中編3
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勲章

いつもは、創作話ばかり書いている私ですが、

今回はノンフィクションの話をします。

私は、霊現象についてはかなり、懐疑的なのですが、

一つ、身内の話で不可解な話はあります。

その身内というのは、私の弟で、私と真逆の性格で、

思ったことはすぐに口にしてしまう性格で、短気で堪え性がなく、

中学生になったあたりから、何度かトラブルを起こしました。

そのくせ、小さい頃からかなり臆病で、夜は豆球を点けないと眠れないようなチキンでした。

別に、つっぱってるというわけではないのですが、その性格ゆえ、

生意気ととらえられることが多く、先輩にボコられたりしたこともありました。

野球をやっていて、勉強は大の苦手。

高校へは、野球で進学できたようなものです。

ところがやはり高校に進学しても、世渡りの下手な弟は、どうやら

部活で先輩達に苛められたようでした。

父は、とにかく弟が野球をやっていればいいという考えの人だったので、

弟が野球を辞めたい、と言った時には烈火のごとく怒り、

無理やり野球をやるように強制したのですが、弟は当時はまだ父親が怖かったのか、どうしても我慢ができず、家出を繰り返し、しばらくすると、とうとう野球は辞めてしまい、勉強も嫌いだったので、高校を中退してしまいました。

高校中退者に、職などなく、弟は板前の修業をすべく、F県、K市で修行をすることに。

中学の同級生と一緒に、古いアパートに一緒に暮らすことになったのです。

親も半ば諦め、同級生も一緒に住むということで、安心していました。

ところが2年後、弟が泥酔して、泣きながら電話をしてきたのです。

当時は今ほど、飲酒に関しては厳しくなく、かなり緩めでしたし、弟は

180cm近く身長があるので、かなり大人びていたと思います。

電話の内容は、「仕事を辞めて、家に戻りたい。」という内容でした。

私は姉の立場から、情けない、根性なしめ、もう根を上げたのか、と思いました。

もちろん板前の修業は厳しくて、上下関係もかなり厳しいので、辛いというのもありましたが、どうやらもう一つ理由があったことは、弟が帰ってから聞きました。

「Fがな、帰ってこんようになったんよ。」

Fというのは、弟が一緒に住んでいた同級生です。

「わしもな、Fは仕事で遅うなったんかと思いよったんじゃけど、

ずっと帰ってこんようになったんよ。」

ある日から、一緒に住んでいたFが帰ってこなくなったという。

その頃は、まだ携帯電話も普及しておらず、固定電話もつけていないので、

連絡が取れない状態が続いたそうです。

弟も、まあ女でもできて、しけこんでるのかな、くらいにしか思わなかったそうです。

ところがある夜、弟は夜中に目を覚まし、初めて金縛りに遭いました。

起きているのに、体が全く動かない。

弟は人の気配を感じて、足元を見ると、軍人のような格好をした男が立っていたそうです。

男の胸には、勲章のようなものがたくさん着いていて、中でも鳥の形をした勲章が目に焼きついたそうです。

そのあくる日、同居していたFが久しぶりに帰ってきたので、すぐさま、

その話をFにしたそうです。

「軍人の幽霊が出た。」

そう言うとFは、

「鳥の形の勲章が、ついてなかったか?」

と言ったそうです。

Fが帰ってこなかったのは、実は弟と同じものを見たからだそうです。

弟とFは別々の職場だったので、シフトによっては、それぞれが、

一人寝の日もあり、Fは弟が居ない夜にそれを見たということでした。

Fは、怖くてもう、そのアパートに帰りたくなくて、友人の家を

転々としていたようです。

ほどなくして、弟は、板前修業の辛さと、そこから離れたさで、

電話をしてきたという運びです。

怖がりの弟が夢でも見たんだろう、くらいに思っていたのですが、

Fが同じものを、しかも特徴を覚えているというのは、

やはりそういうものって、存在するのかもしれませんね。

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