長編16
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吸血鬼の涙

昔々...な話でございます。

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僕は近所のおじいちゃんが大好きだった。

白髪だが実年齢よりも見た目がかなり若かった。

若い時の写真を見せてもらった事があって、堀が深く今で言うイケメンだった。

血のつながりのあるおじいちゃんではないけど孫のようにいつも可愛がってくれた。

家に遊びに行くといつも色んな話をしてくれた。

その中で一番印象に残っている話がある。

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「おじいちゃんー今日も何かお話してー怖いお話ー」

「ははは....今日も元気だな。怖い話...何がいいかね。」

おじいちゃんは少し考えたあと語った。

「昔々の話なんだけどね...山の奥の奥にある村に住む女の子の話..」

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私の名前は小百合 山奥の奥にある村に住んでいる。

兄弟は居なくて一人っ子 村には子供が少なくていつも一人で遊んでいた。

たまに村の子達と鬼ごっこをしたり隠れんぼをして遊んだ。

今日も村の子供達と一緒に隠れんぼをして遊んだ。

「7ー8ー9ー10!もーいーかーい?」

「もーいーよー」

「もーいーよぉー」

「もーいいよー」

「もーいーよー!!!」

「もーいーよー!」

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森の中で各それぞれが様々な場所へ隠れた。

私は少し森の奥の方へ隠れていたので見つからない自信があった。

「ここなら見つからないもんね〜それにしても...奥に来ちゃったな...帰り道迷子にならないようにしなきゃ。」

遠くの方で鬼に見つかった子の声がする。

「○○ちゃんみーつけたー!」

「もー△△君見つけるの早いよ〜」

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私は鬼に見つからないようにそばにあった大きな木の影に移動した。

「ここならもっと見つからないもんねー」

木の影に体育座りしているとうとうとしてきた。

木々が揺れる音 鳥の鳴く声が私には子守唄に聞こえた。

いつの間にか眠ってしまった。

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ポンポン..ポンポン...

誰かが私を起こそうと叩いている。

隠れんぼの鬼が私を見つけたのだと思った。

目を開けぼんやりと前を見る すると目の前には見たことのない子供が立っていた。

肌がとても白い子供 日が落ちて暗くなっているのでよく見えない。

「うわあっ!」

驚いて声を出してしまった。

相手もびっくりして逃げようとした。

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「ま、待って!!貴方どこの子?お家に帰らないと親が心配するよ?」

自分はこんな時間まで森の中で寝ていたので親が心配してるだろうが それよりも相手の方が心配になった。

華奢で自分よりも年下であろう相手。

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「......」

相手は黙って此方を見ている 沈黙の後相手は歩き出した。

「ねぇ、待って!私道に迷っちゃったの一緒に帰ろう!」

暗くなってしまい元来た道が分からなくなってしまったのだ。

相手は一度此方を振り向きまた歩き出してしまった。

「あ!待って待って置いていかないで!」

とりあえずついていくことにした。

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「ねぇ、貴方のお家はどこなの?村の子供?よく森で遊んでるの?」

幾つか質問したが返答なし。

「...何か喋ってよ〜」

無言が嫌だったので適当に話かけた。

数分歩くと村の明かりが見えてきて 相手が立ち止まった。

「村まで案内してくれたのね、ありがとう!」

礼を言おうと相手の顔を見た。

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暗がりだと分からなかったが 村の明かりによって髪や表情が見えた。

