ホラゲーかよin廃病院《前編》

長編16
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ホラゲーかよin廃病院《前編》

此れは僕が高校1年生の時の話だ。

季節は春先。

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・・・・・・・・・。

「ハァイ、ダーリン。今夜は寝かせないわよ!」

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さて、いきなり何を宣うのかと御思いになった方、僕も全面的に同意である。

僕だってこんな事を言われるとは思わなかった。

僕だって・・・・・・!

一仕事終えて家に帰り、もっと良い解決方法は無かったのか、いや、こうするのが最善だったのだと葛藤を繰り返し、其れでも前に進んで行くしか無いのだ、ウジウジと振り返るのも、もう止めよう・・・と決意をして自室のドアノブに手を掛けてゆっくりとドアを開いた・・・・・・。

其のドアの向こうに何故か居る長年の友人が、言うに事欠いていきなりオネェ口調でそんな事をほざいて来やがるなんて!!

全く!!!

思わなかったよコノヤロウ!!!!

返せよ!!

僕の中のシリアスな何かを!!

返せ!!!

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「・・・・・・何やってんの。」

真冬の日本海並に荒れ狂っている心を押し殺し、僕は至って冷静に尋ねた。

友人はボソリと言った。

「本当に・・・・・・何やってんだろうな。」

半笑いの彼の目は、死んでいた。

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・・・・・・・・・。

コホン、と友人ーーーーーー基、薄塩が咳払いをする。

「あれだな。うん。・・・好きでやってる訳じゃないって事だけは、ちゃんと分かって欲しい。」

「のり姉だろ?」

僕がそう聞くと、薄塩は苦笑いを浮かべながら頷いた。序でに言うならば、まだ目は死んだままだ。

「まぁ・・・あれだ。その、おかえり。」

「ただいま。で、何で薄塩が僕の部屋に?」

薄塩の死んだ様な目が挙動不審にキョロキョロと動いた。

死んでいるのに動き回るとは器用な眼球である。

ゾンビか。

「・・・・・・姉貴の命令だからな。悪く思うなよ。」

薄塩が持っていた鞄から、青色の封筒を取り出した。

「ラブレターの配達。」

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・・・・・・・・・。

「あ、コンソメ君。やっと来たね。」

連れて来られた神社には、のり姉とピザポが既にスタンバイしていた。

「やっと来たね、じゃないですよ。何なんですか一体。」

疲れている所為か、思い切り不機嫌な声が出た。

「僕、木葉さんの手伝いから帰って来たばっかりなんですよ。」

渾身の力でのり姉を睨み付ける。

・・・が、睨まれている本人は涼しげな顔だ。

「だからこそ、でしょ。ほら行こう。」

さっさと車に乗り込み、此方へ呼び掛ける。

「兄弟水入らずで旅行かぁ・・・・・・ねぇ、私が何を言いたいのか、コンソメ君なら分かるよね?」

僕の背中を、ゾワゾワと悪寒が這い上がって行くのが分かった。

のり姉が目だけが笑っていない笑顔で言う。

「・・・・・・行こっか?」

・・・本当に僕は無力だ。

春先とは言え、まだまだ夜は冷える。

吐き出した溜め息が、白く濁って消えて行った。

今の僕はきっと、さっきの薄塩の様な目になっているに違いない。

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「・・・おかえり。」

何時の間にか、隣にピザポが来ていた。

「少し遠い所なんだって。眠たければ車で眠って良いよ。着いたら起こすから・・・・・・だから。」

行こう、と言いたいのだろう。

困った様に此方を見ている。

