短編1
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目を瞑って6

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 いるのよね。あなたみたいな。

「本物」

 真っ白だったはずのハンカチは十字に黒く汚れていた。俺を守る術をかけたそうだ。だから、小夜子に返した途端、妹の希沙が飛び込んできた。

「あなた、お父さんと妹さんのためにアパート借りたでしょ」

「ああ」

「あんまりだからすぐ契約、破棄したわ。あなたの姉ですって言ったらすんなり信用してくれた」

 故郷は廃村になった。そこを売り払って出てきたのはうちだけではないだろう。

「なに、言ってんだ」

「あなた、死んだ人が生きてる人と変わらずに視ることができるのね」

「東城」

「名前を呼んで。それだけで大丈夫」

 小夜子の目を初めて見た気がした。右目が深緑色だった。

「目、きれいだな。小夜子」

 バンッバンッバンッ

 アパートを平手で叩くような音。ああ、これは。

「希沙だ。アイツは怒ると壁を叩く」

「嫌われちゃったかしら。まあ、構わないんだけど」

 小夜子は細い白い指先で空中に何かを描いた。

 玄関のドアを叩くのは、やはり希沙なんだろうか。

「お母様も、こんな感じだったんじゃないかしら」

 だから、昔話をするときは決まりがあったのね。小夜子はそう言って微笑んだ。

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ちゃあさん コメントありがとうございます。きっといると思うんですよね、こういう人。ってとこから書いてます。

独特の世界観ですね(^^)私は何となく好きな世界ですが…
結局、妹も他界してしまってるんですね。主人公は、生きてる人と死んでる人の区別はついてないのでしょうか?