高校の怪談 ~竜の子レンジャー見参⁉︎~

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高校の怪談 ~竜の子レンジャー見参⁉︎~

俺は周りを取り囲む異形の物達に、足が竦んで動けなくなっていた。

「せ、先生〜‼︎」

そんな俺の様子を見て、周防が言う。

「奏っち!俺は加古を逃がすから、ここは任せたぞ!」

「分かった!」

言うが早いか、 周防は俺の腕を掴んで空中に投げ上げた。

「えっ?」

そして何かふわっとした物の上に上手く乗っかる形で着地。

「飛ぶぞ、加古おおお‼︎」

「えぇぇぇ〜⁉︎」

生物室の窓を突き破って、天高く舞い上がる。

「しっかり掴まってろよ、あ、角とか掴んどくといいかも。」

純粋な水晶のように透明で美しい角に、白銀のたてがみ。ほとんど透明に近い、氷のような鱗を持つ真っ白な龍に、俺は跨っていた。

「え、あ、あの…。」

「何だ?」

「本当に周防先生、ですか?」

「そうだよー、カッコよすぎてびっくりした?」

得意気に円を描くように飛んでみせる。

あ、このお調子者なとこ、確かに周防だ。中身は全然変わってねーや。

俺は彼の角に手をかけ、態勢を整えた。

角はひんやりと冷たくて、この季節には丁度心地よい温度である。

「先生、逢魔先生は大丈夫ですかね?」

「なぁに、あいつなら多分大丈夫。だってお稲荷さんなんだろ?一応神様なんだから大丈夫!」

「周防先生も水神なんでしょ?戦わなくて良かったんですか?」

「…。他に無事な奴がいないか探すぞ!」

あ、聞こえないフリした。水神ってこんないい加減でいいのか⁉︎

若干の疑問を抱きつつ、俺は竜の子太郎気分で高校上空から校舎を眺めていた。

「…ん?」

俺は屋上に、人影をふたつ見つけた。

「先生、屋上に降りてください。誰かいます!」

「え、マジ?」

ゆっくりと降下していくと、そこには。

「あ、礼一郎にちはやじゃんか!」

大分疲れた様子の礼一郎と、それを介抱するちはやの姿があった。

「良かった、無事だったんだな!」

が、二人の目線は俺が乗っている龍に釘付けになっていた。

「…か、加古。これ、何?」

「ああ、これ?実は…。」

俺は龍が周防であることと、今生物室で逢魔が和歌歩と共に悪霊と闘っていることを話した。

「えーっ、周防って龍だったの⁉︎すげー‼︎」

「龍までいるなんて…。この学校、すごいわねぇ。」

うん。普通あり得ないよな。

「あら、周防先生に加古君。」

「「何?」」

「二人とも、頬から血が出てるわよ。」

「ああ、そういえば…。」

さっき生物室の窓突き破ったっけな。

「拭いてあげるから、しゃがんで。」

「え?あ、いいよ、大丈夫!すぐ治るって。」

ちはやは頬を膨らませた。

「ほっといたらバイ菌入っちゃうわよ。」

そう言って、俺の頬にハンカチを押し当てた。

「痛てて…。」

「我慢して。」

「うん…。」

何か顔が火照ってきた。そんな場合じゃないのに!

