中編3
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人形女

同僚が体験した話でございます。

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今夜も仕事で帰りが遅くなってしまった。左腕に付けた時計を確認する..."3:27"...

「この時計くれたおばさん...今頃何してんのかな。たまには顔出しにくればいいのに」

いつもならタクシーでまっすぐ家に帰るのだが、今日は公園で一服してから帰る事にした。

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都内某所にある公園で、春になれば桜が咲きお花見客が毎年押し寄せる。

「夜はやっぱり涼しいなー早く酔いが覚めそう。」

ほろ酔い気分で公園を暫く歩き、視界に入ったベンチを目指す。ホームレスのおじさん以外誰もいない静かな公園が居心地よかった。

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「今日も一日お疲れーした....はぁ、俺も早く結婚してーなー」

セットされた焦茶色の髪を無造作に触った。

「やっ..カナブン付いてる!びっくりしたー毛虫とかじゃなくてよかった。」

カナブンを追い払った後、ここに来る前に自販機で買った缶コーヒーを開けて飲んだ。

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口の中に広がるほろ苦さを味わいながら目をつぶった。

「このまま寝たら次の朝カナブンだらけになりそうだから寝ないようにしないとな。俺の髪を樹の色と間違えたのか?カナブンてバーカだな..あっははは」

「ふふふ...」

自分以外の誰かの声が聞こえた。周りを見るが誰も居ない。座り直そうとしてベンチに手を置いた。

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「うわぁあっ!!なんだよこれ!」

手を付いたところに人間の右手が置いてあった。掌 指 手首 までの手が。

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だが、人間の手だと思っていたものはマネキンの手だった。

「どうしてマネキンの手が...いつからあったんだよ。」

不気味に思ったがほろ酔いの頭は警戒心が緩んでいた。座り直しベンチの背もたれの上の部分に両腕を置いて背伸びし後ろに仰け反った。

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「んーーっはぁ〜疲れたー背中痛ぇ。」

両腕をベンチの上に置いたまま肩甲骨を左右に動かした。

左に動かした時にふと、ベンチの後ろに目をやるとザンバラな茶髪の女が足を伸ばして座っていた。ベンチを背もたれにして座るその不気味な女は顔がよく見えなかった。手足が異常に白く、公園の蛍光灯に反射し不気味さを醸し出していた。

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(やべいやばい逃げなきゃ...)

相手に聞こえないようにゆっくりベンチから腕を下ろし、横に置いた缶コーヒーを掴む。..,カラン...

缶コーヒーに指が当たり音が鳴ってしまった。

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「もう帰っちゃうのぉん?」

振り向いた先にあったのは女の不気味な顔だった。

前髪はハサミで適当に切ったようなまばら

眉毛が異様に薄く細く、目がコケシの様で下瞼が大きく膨らんでいた。顔は楕円形の面長で鼻も口も日本人形の様だった。

逃げようとして立ち上がると女も立ち上がった。ひょろ長くでかい女だった。

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「もう帰っちゃうのぉん?遊ぼうよ」

日本人形の様な形をした小さな口がもごもご動き言葉を発した。

気絶しそうだったが立ち上がり、缶コーヒーを置いて走って逃げた。

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「なんだよあれ...人間なのか?人形なのか?気持ち悪過ぎだろ!!」

涙目になりながら走った。自分のベンチがが殆ど見えなくなった所でさっきの女を確認した。女は仰け反るような形でベンチの背もたれから座る部分に体を置き両足をバタつかせていた。逆向きに折り畳まれたようなその女の格好がとても怖かった。

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「あれは妖怪だ...公園に住む妖怪...」

タクシーの停まっているところまで走った 怖いので一度も後ろをふりかえらなかったた。

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無事帰宅し、次の日仕事が休みだったので昨夜の公園に行った。勿論、昼間に。

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自分が座っていたベンチに特に異常はなかった。

「....よかった、特に何も変化なし。」

何が"よかった"なのか自分でもわからないが安心していた。

「あれ?これって....昨日俺が飲んでた缶コーヒーだよな。」

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そこには昨日飲んでいた缶コーヒーが置いてあった。

どうやったのか、缶コーヒーは折紙のように小さく畳まれていた。

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「これ、スチール缶なのに..凄いな。」

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<おしまい>

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