長編11
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グダグダ幽霊少女の話

前回迄の粗筋。

幽霊が出ると言うホスピスに肝試しに行った僕、薄塩、ピザポ、のり姉。僕達は其処で、閉じ込められるわシーツを被った化け物に追い掛けられるわのり姉は男(幽霊)に振られて落ち込むわで散々な目に遭った。

涙を流すのり姉の腐女子心を奮い立たせる為、ピザポは一計を案じる。

然し其の計画とは、《無理矢理僕を車から引き摺り降ろした後、家へと持ち帰る》と言う文にすると、愈鳥肌が総立ちのスタンディングオベーションな代物であった。

ピザポの家でも一悶着有り、眠りに付くと今度は謎の少女、ユミちゃんにのし掛かられる。話を聞いてはみたのだが眠気には勝てず、僕は眠りに落ちた。

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・・・・・・・・・。

さて、友人の家に泊まったとしよう。

慣れない布団で、あまりグッスリとは眠れなかったとしよう。

そして、朝、友人よりも早く起きてしまったとしよう。

「もう、焦れったいわね!早くやっちゃいなさいな!!」

「ごめん、ちょい黙ってて。」

目の前にピザポが寝ている。

そして、僕は眠りこけているピザポの顔を覗き込んでいる。

右手には水性ペン。

「絶好のチャンスだ・・・。」

然し、ピザポには色々と恩が有る。其れを忘れて顔に落書き等・・・・・・して良い物なのだろうか。

「良いに決まってるでしょ?!」

「本当に一寸黙ってて。」

僕の中の悪魔・・・・・・基、ユミちゃんからの悪魔の囁きを右から左へ受け流しながら、僕は一つの決断をした。

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・・・・・・・・・。

「で、どうしても我慢出来なかったと。」

「はい。反省してます。ゴメンナサイ。」

「謝罪に誠意が感じられないよ、コンちゃん。」

ニコニコと笑いながら怒っているピザポ。

下手すれば昨日より恐ろしいかも知れない。

「大体さ、何これ。」

ピザポが自分の額を指差す。

水性ペンで書かれた、縦書きの《大豆》の文字。

「何。《大豆》って何なの。其処は《肉》じゃない?何故にお豆をチョイスしちゃうの。」

「たんぱく質繋がりで・・・・・・。」

「ああ!畑のお肉って言うから・・・ってじゃかしいわ!!」

ピザポが丸められた布団の上へ拳をめり込ませる。

布団がボスッッ、と鈍い音を立てた。

「ごめんなさい・・・・・・。」

ピザポは更に続ける。

「あとさ、これも何。」

今度は左目の少し下を指差す。

小さな黒い点が一つ。

僕は、萎縮しながら答えた

「泣き黒子です。」

「だから、どうしてよりによって泣き黒子をチョイスしちゃうの!」

「・・・・・・いやぁ。」

「いやぁ。じゃないから!!もっとこう・・・あるじゃん!!ヒゲとか!!第三の目とか!!定番の奴があるじゃん!!どうして泣き黒子描いちゃうの!!面白味が一欠片も無いよ!!俺のセクシーさが無駄に上がっただけじゃん!!」

