長編8
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最期の微笑み

稚拙な文章ですが、読んで頂けると嬉しいです。

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ナイフのように鋭く氷のように冷たい

お前のブルーサファイアを俺のものにできる日はいつなんだろう

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冷たくなった両手を摩りながら白い息を吐き曇り空を見上げた。

ブーッブーッブーッ・・・・

コートの左ポケットから携帯を取り出し画面を見る。友人からの

着信だった。

『もしもし?今どこにいる』

「彼奴の墓参りに来ている。日本で元気にやってるって・・報告

しようと思ってね。」

『そうか。終わったらこっちに顔出せよ。』

「ああ。お前の好きなワインを買って行くよ。」

『お~それは楽しみだ。じゃ、後でな。』

「うん。」

電話をきり、目の前の友人の墓石を見つめた。

「あれからもう4年も経つんだな・・・・またお前に会いたいよ」

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数年前・・・

昨晩のライブで貰ったプレゼントやファンレターをベッドの上で眺めた。

何かのキャラクターの人形 沢山のメッセージが書かれた色紙 バスグッズ・・・etc

いつも貰った人形は部屋に飾るか妹にあげていた。

手紙は貰ったもの全て読むようにしていた。嬉しくなるような事を書いてくれるファン

もいれば誹謗中傷したような内容を書くファンもいた。幾つある手紙の中で変わった文の

手紙があった。差し出し人のはChuck(チャック)という名前の男だった。

この男は確か・・・親友のBill(ビル)の友達でビルが俺のライブに誘って連れてきてた奴。

その時ビルから・・・

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今日のお前のライブに俺の友人を連れて行く!

名前はチャックっていうんだけど、こいつ色々悩んでて毎日暗い顔してるんだ。

だからお前の歌声を聴いて元気が出てくれたらなと思って連れてきたんだ。

Cd聴かせたらかなりハマった様子でライブを楽しみにしてるみたいだよ。

お前のファンがまた一人増えたな!最前列で見てるから探してくれよ。

ライブ終わったらメールする。

というメールがあったから覚えていた。確かにライブでこのチャックらしき男をみた。

ビルは金髪だからすぐに探せた。チャックという男はきっとビルの右横の黒髪の男だろう。

チャックという男を想像しながら本人からの手紙を

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Dear Sloan

目覚めと共にフラッシュバックする悪夢

手元のナイフで喉を撫でる

手首の錆びついた亀裂を眺める

目を閉じても目を開けても光は無い

俺に明るい未来は存在しないのか?と自分に問い続ける

こんな毎日が永遠に続くと思っていた

しかしお前と出会い闇が晴れたんだ

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お前は闇の中に現れた光

神やキリストに縋る奴らの気持ちが分かったきがした

ビルには感謝している お前を見せてくれた

スローンという救いを与えてくれた

以下略

返事を貰えたら嬉しい。

Chick

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チャックからの十数枚に及ぶ数の手紙に俺は驚いた。

手紙の内容は俺への感謝の気持ちと自分の生い立ち等が書かれていた。

この事をビルに話すと、チャックはお前のお蔭で立ち直れたんだと言われた。

ビルと俺はかなり長い付き合いだけど、チャックとビルはどれくらい長い付き合い

なんだろう。

自分の歌声が役に立てたのは素直に嬉しいし、新たにファンが獲得できたの

も良かった。

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手紙を全て読み終えたあとベッド脇のテーブルに置いてある飲みかけのワイン

を飲んだ。

次のライブに向けて曲作りをしていると、ビルから着信があった。

出るとビルが今チャックと一緒にいて、チャックが俺と話しをしたいと。

奴から貰った長文の手紙の内容が頭をよぎる。電話でもかなりキツイ

話をされるのかと思うと気が引けた。でも、親友からの頼みだから・・・・

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俺はチャックと電話することになり、チャックからの返答を待った。

「もしもしチャック?スローンだ」

『わぁーお・・・・まじかよ・・・・チャックだよ。ス・・・スローンと電話

できるなんて夢みたいだ!!!ありがとう!!」

手紙の男とは思えない程気持ちが高ぶった明るい声だった。

一方的な会話になるのかと思ったけど意外と会話の終わりが早かった。

チャックは嬉しすぎて言葉が思いつかないといってすぐにビルにかわった。

電話口でビルの笑い声が聞こえる。ビルが喜んでいるのならいいや・・

そう思った。

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次のライブ後、またいつも通り俺宛のプレゼントや手紙をみる。

数多くの手紙の中に”Chuck"の文字を見つけ、中身を読む。

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Dear Sloan

俺はお前の虜 お前に魅入られてしまったのか?

