長編8
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私には幽霊が見える

「私、幽霊が見えるの」

そんな事を言うと、誰もが私を可哀想な物を見る様な眼差しで見詰める。

頭のおかしな子なんだろうって。

寂しいから、嘘を吐いてるんだろうって。

違うのに。

私は只、本当の事を言っているだけなのに。

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◎◎◎

物心が着いた時から、私には変なモノが見えてた・・・・・・訳じゃない。

霊感なんて欠片も無かった・・・筈だった。

見える様になったのは最近。

つい、この間。

其れも見えるのは一人だけ。

教室の隅に居た、あの子だけ。

其れ以外は、呪いの動画を観ようが、心霊スポットに行こうが、何も変わらなかった。

私が此れから話すのは《あの子》の事。

そして、あの子と出会って、少しだけ強くなった私自身の事。

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◎◎◎◎

あの子と出会ったのは、今から半年くらい前。

私が突然、クラスの人達から無視され始めてから・・・大体、二ヶ月経った頃。

あの子は最初、誰も居なくなった教室に出た。

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◎◎◎◎◎

ずっと一人なのにも慣れて来た頃の話。

放課後、家に帰ろうとすると、纏められていたカーテンが、風も無いのにグニャリと動いた。

「誰か居るの?」

答えが無いのは分かっていたが、ついつい聞いてしまった。

私は此処では空気中の塵の様な物だから、返事が帰って来る筈が無いのに。

聞いてみた所で、惨めな思いをするだけなのに。

「・・・・・・・・・居るよ。」

「え?」

返事が・・・・・・帰って来た。

「誰が・・・居るの?」

「私。」

カーテンの方へ駆け寄り、高鳴る心臓を必死に押さえ付けながら、聞いてみた。

「名前は?」

「◎◎△△。」

おおよそ平凡な名だ、と思った。

然し、そんな事は断じて言えない。

「とっても素敵な名前。」

私の事を、塵から人間にしてくれる誰か・・・かも知れないのだ。

機嫌を損ねる訳にはいかない。

「カーテン・・・・・・開いてもいい?」

おずおずと尋ねると、私が開く間でもなくカーテンが一人でに開き、女の子が出て来た。

「こんにちは。」

其の子は上履きを片方しか履いていなかった。スリッパを変形させた様な、妙な形の上履きだった。

着ている体操服も此の学校とは違う。

「・・・・・・何処のクラスの人?私は」

「ねぇ。」

女の子は冷やかな目をして、私の話を遮った。

「もう、気付いてるんでしょ。いい加減。」

私は慌てて口を噤んだ。

嫌われては大変だから。

・・・女の子は続ける。

「私、幽霊。もう死んでるの。」

彼女の頭は後頭部が一部陥没し、透明やらクリーム色やら赤やらの鮮やかな色々で覆われている。

私は言った。自己紹介の続きを。

「・・・私は、×××と言うの。よろしくね。」

女の子は其れを聞き、不思議そうに顔を歪める。

「怖くないの?」

声は、幾分、自嘲的な響きを帯びていた。

私は黙って頷いた。そして、ゆっくりと質問。

「あなたは、私を何だと思う?」

「・・・・・・人間、でしょ。」

彼女は怪訝そうに答えた。

人間、と答えた。

其れだけで・・・十分だった。

「そう思うなら、思ってくれるなら、私はあなたを怖いとは思わない。」

彼女は暫く、其の不思議そうな表情を続けていたが、直にゆるゆると頬緩ませた。

私はニッコリと微笑みながら言った。

「ねぇ。もっと話さない?」

「・・・・・・良いよ。」

斯くして、誰にも見えない塵の私に、誰にも見られない幽霊少女の友人が、出来た。

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◎◎◎◎◎◎

友人が出来ると、人はどうやら強くなる物らしい。

誰に何を言われても平気になった。

女の子・・・・・・△△は、話してみると以外とさっぱりとした気性の子で、一緒に居て楽な気分になれた。

楽しかった。

単純に楽しかった。

休み時間に無駄話をしながら歩くのも、お昼を一緒に食べるのも、放課後に冗談を言いながら駄菓子屋で買い物するのも、部屋で一緒にゲームするのも、全部全部全部、全部楽しかった。

