中編4
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コンビニの左

「オッス、久しぶり。」

それは夜中、友人からの突然の電話だった。

俺が引っ越してからだから、たぶん半年振り。

引っ越す前のアパートはタクヤの家と近かったので

結構、遊びに来てたりしたのだけど、

やはり遠くなると疎遠にはなってくる。

今俺は、賃貸マンションに住んでいるのだ。

ここからのほうが、職場に近いし、

何せ隣にコンビニがあったりと、

なかなか便利な立地条件なのだ。

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 俺とタクヤは同じ大学で、親友だった。

タクヤは俺とは真反対の人間だった。

俺は、どちらかと言えば一般的な生真面目で

日本のどこにでもいるタイプの人間だ。

タクヤはどこか自由で俺の周りにはいないタイプの人間だった。

タクヤはいわゆる、勉強していないようにみえて

成績は優秀で器用な人間。

ガリ勉しても叶わない俺にとっては、とても羨ましくもあり、

憧れの人間でもあった。

だから、タクヤは大学時代はモテまくって遊びまくっていた。

それにも関わらず優秀な成績で大学を卒業した。

一流企業に就職するのかと思いきや、タクヤはとある出版社に

ライターとして入社したのだ。

俺は、タクヤらしい選択だと思ったのだ。

俺は、と言えば、ごくごく普通の一流でもない企業の総務課に入社。

絵に描いたような、リーマン生活を送っている。

タクヤと家が近かった頃はよくタクヤが家に転がり込んできて、

それでも迷惑だとは思わなかった。タクヤと過ごすのは楽しい。

俺は久しぶりの親友の電話に、嬉しいけど、

わざと冷たい言葉を浴びせた。

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「どうした?こんな夜遅くに。」

「スマン、こんな遅くに悪いと思ったんだけどさ。俺、今日飲んでてさ。終電逃しちゃったんだ。申し訳ないんだけどさ、お前んちに泊めてくんない?」

「やれやれ、しょうがないやつだな。いいよ。あ、お前、場所わかる?」

「うーん、だいたいは。実は俺、ここの地理あんま詳しくないんだわ。夜だしさ。」

「今どこだよ。」

「えーっとね、駅前から北に向かって歩いてる。

なんかランドマーク的な物はある?」

「うーん、一番近くにある高い建物。

あ、大きな総合病院があったな。

確か、太田総合病院。まずはそこを目指して。」

「えーっと、あ、あれね!はいはい!じゃ、一旦切るよ。総合病院に着いたらまた電話する。」

そう言うとタクヤは電話を切った。

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 相変わらずマイペースなやつだな。俺は苦笑いした。マイペースで図々しいヤツだけど、何故か憎めないんだよな。

 俺はタクヤが来る前に、少しだけ部屋を片付けようと、台所に放置している空き缶を袋に詰め、ベランダに出す。流しに放置していた洗物を済ませ、テーブルに放置したスナック菓子の袋をゴミ箱に捨てる。そうこうしていると、しばらくして、またタクヤから電話があった。

「総合病院に着いた。今度はどっちに行けばいい?」

「じゃあその先の交差点を右に曲がって。そうしたら、

正面にコンビニが見えてくるから。

そのコンビニの左のマンションが俺んち。505号室。」

「了解!それとさあ、図々しいついでにシャワーも浴びていい?」

「はいはい、わかったよ、好きにしろ。」

「やったー。なんかさ、飲みすぎて体べったべたで気色悪いの。」

「ホント、酒もほどほどにしろよー。時間忘れて飲みすぎてんじゃねえよw。」

「あ、コンビニ見えてきた。なんか買ってくよ。何か欲しいもんある?」

「あーじゃあ、喉かわいたから飲み物。」

「了解!」

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ピンポーン。いらっしゃいませー。コンビニに入ったようだ。通話は続いている。

「何がいい?」

「んーと、じゃあ炭酸がいいな。ジンジャエールある?」

「おう、ジンジャエールな。あと適当におつまみ買ってく。」

「おいおい、まだ飲む気かよ。大丈夫なのか?」

「へーきへーき。明日は休みだしー。

そうだ、明日一緒にどっか遊び行かね?お前も休みだろ?」

「お、いいねー。じゃあ、計画は部屋でな。」

ありがとうございましたー。タクヤは会計を終えたようだ。

「えーと、コンビニの左のマンションの505号室な。」

そう言いながら、タクヤがエレベーターに乗る気配がする。

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「そそ、コンビニの左のマンションな。」

「よし、5階ついたー。ピンポーン。」

タクヤがおどけて口で言った。

あれ?おかしい。俺の部屋のすぐ外に来ているはずなのに、

電話の中からしか声がしない。

そのとたん、電話から激しい音がした。

ガタン。うわぁ!タクヤの叫び声。

その後呻くような声がして静かになった。

「タクヤ?どした?」

俺は心配になり、タクヤに話しかけた。

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「・・・あーごめん。携帯落としたんだ、今。」

「なんだ、そうなのか。あれ?お前ちょっと声がヘンじゃね?」

「そっか?スマン、俺、マンション間違えたみたいだわ。どこだっけ?」

「はあ?だからコンビニの左の505号室だって言ったろ。」

「あ、俺から見て左だと思ったわ。」

「バカだなー。お前。」

「じゃ、今から行くから。」

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タクヤは、血まみれで505号室の玄関で倒れている。

その横には見知らぬ女の死体。

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そして、見知らぬ男は、コンビニの左のマンションを目指した

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ご指摘ありがとうございます。私もそこがいつも悩ましいところです。一人称で物語を書く癖がついてしまっているので、まずはそこのあたりから変えていったほうが良いのかもしれませんね。

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