高校の怪談 ~赤い部屋の女~

中編4
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高校の怪談 ~赤い部屋の女~

メリーさん事件も一段落し、また平凡な日常が戻ってきた。

休日の留守番という解放感に浸っていると、スマホが鳴った。

表示された名前は「時任 礼一郎」。

「…びっくりした。メリーさんが怒って仕返しに来たかと思った。」

俺は一人呟いて、電話に出た。

「もしも」

「加古ー‼︎暇だよーん、今からそっち行っても…」

俺は電話を切った。

「…全く、俺は疲れてるんだから…。」

そしてなんとなくあの都市伝説アプリを開いた。

「…あ」

メリーさんの記事が消えている。ゲシュタルト崩壊の時と同じだ。

「なるほど…。」

このアプリは、解決した事件の記事が徐々に消えていくものなのかもしれない。そして全ての事件を解決したとき、このアプリ自体も消えてくれるのかもしれない。

俺はふとそう思った。

「…腹減ったな」

ちょっとした安心感を得ると、お腹が空くものである。

俺は冷蔵庫にプリンを冷やしてあるのを思い出し、席を立った。

「えーっと…。あった。」

冷蔵庫の奥に手を突っ込み、カップを引っ張り出す。

「…あれ?」

見ると、蓋に何やら書いてある。

「This is mine. 母より」

「………。」

仕方ない。母はこういう人だ。

プリンを食べるのを諦め、リビングのソファに座る。そしてテレビの電源を入れ、チャンネルを適当に回す。

「大した番組やってないな…。」

暇だ。やっぱり礼一郎を呼ぶべきだったろうか?

俺はスマホを手に取り、番号をダイヤルしようとした。

が、突然画面がブラックアウトし、あのアプリが開かれた。

「⁉︎」

そしてひとりでにスクロールし、ある一つの記事が開かれた。

「赤い部屋」

「えっ…。」

俺は戸惑った。

不意に視線を感じて、辺りを見回す。

「…ん」

テレビ、机、壁…。俺は壁に目を留める。

直径1センチほどの、小さな穴が空いていた。

「…あんな穴、あったっけ?」

俺は吸い込まれるようにその穴に近づいた。そしてそっと片目を当てた。

「……。」

真っ赤、だ。

俺の視界を鮮血のような赤が覆っている。

「…なんだこれ」

と、突然、その赤がぐりんと動き、真っ黒な瞳が俺を捉えた。

「う、うわあぁぁ‼︎」

同時に部屋の中に響き渡る、女の狂おしい笑い声。

ケタケタケタ…と、壊れた人間にしか出せないような甲高い音に、俺は耳を塞いだ。そして目を固く閉じ、うろ覚えの念仏を繰り返し唱えた。

どのくらいの時間が過ぎたのだろうか。少なくとも俺にはとてつもなく長い時間に感じられた。

「…。」

恐る恐る耳から手を離し、目を開けると、辺りはもう静かになっていた。

「良かった…。」

俺はほっとして、肩の力を抜いた。

が、今だ目の前の壁に存在する穴が俺を完全に安心させてくれなかった。

「…部屋にいよう」

俺は立ち上がり、自分の部屋へと向かった。

✴︎

俺は部屋に布団を敷き、その上に寝転がってアイスキャンディを咥え、ぼうっとしていた。

「…暇だな」

呟いて、俺は無意識に枕元に手を伸ばした。枕元にはいつもスマホが置いてあるのだが、俺の手は床を撫でるだけであった。

「居間に置いてきたか…。」

俺は舌打ちして、布団から起き上がった。

と、視界に飛び込んできた壁に、直径1センチほどの穴が空いていた。

「うわあっ‼︎」

俺は驚いて飛び退き、頭を強かに打った。

朦朧とする意識の中に、女の声が聞こえてきた。

「ねぇ…わたしをみてよ…。」

そして強い力で頭を鷲掴みにされ、無理矢理壁に顔を押し付けられた。

額の皮膚が壁と頭蓋に挟まれて痛い。

ぐりぐりと嫌な音が頭の中に響く。

俺は必死で腕を振り回し、抵抗した。そのとき、俺の指先に何かが当たった。

「…これは」

先程まで舐めていたアイスキャンディの棒だ。

俺は棒を逆手に持ち、

「うおらぁっ‼︎」

一か八か、その小さな穴に突き刺した。

ーぎゃあああああああ‼︎ー

断末魔のような叫びが聞こえるとともに、頭を押さえていた力がふっとなくなった。

俺はそのまま意識を失った。

✴︎

「…!香!どうしたの!」

体を揺さぶられて目を開けると、心配そうな母の顔が目の前にあった。

「…母さん?」

母さんはふーっと溜め息をついて、良かった、と言った。

「死んでるかと思った。」

「息子を勝手に殺すなよ!」

ふと穴のことを思い出し、辺りを見回すが、そんなものはどこにもなく。

(…夢だったのかな)

そう思いかけて、ふと右手を見ると。

先端が真っ赤に染まった、アイスキャンディの棒が握られていた。

焼印の「当たり」という文字が、ぬらぬらと光っていた。

(はは…。もう交換は出来ないな…。)

驚く母さんを尻目に、俺は呑気に考えていた。

✴︎

「へー、災難だったなあー!行かなくて良かった!」

「てめえ、他人事だと思いやがって…。」

翌朝、家での出来事を礼一郎に話した。

「だって他人事だもーん♪」

「貴様ぁ…。」

そこに逢魔が入ってきた。

「皆席につけー。今日は転入生を紹介するぞー。」

転入生?

「入ってきなさい」

逢魔の声に応じて入室してきたのは、片目に包帯を巻いた黒髪ストレートの少女だった。

「羽闇 ちはやです。よろしくお願いします。」

そう自己紹介すると、片目で笑った。

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aoi様、コメントありがとうございます。
こんなアプリ、本当にあったら嫌ですよねぇ…。俺もそんな事を考えながら書いてました。

次から次へと・・・難儀な携帯・・・ぢゃなくてアプリですね
何やら次への布石があるようで・・・
次はなにがあるんでしょう。次がアップされているので
読みにいきます。

ゲス姉様、コメントありがとうございます。
怖いが付くと、また次の作品へのやる気に繋がるのでとてもありがたいです!

mami様、怖いありがとうございます。
作者として、とても励みになります!

鎮魂歌様、コメントありがとうございます。
加古と礼一郎の霊現象に対する軽いノリは、シリーズ通して続きます(笑)
アプリの状態の視点から物語を見てくださるとは、深く読み込んで下さったようで嬉しいです。

Noin様、コメントありがとうございます。
前から読んでくださっていたのですか、ありがとうございます。しかも面白いと思ってくださっていたとは!作者冥利に尽きます。
続きも頑張りますので、よろしくお願いします。

ガラ様、コメントありがとうございます。
これからも読者様に喜んで頂けるような作品を書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

加古と礼一郎のノリの軽さは毎回面白いです(^^)

スマホアプリから赤い部屋の記事が消えているか否かで、
この怪談が解決したのかどうかがわかりますね。

「羽闇 ちはや」さんが、
危険な存在なのかどうか続きが気になります。

このシリーズ初コメです。
前々から面白いな~と、
思って読んでましたが、今回は凄く続きが
気になる終わり方ですね!!!

続き楽しみにしてます。