一戸建て平屋一軒家。夏の怪。

中編3
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一戸建て平屋一軒家。夏の怪。

「かずきー、早く歯磨いて寝るよー。お母さん先寝ちゃうからね!!」

「えー!!分かったー。」

居間の照明を消し、寝室の豆電をつける。

どうして子供ってこうもルーズなんだろう。

私も自覚するくらいマイペースだったけど、母親にこんなに口うるさく言われなかった気がする。

男の子と女の子の差かなー。

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電気を消されて、すっかり家の中は真っ暗だ。

明るいのは息子が歯磨きしてる洗面所だけ。

きっとトイレを済ませてから、小走りで布団にもぐりこんでくるにちがいない。

ただでさえ、夜のトイレは怖い、自宅といえど怖い。しかも、家の中は真っ暗なのだから。

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季節は夏。7月の中旬。夏休み前にすでに夏休み気分なのか、とにかくのんびりな息子だ。

声を掛けてから10分くらい経っただろうか。相変わらず遅い。どうやったら歯磨きとトイレで10分経つんだ??

そば耳を立てて息子の様子をうかがっていた。

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「うわああああー!!」

ドタドタドタドタっ!!!

小さな悲鳴とともにあわてた様子で私のもとへ来た息子。

暗がりがそんなに怖かったのだろうか。いや、待てよ。洗面所の明かりは点きっ放しだ。

「どうしたの?あわてて。」

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「今、お母さん後ろにいるかと思ったら、いなくてびっくりしたの!!」

「いや、お母さんずっとここにいるし。さっき、もう寝るって言ったじゃん。」

「うん。だけど、なにか後ろを通った気がしたの。」

「やだ。ちょっと…怖いこと言わないでよ。

きっとお父さんのお祖父ちゃんがかずきの顔見に来たんじゃない?」

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「え?だって、女の人だった気がする。」

「じゃ、お父さんのおばあちゃんだ。」

「うん…。髪長かった気がする。」

何かが後ろを通ったなんて言われたら私も怖いけど、

二人で怖がってても仕方ない。

もっともな理由をつけて息子を励ました。

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今夜もまた主人は夜勤だ。

「あ。ねぇ、かすぎ。電気つけっ放しだよ。」

「えぇー。。。怖い。。。」

「じゃ、一緒に行こう。手繋いで行こう。」

もし、ホントに何かがいたなら確かめずにはいられない。怖くても。

それが、人でも人ならざるものでも。

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だって、このままおとなしく寝るのは怖いじゃない。と言うか、きっとこれでは二人とも怖くて眠れない。

母と子でぎゅっと手をつなぎ恐る恐る洗面所へ。

もちろん、部屋の照明はつけて明るくする。

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「どこら辺にいたの?あ…いた気がしたの?」

「あっち。」

息子が言うには、洗面所を背にして真正面の廊下。右には居間があり、左にはお風呂、突き当りは台所がある狭い廊下のところ。

「う〜ん。何もないよ。」

幸いというべきか、私には何も見えなし、何も感じられなかった。

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何もなかったことで勇気が出た私は、半開きのトイレも覗いた。

「なんもない。かずき、トイレした?まだならしたら?お母さんここにいるから。」

「分かった…。」

確かさきほどトイレに入った様子はなかったので、すすめてみた。

私がここにいれば怖くはないだろう。

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それにしても、髪が長かったって…。確かに私も髪が長いので間違えるのは分かるけど。。。私は普段、髪留めを使ってまとめている。

しかも、本当に息子の曾祖母だとしたら、私と歳が違いすぎる。

詳しくは知らないがおそらく三十路頃の私よりは20年か30年かは歳を重ねてから亡くなってるはず。

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若い時の姿でご挨拶に来たのかしら?

疑問は残るものの、考えていてはなお怖くなるだけなので、トイレから出た息子と録画番組でもかけながら気を紛らわして寝ることにした。

その後、とくに不審な物音や気配などはなく、

テレビでは海賊王になりたい少年が元気に暴れている映像が流れていた。60分のオフタイマーを付け、私たちは静かに眠った。

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あんみつ姫さま。
夜勤後は友人と焼肉屋さんへ行き桜ユッケとハラミをやっつけて朝の4時頃帰宅しました。
東の空が明るくなり、空全体が真っ黒から藍色になっていて、暗闇の恐怖から開放されて一人ゆっくり眠れました。

じわじわ怖がってもらえてよかった(*^^*)
怖い話を書くのは大変なことですね。書いてると自分が怖くて敵いません(´Д⊂ヽ

奥さま。
息子が見た人物はどちら様だったのでしょう。怖くて確かめられません。

合理性と統合性の対局にでーんですね。
無邪気というやつでしょうか。自由奔放。

私はお会いしたくありません:(;゙゚'ω゚'):

きっとゆかりのある方々だと思いたいですが、ご対面は…ご遠慮願いたい(*_*)
◇ ◇ ◇
この話、脚色したのは名前くらいで会話はそのときのまま思い出して書いてます。
…思い出しながら怖かった(T T)

母と息子の会話がリアルすぎて、
息子くんが見たというものまでリアルに怖いです。
そう、子供って呑気というか、大人の考える合理性と統合性の対極にでーんと座っているので、
息子くんの言動とお母さんのリアクションに、頷きっぱなしでした(笑)

でも、だから”子供には見える”のかもしれませんね。
理性と理屈の鎧で固まってしまった大人には見えなくなっちゃったものが。
それが、ご先祖様ならまだ平和ですよね。
ご先祖でないものだったら、なおのこと怖いじゃないですか(汗)

コメント書き込んだ直後に第二作目のアップ
ラッキー(*^_^*)でした。

息子さんとのリアルな会話が じわじわくる怖さを感じさせます。

今晩は、お仕事を終えられた後は、おひとりなのですね。
どうやってお過ごしになるのでしょう。
何事もないことをお祈り申し上げます。