「セクシーって・・・其れ、自分で言っちゃいますか。」

僕が冷静に返すと、ピザポはブンブンと頭を振った。耳が赤い。自分で言って置きながら恥ずかしくなったのだろう。

「うっさい!!反応に困るんだって!!地味すぎだよ!!どんな顔すれば良いのか分からないじゃん!!」

「笑えばいいと思うよ。」

「違う!!確かにそうかも知れないけど、其れを言わせたかった訳じゃない!!」

「朝から騒がないでよ。喧しい。」

「誰の所為だと・・・!!」

「今言ったのはユミちゃんだからね。僕じゃないからね。」

「コンポタとの話がまだ終わってないの。外野は引っ込んでて頂戴。」

ユミちゃんがフン、と鼻を鳴らす。

ピザポが眉根を寄せ、僕の方を見た。

「・・・・・・どう言う事?」

「僕にも、よく分からない。」

「縫いぐるみは?返したの?」

「返した。」

「じゃあ何で居るの。」

「話を聞いてたんだけど眠気に勝てなくて、寝ちゃったんだ。」

「で、コンちゃんが起きるまで待ってたの?」

「そう。」

「・・・・・・。」

僕が頷くと、ピザポは呆れた様に溜め息を吐いた。

「コンちゃんって・・・。」

「うん。」

「どうしようもないバカだよね。」

「分かってる。」

「やーい、バーカバーカ。」

「ユミちゃん、一寸黙ってて。」

「ユキちゃんに怒られても知らないよ。」

「出て行くよ。匂いが強くなる前に。」

「其の子を連れて?」

「うん。」

「何処に?」

「僕の家かな。取り敢えず。」

「私を家に連れ込んで何するつもり?」

「ユミちゃん、今真面目な話だから。自重して。」

「乱暴するんでしょ。エロ同人みたいに。エロ同人みたいに。」

「ユミちゃん、本当に黙ってて。何処でそんな言葉知ったの。」

「・・・・・・ねえ、コンちゃん。」

「あ、こら止めなさ・・・・・・うん?」

僕が、僕の旋毛を押そうとするユミちゃんから逃げていると、ピザポは硬い声を出した。

「危険かも、知れないんだよ。」

「分かってる。と言うか、本人の前で言ってやるなよ。こんなんでも一応女性で子供だ。」

「でも幽霊で、あのシーツの化け物と知り合い。だろ?」

「其れはそうかも知れないけど、シーツ被り本人とは違う。ユミちゃんは僕に危害を加えたりしない。」

「あんた一人殺す位余裕だわ!!見くびらないで!!」

「話をややこしくしないで。御願いだから。」

「ほら。本人もそう言ってる。」

「もうユミちゃんは本当に黙っててってば!」

「さっきのはユミちゃんじゃないよ。俺だよ。」

「いや、其れは分かってて、さっきのはユミちゃんの発言に」

「面倒臭い。一旦黙って。」

「此方の台詞だよ!!」

もう滅茶苦茶だ。収拾がつかない。

「コンちゃんはそうやって何時も面倒事に首を突っ込もうとして・・・・・・。」

「コンポタ、此の五月蝿い奴黙らせてよ。大体、人を面倒事扱いなんて失礼にも程があるわ。」

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「嗚呼もう!!僕を挟んで言い争わないでよ!!嫁と姑かよ!!」

僕は勇気を奮い立たせて二人を制した。

「コンちゃんに嫁ぐのもコンちゃんを産むのも御免だよ。」

「誰があんたの嫁なのよ!!!」

反応が二人とも何か擦れてる。頭が痛い。

「違うって。もう・・・・・・。」

どうして朝から、こんなに疲れなくてはならないのだろう。

寝起きなのに。

「そんな顔しないでよ。別にコンちゃんを責めたい訳じゃないんだって。」

「知ってる・・・・・・。」

自分の声がどんどんトーンダウンして行く。

ユミちゃんがピザポを囃し立てた。

「あーあー、泣かせたーー。友達なのにーー泣かせたーー。」

「泣いてないよ・・・・・・。」

只、疲れただけだ。

上手く眠れなかったのも関係しているのかも知れない。

「泣いてないから、ピザポの言いたい事も分かるし、ユミちゃんの言い分も尤もだから。御願いだから冷静に話し合って。今すぐ出て行けって言うなら、ちゃんと出て行くから。」

