中編4
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人食い

ある日、僕が座敷の隅に寝転んでいると、兄がやって来た。

「どうかしました?」

僕が聞くと、兄は

「退屈そうに見えたので、来てしまいました。」

と言って、ニコリと笑った。

確かに退屈ではあったので、僕は急いで起き上がり、兄の方を見た。

兄がこんな物言いをするのは、《アレ》をする時だけだ。

「怖い話をしてあげましょう。」

僕は其れを聞いて大きく頷いた。

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~~~

兄は沢山の怖い話を知っている。

そして、僕が退屈していると何処からか現れ、話をしてくれるのだ。

兄の話す怪談は、何れも聞いた事の無い物ばかりで、話し方が上手いのも相俟って、ゲームやテレビ等よりもずっと楽しかった。

僕が正座をして兄の前に座り直すと、兄はクスクスと笑いながら障子や窓を全部閉めた。

「・・・さて、始めましょうか。」

薄暗い部屋に蝋燭の火が灯り、兄の顔が白く浮かび上がる。

「此れは、祖父がまだ幼かった頃の話なのですがーーーーーー

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~~~~

此れは、祖父がまだ幼かった頃・・・そうですね。小学生位の頃の話と聞いています。

祖父は・・・・・・《祖父》じゃ、話に入り難いですね。仮に《太郎》とでもしておきましょうか。

太郎は、近所でも名の知れた悪餓鬼でしてね。

近所の墓場・・・・・・ほら、▽□山の中腹辺りですよ。あの古い墓場です。

彼処でよく遊び回っていたそう何です。

何でも、誰も取りに来ないから、カブトムシやクワガタムシが沢山居たらしくて・・・・・・。

・・・まぁ、当たり前と言えば当たり前何ですけどね。

薄暗い山の墓場何かに好き好んで行く子供何て、そうそう居ませんから。

しかも、当時の埋葬方法は土葬が一般的でしたから。気持ち悪さも倍増ですよ。

山の中だからと言う理由で墓穴も浅かったそうですし・・・。臭いも・・・・・・ね。

・・・・・・。

そうですね。本当に怖いもの知らずだったんでしょうね。

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~~~~~

有る夏の日、太郎は夜中に家を脱け出して、カブトムシを取りに墓場へと向かったんです。

月の明るい・・・其れこそ、昼間と変わらない程に明るい夜だったそうです。

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~~~~~~

墓場に着くと、墓の一つの前に数人の人影。

其の墓は、昨日埋葬されたばかりの、若い娘さんの墓です。

太郎は《悲しんだ遺族が会いに来ているのだろう》と思い、木の影に隠れました。

見付かったら、怒られてしまいますからね。

・・・すると

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クチャクチャクチャ・・・・・・

と、音がするんです。

其の人物達の方から。

よく見ると、其の数人の人物は何かを食べています。

最初は蝋燭を囓っているのかと思ったそうなのですが・・・。

よく見ると其れは

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埋められた娘さんの、真っ白な足や腕でした。

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~~~~~~~

「其れって・・・?!」

思わず問い掛ける。

「こら、人が話をしている時に嘴を挟んではいけません。」

ペシリ

軽く頭を叩かれた。

「ごめんなさい・・・・・・。」

僕が謝ると、蝋燭を吹き消して兄は言った。

「普通に考えれば人肉食・・・ですよね。」

「人肉食・・・。」

「祖父が父・・・曾祖父に聞いても、適当にはぐらかされて、真相は教えて貰えなかったそうです。」

「成る程。じゃあ結局、其の人肉を食べていたのが何だったのは分からず仕舞いだったんですね。」

何気無く言うと、兄はニッコリと微笑む。

「・・・・・・そうですね。」

「兄さんの話にしてはオチに締まりが無いですね。あんまり怖くもないし。」

「そうですか?」

兄が不思議そうに首を傾げた。

そして、数回瞬きをして、言う。

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「・・・別に其の時期、此の地は食糧難にはなっていませんでした。と、言うことはですよ。其の人影達は単純に《嗜好》として人の屍を喰らっていた、と言う事です。更には祖父は其の人影達を見ても、暫く人肉を食べているとは気付きませんでした。其れは一重に、彼等が見るからに《普通の人》だったからです。」

「・・・自分の周りにも、人食いが居るかも知れない、って事ですか?」

成る程。其れなら怖い気がする。

近所に、人の死体を食べる人が居る・・・・・・。確かに怖い。

顔をしかめた僕を見て、兄が楽しげに笑った。

「最近では埋葬は基本的に火葬ですからね。もう居ないと思いますよ。其の人達、死肉しか食べないそうですから。其れにしても・・・」

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「あんな不味い物、どうして好んで食べるのか、私には理解出来ませんけどね。」

「・・・・・・え?」

何で味を・・・?