此れでは、まるで僕が駄々を捏ねている様ではないか。

「・・・・・・分かった。」

渋々と頷く。

「ありがとう。ほら、行こう?」

一瞬にして笑顔になったピザポが、僕の腕を掴んで、車へと僕を引き摺る。

待て。さっきまでの困り顔はどうした。

心の何処かで《嵌められた!》と思ったが、抵抗する力はもう無かった。

僕はもう一度、大きな溜め息を吐いた。

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・・・・・・・・・。

車に乗ると瞼が重くなり、直ぐに意識が無くなった。

其れから僕は暫く眠っていた。

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「・・・・・・ゃん。コンちゃん。」

「・・・・・・・・・んん?」

ピザポが僕の肩を揺さぶっている。

「え・・・あ、もう着いたのか。」

瞬きをしながらピザポの方を見ると、ぼんやりとした輪郭が横に揺れ動いた。どうやら首を振ったらしい。

車も、まだ走り続けている。止まる様子は無い。

「着いたんじゃないならどうして・・・・・・あ。」

寄り掛かっていた所為で、ピザポの座るスペースが明らかに狭くなっていた。

「あー・・・窮屈だよな。ごめん。」

僕がちゃんと座り直すと、ピザポらしき輪郭はまた、首を横に振った。

窮屈だったから・・・ではないのか?

「コンちゃん。」

呼び掛けて来たピザポの声は、何だか心配そうな調子だった。

「どんな夢を見てた?」

「どんな・・・・・・夢?」

僕が聞き返すと、ピザポの輪郭は一回頷く。

・・・どうしてそんな事を?

回らない頭を回転させて思い出そうとするも、全く思い出せない。

輪郭は、じっと此方を見ている。

其処でやっと僕は気付いた。

幾ら寝起きとは言え、こんなに長時間の間視界がぼやけるのは可笑しい。

何か目に異常を来しているのか?

そんな事を考えながら目元に手を遣るが、何て事はなく、只、涙が出ているだけだった。

・・・・・・涙?

「苦しそうに泣いてたんだよ。寝始めてからずっとな。」

不意に薄塩が口を開いた。

「一体、何があった?」

真面目な声色で、そう問い掛けて来る。

「何って・・・・・・。」

船霊様の事だろうか、と思った。

だとしたら、僕は自分で思っているより心理的ダメージを受けているのかも知れない。

目元を擦ると、視界は鮮明になった。

少し痛む首を回し、薄塩の方を向く。

薄塩は苦い顔で僕を見ていた。

「魘されながら言ってたんだけど・・・。」

「え?」

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「・・・誰だよ。《ジョニー》って。」

「・・・・・・知らない。誰だそいつは。」

船霊様でも潮田さんでもなくジョニー。

予想と全く違う名前が出て来て、僕は少なからず困惑した。

誰だジョニーって。船霊様じゃないのか。

本当に誰だ。ジョニーって。

僕が考え込むと、薄塩は苦い顔のまま告げる。

「ずっと言ってた。」

確認の為に、もう一度聞いてみる。

「ジョニーって?」

「そう。ジョニーって。」

即答だった。

本当に誰だジョニー。

ジョニー、お前は一体何者何だ。

どうしよう。本気で分からない。夢診断的な物をして欲しい。

僕がそんな風に悩んでいると、薄塩が僕に聞いて来た。

「・・・・・・単なる悪い夢か?」

僕は静かに頷いた。

「何だ。」

「心配して損した。」

薄塩とピザポが呆れた様に笑った。

車はまだ走り続けている。

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・・・・・・・・・。

車が止まった。

大分走ったと思う。

僕等は舗装のされていない土の道へと降りた。

今日は星が無い分、月が明るい。

目の前に平べったい形の建物が二棟・・・ホテルだろうか。

廃業して暫く経っている様だ。

然し、近くの古びた街灯には未だに光が灯っている。

・・・電気が通っているのだろうか?