肩につかない位の長さで薄茶色のような色の髪だった。

「...どういたしまして。」

照れているような恥ずかしがっているような表情が見えた。

「貴方、目が赤いのね。綺麗...」

目が赤く顔立ちははっきりしていて、まるでフランス人形のような可愛らしい女の子だった。

「怖くないの?こんな見た目で怖くないの?皆と違うんだよ?こんな...」

だんだんと泣きそうな顔になっていく。

「怖くないよ?私は素敵だと思う。皆と違ってもいいじゃない。」

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「そんな事言われるの初めて...ありがとう。」

少し照れくさそうに言った。

「ねぇ、貴方名前はなんて言うの?私はサユリっていうの。」

「....ユキ」

「ユキ...ユキちゃんね!よろしくユキちゃん!」

「ユキ...ちゃん」

「ねぇユキちゃん!また明日も会えないかな?私、ユキちゃんと遊びたい!」

私はユキちゃんに惹かれた 皆とは違う雰囲気やオーラがあり、もっと知りたいと思った。

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「ユキちゃん何時なら空いてる?」

「...お日様が沈んだら、平気。」

「ふーん、分かった。お日様が沈んだら今日私が居た所に行くね!ユキちゃん、また明日ね!」

そう言って私はお別れの握手をした。

村の明かりで見えたユキちゃんの手は暗がりで見るよりも一層白く見えた。

柔らかくて冷たい手だった。

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お人形のようなその瞳を顔を私は暫く見つめていた。

「サユリちゃん、今日会った事は誰にも言わないでね?秘密にして欲しいんだ。」

「秘密?どうして?」

「存在を知られちゃいけないって、お父さんが言ってたから...だから、お願いサユリちゃん!」

鬼気迫る何かを感じた私はユキちゃんの頼みを了承した。

「分かった、誰にも言わない。」

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もう一度強く握手をしてユキちゃんと別れた。

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家に着いた私は両親に少し怒られた。

一緒に隠れんぼをした友達が私を探しても見つからず心配して家まで来た事を話された。

私はそんな事よりも早くユキちゃんとさに会いたいと考えていた。

「あの子何者なのかな...不思議な子」

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次の日

日が沈んだ頃昨日のあの場所へ向かった。

「ユキちゃん?どこに居るの?サユリよ!居たら返事して...」

何故かひそひそ声で名前を呼んだ。

「サユリちゃん..」

奥に咲いている椿の樹の影からユキちゃんが顔を出した。

「ユキちゃん!!居ないかと思ったよ会えてよかった。」

嬉しくて思わずユキちゃんの肩を掴んでしまった。

「あっ、ごめんつい...」

「大丈夫だよ、サユリちゃん」

近くの木の幹に座り短い時間だったが色んな話をした。

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「ねぇ、ユキちゃんは兄弟いるの?」

「ううん、一人だよ。サユリちゃんは?」

「私も一人だよ!同じだね」

ユキちゃんははにかんだ顔で私の話を聞いていた。

「ねぇ、ユキちゃん聞いてもいい?」

「なに?」

「ユキちゃんは、何故日が沈んだらでないと会えないの?習い事でもしてるの?」

「.......太陽の光を浴びれないんだ。そういう病気なんだって。だから、昼間は外に出られないの。」

少し俯いてユキちゃんは答えた。

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「そっかー昼間友達と遊べなくてつまらないね。暗くなったら皆帰っちゃうもん。」

「友達なんて居ないよ。村の子に会った事ないし、人と交流するのを禁止されてるから...」

「私はユキちゃんの友達だよ?それにユキちゃんだって人なのになんでダメなの?」

「友達?!友達になってくれるの?」

嬉しそうな不安そうな微妙な顔で此方の顔を伺った。

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「うん!ユキちゃんは他の子と違う所はあるけどそれは素敵な事だと思う。ユキちゃんの顔、お人形みたいで可愛らしいし羨ましいもん。いいなぁ」

「わぁあ...ありがとうっ。」

ユキちゃんの顔に月の光が差し頬を伝う涙が見えた。

陶器のような肌に滑る涙は宝石のようでとても美しかった。

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「いいなぁ、私も綺麗になりたいな。」

「サユリちゃんは綺麗だよ....心も綺麗。あと、かっこ良い。」

涙を手で拭いながら答えた。

綺麗とかかっこ良いとか言われた事がなかったのでとても嬉しかった。

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「そろそろお母さん達が心配するから帰らなきゃ...」

「そうだね心配しちゃう。村の近くまで送るよ。」

「ありがとう ユキちゃんのお家はここから近くなの?」

「ちょっと歩いた所に...ある。」

「そっか。ユキちゃんのお家行ってみたいなーお父さんお母さんも素敵な人なんだろうなぁ。」

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「ねぇ、ユキちゃん!私の両親に紹介したいんだけどどうかな?」