他の人が何を言おうと、何も思わなかった。

元々、私を塵だと思っていた人達なのだ。

今更何を思われようが何を言われようが知った事ではない。

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◎◎◎◎◎◎◎

ある日、一緒に階段を歩いていると上の階から下りて来た男子がこう言った。

「幽霊だって。気持ち悪い。」

隣の△△の顔が、僅かに歪んだ。

・・・・・・悲しませた。

こいつは、私のたった一人の友人を、唯一無二の親友を、悲しませた。

次の瞬間、私は其の男子を階段から突き落としていた。

大きな音を響かせて、男子がのたうち回りながら落ちて行く。

今まで、ずっと私を塵と蔑んでいた男子が、いとも簡単に。

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私の中で、何かが壊れる音がした。

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◎◎◎◎◎◎◎◎

走って教室に向かい、椅子を持ち上げる。

「あなた達だって簡単に壊れるんでしょ?」

適当な女子に狙いを付けて、肩に思い切り椅子を打ち下ろす。

何か汚い声を上げて、女子が踞る。

ほら、やっぱり。

私は勝ち誇った様に叫ぶ。

「私には幽霊が見えるの。誰に見えなくても。見えるの。友達がいるの。・・・寂しくなんてないの!!」

にわかに、教室が混乱状態となった。

△△は相変わらず冷めた目をしていて、一言

「殺しちゃ駄目だよ。」

と言った。

私は、教師達が来て、私を無理矢理捕まえるまで、椅子を奮い続けた。

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◎◎◎◎◎◎◎◎◎

《いまじなりーふれんど》

母親が言った言葉は、どうしても私の頭に馴染まなかった。

扉の向こうから声がする。

「其の幽霊は実際には居ないの!!あんたが頭の中で作り出しているだけ!!空想なの!!どうして分からないの?!どうして、どうしてお母さんをこんなに苦しめるの?!」

・・・・・・・・・私がいじめを告白しても、信じてくれなかった癖に。

私は、今のお母さんの何倍もの苦痛に耐えて来た。

「居ないの!!居るのはあんたの頭の中だけなの!!何でそんな風に気違いみたいな真似をするの!!誰も居ないの!!あんたに友達何て一人も居ない!!居ないの!!」

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・・・・・・違う。

違う。△△は居る。

現にほら、今も私の隣に。

居る、居る、居るんだから。

ほら、

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「貴方は此処にいるよね?」

「何言ってるの、当たり前でしょ。」

ほら、ほら、ほら、

只の自問自答じゃない。

確かに此処に居る。

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「△△は私の何。」

「友達。親友。・・・違う?」

少しだけ赤らんだ頬。恥ずかしげな声。

ううん。違くないよ。全然違くない。

私達、友達だよね。△△は、私の親友だもんね。

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大丈夫。

もう、迷わない。

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◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

・・・そろそろ、お父さんが帰って来る。

そうしたら、此の部屋は無理矢理抉じ開けられるだろう。

《もし、△△が私の空想だったら》

・・・・・・そんな事を私は考えた。少しだけ。

でも、もう、迷わない。

△△が幽霊でも、空想でも。

此処に居ても、居なくても。

「・・・私は、△△が大好き。」

「何恥ずかしい事言ってんの。」

例え空想だとしても、大好き。

△△のお陰で、私は今まで生きて来れた。

私はそっと窓を開けた。

「・・・・・・何するの。」

「分かってるでしょ。」

ずっと、△△と一緒に居られる様にするの。

あのね、私、△△が大好き。

ずっと一緒居られたらって、思うの。

ねぇ、△△は?

