中編5
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『愚痴る男の子』

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これは、私がまだ小学校2年生の頃の体験です。

今は成人してだいぶ経つので、昔の話ですが、とても印象的だったので書いてみます。

もちろん実話です。

当時私は、築9年の一軒家に住んでいました。

子供の頃は、仏間の部屋で、姉と一緒に布団を敷いて寝ていました。

ある日、いつものように眠っていると、

寝ているすぐそばから、男の子の声が聞こえてきました。

しゃくり上げるように泣きながら

「え~ん、お父さんもお母さんも俺にご飯くれないんだ・・・ひっく・・・いつも俺のご飯がないんだ・・・ひっく・・・みんな俺の事無視するんだ・・・ひっく・・・学校に行っても、話しかけてもみんなが無視するんだ・・・俺の事、みーんな無視するんだぁ・・・ひっくひっく・・・」

何だろうと、目を開けて起き上がりました。朝でした。

カーテンから外の光が漏れて、室内は薄明るかったのですが、周りを見回しても男の子なんていません。

隣で姉が布団で眠っているだけです。

さっきの男の子の声は、何だったんだろう?ついさっきまで、すぐそばで声が聞こえてたのに。

朝から誰かが勝手に家の中に入って来たのだろうか?と思い、起きて窓を確認しましたが、閉まっていました。

ついでにカーテンも捲って確認しましたが、誰もいません。

夢は見ていませんでした。

寝ている自分のそばで、はっきり男の子の声が聞こえていたのです。しかも泣きながら。

変だなぁと思っていると、母が起きて来ました。

母に、家の中に誰か居ないかと聞くと、「誰もいないわよ~」と。

そのうち姉が起きてきたので、「朝、男の子の声聞こえなかった?」と聞くと、「別に聞こえなかった」と言う。

「おかしいなぁ、寝てる時、男の子が泣きながら色々言ってたんだよ。でも起きたらいないんだよ。」と話しましたが、「夢でも見てたんじゃない?」と言われ、モヤモヤしましたが、その日はそれで終わりました。

しかし、また次の日も、眠っていると男の子の声が聞こえてきて、起きると朝でした。

昨日と同じ、泣きながら「ご飯が無い、みんなが無視する」と、同じような事を言っていたのです。

またおかしいなぁと思いながら、周りをきょろきょろ見ましたが、やっぱり誰もいません。

夢とか映像は何も見ていないのです。

朝の浅い眠りの意識の中、すぐそばから声が聞こえていて、一方的に聞かされている感じです。

でも起きると誰もいない、声も聞こえない。

声の感じからすると、私より1つか2つ年上の子(小3、4年生)だと感じましたが、私には思い当たる男の子はいないし、知らない男の子の声なのです。

しかも、ご飯も無い、学校でみんなから無視されてる男の子なんているのだろうか?

まったく心当たりがありませんでした。

それから2、3日後のある日、寝ていると、またあの男の子の声が聞こえてきました。

「おまえ、偉いなぁ、ちゃんと学校に行って勉強してるんだもんな・・・俺も頑張って学校に行くんだ。みんなに無視されてもめげずに学校に行くんだ!」

起きたら朝で、やっぱり誰もいませんでした。

そしてある日、私にとって衝撃的な事件がありました。

寝ていると、いつもの様に何かごちょごちょ聞こえて

「お前、良かったな!大人になったら美人になるんだぞ。俺、お前がいい!チュー!!」

目が覚めたら、唇に違和感があり、慌てて起きて鏡を見ると、私の下唇がポテっと膨れて腫れていました。

このままタラコ唇が治らなかったらと思うと、私はすごくショックでした。

唇に触れられた感触は無く、声だけだったのに腫れてしまったので、あの得体の知れない男の子が不気味に感じました。

2階で寝ている、少し歳の離れた兄にこの話をしてみました。

そしたら兄が、「俺もそれあったよ。」と言うのです。

やはり寝ていると、泣きながら何か言っている男の子の声が聞こえたと。

しかも、言っている内容が私と一致しました。

起きて誰か部屋にいるのかと、周りを見るけど誰もいないし、やはり朝で、夢は見ていなかったとの事。

但し、兄は一度きりだったそうです。

子供ながらに気持ちが悪かったので、その事を母にも話しました。

寝ていると、どこかの男の子が枕元で一方的に話してくる。

しかも、私だけではなく兄にまで。

勝手に家に入って来ている(不法侵入)と思ったけど、誰もいない。

私は、あの男の子は幽霊なんじゃないか?と思うと。唇も腫れたし。

しかも、自分が死んだ事が分からずに、生きていると思っている。

そして、皆に無視されていると思っている。

幽霊だから、周りの人は、話しかけられても聞こえないし、見えないのだろうと。

私だって、寝ている時だけ声が聞こえてた程度だし。

自分のご飯の用意が無いのは、すでに死んでしまっているからだろう。

死んだ事が、自分で分かってないと思うんだ、と。

それから3日後位に、寝ていると、またあの男の子の声が聞こえました。

クスン、クスンと泣いていました。

「お父さんもお母さんも、俺が死んだって言うんだ・・・。俺が死んだなんて嘘だよな?・・・なぁ、何か言ってくれよ!・・・俺、自分が死んだなんて認めない、認めないから!!」

感情的な声で目が覚めた。私に言われても困るのだが、どうやら死んだ事を認めたくないらしい。

それから何日かしたある日、また男の子の声が・・・

「今、お前の未来を見てるんだ。・・・お前、大人になったら、男の人とエッチな事ばっかりするんだ。」

良くわからないが、どうやら幽霊は、先の未来が見えるらしい。

しかし、その数日後、

「俺、病院にいる女の子の友達ができたんだ。今、その子と遊んでるんだ。お前なんか、もういいよ!」

多分、それを最後に、寝ている時に男の子に話しかけられる事はなくなった。

そのすぐ後、自分は運動部に入って、毎日疲れていたので、それどころじゃなくなったのもあると思う。

何年か後に、映画の『シックス・センス』が話題になった時、その時の事を思い出した。

自分が死んだ事が分からない幽霊って、案外いるのかも知れない。

あの男の子が、結局どこの誰だったのかは不明。

自分の死を受け入れて、成仏できたのか。

それとも・・・今も病院にいるのでしょうか?

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