきの携帯で写真を撮りまくっていた。
「おいおい、何か写ったらどうすんだよ」
「そのために撮ってんだよ。何か写ったら話のネタにできるしな」
2階、3階と回り、最上階である4階まで来た。
馬鹿話をし過ぎて緊張感もなくなり、そろそろ切り上げるかという頃合いである。
「まぁ昼間っから幽霊なんて出ないか」
「ちょっとは刺激になったわ」
「そういえば俺達の写真まだ撮ってなかったな。ここで一枚撮るか」
カシャッ
と写真を撮った後、ユウタの動きが止まった。
タケシの後ろを凝視したまま動けなくなっている。
「タケシ、あれ...」
「お前、またか!」
とタケシが怒鳴ったが、ユウタは黙り込んでいる。
タケシが後ろを振り向いた時、それはいた。
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病室の窓際、髪の長い女がこちらを見ていた。ジーっと...
手には包丁が握られていた。
3人は絶叫し、めちゃくちゃに階段を降りた。
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放置された注射器や瓦礫を踏み潰しながら病院を出る。
「お前、あれ、あれだったよな!」
「あれじゃわかんねえよ!」
「出た、出た...」
どう対処していいものか分からず、とりあえず町で一番大きな神社に行く。
さすがにお祓いまでしてもらう度胸はなく、一応お参りをして神社を後にした。
3人とも不安だったので、その後はユウタの家で打ち上げをすることになった。
ユウタの両親は旅行で留守にしていた。
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菓子やジュースを買い込み、ゲームをしながら食べる。
くだらない会話をするうち、不安な心もほぐれていった。
最初に買った食糧も尽き、もう一度買い出しにでも行こうかという話になった時だった。
ユウタが何やら焦った顔で鞄をひっくり返し始める。
「携帯がない...病院に忘れてきたかも」
「一度場所を調べてみたら?GPSで探せるだろ」
それもそうか、とユウタはノートパソコンに手を伸ばす。
一方、ジロウは親から電話とかで部屋を出ていった。
携帯の場所はすぐ分かった。GPSの座標はユウタの家を指していた。
「あーやっぱり家か」
「どっか埋もれてんだよ。ちょっと掛けてみるか」
とタケシがユウタの携帯に電話を掛けたその時、ジロウが青ざめた顔で部屋に飛び込んできた。
「い、今親から電話があったんだけどさ。あの病院の近くで人殺しがあったらしいんだよ。
犯人は女で、恋人を包丁で刺し殺しちゃったんだってさ...まだ捕まってないらしいんだよ...」
ピピピ...
窓の外から、ナースコールの音がした。
カーテンの隙間から、髪の毛が覗いていた。
3人は部屋を飛び出した。
作者caffelover
「幽霊と思ったら人間だった」モノを書いてみました。また幽霊が出ない怪談を思いついたら書いてみたいと思います。
2014/07/07
一部改変しました。