村の明かりが見えてきた辺りで聞いてみた。

「だめだよ...人とは交流できないから。」

「んんーそっか。でも、ユキちゃんも人なのに...どうしてだめなのかなーざーんねん。」

ユキちゃんは泣きそうな表情をうかべながら村の方をじっと見ていた。

「じゃあ...またね。」

「うん!ユキちゃんまた明日も会えないかな?」

「うん会おう。日が沈んだらまた今日と同じ場所でね。」

私に向かって手を振って森の奥へ去って行った。

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次の日

日が沈み昨日と同じ場所へ向かう。

「ユキちゃんー!サユリだよ!来たよ!」

今日もユキちゃんは椿の木の影から現れた。

「サユリちゃん...」

私の名前を呼びはにかんだ顔が愛らしかった。

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「ユキちゃん今日も椿の木から現れたね。椿って毛虫が付いてるんだよ?」

「そうなんだ。でも、椿は赤くて綺麗だから好きなんだ。」

それを聞いて私は咲いている椿の一つを取りユキちゃんの頭にのせた。

「可愛い!椿似合うねーかわいいかわいい。」

ふとみると、その椿に虫がついていた。

「うわっ!虫が付いてる!ユキちゃんの椿に虫がー!」

「わぁぁあー取って取って取って!虫いやだやだよ!」

椿についた虫を払うと花弁の一つが落ちた。

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チャリンっ

手を払った際ポケットに落ちた自転車の鍵がユキちゃんの足元に落ちた。

「あ...」

ユキちゃんは鍵を拾おうとして鍵に触れた途端すぐに手を引っ込めた。

「痛いっ」

「どうしたの?ユキちゃん大丈夫?」

「うん。金属触れないの忘れてた。」

どうやら金属に触れない体質らしい。

「あ、そうだったんだ。ごめんね。」

足元の鍵を拾ってポケットの奥にしまい直した。

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「ねぇ、サユリちゃん。太陽って何色なの?」

唐突な質問にびっくりした。

「太陽は真っ赤っかーだよ!人によってはオレンジに見えたりするんだって。太陽は直に見れないんだよ、目が潰れちゃうんだって。」

「真っ赤っか...きっと綺麗なんだろうね。目が潰れちゃう位に。」

遠くの方を見ながらユキちゃんは答えた。

「サユリちゃん、お空は何色なの?」

「空は真っ青な時と、雲がたくさんあって白っぽい時があるよ。」

ユキちゃんは目を閉じて 何かを想像しているようだった。

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「きっと綺麗なんだろうな...絵本でしか見たことないもん。その綺麗なものを毎日みれていいね。」

「私はユキちゃんのその髪や瞳の方が...」

ポツッポツッポツッ...

大粒の雨が降ってきた。

「!!雨だ!!ユキちゃんっ」

「うん!濡れちゃうからお家で雨宿りしよ!」

「私がお家に行っても大丈夫なの?お父さんお母さんがだめだって前に..」

「今日は夜遅くに帰ってくるから、大丈夫!」

ここで自分の家に帰らずにユキちゃんの家に行ったのはきっと、ユキちゃんと少しでも一緒に居たかったからだと思う。

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小柄なユキちゃんが必死に走る後ろ姿を見て小動物のようだと思った。

雨と土と緑の匂いがこの時は心地よく感じた。

「ここが..お家。」

ユキちゃんが立ち止まった先に古いお屋敷が建っていた。

この田舎に不釣り合いな洋風なお屋敷。

「すごい...ユキちゃんお金もちなんだね。」

「足元気をつけてね...」

家のドアを開けて中へ迎え入れてくれた。

家の中は真っ暗で窓にカーテンがきっちり閉まっていてよく見えなかった。

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「今灯りをつけるね...」

私の後ろでユキちゃんが蝋燭に火をつけた。

それは大きな蝋燭で周りを明るく照らしてくれた。

ユキちゃんは二階へ進み、私もその後を追った。

ギシ...ギシ...ギシ....ギシ...

