メアリー•セレスト号の真実①

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メアリー•セレスト号の真実①

[メアリー・セレスト号]

この船の名前を聞いたことはあるでしょうか?

[メアリー・セレスト号]は、1872年にポルトガル沖で、無人のまま漂流していたのを発見された船です。

発見当時、『なぜか乗員が一人も乗っておらず』、航海史上最大の謎とされています。

以下は[メアリー・セレスト号消失事件]の概要です。

1872年11月7日

船長ベンジャミン・ブリッグズの指揮下、[メアリー・セレスト号]はニューヨークから出港。

工業用アルコール(おそらくメタノール)を積み、ニューヨークからイタリア王国に向かいます。

船には船員7人のほか、船長と妻、そして二人の娘の、計10人が乗っていました。

1982年12月5日。午前中。

海原を漂う[メアリー・セレスト号]を、[デイ・グラチア号]船長モアハウスが発見しました。

モアハウスは[メアリー・セレスト号]に隣接し乗船し、船内に乗り込みます。

そして、驚くことに『船の中が無人』であったことに気付くのです。

不審に思ったモアハウスは、[メアリー・セレスト号]の船内をくまなく調べました。

その結果、奇妙な事象が幾つも確認できました。

モアハウスが船に足を踏み入れた時。

船全体は海水でびしょ濡れでした。

甲板は水浸しで太陽光を反射しています。

船倉にも海水が浸水しており、探索する足底に海水の湿り気を感じます。

ですが、全てのポンプが壊れているわけではなく、僅かな浸水以外は船は良好な状態であり、充分に航海が可能な状況でした。

浸水を防ぐべきハッチは全て開放されており、扉も全て開け放たれていました。

船内の全ての時計は停止し、この船が今まで時計のネジすら巻けない状態であったことを伺わせます。

モアハウスは、次に操舵室に向かいました。

羅針盤は破壊されており、六分儀とクロノメーターが失われていました。

航海の命とも言えるこれら計器類は、何処に失われてしまったのでしょうか。

モアハウスは船の破損状況を確認する最中、

救命ボートは、船の中に懸架されたままなのを発見します。

この事から、船員が船を破棄して逃げ出した可能性が無くなりました。

ボートの傍らには謎の血痕があり、原因不明の擦り傷も確認されました。

積荷は数個の樽の破損を除けば、ほぼ無事であり、この船が目的地を目指し航海の最中であった事を教えてくれます。

モアハウスは、最後に船長室に向かいました。

船長室に足を踏み入れたモアハウスは、驚愕します。

船長室の机の上には、まるで作りかけのような、湯気を立てるコーヒーと、ほんのりと暖かい一切れのパンが置いてあったのです!

モアハウスは混乱します。

確かにこの船は、航行可能な状態を保ってはいますが、

荒れた船内の様子を見れば、誰も乗っていないことは明白です。

なら、この食事は、誰が作ったものなのか!

驚きながらも、モアハウスは船長室の捜索を続けます。

ベッドの下を見た時。その時、モアハウスは驚くべきものを発見しました。

刀身が赤く染まった、血に濡れた刀剣です。

その近くには、航海日誌と思しき革製の本が落ちていました。

モアハウスは、恐る恐る航海日誌を捲ります。

内容を読むに、[メアリー・セレスト号]の航海は順風満帆でした。

11月24日の記述には、明日には目的地であるイタリアに到着することが示唆されています。

ですが、日誌は11月24日で途切れていました。

11月24日以降から今日12月5日までの間、この船に何があったのか、日誌からは知ることはできませんでした。

ですが、日誌をパラパラと捲るうちに、

日誌の最後のページで、ある一文を見て、モアハウスの顔色が変わります。

12月4日。昨日の記述です。

「我が妻、ファニーが」

記述は、それだけでした…

一体この船に、何が起こったのでしょうか?

ほぼ無事な船を残したまま、この船の乗組員は、何処に消えてしまたのでしょうか?

諸説は様々あります。

[海賊船襲撃説]

海賊が船を襲撃した説。

だが、積荷が手付かずな事が不自然です。

[異次元消失説]

かの有名なバミューダトライアングルのように、

この船が異次元に吸い込まれ、船のみが帰還した説。

[UFO誘拐説]

[怪獣襲撃説]

エトセトラエトセトラ…

まるで都市伝説の如く、この奇妙な消失事件は、様々は憶測を呼び、多くの仮説が立てられました。

その中で、私は、ある一つの仮説に興味を覚えましたので、紹介いたします。

[麦角菌による発狂説]です。

この説は、ボートの血痕、船長室に隠されていた血濡れの刀剣と、航海日誌の最後の文章「我が妻ファニーが」の謎を解き明かします。

積荷や食料に含まれていた小麦が、麦角菌に汚染されており、

その幻覚作用で乗員が発狂。

特に船長の妻の発狂が強く、

妻は船員全てを惨殺し、海に放逐。

航海に必要な計器類も破壊され、

責任を感じた船長は、妻を止めるために殺害し海に埋葬。

その後、罪の意識で船長は自殺。

乗組員を失った船は海を漂い、

[デイ・グラチア号]に発見された、

という説です。

ですが、この説だけでは、決定的に説明できないことが数多くあります。

例えば、『作りかけの朝食』の謎は、全く解けていません。

その上、航海日誌の記述は、前日までしかありません。

記述の直後に船長が命を断ったとしても、

食事の用意など出来るはずがありません!

誰もいない船内で、

誰が食事をしていたというのでしょうか!

…何より、航海日誌にあった船長の妻『ファニー』…。

このような人物は、船内に存在しません…。

なぜなら、船長の妻の名前は、

『サラ』

だからです。

もしかしたら、発狂し船内の人員を皆殺しにしたのは、

妻ではなく、

船長だったのかもしれません。

もしくは…、

ファニーとは、『奇抜』『道化』を意味する単語です。

11人目の船員が…、

道化師の格好をしたような、11人目の乗員がこの船に存在していたのでしょうか?

その11人目の乗員は、

[メアリー•セレスト号]の乗員を『殺し合い』で始末した後に、

一切れのパンを齧りながら、

[メアリー・セレスト号]を発見した[デイ・クラシア号]乗組員が狼狽える様を、

船長室の窓から覗き見ていた、とでも言うのでしょうか?

一体、この[メアリー・セレスト号消失事件]の真相は、

真実は、何処にあるのでしょうか?

(【メアリー・セレスト号の真実②】に続きます。

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こういう都市伝説みたいなお話し、大好きです。
②を今から読ませていただきます。