高校の怪談 ~転校生は人じゃない⁉︎~

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高校の怪談 ~転校生は人じゃない⁉︎~

羽闇 ちはやと名乗るその女生徒は、片目を包帯で覆っている以外は普通の生徒と全く変わらなかった。

性格も明るく、すぐクラスに馴染んだ。

包帯のことを聞かれても、「ちょっとケガしちゃって」と笑って答える。

だがあんな事があった後では、普通に話せる訳がない。

痛む額をさすりながら、俺は考える。

羽闇 ちはやは確かに普通の女生徒だ。だが、どうもタイミングが良すぎる。赤い目の女(恐らく)の目を潰した直後に現れた、片目を隠した女の転入生…。同一人物としか思えない。

礼一郎が椅子に跨り、俺の方を向いて頬杖をついた。

「加古。その赤い目の奴の姿、見たのか?」

「ううん、目しか見てないよ。」

それじゃあさ、と、礼一郎はずいっと詰め寄ってきた。

「たまたまかもしれないじゃん?それにあいつ結構可愛くね?アタックしちゃおうかなー♡」

「止めとけよ。どんな奴だか分かったもんじゃない。」

俺が言うと礼一郎は、いいじゃーん、と笑った。が、その笑顔が固まった。

「…え?」

同時に後ろから気配を感じた。

恐る恐る振り向くと、転入初日に見せた笑顔でこちらを見下ろすちはやの姿があった。

「加古君、だよね?」

「…あ、ああ。そうだけど。」

横目でそっと礼一郎を見遣ると、

(ガンバ♪)

と、親指を立てている。

(この野郎…。)