「はい、次周防先生ね。頭下げて。」

「ぐるるるる〜♡」

ノド鳴らしてる!こいつ、ノド鳴らしてやがる‼︎

「はい、いい子ね!」

「グオオ♡」

次の瞬間、俺と礼一郎は同時に周防の頭をはたいていた。

「痛ってぇ‼︎何すんだよ⁉︎」

「すみません。手が滑って。なあ礼一郎。」

「そうそう。ゴメンゴメン。」

「て、てめーら…!」

下心丸出しのアンタが悪い。

俺はまた周防の背に跨り、言った。

「とにかく、生物室に何かあるのは確かだ。もう一度調べに行きましょう。」

「えっ、大丈夫なのか?もしかしたらまだ戦ってる最中かも知れないんだぞ?」

「これだけの人数がいれば大丈夫でしょう。な、礼一郎、ちはや。」

礼一郎とちはやは同時に頷いた。

「何度も恐怖体験してるもんな!もう慣れたぜ!」

「でもそういう類のものを見くびっちゃダメよ。」

「分かってるさ。でも、俺達には逢魔先生と周防先生がついてるし、少しは安心できるだろう。」

ですよね、と周防を振り返ると、彼は大きく頷いた。

「ああ、安心しろ!全て奏っちに任せるんだな!」

「先生、殴りますよ。グーで。」

「よし、生物室へ向かうぞ!三人とも、俺の背中に乗れ!」

俺と礼一郎、ちはやの三人は、周防の背中に跨った。

「飛ぶぞー、しっかり掴まってろよ!」

「「「はーい!」」」

三人に増えた竜の子部隊は、固い決意を胸にして生物室へと飛んだ。

✴︎

「坊や〜、良い子だねんねしな〜♪」

「礼一郎うるせぇ」

「何を!俺達、三人合わせて水神戦隊竜の子レンジャーだろ⁉︎」

「いつ決まったんだよ⁉︎」

いつものやりとり。日常が恋しい…。

「いやに静かですね。」

生物室まで降りてきた俺達は、窓の外から中の様子を窺った。

「あ、あれって逢魔先生じゃないですか?」

よく見ると、生物室の中で白い狐が毛繕いをしている。

「本当だ。」

「入ってみましょう。」

俺達は先程割った窓から手を突っ込み、鍵を開けて生物室に侵入した。

「逢魔先生!」

彼は振り返ると同時にいつもの姿に戻り、こちらに微笑みかけた。

「お前ら、無事だったのか。…あっ。」

「逢魔先生、お疲れ様です。」

「羽闇…。」

一瞬目を吊り上げた逢魔だったが、すぐにかぶりを振ってこちらを見据えた。

「それよりお前ら、この現象の大元を見つけたぞ。」

「ほ、本当ですか⁉︎」

逢魔は頷き、傍らに立つ和歌歩に目で合図した。

「この校舎にあれだけの霊が集まったのは全て、霊界通信機のせいです。」

「「霊界通信機?」」

俺と礼一郎は同時に首を捻った。

そんな俺達に、窓から首だけ突っ込んでいた周防が言った。

「霊界通信機ってのはな、かの発明王、トーマス•エジソンが晩年に作った機械だ。まあ結局完成を待つことなく彼は亡くなったが…。」

「そんなのがなんで完成した状態でこんな所に?」

礼一郎がさも不思議そうに言う。

「この高校に、ちょっと変わった化学の先生いるでしょう?」

「「「「「あぁー…。」」」」」

その場にいた全員が納得した。

化学の湊 伸一先生。授業中に急に世界征服の話を始めたり、何だかよく分からない先生だ。

見た目スマートで悪くないしまだ若いのに、内面に問題ありってとこか。何度か保健室の皆川先生にアタックしているのを見たことがある。ことごとく振られていたが。しかもこっぴどく。

「もしかして…。湊先生がその霊界通信機ってやつを作ったんですか?」

「ご名答!」

その場の全員が顔を上げた。和歌歩の声ではない。生物室の入り口から聞こえた。

恐る恐る振り返ると、そこには。

「「「「「み、湊先生‼︎」」」」」

彼は腕組みをし、含み笑いをしながらこちらへ歩いてきた。

「私の発明品、霊界通信機の出来はどうだったかね?」

「ま、まさか彼は取り憑かれているのか⁉︎」

「いいえ、和歌歩さん。通常運転です。」

「え?」

湊はニヤリと笑って、

「私の天才的頭脳は、我が敬愛する発明王エジソンの遺志を受け継いで、彼の未完成の発明を完成させたのだ!素晴らしいだろう、さあ、私にひれ伏すがいいわ!」

高笑いする湊を見て、周防が一言。

「痛ってぇ。」

その場に静寂が流れる。

「す、周防先生!」

「刺激するような事言っちゃダメですよ!」

「相手の精神状態考えて!」

俺達は慌てて周防のでかい口を押さえた。

が、時すでに遅し。

「き、貴様周防!よくも私を侮辱したなぁ⁉︎」

「えっ、だって…。」

「黙れぃ‼︎水神だろうと人間だろうと容赦はしないぞ、その角へし折ってやるから、そこになおれ‼︎」

今思ったが、なんで湊は周防の正体見ても驚かないんだ…?

マッドサイエンティストってそういうもの?

「さあ行け、悪霊ども‼︎」

湊の声に従って、廊下から沢山の異形が向かってきた。

「うわあああ、何か来たー‼︎」

もうダメかも、やられる!

そう思った瞬間。

「騒がしいわねぇ、一体何の騒ぎ?」

生物室に響く、凛とした声。その主は、湊の後ろに立っていた。

「み、皆川先生‼︎」

彼女はサンダルの音を響かせながら、

「どいて。」

「ぐはっ」

湊に腹パンチを食らわせ、こちらへ歩いてきた。

「皆川先生…。無事だったんですか!」

「無事だったも何も…。」

彼女は悩ましげに眉を寄せ、言った。

「向かってきた一体殴ったら、それ以降奴等の方から道を空けてくれて。あら周防先生。今日は随分大きいわね。」

「はあ、どうも…。」

あんたも何で驚かない⁉︎

「くっ…。み、皆川先生…。」

腹部を押さえ、湊が皆川に手を伸ばす。

「あ、校舎がおかしくなったの、あんたのせいでしょ!」

言って、伸ばされた手を払いのける。

…何か哀れに見えてきた。皆川先生は間違ってはいないが。

「全く…余計な事しかしないんだから‼︎」

「畜生…‼︎」

湊は立ち上がり、こちらに飛びかかってきた。

やべえ!

