短編2
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中古車。

高校卒業のお祝いとして、自分で車を買った。コツコツ真面目にアルバイトして貯めて買った物だ。まあ、新品を買うほど稼いだわけではないので、中古車なんだが。

さっそく彼女を誘ってドライブに行った。彼女には見栄を張って新車と言ってある。そのためか車内での会話も弾み、俺はすっかりご機嫌だった。

途中、ドライブインで一休み。昼食でも食べてこようかと車を降りようとした時だ。ボサボサの頭をした男の子が、ジッと俺の車を見ていた。車の前に回り、瞬きもせず、ただジッと。

「何。何か用?」

そう話し掛けると、男の子はくるりと踵を返し、どこかへ走っていってしまった。あの年頃の男の子なので、単に車が格好良く思えて見ていたのかもしれないが……正直、変な子だと思った。

だって、車を見つめていた目が……

「どーしたの。早く行こーよ」

彼女に促され、俺はハッと我に返った。曖昧に笑って誤魔化し、俺達は建物内へと入った。

昼食を終え、ドライブ再開。やはり車内の会話といえば、この車のことだ。新車というのが利いたのだろう。彼女はとても嬉しそうだ。

彼女が土産を見たいと言うので、駐車場に車を停めた。小走りに店へと駆けていく彼女の後を追い、車から降りた。そしてロックを掛けようと振り返ると……いた。

あの男の子が。

無言でジッと車を見つめている。不自然なくらいの猫背は、子どもらしい覇気やエネルギーを感じない。

男の子が初めて顔を上げた。伏し目がちの目で俺を見つめた。

「……この車、お兄さんの?」

黙っていると、男の子は再びボソボソと尋ねてきた。

「……この車、本当にお兄さんの?」

「お、俺の車だよ!だから何なんだよお前!何が言いたいんだ!」

思わず強い調子で怒鳴ると、男の子は眉を下げた。顔中しわくちゃにして、唇は「へ」の字に曲げた。体を小刻みに震わせ、今にも泣きそうな顔をしている。

そして呟いた。

「だって僕、この車に轢かれて死んじゃったんだもん」

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