「どうしたの?」

こちらを見つめる一つの瞳が、怪訝そうに揺れる。

「…いや、別に。何でもない。」

落ち着け、俺。俺は胸の鼓動を出来る限り押さえながら答えた。

「羽闇さん…だったね。俺に何か用?」

彼女は頷くと、言った。

「あのさ、話したい事があるの。加古君、あなたと二人で。」

俺と礼一郎は緊張した。

「放課後、第一体育館に来て。」

そう言って、こちらに背を向けた。

「…。」

「…どうしよう。」

これが好きな女の子からの誘いだったら、喜んで行くのになあ。

俺達は顔を見合わせ、溜め息をついた。

✴︎

放課後、俺は約束通り第一体育館へ向かった。

「…礼一郎、お前本当に来て大丈夫なのか?」

「大丈夫さあ、隠れてれば分かんないよ!」

俺は隣を歩く礼一郎に目を遣った。

「お前も安心だろ、俺がいれば。」

「いや、逆に不安。」

「なんで⁉︎」

話しているうちに体育館に着き、礼一郎は倉庫に隠れた。

ステージに腰掛け、暫く待っていると彼女が現れた。

「私が呼び出したのに、遅くなってごめんね。」

彼女は何ら普通の女子高生と変わらない様子で、小走りにこちらへ向かってきた。

「ん、べ、別に。」

頬をピンク色に染め、肩で息をついてこちらを上目遣いに見上げるちはやは何だか可愛らしくもあり。

「…何だよ、用事って?」

俺はとりあえず、平静を装って彼女に聞いた。

「うん。あのさ、」

ちはやはセーラー服の胸ポケットからスマホを出し、何やら操作してこちらへ寄越した。

「これ。加古君なら分かるでしょ。」

受け取ったスマホの画面に表示されていたのは、あの都市伝説アプリのホーム画面だった。

「…これは!」

驚く俺に、ちはやは微笑んで言った。

「やっぱり知ってるのね。」

そして体育館倉庫の方を向き、

「時任君も、別に隠れなくてもいいよ。このアプリの事分かるんでしょ。…大丈夫、怒ってなんかないわ。」

バレてる…。

体育館倉庫の戸が開いて、観念した様子の礼一郎が出てきた。

「…な、なあ。君、何者なの?」

俺は恐る恐る彼女に聞いた。

彼女は少し考えこみ、暫くして口を開いた。

「…ねえ、私の包帯の下、見る?」

全身に鳥肌が立った。

「説明するのもいいけど、これを見せちゃった方が早いの。」

彼女は包帯に手をかけたまま俺に迫ってきた。

思わずステージを飛び降り、後ずさる。

「やだぁ、そんなに怖がる事ないじゃない。」

彼女は含み笑いをした。とても無邪気なものだった。

「だって本当はもう分かってるんでしょ、この包帯の下が。」

「し、知らないよ!俺は何も…!」

俺は必死で首を横に振った。

が、ついに体育館の隅に追い詰められてしまった。

「大丈夫。加古君に危害を加えるつもりは毛頭無いから。」

そう言いながら、包帯を解いていく。

俺は目を瞑ろうとしたが、瞼が全く降りてこない。

解けていく包帯の奥に見えたのは、ぐちゃぐちゃに潰された眼球の名残…。

ではなく、赤い瞳の目だった。

相当拍子抜けした顔をしていたのだろう、ちはやはさも可笑しそうに笑って言った。

「もう、加古君怯え過ぎ!大丈夫って言ったでしょ?」

「いや…。」

大丈夫じゃないだろ!瞳が赤いんだぞ、お前‼︎

「あの、君は…。」

ちはやは初めて二つの目で笑い、うん、と頷いた。

「そうよ。お察しの通り、私は人間じゃないわ。そして加古君、あなたとも初対面じゃないわね。」

やっぱりこないだの赤い目の女じゃねーかー‼︎治癒力半端ねぇな!

俺は半泣き状態で彼女に聞いた。

「そ、そうか。でも何でこの学校に?」

彼女は人差し指の先を薄い唇に当て、

「そうね、一言で言えば、あなた達みたいなあのアプリの被害者を救うため、かしらね。」

「は?」

俺は驚いた。彼女の口ぶりからすると、他にもあのアプリの被害者がいるようだ。だが、俺はあれを普通にインストールしたし、礼一郎もそうだ。

逢魔は感染したような形だが…。

「他にもいるのか?…俺達のような奴が。」

「ええ。」

ちはやはすっかり影が薄くなっていた礼一郎に歩み寄り、その眼鏡をさわりと撫でた。

「でも、もうこの世にはいないわ。」

一瞬、周囲の音が全て消えた気がした。

「あのアプリは、怪現象の謎を解けなかった持ち主を取り込む。そして取り込まれた人を都市伝説の一部にしてしまうのよ。」

血の気が引いた。

礼一郎はその場に尻餅をついた。

同時に彼のかけた眼鏡が床に落ち、カシャンと軽い音を立てる。

「え…。じゃ、じゃあ…。」

礼一郎が裏返った声でちはやに問う。

「…もしかして、俺達も?」

ちはやは眼鏡を拾い上げて、

「いずれはね。都市伝説がいつまで経っても無くならないのは、そのせいでもあるわね。」

と、小さな声で答えた。

「マジかよ…!」

礼一郎は立ち上がり、ふらっと2、3歩歩いた。

「加古…、どうしよう…‼︎」

「礼一郎…あのさ…。」

俺は頭を掻いた。

「お前が話しかけてるそれ、マイクスタンドだぞ。」

涙目でマイクスタンドと向き合っている礼一郎に、俺は突っ込んだ。

「あ、あれ?」

ちはやから眼鏡を受け取り、改めてマイクスタンドを見た礼一郎。

「あ、あはは…。俺、眼ぇ悪いからなあ…。裸眼じゃ殆ど見えないんだわ。」

道理でスレンダーだなーと…。と笑う礼一郎に、少しだけ場の雰囲気が和んだ。

「時任君、安心して。」

ちはやがくすりと笑って言った。

「何もすぐに取り込まれちゃうなんて事はないから。」

「え、マジ⁉︎」

礼一郎の目が輝く。

「ええ。」

「羽闇‼︎…さん。」

危うく呼び捨てにしかけ、慌てて訂正する。

「どうすればいいの?その、取り込まれずに済むには。」

「いやね、呼び捨てでいいわよ。ちはやって呼んで。」

「分かった。じゃあ、ちはや。」

彼女は嬉しそうに、うん、と頷いた。

「取り込まれずに済むには、あのアプリを消してしまう事が必要。でもタダでは消えてくれないのがあれの厄介なところね。そこで、あの記事に書かれた都市伝説達を解決し、一つずつ消していく。一つの都市伝説を解決する事は、それに取り込まれてしまった人の供養にもなるからね。」