周りは一面、森になっている。人気も無い。

「其れにしても、毎度毎度よくこんな場所を見付けて来るよな。」

隣で薄塩が呟く。

外観は比較的綺麗で、損傷は少ない様だ。

扉はガラス戸になっていて、大きく開け放されている。

ピザポが首を傾げた。

「此れは・・・何の建物何だろう。別荘とかにしては、何か変だし・・・。」

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「病院だよ。」

ずっと黙っていたのり姉が唐突に口を開いた。

「ホスピス・・・って言った方が合ってるかも。もう助からない人が最後を待つ為の場所。」

話しながら、ゆっくりと建物へ近付いて行く。

病院・・・にしては随分と洒落た造りな気もするが。

見透かした様にのり姉が微笑んだ。

「《治す為》の場所じゃないからね。」

扉の前で立ち止まり、建物を見上げながら手招きをする。

「・・・・・・ほら、行こう。」

何時に無く穏やかな感じの其の声に、少しだけ戸惑う。

何時もなら、もっとこう・・・・・・

「フゥーハハハ!!行くぞお前等!!!」

みたいな感じの、ハイテンションだと言うのに。

今ののり姉はとても静かで優しげな感じがする。

何があったと言うのだろう。

隣の二人も不思議そうな顔をしている所を見ると、僕が木葉さんの手伝いをしていた間にのり姉の中の何かがガラッと変わった・・・と言う訳では無いらしい。

月光の下だからか、のり姉は何だか白く儚げに見えた。

僕は急に不安な気持ちになった。

「どうしても・・・行かなくてはいけませんか?」

「どうして?」

「《どうして》って・・・。」

無理矢理に腕を引いて連れて行こうともしない。

やっぱり可笑しい。

「・・・・・・のり姉?」

僕がそう呼ぶと、のり姉はニッコリと笑った。

「そう言えば三人共、メイド服ってまだ着た事無かったよね?」

「「「今行きます!!!」」」

前言撤回。

やっぱりのり姉は何時如何なる時もブレない。

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・・・・・・・・・。

埃と黴の臭い。其処に消毒液らしきツーンとした臭いが鼻を刺す。

「・・・ケホッ」

のり姉が小さく咳をした。

何だか苦しそうだ。

「大丈夫・・・・・・ですか?」

「気にしないで。喉に埃が引っ掛かっただけ。」

強気にそう言って、のり姉はどんどん進んで行く。

何時もなら、もっとゆっくり、色々な所を覗きながら行くのに・・・・・・。

本当に、どうしてしまったのだろう。

広い廊下の突き当たりに着いた。

スロープの付いた階段。

「・・・・・・滑り易いから気を付けて。」

のり姉が階段を上り始めた。

「・・・行くか。」

薄塩も階段の方を選んで歩き始める。

僕とピザポは顔を見合わせ、スロープの方を選んで進んで行った。

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・・・・・・・・・。

階段は、一度上がると踊り場があり其処を180度方向転換してからもう一度上がると言う、病院に有りがちな形状をしていた。

のり姉の靴がコツコツと音を響かせながら上へと進んで行く。

コツ、コツ、コツ・・・・・・コツ。

のり姉の足音が止まった。

僕が顔を上げると、のり姉が踊り場から上へと向かう階段を懐中電灯で照らしていた。

「・・・・・・・・・あ。」

吐き出す息に混ぜ混む様にして、のり姉が呟く。

そして、クルリと此方を向いた。

「逃げるよ。」

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ズルッ・・・ベチャ。

上の方から、何かが落ちる様な音が聞こえた。

スルスルという衣擦れの音も聞こえる。

