中編3
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ある夜の夢の話

この話は、初夏のある日に見た夢の話である。

その夜はそれほど暑い夜ではなかったが、いつものように長夜した末にいつの間にかうとうとと眠りこんでしまった。

夢の中の私は、夢の中の私の父親らしき男から問い詰められている

「お前は何をみたのだ?」

夢の中の私の父親はしきりにそう私に尋ねる。(注当然その男は私の実際の父親には全く似ていない)

酷く頑迷に見えるその男は、私が答えられないことにいら立ち始め、何度も同じ質問を繰り返す。

「お前は何を見たのだ?」

そこで、唐突に記憶が途切れる。

次に、気がつくと、私は成長し大人になっていた。

私の家は裕福なようで、とても大きなお屋敷に住んでいる。

そこで私は、相手は不明なのだが、何者かに酷く殴打されている。

相手は、父の用であり、そうでないようなものに。

膝を、腹部にめり込むほど何度も何度も入れられ、青息吐息の私を見下ろしながら、その男が

「お前のせいなのだ」

ぼそぼそと呟くように、しかしはっきりとそう聞き取れる声で何度かつぶやく

男は、直径10cmはあろうかという金属製の杭を私の目に当てがい

大きなつるはしを振り上げその杭を力の限り打ち込む

私の頭は、地面に固定されてしまう。(注痛みは感じない

さらに男は、もう一本同じ杭を左目に突き刺し、同じように打ち込む。

そこで記憶がまた途切れる。

幼い私は、母とともに布団に横たわっている。母が私に語りかける

「お父さんには、私が嫌っていることはないしょにしておいて。お父さんがかわいそうだから」

私は、母が父を嫌っていることも、又父がそれに気がついていることも知っていた。

私が見た光景、父が私に問い詰めようとした光景とは、母とその何者かとの浮気現場だったのかもしれない。

そして、私は一つのことに気がつく、私の父は、私が青年期を迎える前に他界していることに、つまり、あの私の目を杭で打ちつけた男は父ではないことに。

それでは、誰なのか?

私には父が2人いた、いや違う。父には双子の弟がいたのである。父はあの夜私を

問い詰めていた父は、私の父であった。

幼かった私は、父と瓜二つの弟の区別がつかず、父が問うている意味が理解できなかったのだ。

「お前は何を見たのだ?」

そう問われても、私にはただただ仲良く、じゃれあう父と母を見ただけである。第一その当事者に、何を見たのか問われても答えようがない。

私は、幼少期の不信感から父を誤解し続けたのかもしれない。思えば、父という男は

哀れな男だったのかもしれない、妻に裏切られ、弟に裏切られ、息子にまで…。

父は息子である私が、母と弟をかばってみたものを白状しないと勘違いしていたのではないか?

父の死因は、事故としか聞かされていないが、あれは、事故でなく自殺ではなかったのか?なぜ母は、私にそんな嘘ついたのか?

そこで夢は覚めてしまった。

全く不可思議な体験である。目を杭打たれた私はおそらく、すでに絶命しているだろうが私は願わくば、これが事実でないことを祈るばかりである。

これほど救いのない話も珍しいからである。

Concrete
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奥が深い夢ですね。
面白かったです。

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深いですね。
その夢が何かを暗示しているように思えます。

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