数段階段を登り奥の部屋へと進んだ。

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「ユキちゃんのお家電気ないんだね。」

「うん。灯りをつけるのは夜だけだから。....ここでちょっと待っててね。」

私に蝋燭を渡してユキちゃんは先に奥の部屋へと入っていった。

「お城みたいなお家...初めてみた...お姫様のお城みたい。」

「お待たせ..さあ入って。」

奥の部屋のドアが開き、ユキちゃんが出てきた。

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部屋の中に幾つか大きな蝋燭が置かれていて、部屋の中は明るかった。

「わぁ...綺麗...」

そこは寝室で大きなベッド 大きなクローゼット 大きな全身鏡 大きなテーブルに椅子が二つ置かれていてどれも高級感のある物だった。

「ここはユキちゃんのお部屋?」

「うん。」

「いいなー素敵なお部屋だね!ベッドの上にのってもいい?」

「うん、いいよ。」

テーマパークに行った時のような高揚感を感じた。

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ベッドの上でぴょんぴょん跳ねる私をニコニコしながらユキちゃんは見ていた。

明るい部屋の中で見るユキちゃんは今まで見てきたユキちゃんと異なった。

「ねえ...ユキちゃんてそんなに白かったんだね...髪の毛も...薄い金色だ...」

雪のように白く薄い金色の髪 赤い目。深い紅色の目をしていた。

「やっぱり...怖いよね。化け物だって思うでしょ。」

涙目になりながら私に言った。

「化け物だなんて思わないよ。ユキちゃんはユキちゃんだもん。」

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「ありがとう....」

「泣いたら目が腫れちゃうよ?泣かない泣かない。」

慰めようと思いユキちゃんの頭を撫でた。

髪がサラサラして触り心地がよかった。

「はぁ..私にもユキちゃんみたいな妹が居たらいいのにな...毎日が楽しいのに。」

「え?妹?...僕、女の子じゃないよ男の子だもん。」

「ひぇええええー!!嘘...」

あまりに予想外の答えだったので奇声のような声を上げてしまった。

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「ふわぁぁ...嘘だ...こんな可愛い子..こんな可愛い男の子が...あわわわ...神様...」

自分でもなにを言ってるのか分からなかったが兎に角びっくりした。

「分かりずらくてごめんねサユリちゃん...ねぇ、僕の事嫌いになったかな?男の子だと友達になれない?」

「嫌いになるわけない!大好きだよ。」

また不安な表情をしたので、ユキちゃんの両頬を両手で包み込んだ。

「ユキちゃんが男の子か女の子かなんて関係ない、ユキちゃんは私の大切な友達。」

「大切な...友達...」

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ユキちゃんは安心した顔をしていた。

ユキちゃんが泣くと私の心も同調して悲しくなり涙が出そうになる。

だから、ユキちゃんには常に笑っていて欲しいと思った。

「ありがとう...ありがとうサユリちゃん。」

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「何か飲み物持ってくる。ちょっと待っててね。」

「ありがとう。」

ユキちゃんが居なくなった部屋の中は閑散としていて、シトシトと雨の降る音が聞こえた。

なんだか、寂しい家だなと思った。

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ガチャ...

ユキちゃんが戻ってきた。

「ごめんね、いい飲み物がなくて...お水しか無かった。」

「お水で平気、ありがと!...あれ?ユキちゃんのそれ何?」

ユキちゃんは水の入ったグラスの他に真っ赤な液体の入ったグラスを持っていた。

「これは...どうしても喉の渇きが抑えられなかったら飲みなさいって貰った物なの。」

「ふーん。」

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ユキちゃんの雪のように白い肌 赤い目 金属に触れない 太陽に浴びれない 赤い飲み物を飲む これらから連想されるのは、吸血鬼。

ユキちゃんはもしかすると吸血鬼なのかもしれないと思った。

ヴァンパイアという本に載っていた吸血鬼とユキちゃんは特徴が似ていた。

しかし、ユキちゃんを怖いとは思わなかった。

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「雨、止んだね。」

「あ、本当だ。まん丸お月様が綺麗。」

いつの間にか雨が止んでいて満月が闇の中で光り輝いていた。

「村の近くまで送るね。」

「ありがとう。」

森の中を歩きながら、ユキちゃんは一体何者なのか..両親は日本人なのか..色んな考えが巡った。

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「着いたよ、サユリちゃん。」

「楽しい時間はあっという間...そうだ!今日お家に入れてくれたから、私のお家を見せるね!」

「無理だよ..人に見つかっちゃう」

「平気平気!誰にも見つからないから!」

私のこの行動によって後に悲劇が起こる...