「・・・・・・・・・。」

ピザポが、無言で頷いた。

「取り敢えず、詳しく事情を教えて。あ、やっぱりちょっと待って。」

そして、おもむろに立ち上がり、押し入れの中をゴソゴソと探り始める。

僕は中の情操教育によろしくない物達を見えない様にする為、ユミちゃんの目を塞いだ。

「何すんのよっ!!!」

然し、ユミちゃんの右腕から放たれたアッパー擬きを喰らい、呆気無く布団の上へと倒れた。

「何やってんのコンちゃん。」

ピザポが何時の間にかゴソゴソを止めていた。

呆れた様な顔で、僕の事を見下ろしている。

「・・・・・・何でも無い。」

僕がそう言うと、少しだけ訝しげに眉を潜め、ユミちゃんの方に頭を向けた。

「何した?」

「痴漢撃退だけど?」

バチバチと二人の間に火花が散る幻覚が見えた・・・・・・が、ピザポは直ぐに彼女から目を逸らし、僕の方を向いた。

「手首出して。両手。」

両手をグーにして差し出す。

「違うよ。手の平の方を表にして。」

言われた通りに、手をクルリと引っくり返した。

ピザポが小さな瓶を手に近付けた。

「ちょっと辛いと思うけど、我慢して。」

瓶の中から、ポタポタと雫が落ちる。

「香水。身体中に付けて。かなり大量だから。」

香水の甘ったるい匂いは苦手だが、何かしらの理由が有るのだろう。

・・・・・・仕方無い。

手首から垂れそうになった香水を、慌てて耳の裏へ擦り付ける。

「此処までやれば、ユキちゃんを誤魔化せると思う。」

嗅ぐと、メンソール系の甘味の無い香りがした。

少しホッとした。

「コンちゃん、これなら平気?」

「・・・・・・有り難う。」

「じゃあ、はい。」

「え?」

ピザポが香水の瓶を手渡して来た。

「次から来る時は、付けて来て。ちょうど使って無かった奴だし。」

「・・・其れは、何か悪い気がする。」

香水瓶を押し返そうとすると、ピザポは手を放してしまった。

「瓶のデザインで買ったんだけど、俺はもうちょい甘い方が好みだから。」

「貰っちゃえば?メンソール男。」

ユミちゃんが僕の顔を覗き込んで来る。

「誰がメンソール男だ。」

「此方としては早く説明をして欲しいの。あんまり余計な事に時間を割かないで。」

ユミちゃんがフン、と鼻を鳴らす。

本当に可愛くない。

「俺も正直な所、そう思ってる。変に遠慮とかしないで。ユキちゃんを紛らわす為何だし。遠慮とかしないで。」

ピザポが困った様に言う。

僕は小さく頷いた。

「・・・・・・有り難う。」

軽く頭を下げ、説明を始める。

「先ず、どうして彼女・・・ユミちゃんが此処に来たかと言うと、其れは、彼女のお姉さんの縫いぐるみを、僕が勝手に持って来ちゃったからでだなーーーーーーー

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・・・・・・・・・。

「で、今に至る。」

「納得がいきませんが、理解は出来ました。」

「ならば説明を終了します。」

「はい。」

説明を終えると、ピザポは口をへの字に曲げながら、頭をボリボリと掻いた。

「で、二人は何時の間に仲良くなったの?」

「なってない。」

問い掛けにユミちゃんが即答する。若干食い気味だった程、素早い反応だった。

「あんたがコンポタの布団で寝始めちゃってコンポタが眠れなくなったから、仕方無く話の相手になってあげてたの。」

何やらツンデレ臭い。

まぁ、相手が相手だから嬉しくは無いし、本当にそう思っているだけなのだろうが。

其れを冷静に見ていたピザポは、暫く黙っていたが、軈て、

「・・・・・・良いけどね。別に。危害を加える気が無いなら。」

と言い、小さく息を吐いた。

「其れは此れからの言動にも因るけど。」

ユミちゃんが肩を竦める。ふてぶてしい。

「・・・・・・まぁ、良いか。」

ピザポが呟いて、数回頷いた。

立ち上がり、徐に箪笥の中を漁り始める。

此方をチラリと見遣り、ピザポが言う。

「ユミちゃん・・・だっけ。」

「他人からは、そう呼ばれてる。」

「ちょっと出てて。着替えるから。」

「・・・・・・分かった。」

ユミちゃんがスウッと薄くなり、消えた。

「うわ消えた!!」

「幽霊だし、珍しくもないでしょ。」

ピザポはそう言って、バサリと服を投げて寄越した。

「取り敢えず、其れ着て。」

「ど、どうも・・・・・・。」

僕はノロノロと着替えを始めた。

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・・・・・・・・・。

ユミちゃんが此方を指差し、嘲け笑う。

「うわぁ、みっともない。」

「失礼だな!!」

ピザポが貸してくれたのは、上下のジャージだった。本人が着てもブカブカのジャージが、更にブカブカ。

みっともなく見えるのも解る。確かに解る。

けど・・・けれど・・・・・・

「其れは言わない御約束って奴だろ!!」

「知らないわよそんな事!!」

「二人とも五月蝿い。」

ピザポが静かに言い放った。

「・・・・・・チッ。」

ユミちゃんが大きく舌打ちをした。

其れでも言い返さない所を見ると・・・何だろう。どうしたんだろう。

何か変だ。此処は言い返す所だろう。憎まれ口を叩く所だろう。どうしてしまったと言うんだユミちゃん。僕にだったら絶対ボロカスに言っているだろうに。本当にどうしてしまったんだ。