のり姉がもう一度繰り返す。

「逃げるよ。」

僕等は無言で頷き合い、一気に階段を逆方向へと下り始めた。

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・・・・・・・・・。

階段を下りている間にも、衣擦れと何かを叩き付ける様な音は聞こえている。

「一体何が?!」

「廊下に出れば嫌でも分かるから。」

のり姉は不気味な程に冷静だ。

相手に攻撃もしなければ話し掛けもしない。

・・・本当に、どうしてしまったと言うのだろうか。

そんな事を考えながら僕はスロープを一気に賭け降り、一瞬だけ後ろを振り向いた。

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見えたのはボロボロのシーツの塊だった。

いや、シーツの塊ではない。誰彼がシーツをすっぽりと被っているのだ。

聞こえていた衣擦れの音はシーツが床に擦れる音だった。

そして、そいつは這い摺る様に移動し、階段を一段一段降りる度に変な角度で身体をぶつけている。

《ベチャッ》と言うのは其の音だった。

「・・・・・・見た?」

のり姉が聞いて来た。

再び走りながら僕が頷くと、のり姉は何かを言う事も無くまた走り始めた。

ズルッ・・・ズルズルッ・・・

背後からの音が変わった。

階段を下り終えたのだろう。

どうやら、あいつはちゃんと立って歩く事が出来ないらしい。

だから身体を引き摺る様に、這って移動をするのだろう。

だとしたら、逃げ切る事は難しい事ではない。

僕は半ば安心しながら走り続けた。

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・・・・・・・・・。

其処から暫く走ると、玄関前のロビーに着いた。

「此処は一旦撤退。」

のり姉がそう言ってガラス戸に手を掛ける。

が・・・・・・。

ガシャン、と音を立てはした物の、ガラス戸はびくともしなかった。

「・・・・・・変わってください。」

今度はピザポがガラス戸を開けようするが、やはり戸は微動だにしない。

遠くからあの

ズルッ・・・ズルッ・・・

という音が聞こえる。

のり姉が顔をしかめた。

「・・・・・・仕方無い。取り敢えず逃げよう。・・・コンソメ君。」

「え、あ、はい!」

「私達は左に行く。コンソメ君は右に行って!」

「・・・・・・・・・え?!」

左はあの化け物がいる方向だ。

「なるべく此方で引き付けるから!突き当たりがを更に右に曲がって!其の先の部屋の窓が空いてるから、外から・・・・・・あ、くそっ!!」

シーツを引き摺りながら、化け物が姿を現した。

「行って!コンソメ君!!」

ファブ○ーズを構えながらのり姉が叫ぶ。

・・・どうやらゴチャゴチャと考えている暇は無い様だ。

僕は右の廊下へと走り出した。

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・・・・・・・・・。

化け物が追い掛けている気配は無い。

突き当たりを右、其処から真っ直ぐ・・・。

「・・・あれか!」

木製の大きな扉が見えた。

あの部屋の窓から出られる・・・・・・。

《外から回り込んで扉を開け》と、のり姉はそう言いたかったのだろう。

あの化け物・・・・・・。

スピードはそう早い方ではないが、こんな閉鎖的な空間だ。追い込まれるまでに、そう時間は掛からないだろう。

急がなくては。

僕は焦りに任せ、更に足を加速した。

扉まであと数メートル・・・・・・。

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然し、僕が其の部屋に入る事はなかった。

「うわっ!ちょ、待て待て待て!!」

ゴッッ!!