いや、先ず、何で《死肉しか食べない》何て知っているのだろう。

もしかして、兄は・・・。

僕が兄の方を見ると、兄は無表情に庭を眺めていた。

・・・が、いきなり吹き出し、僕の頭をわしゃわしゃと掻き回した。

「・・・・・・何て、冗談ですよ!」

「えーーー!!」

「私が人食いかも知れないって思いました?!思いました?!」

「兄さん大人気ない!!大人気ないですよ!!」

「あはははは!!そんな訳無いじゃないですか!!」

大笑いする兄。

本当にもう・・・怖がって損をした。

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「▽▽の御爺さん、居たでしょう?ほら、三年前に亡くなった・・・。」

「・・・・・・?ええ。」

突然の質問にたじろぎながら答えると、兄はスッと表情を消して言う。

「昔、此の話を▽▽の御爺さんに話した事が有るんです。私、頑張って怖がらせようとしたんですが・・・。」

「怖がって貰えなかったんですか?」

「ええ。笑い飛ばしながら《奴等は死肉しか食べない》《あんな不味い物を食べる何て理解出来ない》って言われてしまいまして。」

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「・・・・・・・・・・・・え?」

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Uniまにゃ~さんへ
コメントありがとうございます。

そうですね。取り敢えず今の日本では難しいとされている様です。
外国に渡ればまた話は別なのかも知れませんが。

・・・そう言えば、出産後に自分の胎盤を食べさせてくれる病院が有った様な・・・。

まぁでも、美味しくないですよ。
一度口内の肉を噛み千切って食べちゃった事が有るんです。

カニバリズムですね (^-^)物凄く興味があるんです私…うふうふふ

☆チィズケェキ☆さんへ
コメントありがとうございます。

おばあちゃん、フライ返しって・・・(笑)

楽しいお爺さんじゃないですか。
小学校低学年にするには、少しだけ怖いジョークかも知れませんが、羨ましいです。
お年寄りの冗談って、偶に物凄いリアリティーが有ったりして、妙に怖いんですよね。
人にせよ其れ意外にせよ、長い年月を経た物は神様や妖怪となる・・・と言う考え方が、此の国には有るからかも知れません。

兄の話は基本、後味が悪いんですよね。其の分怖くもありますが。

私が小学生低学年だったころ、親戚のおいちゃんちに遊びにいった出来事を。
夜遅くに残業から帰ってきていたおいちゃんが焼肉で晩酌してたんですよ。
トイレに起きた私が、
おいちゃんに
「何食べてるの?」
と聞いたら、にたぁっと笑って
「にんげんだよぉ」
って言うんです。
((((;゚Д゚)))))))ってなってたところでおばちゃんが
「あほなことゆうたらあきまへん!」
(京都の人なので京都弁なのですがニュアンスわからないw)
と、フライ返しでぺしっと叩いてたんですが、
小さいながらに恐怖心が残ったのか、暫くおいちゃんに近づかなかったようです。

今回のお話、めっちゃ怖い話だったのですが、そんなことも思い出してしまい、ついコメしちゃいましたσ(^_^;)

サワノクラナリさんへ
コメントありがとうございます。

ありがとうございます。

《自分の直ぐ傍に何か変なモノが居る》って、怖いですよね。
僕は昔、《自分以外の人間は、本当は全て吸血鬼なのだ》と言う小説を読んで二、三日の間人間不信になった事が有ります(笑)

此れからも細々と続けて行きたいと思っていますので、宜しかったら御付き合いください。

最後の一ひねりが、作品的にも、お兄さんのキャラクター的にもいいですね。
普通(に見える)人が一番怖い、というのが自分の中で普遍的恐怖なのですが、最後の御爺さんのくだりはそれが再度強調されて、怖かったです。

ちゃあちゃんさんへ
コメントありがとうございます。

健康体に成っても、いえ、寧ろ健康体の方が、美味しそうに見えるのではないでしょうか・・・。
いや、僕の勝手な想像で、根拠は有りませんが(笑)

mamiさんへ
コメントありがとうございます。

土地に因って違う風習って、何だか底知れない恐ろしさが有りますよね。

一応、此れは独立した一つの話に成っています。
でも、面白い話が入ったら、また書かせて頂きます。
其の時は、宜かったらお読みに成ってください。

食べても美味しくなさそうだな、と思って貰えるような食生活を心掛けようと思いましたよ。

普通の人達ですか…風習だったら、尚怖いですね。

もしかして!?シリーズ化ですか(*゜▽゜*)