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「わぁ..お家がたくさん...すごい」

ユキちゃんは初めて村を見たようで ある物全てに驚いていた。

「ふふふ。ここが私のお家でーす!じゃーん!」

私は両手を広げ大袈裟なリアクションをとった。

「たいした家じゃないんだけどね。」

「そんな事ないよ!素敵なお家!すごいなぁ...」

ユキちゃんは嬉しそうだった。

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「おい、そこで何してる...」

思いもよらない声に驚きと焦りが混ざる。

咄嗟にユキちゃんを後ろに隠した。

「△△..何か用?こんな時間に外に居ていいの?」

声の主は村長の孫の△△だ。△△はガキ大将で弱い者を虐めるのが大好きな奴だった。

見た目はトドのようだけど気が小さい。

「おい、後ろに隠してるの何だよ?出せよ!隠しても分かってんだぞ!!」

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△△はズカズカと音をたてながら此方へ向かってきた。

ガシッ!

「どけよっ!....うおおおおおおお!!なんだこりゃぁっ!!化け物じゃねーか!!気持ち悪い!化け物!化け物!化け物おおおおおおお!!!!!!!なんでそんな奴ここに居るんだよ!うわぁぁぁ!!」

△△は私を退かしユキちゃんを見ると指を差しながら叫んだ。

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「酷いよ化け物なんかじゃないよ!あんたの方が化け物だ!妖怪だ!!」

私は悲しくなって涙目になりながら△△に訴えた。

△△は村人を呼びに走り去って行った。

「ごめんねユキちゃん...私のせいで...私のせいで....」

振り向くとユキちゃんの姿は無かった。

「ユキちゃん....ごめんね..ごめんね...」

私は家の前でそう繰り返した。

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数分たって△△が呼んだであろう村人達が集まってきた。

「大丈夫かい?怪我はないかい?」

「妖怪にさらわれそうになったんだとな...可哀想に...」

「わしらがこれからその妖怪を探してとっ捕まえたやるからの」

「そうじゃそうじゃ...だから安心せい」

「だめ!捕まえるなんてだめだよ!悪い事してないんだからやめてよ!!」

「化け物は...この世に居てはならんのじゃ..化け物は排除せなならんのじゃ...」

あんた達の方が化け物だと 言いたかった。

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「さぁ、今日は早く寝なさい。」

「危ないから明日から数日外出禁止だからね。」

「いつまた狙われるか分からないからね。」

私は外出禁止になり、家で毎日泣いていた。

「ユキちゃんごめんね...ユキちゃんごめんね...」

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日が沈むといつもユキちゃんの事を考えた。

家族が寝静まると私の部屋のベランダに出て外を眺めた。

ユキちゃんにもしかしたらまた会えるかもしれない、また顔を見られるかもしれないと思ったから。

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外出禁止になって数日経ったある夜中の晩目が覚めた。

何かあるような気がして自室のベランダに出た。

すると、見覚えのある顔が家の前に見えた。

「ユキちゃん!!!!」

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私はベランダから近くの木を伝って下へ降りた。

「ユキちゃん!!ユキちゃん!!会いたかったよっどんだけ会いたかったか。あの時は本当にごめんね。ごめんねって何回言っても言い足りないよ。ごめんね、ごめんねユキちゃん...」

私は腕に力を込めてユキちゃんを抱き締めた。

「サユリちゃん..いいよ...サユリちゃんは悪くない。またこうして会えた。」

私達は泣きながら抱き合った。

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「村人達にやられちゃったのかと思ったよ...ユキちゃん...ユキちゃん...」

「頑張って走った..またサユリちゃんに会う為に頑張って走ったんだよ。」

感動の再会もこれまでだった..