僕は異常なやきもき感に襲われた。

然し、ピザポは別段意に介しない様で、床に手を付き、立ち上がる。

「コンちゃん、下行こう。今ならユキちゃんも出掛けちゃってるから。ほら、昨日の夜から何も食べてないし。」

「・・・・・・ん。」

僕も曖昧に頷き、立ち上がった。

チラリと見ると、ユミちゃんは詰まらなそうに、壁に凭れ掛かっていた。

「え、えとあの・・・ユミちゃ」

「来るなら来れば?食べられるかは別として。」

ピザポがドアを押し開きながら、ユミちゃんに呼び掛ける。僕が言おうとしてたのに・・・。

ユミちゃんが、フン、と鼻を鳴らした。

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・・・・・・・・・。

「・・・・・・ユキちゃんったら。お茶目なんだから・・・。」

ピザポがヒクヒクと眉を蠢かせた。

あ、怒ってる。怒っていらっしゃる。

「・・・どうしたのよ。怒り虫。」

「怒り虫?」

《あ"?》とでも言いそうな顔で、ゆっくりとピザポが繰り返す。

最早安定の煽り。ピザポも其れ位で怒るなよ・・・。

「名前を知らないんだもの。勝手に呼ばせて貰ったけど、文句有る?」

フン、と鼻を鳴らすユミちゃん。

ピザポが、苦虫を噛み潰した様な顔で、ボソリと言った。

「・・・・・・ピザポ。あんたの名前は。」

「どうせ偽名でしょ?まぁ、私も本名を名乗る気は無いけど。他人からは、《ユミ》って呼ばれてるから、あんたもそう呼んで。」

「・・・・・・・・・あっそ。」

そして、ユミちゃんへの反応が段々雑になって来た。

「食パンとインスタント食品一式が消えてる。補充したばっかりだったのに。」

「・・・ご飯炊けば良いんじゃないか?」

「丁度、今米無いんだよ。どうする?」

「いや、と言うか、別に僕は・・・・・・」

「ちゃんと食べなきゃ駄目だって。てか、コンちゃんが良くても俺が良くない。」

戸棚を開きながらピザポが言う。

「・・・・・・前に貰った素麺しかない。」

「良いんじゃないか。素麺。」

「朝から冷たい物はちょっと・・・。胃が・・・・・・。」

ピザポが顔をしかめる。胃が弱いのだ。

「じゃあ、煮麺にしよう。」

「にゅうめんって何。」

ユキちゃんが不思議そうな顔で聞いて来た。

「知らないとかバーカバーカ」

「何なのよ!!」

「何ってそりゃ・・・・・・ねぇ?」

「煮込みうどんの素麺バージョンだな。」

「其れです。」

「あんたも知らないんじゃない。」

「知ってました。言わなかっただけです。」

「どっちでも良いから作ろう。」

此方が胃が痛くなりそうだ。

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・・・・・・・・・。

幽霊は食事をするのか、抑お腹は空くのだろうかと言う疑問はさて置き、ユミちゃんはモギュモギュと煮麺を食べた。

「葱は?」

「要らない。」

「七味唐辛子は?」

「要る。頂戴。」

《一杯食べる君が好き》とは良く言った物で、自分が作った物を一生懸命に食べているのを見ていると、ユミちゃんでも可愛らしく見えてくる。

「コンポタ気持ち悪い。」

前言撤回。やっぱり可愛くない。

「此れからどうすんの?」

ピザポが聞いて来た。

「どうってなぁ。」

「話を聞いて終わりじゃないの?」

「其の話を何処で聞くんだって事。」

「此処じゃ駄目なの?」

「なるべく早めにお引き取り願いたい。ユキちゃんが帰って来る前に。」

「其れについては一応考えてあるんだけど。」

「何。」

ピザポとユミちゃんが同時に此方を向く。

僕は咳払いを一つして、言った。

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「のり姉の所へ連れて行く。」

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mamiさんへ
コメントありがとうございます。

はい。まだ続いて居ります。
そして、此れからもひっそりと続けていく予定です。

何時もありがとうございます。
此れからも、宜しければお付き合いください。

見逃しておりました…(T-T)
一応、チェックしてみて良かったです(*⌒▽⌒*)