何かに強く腕を引っ張られ、床に頭を強かに打ち付けたからだ。

「痛ぁぁぁぁぁぁ!!!」

床をゴロゴロと転がる。埃が顔中に付着した。

不意に、頭上から慌てた声が聞こえた。

「あー・・・大丈夫?怪我は?」

「大丈夫じゃないですよ。全く・・・!」

頭を振って埃を払い落とす。

「いやー、本当に怪我無くて良かったー。」

妙に間延びした口調。

僕が顔を上げると、一人の青年が此方を覗き込んでいた。

「ごめんねー。」

彼は自分の事を川原、と名乗った。

「幽霊やってます。よろしくねー。」

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・・・・・・・・・。

話を聞くと川原さんは、此の病院で亡くなった一人なのだと言う。

「つっても、別に医療ミスとかじゃないけどな。単なる事故死。」

そう言って頭をポリポリと頭を掻いた。

「床で滑って頭ぶつけて死亡したー。」

「なのに僕を転ばせて頭を床に叩き付けたと?」

「いや其れは本当にすまん。」

幽霊らしからぬ明るい表情で笑う。

笑い事じゃない。

「抑、どうして僕を・・・?」

「いや、どうしてって言うかさ、多分、突き当たりの部屋に行こうとしてたんでしょ。」

「何で其れを・・・・・・。」

「正面玄関が開かなくなったんだよね。で、窓の壊れてるあの部屋から脱出しようとしたと。」

「だから何で其れを・・・・・・。」

「あ、白いシーツ被った化け物は?もう遭遇した?もし会ったら逃げろな。危ないから。」

「・・・・・・!」

あの化け物の事を知っているらしい。

もしかしたら有力な情報を得られるかも知れない・・・・・・。

だがしかし。

怪しい。明らかに怪しい。

僕達の状況を此処まで理解している何て・・・。

「貴方は一体・・・・・・。」

僕が聞くと、川原さんは少し顔をしかめた後、答えた。

「俺は川原。只の一般幽霊だよ。」

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・・・・・・・・・。

一般市民ならぬ一般幽霊。

答えになっていない答えを出して、川原さんは数回頷いた。

「あの部屋、確かに窓は開いてるけど、入れないよ。鍵が掛かってるから。」

「じゃあ、其の鍵は・・・?」

「二階かな。多分一番東側の部屋だと思う。」

「東側の部屋って、どの部屋ですか。」

「建物の方を正面から見て一番左。」

「どうしてそんな所に一階の鍵が?」

「逃げられない様に、じゃないかな。俺もよく分からんけど。」

「・・・・・・じゃあ何でそんな事を貴方が?」

「長く住んでるからね。あ、よかったら手伝ってあげようか?脱出。」

「どうして・・・・・・」

「君等が居ると彼女が五月蝿くて仕方無いからね。単に俺の穏やかな生活を守るため。・・・で、どうする?」

川原さんが首を傾げる。

・・・・・・疑ってばかりでもしょうがない。

僕は渋々と頷き、頭をさげた。

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・・・・・・・・・。

川原さんの言った通り、突き当たりの部屋には鍵が掛かっていた。

「だから俺言ったのに。」

「確認ですよ。確認。念の為です。」

ポケットに入れていた自分の懐中電灯を点けて歩き出す。

川原さんが懐中電灯を指差して言った。

「あ、二階行ったら其れ消して。あのシーツ被り、光を見付けて追い掛けてるから。暗い所なら、じっとしてれば見付からないから。」

「・・・・・・だから、どうして貴方がそんな事を?」

訝しげな目で見ると、川原さんは何故か楽しそうに目を輝かせていた。

「何かホラーゲームみたいだな。」

「話を聞いちゃいねぇ。」

溜め息を吐き、廊下を進む。

・・・本当に此の人(?)を信用して良いのだろうか。一抹の不安が胸を過った。

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・・・・・・・・・。

ふと思った。

今、のり姉達はあの化け物から必死に逃げ回っている筈だ。

其れにしては・・・・・・。

「静か過ぎる・・・。」

「え?」

前を歩いていた川原さんが此方に振り向く。

僕は言った。

「友人達が、あのシーツの化け物に追われている筈何です。其れにしては・・・・・・。」

僕の言葉を継ぐ様にして、川原さんが呟く。

「静か・・・・・・だね。」

僕の頭に、最悪のパターンが浮かんだ。

「もしかして、もう手遅れに・・・!」

