羊とウミガメ -世にも奇妙な怪談8-

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羊とウミガメ -世にも奇妙な怪談8-

「押入れって、何か落ち着くんだよな」

ビールを飲みながらタケシは言った。

タケシは都内某所で働く営業マン。

趣味がマラソンというだけあり、いわゆる"細マッチョ体型"の彼だが、学生時代のあだ名は"ドラえもん"だった。

押入れの中で寝る癖があったからだ。

これは、そんなタケシが学生時代の終わりに体験した恐怖である。

学生時代、タケシはやや古めの和風アパートに住んでいた。

「最近の学生向けアパートって、洋間にクローゼット、風呂トイレはユニットバスだろ?

俺ああいうの駄目なんだよな。

押入れで寝るの好きだし、風呂トイレは別じゃないと我慢できないんだよ」

アパートは築10年ほどだったが、一度改築しており、住み心地は良かった。

就職も決まり、アパートを出るまで1ヶ月となった時、隣の住民に変化があった。

「元は気のいい綺麗な姉ちゃんだったんだけど、ある日見たら髪がボサボサ、肌もボロボロになっててさ。

様子もちょっと普通じゃなかった」

何があったのだろうと思いつつ、タケシは引っ越しの準備を進めた。

引っ越しまで2週間になったある日、チャイムが鳴った。

「その時は業者かと思ったんだけどさ」

出てみると、隣の女性が立っていた。

「一瞬びっくりしたんだけど、髪も化粧も元に戻っててさ。

ああ、あの時はたまたま調子が悪かったんだなって思ったな」

女性はニコニコしながらお椀を持っていた。

お椀にはスープが入っていた。

「美人だったし、正直悪い気はしなかったな」

少し下心のあったタケシは、そのままスープを受け取った。

食べてみると、何とも言えないうまみがあった。

特に、肉には不思議な滋味があり、おいしかったという。

女性はそれから毎日食事を持ってきた。

スープに始まり、チャーハン、唐揚げ、肉じゃが...全てにあの美味しい肉が入っていた。

「気になったから、何の肉ですか?って聞いてみたら、羊の肉だって。

俺は羊の肉なんて食べたことなかったから、そんなもんかと思ったよ」

女性が料理を持ってくるようになってから、タケシの部屋にある変化があった。

いつものように押し入れで寝ようとすると、生臭い臭いが漂ってくるのだという。

「どうも天井からするみたいなんだよな。

でもまあ、引っ越しまですぐだから、我慢してたよ」

臭いは日増しに強くなっていったが、タケシは引っ越しの準備に忙殺され、気にしなかった。

そうこうするうちにアパートを出る日が来た。

戸締まりをし、不動産屋に鍵を返しに出ようとすると、あの女性が近寄ってきたのだという。

「満面の笑みで『料理食べてくれてありがとう』って言われたな。

やけに顔艶が良くて、ドキッとしたのを覚えてるよ」

話の流れで連絡先を交換することになり、ホクホク顔でアパートを後にしたタケシだったが、その後驚愕の事実を知る。

入社まで期間があったため、一旦九州の実家に戻り、ボーっとニュースを見ている時のことだった。

あるニュースが流れた。

「東京都◯区◯◯✖丁目...」

見覚えがある住所だった。

画面が切り替わり、現場風景が映る。

あのアパートだった。

「...で殺人事件があり、容疑者の女は...」

映っていた顔写真は...隣に住んでいた女性だった。

「痴情のもつれってやつで元恋人を殺しちゃったらしいんだよ。

それだけならまだ良かったんだけどな...」

その後、刑事が九州の実家まで尋ねてきたのだという。

刑事はこういった。

「あなた、隣に住んでたでしょ?

彼女、冷蔵庫に切り刻んだ死体を隠しててね...入りきらない分を、あなたの部屋の真上に隠してたんですよ」

アパートは屋根裏で繋がっていた。

あの時の生臭い臭いは、女性が隠した死体のものだった。

刑事はさらに"あること"を伝えて帰っていった。。。

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「あの後、どうしてもあの肉が気になって、羊料理を食べてみたんだよ。

でもな...明らかにあの時食べた肉と味が違ったんだ。

なあお前、ウミガメのスープって話、知ってるか...」

そう言うと、タケシはタバコをもみ消し、宙を見つめた。

私はその話を知っており、全てを悟った。

刑事が言った"あること"とはこうだ...

「女性が、人肉を調理した形跡がある」

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参考:ウミガメのスープ

ある男が、レストランでウミガメのスープを注文する。

男はウミガメのスープを一口飲んだ後、自殺する。

男は元船員で、遭難した際に船長に"ウミガメのスープ"を食べさせてもらい、生き延びたことがあった。

ところが、レストランで食べたウミガメの味はまるで違うものだった。

そこで男は全てを悟る。

船長が出したスープは、仲間の死体を料理したものだった。

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Noinさん:
怖い&コメント頂きありがとうございます。

正確には水平思考ゲームというらしいのですが、ウミガメのスープの例題が大変有名なために代名詞になっているようですね。

昔世にも奇妙な物語で映像化されていて、よくできているなあと感心した覚えがあります。

参考の話(ウミガメのスープ)は知ってましたが、
ウミガメのスープと言うのは知りませんでした。