ナースコール -世にも奇妙な怪談1-

中編4
  • 表示切替
  • 使い方

ナースコール -世にも奇妙な怪談1-

wallpaper:691

高校2年の夏休み、タケシは肝試しに出掛けた。

仲間は同級生のユウタとジロウ。

3人とも同じ町に住んでいる幼馴染だ。

休みの日も何となく3人でぶらぶらすることが多かったが、さすがに長い夏休みである。

いい加減3人とも退屈していた。

そこにユウタが持ちかけてきたのが肝試しだった。

「なあ、T病院って知ってるか?来月取り壊されるんだってさ。その前にちょっと行ってみないか?」

T病院は街外れにある廃病院で、心霊スポットとして地元でも有名だった。

少なくとも5年は放置されており、カルテや注射器がそのままになっているという噂だった。

毎日がつまらなかった3人である。すぐに週末行くことになった。

同じ町内に住んでいることもあり、大体の時間に自転車で集まり、昼食を食べてから出発という、肝試しにしては随分と緊張感のないものになった。

さすがに夜は怖かったのと、単なる暇つぶしくらいに考えていたのだ。

T病院は噂通りの荒れっぷりだった。

窓ガラスはほとんどが割られ、傷んだカーテンがはみ出している。

ところどころに落書きが見られ、不良の溜まり場になっている雰囲気も感じられた。

「幽霊より不良のほうが怖いな...」

「危ない奴がいたら走って逃げるだけだろ」

などと他愛もない会話をしながら病院に入る。

夏の日差しは強かったが、さすがに病院内は薄暗かった。

受付を通り過ぎ、ナースセンターに踏み込む。

「おおっ、これが白衣の天使がいたところか!」

「肝試し中もそれかよ笑」

などとふざけあっていた時、

ピピピ...

と音が鳴った。

音は鳴り続けている。

ピピピ...ピピピ...

空気が凍りつく。

「おい、これナースコールなんじゃねえか」

「えっ...」

「ちょっと待て、音が妙に近いぞ」

とタケシがつぶやいた時、ユウタがニヤニヤしながら言った。

「ごめん、携帯の音切っとくの忘れてたわ」

「馬鹿が!ビビるだろうが!」

「ワザとだなこいつ」

その後も白衣を人と見間違えたり、自分達で出した音に驚きながらも肝試しは順調に進んだ。

ユウタはさっきの携帯で写真を撮りまくっていた。

「おいおい、何か写ったらどうすんだよ」

「そのために撮ってんだよ。何か写ったら話のネタにできるしな」

2階、3階と回り、最上階である4階まで来た。

馬鹿話をし過ぎて緊張感もなくなり、そろそろ切り上げるかという頃合いである。

「まぁ昼間っから幽霊なんて出ないか」

「ちょっとは刺激になったわ」

「そういえば俺達の写真まだ撮ってなかったな。ここで一枚撮るか」

カシャッ

と写真を撮った後、ユウタの動きが止まった。

タケシの後ろを凝視したまま動けなくなっている。

「タケシ、あれ...」

「お前、またか!」

とタケシが怒鳴ったが、ユウタは黙り込んでいる。

タケシが後ろを振り向いた時、それはいた。

wallpaper:256

病室の窓際、髪の長い女がこちらを見ていた。ジーっと...

手には包丁が握られていた。

3人は絶叫し、めちゃくちゃに階段を降りた。

wallpaper:691

放置された注射器や瓦礫を踏み潰しながら病院を出る。

「お前、あれ、あれだったよな!」

「あれじゃわかんねえよ!」

「出た、出た...」

どう対処していいものか分からず、とりあえず町で一番大きな神社に行く。

さすがにお祓いまでしてもらう度胸はなく、一応お参りをして神社を後にした。

3人とも不安だったので、その後はユウタの家で打ち上げをすることになった。

ユウタの両親は旅行で留守にしていた。

wallpaper:198

菓子やジュースを買い込み、ゲームをしながら食べる。

くだらない会話をするうち、不安な心もほぐれていった。

最初に買った食糧も尽き、もう一度買い出しにでも行こうかという話になった時だった。

ユウタが何やら焦った顔で鞄をひっくり返し始める。

「携帯がない...病院に忘れてきたかも」

「一度場所を調べてみたら?GPSで探せるだろ」

それもそうか、とユウタはノートパソコンに手を伸ばす。

一方、ジロウは親から電話とかで部屋を出ていった。

携帯の場所はすぐ分かった。GPSの座標はユウタの家を指していた。

「あーやっぱり家か」

「どっか埋もれてんだよ。ちょっと掛けてみるか」

とタケシがユウタの携帯に電話を掛けたその時、ジロウが青ざめた顔で部屋に飛び込んできた。

「い、今親から電話があったんだけどさ。あの病院の近くで人殺しがあったらしいんだよ。

犯人は女で、恋人を包丁で刺し殺しちゃったんだってさ...まだ捕まってないらしいんだよ...」

ピピピ...

窓の外から、ナースコールの音がした。

カーテンの隙間から、髪の毛が覗いていた。

3人は部屋を飛び出した。

Normal
閲覧数コメント怖い
7804
4
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

aoiさん:
ありがとうごいます。まさにその通りです。私の頭の中とぴたり一致です笑
携帯に住所など入れていると、こういうことになるかもしれません。お気をつけて...

>「人間は直接殴れるから幽霊より怖くないよな・・・」って
>言っている人がいました。
なるほど。その感覚も分かります。私は霊感ゼロなのですが...「見える人」にとっては
人間以上の怖さがあるのでしょうね...

廃病院で携帯を落とした携帯をその女に拾われて
何故か家を特定されて窓の外でニタリ・・・
大ピンチ!ってとこですか・・・
無事逃げ切る事・・・が出たんでしょうかね・・・

>やはり人間が一番怖い
「人間は直接殴れるから幽霊より怖くないよな・・・」って
言っている人がいました。
私はどっちも怖いですが・・・

ちゃあちゃんさん:
コメント頂きありがとうございます。
やはり人間が一番怖いですね。
夜、窓の外に誰かいることを想像しただけで恐ろしいです。

やっぱり生きてる人間が1番怖いって事ですね(´Д` )