「いや、悲観するにはまだ早い。何処かに隠れているのかも知れないから。どうにかして連絡を取れないかな。」

「携帯電話で・・・・・・でも、着信音が。」

「大丈夫。耳は聞こえない。其れより、あまり光を出さない様にして。」

携帯電話を取り出し、取り敢えずのり姉に電話を掛けてみる。

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・・・・・・・・・。

十数回目のコールで、のり姉は出た。

「何?外には出られた?」

口調はやはり落ち着いている。

声以外の物音が聞こえない所を見ると、逃げて走っている最中でもない様だ。

「いえ、まだです。部屋に鍵が掛かっていて・・・・・・。のり姉達は?皆無事ですか?」

「今はね。」

「今何処に?」

「食堂に隠れてる。二人も一緒。」

ゴソゴソと音が聞こえて、ピザポの声が聞こえた。

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「コンちゃん無事?!」

お前等の方がよっぽど危機的状況だろうに。僕の心配何かするなよ。

僕は半ば呆れながら答えた。

「無事。そっちは?」

「大丈夫。あ、でも膝擦り剥いた。」

「ちゃんと消毒しとけよ。」

「うん。分かった。コンちゃんも気を付けて。」

またゴソゴソと言う音。

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「・・・・・・コンソメ?」

「・・・ああ。」

薄塩だった。

「今どんな状況に置かれているのか教えろ。」

「偶然会った一般幽霊と一緒に、脱出の為の鍵を探してる。」

「ホラゲーかよ。」

「其の幽霊・・・あ、名前は川原さんな。川原さんもそう言ってた。」

「寝首掻かれない様にな。」

「ああ。悪い人には見えないけど、一応警戒はしておく。」

「お前は御人好しだから・・・」

「五月蝿いな。あの化け物の情報教えるから、黙って聞け。」

「了解・・・あ、やっぱ待て。姉貴に替わる。」

ゴソゴソ音の後に、のり姉の声が聞こえた。

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・・・・・・・・・。

「何?情報って。」

「あの化け物、目が見えないし耳も聞こえないらしいんです。光には敏感らしいですけど・・・。」

のり姉が不思議そうに聞き返した。

「耳が聞こえない?」

「え、ええ・・・。」

何故にピンポイントで其処に食い付く。

「・・・・・・其れ、誰から聞いたの?」

「今一緒に行動している幽霊の川原さんです。」

突然のり姉が黙り込んだ。

「・・・・・・・・・。」

「どうしました?」

「・・・何でもない。情報ありがとう。此れなら何とか逃げ切れそう。合流はどうする?」

「のり姉の判断にお任せします。二人でも、僕は取り敢えず大丈夫そうです。そちらは?」

「私達も大所帯は困るの。・・・音は聞こえなくても、歩く時の振動とかは分かるみたいだから。」

「はい。了解しました。其れでは合流は無し、という事で。」

「うん。そうして。コンソメ君、此れから具体的に、どうする?」

「二階へ向かおうと思っています。」

「・・・・・・分かった。じゃあ、何処かに隠れて五分待ってて。あの化け物、今二階に居るから。」

「のり姉何を・・・」

「あいつを引き付けて、一階まで引き摺り下ろす。其の間にコンソメ君は二階を調べて。」

「危険です!ゲームじゃないんですよ?!」

「だからコソコソ引っ込んでろって?コンソメ君に色々させといて?」

「でも・・・」

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・・・・・・・・・。

「馬鹿にしないで。」

キッパリとのり姉は言い切った。

「自己犠牲精神も程々にしなよ。其れとも本当に私達を頼りたくないの?」

「そんな訳じゃ・・・!」

「なら黙って頷け。もっと信じろ。此方は経験の量が違うんだから。嘗めんな。」

「・・・・・・。」

「五分・・・いや、やっぱり合図にline送る。二階に上がってからもなるたけ連絡はするから、携帯電話を生かして置いて。分かった?」

「・・・・・・了解しました。」

「最後に一言。」

「何でしょう。」

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「何か有ったら直ぐに呼んで。死んでもコンソメ君達を守り抜いてみせるから。」