既にお前の奴隷だ 俺は誰よりもお前を想っている

俺の人生は退屈で どうしようもないものだ

いつもうんざりしている しかしお前の顔を見ると

俺にもまだ希望があるんじゃないかと思えてくる

以下略

誰よりもお前を愛している

Chuck

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チャックからの手紙は日を追う事にエスカレートしていった。

純粋なファンからの内容から段々狂気を帯びた内容に変わっていった。

チャックからの手紙の事をビルに話すと、チャックに止めるように言うといった。

チャックがまた電話をしたいと言い出した時に俺が軽い気持ちでOKと言って

しまったが為にチャックから毎日電話がくるようになったのだ。

大量の手紙にChuckの記された着信履歴、留守番電話にうんざりした。

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ビルがチャックに止めるよう伝えた後のライブ後の事

手紙の山からチャックからの手紙を見つけ中身を確認する。

内容は・・・・

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Dear Sloan

目を閉じ闇をみるのが怖かった

目を開け現実をみるのが怖かった

しかし、お前の事を思うとお前の顔をみると恐怖が消えるんだ

ライブでのお前は最高に輝いているよ

プライベートのお前をみることができないから

ライブでのお前しか知らないけどな

ナイフのように鋭く氷のように冷たい

お前のブルーサファイアを俺のものにできる日はいつなんだろう

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Sloanに憧れて同じプラチナゴールドに染めたり服装を真似てみたけど

お前になりきる事はできなかった

Sloanになる事が俺の望みじゃないって気づいたんだ

お前は唯一無二の存在 誰も触れることができない宝石

常にお前の声を聴いていたい 

お前の顔をみていたい・・・永遠に

Chuck

今回の内容は穏やかに思え、少し安心した。

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それから数週間後のライブ

俺はステージに立ち観客達全体をみた。いつもならチャックとビルが俺の

目の前の位置に立っている筈なのに今日は見当たらない。

おかしいと思いステージの一番後ろをみた するとそこにビルが立っていた

なんだかいつもと様子が違う、顔色が悪く表情が暗い。

俺はビルの顔を凝視する ビルが小さく微笑んだ。その顔はそても穏やかで

優しいものだった。

なんだ・・・来てたのか・・・

俺は安堵し、ライブを始めた

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ライブを終えステージ裏へはけるとマネージャーが眉毛を下げ鼻を赤くして

立っていた。

「おいおいどうした?俺の歌声に痺れて泣いてるのか?」

「スローン・・・冷静になって聞いてくれ・・・・・」

「ああ・・・どうしたんだよ・・・・・」

「ビルが死んだ」

「はぁ?冗談言うなよ笑えないぞ!何かのドッキリだろ?・・・・おい」

「・・・・・・本当の事だよ。さっき電話があってね。死因は事故死だそうだ。」

眼球に一気に生暖かい液が集まり流れ落ちる。

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頭の中は真っ白になりその場に立っていられなくなり、俺は崩れ落ちた。

「どうして・・・交通事故なんて起こすような奴じゃない・・・何故・・」

「聞いた話だとチャックが運転する車に乗車し、チャックのハンドルを掴んで・・・」

周りの声は耳に入らなかった。ビルの顔が何度も何度も俺の頭に映像として

流れる。

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俺がライブを始める頃、ビルとチャックは死んだ。

でも確かにビルはライブに来ていた 俺は信じられないまま家路についた。

家の電話が鳴り、泣きながらビルの訃報を知らせる妹の声を聞き本当に親友

は亡くなったのだと納得した。

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数日食事が喉を通らなかった。何をする気にならずビルとの日々を思い出しては

泣いていた。亡くなった後になって親友の存在は自分の中でこんなにも大きな

ものだった事を気づかされた。

携帯の時刻を確認しようと画面を見、留守番電話が入っているのを見つけた。

ほぼ全部チャックからの留守番電話だった。その中で気になるものがあった。

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・・・・大変だぞスローン。ビルが俺たちの仲を嫉妬している。

俺達の親密な仲に嫉妬している・・・

ヘイ!スローン。

俺達の仲は永遠だよな。永遠だと言ってくれよ。

どうして電話に出てくれないんだ?俺の愛しのスローン

俺はこんなにあんたを想っているのに、どうして通じ合わないんだろう・・・

きっとビルが俺達の仲をさこうと呪いをかけているんだ・・きっとそうだ

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俺達には障害が多すぎる・・・全てが敵にみえるよスローン・・・

どうしたらいんだ?俺を救ってくれスローン

ヘイ!スローン。俺はもう終わりにしようと思う。

俺と一緒に終わろうぜスローン。俺達は深い仲だろ?いつも一緒だよな・・

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12

今日は終わりにもってこいの日だ。

俺は今からお前の所に行くよ。一緒に終わりにしよう・・・なぁ。

13

もう準備万端だぜスローン。ライターもガソリンもちゃんと用意した。

あとは二人で火をつけるだけ。

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14

ヘイ!スローン。ビルを後部座席に乗せた。後ろで眠っているよ。

もう二度と起きない深い眠りだ。もう二度と起きないビル・・ビル・・・

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・・・・・・・ス・・・ローン・・・もう安心だ。大丈夫・・・

スローン・・・・俺のせいでごめん。ごめ・・・ザザザザー

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留守番電話はこれで終わりだった。

最後の声はビルの声だった。死ぬ間際に絞り出すような掠れた声

あの時、観客の一番後ろで微笑んでいたのはお前なんだろう?ビル・・・

「ビル・・・・・俺のほうこそごめん・・・・・・」

携帯を力強く握りしめ、泣きながら何度もビルの名前を呼んだ。

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ビルの顔には無数の殴られた痕があり、それは車が衝突する前につけられた

もののようだ。

ビルは途中まで気を失っていたが目が醒め、俺の所へ向かおうとしている

チャックのハンドルを奪おうとして・・・・

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「あれからもう4年も経つんだな・・・・またお前に会いたいよ・・・・”ビル”」

My best friend Bill,R.I.P.

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おしまい

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