だがその時、礼一郎が俺に囁いた。

「何やってんだ、俺達は水神戦隊竜の子レンジャーだろ!」

言うが早いか、礼一郎は湊の前に飛び出した。

「湊先生!お前の好きにはさせないぞ!へーんしんっ‼︎」

とうっ!と、礼一郎はポーズを決めた。特に変身はしていないが。

「燃え盛る闘志の男•竜の子レッド!」

「えっ?」

そして隣に立っていたちはやも、

「竜の子レンジャーの紅一点•竜の子ピンク!」

「は?」

「「ほら、加古」君」‼︎

流れに押されて、

「え、あ、よくシャチと間違われる男•竜の子ブルー‼︎」

カッコ悪っ!咄嗟に思いついたキャッチフレーズカッコ悪っ!

が、礼一郎は気にしていないようだ。良かった。

「「「三人合わせて、水神戦隊•竜の子レンジャー‼︎」」」

決まった!何だか知らんけど決まった!

「おお…。」

逢魔が感嘆にも呆れにも聞こえる声を漏らす。

「流石我が愛弟子。」

周防はしきりに頷いている。

「よし、ピンク、ブルー!霊界通信機を破壊するぞ!」

「「了解!」」

あ、でも、

「霊界通信機、どこにあるんだ⁉︎」

「校長室だ!」

逢魔が叫ぶ。

「湊先生が持って入るの見たぞ!」

「ありがとう!」

俺達は校長室へ向かおうと、生物室の出口へ走った。が、

「こ、ここは通さん!」

そこに湊が立ちはだかる。

いきなりピンチ!と思いきや。

「ちょーっと待った。」

湊の襟首を掴み、ぐっと自分の顔の前に引きつけたのは、皆川先生だ。

「フン、青っちょろい顔しちゃってさあ!」

そして湊の首筋を撫でて、歌うように言った。

「坊や、良い子だ…。」

そして一瞬、思い切り力む!

「『ねんね』しな?」

白目を剥いて倒れる湊に向かい、吐き捨てるように言った。

「うわ…。」

「脊髄やられたよ…。」

「オトされましたね…。」

皆川先生は、そんな周りの空気を意に介さずに竜の子レンジャーに向かって言った。

「ほら、早く!また目を覚ましたら、めんどくさい事になるわよ!」

「「「は、はい!」」」

俺達は校長室に走った。

✴︎

「ふー…。」

「なんとかなった…。」

「良かったわね…。」

竜の子レンジャーの三人は、校長の机の上で火花を上げていた変な機械をぶっ壊し、一息ついていた。

「お前ら!大丈夫か⁉︎」

そこに、人間の姿の周防と逢魔、そして湊を縛り上げた皆川と和歌歩がやってきた。

「ああ、大丈夫です。壊しました。」

「良かったあ!」

こうして、水神戦隊•竜の子レンジャーと伝説の女戦士(皆川先生)学園の平和は守られたのであった。

後日談ー

解放された湊には、和歌歩さんという頼もしい監視員がつき、妙な事を企まないようにした。(しかも仕事好きになるというオプション付き。ナイス!)

✴︎

「ねえ、加古君。」

「あ、ちはや。どうしたの?」

「実は、こないだのエジソンの霊界通信機も都市伝説の一部だったみたいなの。」

「マジ?ラッキー。」

俺達には、ごっつぁんゴールももたらされた。

そして、今回の出来事で学んだ教訓は一つ。

「お化けより、マッドな人間の方が怖い‼︎」

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Noin様、何事も無かったようで何よりです。
これからも加古ら高校の怪談ファミリーをよろしくお願いします。

アガサ0983様、怖いありがとうございます。
これからも皆様に面白いと思って頂けるような作品を執筆していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

黒崎一護様、怖いありがとうございます。
これからもコメディホラーを発信していきたいと思いますので、よろしくお願いします。

aoi様、コメントありがとうございます。
謎に包まれた皆川先生の正体、明らかになる日もそう遠くはないでしょう。(作者がこんな無責任でいいのか⁉︎)
その辺りも書かせていただくつもりです。

鎮魂歌様、コメントありがとうございます。
この作品、ノリ命ですから(笑)
まさかの戦隊ヒーローにちはやがノるというおかしい状況にはなっていましたが。
自分の学校の保健の先生が皆川タイプだったら怖いです。

ちゃあちゃん様、コメントありがとうございます。
龍、俺も昔乗ってみたいと思ってたなぁ…。と思いながら書きました。

Noin様、コメントありがとうございます。
一番現実味のある怖さというのは、人間が作り出すものですからね。
退会されたとのことで、とても残念に思っています。もし気が向いたら、またいつでも戻って来てくださいね。

>皆川先生
霊体に素手で物理攻撃が出来るとは・・・
何者でしょうか・・・弁財天様・・・戦神アテナ様・・・
いや、帝釈天様かも(^^
まぁ・・・近いうちに謎も解明される事でしょう。
楽しみに待っておきますね。

ノリが良くて面白かったです(^^)
ちはやが戦隊ごっこに乗って加古が
置いていかれ気味だったのも笑えます。

結論
悪霊よりマッドサイエンティストよりも龍神よりも、
皆川先生が一番怖い。

ゆかい、愉快!
良いなぁ…竜…可愛いですよね〜(^^)
そして、実は1番強いのは、皆川先生だったりして…(;^_^A

おやつと言うか、
酒の無いお摘み的な感じです。
結局、人間が一番怖いですね。