プツッ

電話が切れた。

本当に男前な御姉様だ。

「・・・・・・で、どうするって?」

川原さんが僕を見ながら言った。

僕は深呼吸を一つして、答えた。

「取り敢えず、仲間からの連絡を合図にして、二階へ向かいます。」

「了解。じゃ、取り敢えずさっきの所で待機していようか。」

クルリと今まで居た部屋の方を向き、川原さんが歩き始めた。

僕も其の後を追う。

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・・・・・・・・・。

待機を始めてから数分。

複数の足音が聞こえた。恐らくのり姉達だろう。

手元の携帯電話を見る。

lineはまだ来ない。

もう出発をするべきだろうか。

・・・いや、のり姉がlineを送ると言ったのだ。

信じよう。信じて待とう。

・・・・・・何かの落下する音。

愈、あの化け物が動き始めたらしい。

携帯電話から短く電子音が響く。

見ると、短いメッセージが表示されていた。

「健闘を祈る。」

どうせ見る事は出来ないと思うが、僕も返信を書く。

「どうぞ御武運を。」

携帯電話を鞄にしまい、ゆっくりと扉を開いた。

川原さんが言う。

「・・・・・・行こうか。」

僕は無言で頷き、外へと足を踏み出した。

《後編へ続きます。》

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中たまさんへ
コメントありがとうございます。

其れは止めて置いた方が・・・・・・。
のり姉は確かに格好いい所も有ります。ですが、如何せん、汚点が多すぎますから。

幽霊も本当に人其々ですね。
危険な人も居れば、優しい人だっています。
元は人間ですからね。
・・・僕何かが断言するのも、烏滸がましいしですが。

次回は、僕は基本的に川原さんと行動し、他の皆はあまり出て来ません。
其れでも、話のメインはのり姉です。
次回も宜しければ、お付き合いください。

ののさんへ。
コメントありがとうございます。

種類に因っても違いますが、やはり病院は《病院である》というだけで無条件に霊を寄せ付け易い・・・・・・のだそうです。
友人の受け売りです。はい(笑)
日常生活ではあまり見えないので、そう言う所で友人達に頼りっ放しになってしまいますね。勉強せねば。

・・・自分が確実に死へ向かう場所ですからね。個人の意思で決めたのだとしても、やはり無念だったのでしょう。

のり姉の事はネタバレになってしまうので、あまり書けないんです。ごめんなさい。

本当にジョニー・・・誰なんだ(笑)

そう言って頂けると本当に嬉しいです。
無知丸出しの駄文ではありますが、此れからもお付き合い頂けたら幸いです。

雀猫さんへ
コメントありがとうございます。

あ、やっぱり不自然でした?
ごめんなさい。
少しだけネットが出来ない状況に居まして、仕方無く分けました。
次回は少し短めの話になるかも知れません。

其処までの大事件は起こりませんよ(笑)!
まぁ、でも、僕は少し意外だと思いましたが。

なるべく早く書ける様、頑張ります。
次回も宜しければ、お付き合いください。

mamiさんへ
コメントありがとうございます。

ええ。書くのは中々大変そうですが(笑)
のり姉も含め、僕の周りの人達の過去を案外僕は知らないので、少しずつ知って行けたらと思います。

まさかのデップさん?!
夢の中では大分酷い目に遇っていた様ですが・・・・・・。
本当に誰なんでしょうね。ジョニー。

☆チィズケェキ☆さんへ
コメントありがとうございます。

某ホラゲ・・・・・・何でしょう。
病院をモチーフにしたゲームって、多いですよね。
どんなゲームだか気になります。

そうでもありませんよ。
相手が其ほどの脅威ではなかったので。
・・・まあ、其れも今回については、ですが。

少しだけ更新が遅くなってしまうかも知れませんが、頑張ります!

待ってました~(*^^*)そして焦らされる前後編( ; ゜Д゜)

のり姉、相変わらずカッコイイ。目指したいです。腐ってるところまで目指したい。あたしも後輩たちにメイド服、着せたいです。

なかなか、キャラの濃い幽霊とお知り合いになりましたね。幽霊にまでナイスキャラがいるとわ(笑)

このあとどうなるのか気になります!のり姉や薄塩、ピザポがどうなるのか、コンソメ君はどんな目に遭うのか楽しみです。あ、ピザポ君の膝は大丈夫かしら?心配です。シーツの正体とかね。楽しみに待ってますねq(^-^q)

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ネタバレ注意

紺野さんこんばんわ。

なんか紺野さんらしくない前後編の分け方ですね…焦らされました。

のり姉さんの過去!ずっと気になってました!
嬉しいです。

次回楽しみにしてます。
あんまり焦らさないでくださいね(笑)

でわ!

のり姉さんの過去…
色々興味あるお話しですね。

ジョニーさん!?と、言えばデップさん!?
次回も楽しみにしています。

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ネタバレ注意