「確かに、そうは思うけど・・・・・・。」

良かった。嫌がられちゃうんじゃないかと思った。安心したよ。

「でも、もし、私が×××の空想だとしたら?」

もう。意地悪言わないでよ。

・・・・・・・・・そうだね。

さっき言ったでしょ。もしそうでも、大好きな気持ちは変わらない。

其れに

「こんな、空想に頼り切った世界の為に生きようとは、思えないんだよね。どうしてもさ。」

敢えて軽い感じで言い切ると、驚く程に気持ちが軽くなるのが分かった。

「あー、空が青いなあ。」

背伸びをして、深呼吸。

お母さんの戯れ言も、もう聞こえない。

「行こっか。△△。」

「・・・・・・うん。」

△△が手を差し出して来た。

しっかりと手を繋いで。

私はーーーーーーーーーーーーーーーー

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・・・・・・・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーーー・・・。

「と、言う訳で今回の事件についてですが・・・あ、飯島先生、どうぞ。」

「ちょっと失礼。あのですね、此の手の事件、此れは最近の子に結構よくある傾向なんですよ。」

「と、言いますと?」

「ゲームとね、現実の世界の違いを分からなくなっちゃうんですけどね。ほら、今回の子も、ゲームを好んでプレイしていたそうじゃないですか。現実があまりに辛いので、頭の中で世界を作り替えちゃうんですね。はい。」

「いじめに逢っていた可能性も有るそうですからね。」

「ええ。ええ。寂しがったんでしょうね。はい。」

「さてー・・・・・・・・・あ、中山さん、何かご意見が?」

「はい。少しだけ言って置きたい事が有りまして。今回の加害者であり被害者である×××ちゃん何ですがね、彼女が何故自殺したか、理由はまだ分かっていないのですがーーーー

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・・・・・・・・・。

「馬鹿みたいね。」

「本当にねー・・・。」

「此のハゲ、どんだけ的外れな意見出してんの。あの残り少ないプライドをむしり取ってやろうかな。」

「あはは、誰にも理由何て分かんないんじゃない?誰も考え付かないよ。」

「そうかなぁ。」

「そうだよ・・・・・・って言うか、本当にいいの?」

「何が?」

「私と一緒に居ちゃって。てか、此方に来ちゃって。お父さんとお母さん、泣いてたよ?」

「今更じゃない?・・・・・・まぁ、一人娘だったからねぇ。また暫くは姑にチクチクやられるだろうね。」

「・・・・・・・・・。」

「其れに、私は、今が幸せだから。」

「・・・そっか。私も、幸せ。」

「今日は妙に素直だね?デレ期?」

「何時の間にそんな言葉覚えたの。」

「ふふふ。」

「全く・・・。」

「ねぇ。提案があるんだけど。」

「いきなり何。」

「二人きりってのも良いけど、あと何人か友達が欲しいなって。」

「え?」

「寂しそうな、私みたいな人に、声を掛けるの。二人じゃ出来ない遊びも、沢山あるでしょ?」

「別に構わないけど・・・。」

「ほら、彼処にも寂しそうな人が居る。」

「はいはい。」

「話し掛けてみよう!」

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ねぇ、寂しくない?

私達が見える?

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私達、今、貴方のーーーーーーーー

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ロビンMさんへ
コメントありがとうございます。

お褒めに与り光栄です。

・・・・・・IKKOさん?!
僕だったら絶対に反応してしまいます(笑)
僕何かに言われる迄も無いとは思いますが、流石ですね!

やあロビンミッシェルだ。

流石は紺野先生、文中に一部の無駄も無い見事な作品だな!…ひ…

しかしすまん!もしカーテンの中からIKKO氏の様な屈強な猛者が出てきて、「ワタシ…が…ミエルの…?」と言われても多分無視するだろうなと想像してしまった俺を許してくれ!…うう…

mamiさんへ
コメントありがとうございます。

男同士だと、主人公が女々しくて女々しくて辛いですし、男女だと単なるバカップルになってしまって・・・。
苦肉の策なんです(笑)

偶にはハッピーエンドを書こうとも思ったのですが・・・・・・どうなんでしょうね。此れ。
多分主人公は幸せになれたと思うのですが。

次回も、宜しければお付き合いください。

紺野さんが女性目線で書かれるって、珍しいですね。
でも、少し寂しさが残るような内容は、やはり紺野さんらしくて…
次回も楽しみにしています。

はなさんへ
コメントありがとうございます。

正直、不安な所も多い話だったので、そう言って頂けると嬉しいです。
ありがとうございます。

次回も宜しければ、お付き合いください。

またいつもと違う切り口でおもしろかったです(*´▽`*) 次回作も期待しております♪♬