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「おい!居たぞ!!!化け物だ!!!」

「とっ捕まえろ!!!」

「生け捕りにせんでいい、殺れ!!!!」

どこから出てきたのか隠れていたのか村人達がやってきた。

「どうして...何これ何で?!」

「え...」

「ユキちゃん逃げて!!!逃げるの!!早く!!」

ユキちゃんの背中を押し、私は村人達の足止めをした。

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泣きながらもみくちゃにされながら村人達を止めようとした。

「何するんじゃっ!やめなさい!」

「きゃあっ!」

私は村人達に混じっていた△△に押さえつけられた。

「お前、余計なことすんな...」

腕を掴まれ壁に顔を押し付けられた。

頬の皮膚が擦れる感じがした。

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私が押さえつけらている間に村人達が続々とユキちゃんが逃げた方向へ向かっていく。

「やめてっ...やめてよ!!!!!」

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拘束されていたけど、隙を見つけて逃げ私もユキちゃんが逃げた方向へ走った。

「神様..ユキちゃんが助かりますようにユキちゃんが死にませんように。どうかお願いします...」

こう何度も口ずさんだ。

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村人達が向かった先がユキちゃんの家の方向である事がだんだん分かってきた。

嫌な予感がした。

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村人達の声がだんだん大きくなる...

嫌な予感が的中した。

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村人達はユキちゃんの家の周りを囲んでいた。

しかも、皆の手には火のついた木の棒を持っている。

暗闇の中でユキちゃんのお屋敷だけが光っているような光景だった。

「何するの!?その火は何?!」

「これから化け物を退治するんだ...よく見ておくんだ。」

「化け物の末路がどうなるのか、見に焼き付けるのじゃ」

狂ってると思った。

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「放てっ!!!」

長老が一言言うと、家を取り囲んでいた村人達が一斉に火を放った。

家はあっという間に燃えた。

家の中にユキちゃんが居ない事を願った...

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バタンっ!!

お屋敷の二階のまどが開いた..そこにはユキちゃんがいた。

「ユキちゃーーーーん!!!」

私は大声でユキちゃんの名前を叫んだ。

「わぁぉあぁあー!!!ユキちゃんーユキちゃんー!!!」

泣きながらユキちゃんの名前を呼んだ。

ユキちゃんは口を動かして何か言っていた。

"サ ユ リ ち ゃ ん"

そう言った後、ユキちゃんは窓の扉を閉じた。

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家がどんどん燃えていく...やがて真っ赤な家になった。一つの炎のように。

私はぐったりしながら家に運ばれ寝かされた。

夢を見て、夢の中にユキちゃんが出てきた。

「友達になってくれてありがとう。凄く嬉しかったよ..もう会えなくなるのが寂しい...サユリちゃん..ありがとう。」

そう言ってユキちゃんは消えていった。

「ユキちゃんっ!!!」

私は泣きながら飛び起きた。

時間を確認すると6時00分...翌日の朝になっていた。

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昨晩起きた惨劇はもしかすると夢だったんじゃないかと考えながら自室のベランダに出た。

すると..,

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ベランダの真ん中に血だまりと椿の花が置いてあった。

「ユキちゃん....ユキちゃん....わぁぁあぁぁあーっ」

血だまりにしゃがみ込み、血で濡れた椿の花を抱き締めた。

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数日後、私は自室で首をつった。

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ベッドに置いてあった遺書には、

この村は狂っている 村人全員狂ってる

村人全員化け物だ

と書いてあったそうだ。

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「長い話だったね、途中でつまらなくならなかったかい?」

「ううん、面白かったよ!村の人達が怖いと思った。サユリさんは良い人だと思った。」

「.......」

「おじいちゃん、泣いてるの?」

「...昔の事を思い出してしまってね...」

僕は泣いているおじいちゃんの目をじーっと見つめた。

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「ねぇ、おじいちゃん目赤いよ?泣いてるから赤いの?」

おじいちゃんの目は深い紅色をしていた。

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<おしまい>

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NEKOTENIさんコメントありがとうございます。僕も同意見です。"自分達"の一人になってしまったら...わからないですよね。周りと同調してしまうのか、それとも自分の意思を貫くのか。

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自分達と違うものを徹底的に排除するその姿勢の方がよほど化け物じみていて怖いものだと思うのですが、”自分達”の一人に入ってしまうとわからなくなるんでしょうね。

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