なるほど…。そう考えると、メリーさんには悪いことしたかも。

「そして、全ての都市伝説を消してしまえば、あのアプリも消える。そういうこと。」

俺の推測していた通り、か。あまり認めたくはなかったが。

「まあ、大変な事だとは思うけど。私も力を貸すから、頑張りましょう。」

「ありがとう、ちはや。」

だが、俺にはまだ一つ疑問があった。

「ねえ、ちはや。」

「何?」

「君、その…。こないだ俺のとこ来たんだよね?」

「そうよ。」

「なんで俺にあんな事したの?」

ああ、と、ちはやは笑った。

「その時まだ私は赤い部屋の記事に取り込まれてたから。」

そして、また片目に包帯を巻きながら、言った。

「加古君があの記事を解決してくれて、私は解放された。普通ならそのまま成仏するんだけど、私は元々霊感が強かったからここに存在出来ているのよ。」

そうだったのか…。

「…それで俺達のところに、か…。」

「うん。まあ、成仏しても良かったんだけどさ。あのアプリの一番最初の被害者は、私だったし。自分で解決したいっていうのもあったかな。」

「最初の被害者は、君…?」

「そうよ。だから思い入れが強かったのかもね。」

俺は漸く納得した。

「分かった。じゃあ、これからよろしくな、ちはや。」

「こちらこそ。時任君も、よろしくね。」

「う、うん。よろしく。」

こうしてまた都市伝説仲間が増えた。

ちなみに、あとでアプリを確認すると、赤い部屋の記事は消えていた。

✴︎

加古と時任が帰ったあと、羽闇 ちはやは体育館の中央に座っていた。

「いい子達そうで良かったわ。でも、問題はこの高校よね…。」

ちはやは小さく溜め息をついた。

「校内に人外が多すぎるのよ。あの、体育の先生…。大神先生?だってそうだし。それに、」

くすりと笑って、彼女は呟いた。

「担任の逢魔先生。あんな人が、何でこんな所で教師やってるのかしら…。」

そして彼女は立ち上がり、体育館を後にした。

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鎮魂歌様、コメントありがとうございます。
GTOだけでも大分濃いのに、一体加古と礼一郎の回りはどうなっているのでしょうね…。

ガラ様、コメントありがとうございます。
続きをアップさせて頂いたので、是非ご覧ください。

GTOだけでなく、逢魔も…ですか。
加古と礼一郎、
頼りになる先生たちに囲まれてて良かったですね。

これからの展開が凄く面白そうですね(^^)
続きを楽しみにしております。

続き楽しみにしてます( ^∀^)

ゲス姉様、コメントと怖いありがとうございます。
続きを楽しみにして頂いているようで、光栄です。執筆頑張ります!

mami様、コメントと怖いありがとうございます。
面白い展開を作れるよう、これからも頑張ります!

aoi様、コメントありがとうございます。
加古達の高校はどうなっているのでしょうね…。教員に狼が混じってるって。細かい所まで読んで下さったようで、嬉しいです。
続きも頑張ります。

Noin様、コメントありがとうございます。
これからの展開も、皆様に楽しんで頂けるよう精進致しますので、よろしくお願いします。

麟様、コメントありがとうございます。
ラストに驚いて頂けたようで嬉しいです。続きの執筆も頑張ります。

続き気になるーっ楽しみにしてます!

おぉ!なんか、まさかの展開!?
先が気になります!

都市伝説を解決しないと消えないなんて
難儀なアプリですね。
都市伝説なんて次から次へと出てくるのに
アプリが消える日が来るんですかね・・・

>校内に人外が多すぎるのよ
大神先生はフリがあったのでそうだと思いましたが
よもや「逢魔先生あんたもか!」ってとこですね。
それも「あんな人が、何でこんな所で教師やってるのかしら…。」
との言われよう・・・先生の正体は何か厄介な存在なんでしょうかね・・・
まぁ「逢魔」と言えば「逢魔ヶ刻」妖怪変化・怪異が発現する時間ですから
納得と言えば納得ですが・・・
これからも色々展開していくようなので楽しみにしておきますね。

なにか、凄い展開になってきましたね
続き楽しみにしてます。(^ω)ノシ

いつも読ませて頂いてましたが、ラストが予想外の展開で思わず衝動的にコメントしてしまいました(^_^;)

続き、楽しみにしてます
頑張って下さい